≪付属資料≫平成12年度監査委員決算意見書

13足監収第236号
平成13年9月5日
足立区長
鈴 木 恒 年 様
平成12年度足立区各会計歳入歳出決算
及び各基金運用状況の審査の結果について
委員 佐 藤 昭 司
金 子 良 ―
浅古みつひさ
忍足 和 雄
 地方自治法(昭和22年法律第67号)第233条第2項及び第241条第5項の規定に基づき、平成12年度足立区各会計歳入歳出決算及び証書類その他政令で定める書類並びに足立区各基金運用状況を示す書類を審査した結果、次のとおり意見を付します。


―般会計の審査意見
 12年度の予算編成方針は、景気低迷の中、都区制度改革や介護保険の実施及び足立区第四次基本計画の初年度となる重要な年と位置づけ、財政の赤字体質からの脱却、財政健全化計画の策定、地域活性化と景気対策、都市整備と福祉の充実の四点を重要政策と位置づけている。特に二年間で赤字体質からの脱却を目標とし、新規拡充事業の制限や―層の行政改革の推進を決意している。
 また、平成11年l1月には「財政健全化計画」を策定し、赤字体質からの脱却の目標を「平成13年度までに実質単年度収支の黒字化とした。そして、予定事業と区債の償還等に備えて平成15年度までに120億円の財源を確保することに加え、経常収支比率を80%以下にするとした。
平成12年9月には、予測される次年度の財源不足(推定187億円)に対し緊急財源対策方針が出され、超過勤務手当や旅費の支給縮減を打ち出し、新聞購読や文具購入も制限する「ちりやま作戦」を展開し歳出の抑制が計られた。
 こうして運営された平成12年度の―般会計の概要をみると、歳入では、総額で22億円余増加したものの、その内訳は利子割交付金17億円と清掃事業移管等による特別図交付金107億円余の増加であり、特別区税は18億円余減収している。
 歳出においては、清掃事業費で101億円余増加したものの、介護保険制度により高齢者要介護事業が介護保険特別会計に移行した事により民生費が96億円余減少するとともに、地域振興券事務の終了により産業経済費が22億円余減少し、総額では6億円余減少している。
その結果、単年度収支は8億円余の黒字であるが、そこへ財政調整基金積立額400万円余を加え、財政調整基金取崩し額20億円余を除いた実質単年度収支はマイナス11億円である。実質単年度収支ほ4年連続の赤字であるが、平成10年度33億円、平成11年度34億円と比較すると減少している。
なお、平成12年度は、清掃事務の移管による―般会計総額の増加や、介護保険特別会計の設置による、高齢者要介護事業費が―般会計の民生費・社会福祉費から特別会計に移行しており、平成11年度と比べると財政の枠組みが変化している。決算審査では前年度との比較を基本としているので、こうした変化には説明を加えたっもりではあるが十分に留意を願いたい。財政指標の昨年度との比較においても同様である。
 平成12年度決算を普通会計の財政指標を用いて分析すると、財政方を示す実質収支比率1.0%は昨年から0.6ポイント上がったが、基準値(3〜5%)を大きく下回っている。また、経常収支比率(85.6%)は5年連続80%を上回っているが、昨年より4.2ポイント減少した。公債費比率口1.8%)も昨年より1.4ポイント減少している。
 経常収支比率の減少でほ、その基礎となる税収が減少しており、義務的経費は昨年に比較し2.7%増加しているので、改善とは言い切れない。また、公債費比率の減少は、その基礎となる公債費は昨年より0.2%増加しており、清掃事務の移管などにより標準財政規模が増加したために比率が減少しているものである。いずれの財政指標の改善も財政枠の増加による影響が大きく、悪化に歯止めがかかったものの危機的状況を脱したわけではない。
 区財政の健全化を進めるにあたっては、歳入の確保策の徹底と、事業評価に基づく施策の見直で歳出の抑制を計らなければならない。また、長期的な区財政運営の視点を明確に示すべきである。
歳入について特別区税をみると、平成11年度より18億7536万円減少している―方で収人未済は3億1,102万円増加している。また、負担金である保育所費の収入未済は、依然l億3,169万円と膨大である。使用科の―般区営住宅でも収入未済は692万円であり、平成11年度より40.6%も増加している。定期監査ではそれぞれの部署から徴収努力策が示されたが、実績が上がるよう更なる努力を願うところである。
 また、景気低迷から民生費の生活保護費が平成11年度より19億1,351万円(7.8%の増)増加しており、同時に生活保護返還金の収入未済も6,257万円口8.7%の増)増加している。生活保護の認定は速やかに行なうべきであるが、年金や資産の調査も即応し充分であれば返還金は抑制できるはずである。これまでの監査でも再三要望していることでもあり対応の強化が求められる。
 ―方、決算審査及び監査の結果を受けて各執行機関は、それぞれ対応策を実施していた。特別区民税の収入年度誤謬に対しては、再発防止策として「現年普通徴収分」と「現年特別徴収分」の歳入科目「節」が新設されていた。また、行政財産の目的外使用に伴う光熱水費等の実費徴収や施設の保全委託契約の適正化などへの取組みが見受けられた。ただし、保養所・校外施設使用料の適正化や施設整備にあたっての維持管理費などの課題も残っていた。
 国民健康保険特別会計への―般会計からの繰出金の状況をみると、144億2,494万円であり、平成11年度に比較し46億8,906万円増でほぽ1.5倍となっている。―方この決算では、歳入歳出差引額52億3,435万円を残している。
 本来なら、被保険者の療養費は保険料で充てる制度でありながら、制度上歳入歳出分の差額を―
般会計から補填しているものである。平成12年度も、46億円余の収入未済と11億円余の不納欠損があり、特別会計上の財政運営は厳しい状況であった。しかしながら、144億円余も繰り入れておきながら、決算では52億円余の黒字会計では、当区の国保会計は十二分な余裕があると誤解されかねない。制度上赤字分を補填しなければならないにしても、この補填額(繰出金)についてほ当然のことながら精査されるべきであった。52億円を―般会計にとどめておけば、財政調整基金20億円の取り崩しの防止や減収補填債15億9,100万円の発行を防止できたはずである。
 したがって、今後、繰出金の算定にあたつては必要額を十分精査し的確な繰り出しに努められたい。
特別区債の発行状況をみると、平成12年度は30件83億8,200万円であり、平成10年度以来減少している。しかし、平成8年度からの償還額にっいてみると、増加の―途をたどっており今後の償還予定でほ平成16年度が254億円とピークを迎える。
 施設整備においては、当世代だけの負担では担いきれず減価償却期間としての後年度負担を求めるとして起債制度の活用がある。しかし、起債は将来に債務を残すものであり、起債にあたっては将来の財政負担に与える影響を考慮し慎重な配慮が必要である。当然のことながら、起債してまでも実施する必要性がある事業なのか事業の事前評価も十分行なう必要がある。
 当面の課題として、平成16年度への償還準備が求められるところであり、今後の区財政安定化のため安易な財源確保対策としての起債には苦鐘を鳴らすところである。
また、区政診断制度は、平成12年度は試行であるため平成13年度の成果を期待するところであるが、政府の示した経済構造改革では当面景気好転は望めない状況である。区でも「身の丈にあった財政」を目指しており、政策の見直しが欠かせないところである。
 そのためには、各事業の行政コストを明らかにし、事業別の収支計算書を作成する必要がある。これらの資料は区政診断の参考資料となるぱかりでなく、積み上げた総額が、区の資産も網羅したバランスシートとなり、区財政を明らかにするものである。こうした作業から、精度の高い「財政計画書」を作成し、財政健全化計画の目標達成を望むところである。
 区は財政健全化計画で「区が自ら財政構造を改革し・・・」と示しておきながら、財源確保策は、マイナスシーリングでの縮減策と負担の先送りという緊急避難的な対応でしのいできた。今後も、財政構造改革にあたっては事業の廃止や利用料の値上げなど区民に理解と負担を求めていく必要
がある。しかし、厳しい財政状況や各サービスコストを明示しなくては、区民の理解は得られない。改めて、区財政の現状を区民に解り易く伝える決算を求めるところである。


