これからの区政は区民のための改革が必要です |
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―「足立区の構造改革戦略」(素案)に対する日本共産党の見解と提案― | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
はじめに 倒産、失業、リストラなど雇用不安、不況や規制緩和などによる小売商店や中小企業の営業危機、医療の大改悪に象徴される社会保障の相つぐ後退など、いま小泉内閣の進める「構造改革」のもとで、国民(区民)のくらしと営業は、かつてない厳しさに直面していることは、日本共産党の「区民アンケート」への回答にも示され、日々みなさんが実感されていることではないでしょうか。 いま区政のすべてに求められているのは、このくらしと営業をどう支え守るのか、そして、今の「不安」から安心できる日々をどう実現していくのか、といったことを展望できるようになることではないでしょうか。 このとき、鈴木区政は「足立区の構造改革戦略(素案)」と称する「検討素材」を区議会にも提起し、各会派の議論と意見を求めてきました。 「構造改革」といえば、小泉内閣発足時、圧倒的多くの国民が「期待」をもった課題です。 そこで日本共産党は、この「検討素材」を全面的に検討しました。そして区民のくらしと営業を守るためには、「足立区の構造改革戦略」そのものへの全面的批判が必要であり、部分的な改善・補強では歯止めにならないと判断しました。 足立区が「構造改革」の名で進めることを一言でいえば、くらし・営業の安心も展望もなく、逆に、従来の住民犠牲の「行政改革」を、区役所が企業を中心に、一般区民をも「協働」という名で仲間に引き入れて、より一層大規模に、体系化して進めようとするものです。これは、これまで以上の「痛み」を小泉流「構造改革」の名で区民に押しつけ、その路線を条例化して今後の足立区政の進路を示す「憲法」にすることまで計画しています。
その工夫の基本は、地方自治法でいう「住民の安全・福祉をまもる」ことです。 しかし、鈴木区政は、古性区政と同様に「行政改革」をとなえ、その名のもとに保育料36%の値上げをはじめ、区有施設の使用料値上げなど31件およそ4億円に及ぶ新たな区民負担を押しつけてきました。 また、区立幼稚園や学校をつぶしたり、生業資金貸付や紙おむつの支給などに所得制限を導入・強化して多くの対象者を締め出したり、施策の廃止・縮小など限りなく「痛み」を区民に押しつけてきました。 こうして行われた区民向けの財政の削減は「行政改革」の第一次から第二次にかけて、各年度の単純集計でも95億3千万円にものぼっています。一方、大型開発事業などによって巨額な借金を残す行財政運営をすすめてきた結果、将来の財政負担はかえって増えています。この反省は一言もありません。 「改革」というなら、このような「大型開発優先」の区政から「区民のくらし優先」の区政へ転換し公共事業も生活密着型にきりかえてこそ「あかるい明日を展望できる」区民のための改革になるのではないでしょうか。
ところが鈴木区政は、すでに見破られた「財政赤字論」では、これ以上の住民犠牲の「行政改革」は進められないと判断し、新たに「足立区の構造改革戦略」として社会保障や保育、教育など制度そのものの役割を否定・変質させ、これまで出来なかったようないっそうの住民犠牲を進めようというのが事の本質です。 このことは「足立区の構造改革戦略」の位置づけの第一に、第三次行革大綱を含めて発展させた上位計画であるとしている点でも「戦略」の具体的内容やその「工程表」に福祉・教育などの一層の削減・・縮小が羅列されていることからみても明らかです。 日本共産党は、足立区が「小泉改革」に飛びついて、憲法に規定された住民自治と住民奉仕というあるべき自治体から逸脱し、踏み込んではならない領域に踏み込もうとしているのを黙って見過ごすわけにはいきません。 以下、鈴木区政の「構造改革」なるものの本質と実態を簡潔に検証し、これに対する日本共産党の大枠の対案を提起するものです。 ○ 生活保護世帯の増加 (区部第2位)
