人権擁護法案と個人情報保護法案が国会で審議されている。両法案は、人権や個人情報保護を名目にしながら、メディアを規制し、言論、表現の自由に政府が介入する道を開くことに共通した危険性を持っている。
読売新聞が修正案を発表したが、政府案の基本的な枠組みはそのままに部分的に修正しようというものであり、両法案の言論、表現の自由を脅かす危険性は取り除かれていない。人権擁護法案は、報道を差別や虐待と同列において規制の対象としている。過剰取材やプライバシー侵害の判断を法務省の外局の人権委員会にゆだね、取材停止など勧告できることは、政府が報道・表現の自由に介入し、国民の知る権利を奪うことにつながる。個人情報保護法案も、情報の「適正な方法で取得」、「本人が適切に関与」などの基本原則を報道機関や一般国民にも適用するとしており、報道、取材も規制される。
今続発する汚職、腐敗事件でも徹底した取材や内部告発が力を発揮したが、疑惑政治家に取材源の提示などを求められれば、疑惑追及は大きな制約を受けることになる。行き過ぎた資材や報道による人権侵害を防ぐことは重要なことだが、それは報道機関による自主的な取り組みを基本とすべきである。
個人の人権や情報の保護の面でも法案には重大な欠陥がある。人権擁護を言いながら、委員会な法務省の外局では公権力による人権侵害の救済は保証されない。国際人権規約委員会が1998年、日本に法務省から独立した機関の設置を求めた勧告にも反する。国民の「差別的言動」も規制の対象であるが、何を差別とするか判断は委員会任せである。これでは、国民の言論の自由、内心の自由まで行政が踏み込むことになりかねない。
個人情報保護でも、自分の情報を自分がコントロールする「自己情報コントロール権」の指定がないことは本来の目的から見て不十分である。
よって足立区議会は、民主主義社会の背骨である言論、表現の自由を脅かす人権擁護法案と個人情報保護法案に反対し、その廃案を求めるものである。
以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出する。
足立区議会議長
内閣総理大臣、法務大臣、経済財政担当大臣、衆議院議長、参議院議長あて
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