第3 国民健康保険特別会計の執行状況及び審査意見
 平成12年度の決算状況(49ページ参照)をみると、収入済額は620億8,478万2千円支出済額は568億5,042万3千円、差引残額は52億3,435万8千円、実質収支額は52億3,435万8千円となっている。なお、収入未済額は46億?,214 3千円(前年度比5億?,462万2千円の増)、不納欠損額は11億8,202万6千円(前年度ヒ9,530万5千円の増)となっている。 収入済額のうち―般会計からの繰入金をみると15 億円余で歳入総額の24.4%を占めている。
 この繰入金については、昨年の決算審査において「繰入金は、国民健康保険特別会計事業の財源に不足を生じる場合に、―般会計から資金の繰り入れを行ってこれを補填するものであるが、引き続き厳しい区の財政状況を勘案し、歳入の確保と歳出の縮減に全方を挙げて取り組み、国民健康保険特別会計自らの勢力によって繰入金の削減に努められたい。」と審査意見を付したところである。 平成12年度決算によると、―般会計からの繰入金151億円余に対し歳入歳出差引残額は52億余となっており、繰入金は約50億円の縮減が可能な状況にあった。このことは、昨年の審査意見が生かされずむしろ逆行しており誠に迫憾である。
 したがって再度、収入未済額及び不納欠損額の削減により歳入の増を計るなど国民健康保険特別会計自らの勢力によって、繰入金の削減に努められるよう強く要望する。

第4 介護保険特別会計の執行状況及び審査意見
 平成12年度の決算状況(58ベージ参照)をみると、収入済額は149億3,722万1千円支出済額は141億5,182万2千円、差引残額は7億8,539万8千日、翌年度繰越財源は945万円、実質収支額は7億?,594万8千円となっている。
介護保険料は、第1号被保険者にっいて平成12年10月に徴収開始し、通常の年の半額となっているにもかかわらず、2,500万円の収入未済額が生じているので、収入未済対策を充分検討きれたい。また、保険給付費の執行状況をみると12億円余が不用額となっている。この制度でほ、介護保険料と介護給付のバランスについては3年毎に策定する介護保険事業計画において見直すこととなっているが、この制度の健全かっ安定した運営のため、更なる事業の周知により区民が確実に介護サービスを受けられるよう努められたい。