1、「構造改革」とは… 小泉流「構造改革」とは、第一にくらしを守る予算の削減と庶民増税です。 まず「構造改革」とは何か。一言でいえば、今までの「しくみを変える」ことです。今までのどの「しくみ」を変えるのか。小泉内閣の進める「構造改革」によれば、一つは政府の出すお金を今までより少なくすること(財政支出の削減)と、庶民の税金を増やすことです。 財政支出の削減では、もっぱら医療・福祉・教育にそのほこ先が向けられています。もちろん、このことは今に始まったものではありません。中曽根内閣のころから「行政改革」として進められてきたものです。 しかし「構造改革」では、これまでの単純な財政支出の削減は限界だということで、第一に国が責任を持つ部分を少なくして、その分を企業にゆだね、費用は国民に負担させる。介護保険などがその典型の一つです。 第二に、自己負担を重くして福祉や医療を受ける人を少なくするという、自己抑制をすすめるなど新たな手法をとっていることです。健康保険三割負担など、いま大問題になっている医療大改悪もその典型の一つです。 実際に、どれだけ政府の支出を減らしたのか「行政改革」時代も含めた1980年から1998年までの約20年間をとってみると以下のようになります。 ▼社会保障財源の割合の推移
公共事業費も削減するといっていますが、実際は増やしています。たとえば、2001年度第二次補正予算では借金を2兆5000億円増やし、それを全部、公共投資につぎ込み、その同じ日に閣議決定された2002年度予算案では、公共投資を1兆1000億円削減しました。つまり、見かけ上2002年度は公共投資を削減したかのように見せかけ、実際は差し引き1兆4000億円、前年度比13%も増額したのです。 税金では、今後、大企業の税金は安くするが、消費税の増税など庶民からはもっと取ろうというものです。法人税の軽減などを求める一方、庶民には課税最低限の引き下げ、消費税の増税(竹中大臣は14%を主張)などです。 第二は、企業の活動を縛っている「規制」は今後も取り払っていこうという「規制緩和」です。(政府は最近「規制改革」と呼んでいます) もちろん、国民の権利をしばっていたり、煩雑な行政手続を規定しているなどの規制は国民のために緩和すべきです。しかし、小泉「構造改革」のすすめる「規制緩和」とは、大型店の出店自由とか、食品検査の緩和とか、農産物の輸入自由化、働く人を守る労働条件の規制緩和など、その大部分が「企業活動の自由」のための「規制緩和」となっていることです。 そもそも「規制」とは、政府見解によれば「国民生活の安全や産業経済の健全な発展」をすすめるために必要なもの、となっています。 この日本の「規制」が、より大きな利潤を求めて海外に事業所を移転し、事業を展開する大企業にとって「邪魔もの」であり、これを取り除いて、もっと世界基準(グローバルスタンダード)に合わせろというのが日米大企業の要求です。小泉内閣は、この要求に沿って多方面にわたって「規制緩和」をすすめています。 その結果は弱肉強食の世界となり、大型店出店が野放しとなって区内小売商店(街)が激減し、高齢者の買い物などにも不便が広がっています。また、BSE(狂牛病)や雪印乳業事件、農薬漬け輸入食品なども、この「規制緩和」によって引き起こされ、文字通り国民の安全が脅かされています。さらに、不安定労働の促進や、保育所などの公的分野への企業の進出も、この「規制緩和」によって進められています。 もともと「構造改革」とは、専門家の間では「新自由主義改革」とよばれ、欧米諸国では1970年代の世界不況の時に、わがもの顔で台頭してきたものです。 その言い分はこうでした。「国家が福祉や教育を重視した政策をするために企業が高い税金を払わされている。また、安全な環境や生活とか、人間らしい労働を保障するために企業はがんじがらめになっている。企業からこの重い負担とか税金とか規制とかをなくさないかぎり、経済の不況は克服できない」と。 従って、その内容は大企業優遇、国民犠牲であったために国民から拒否され、大部分の国では国民によって政権が交代され失敗に終わっています。 日本では1980年代のはじめに中曽根首相が言いはじめ、橋本内閣の「六大改革」として動き始めましたが、大店法の廃止や消費税の増税、社会保障の削減などに手をつけたために、国民から総反撃を受け98年の参院選で惨敗して橋本内閣は倒されました。 以後、小渕・森内閣をへて、一気に「構造改革」をすすめる「急進派」としての小泉内閣が誕生したのです。 ![]() 「足立区の構造改革戦略」は、福祉・教育の削減・縮小「規制緩和」歓迎という基本点で、小泉「構造改革」と同じ立場に立つものです。 足立の鈴木区政も、この小泉内閣の当初の「人気」にあやかろうと、区民の福祉・教育削減を中心とした「足立区の構造改革戦略」をまとめ、短期間に一気にやろうとしています。しかも驚くべきことに、小泉内閣のすすめる「構造改革」がどうなろうと「足立区の構造改革戦略はすすめなければならない」としていることです。 小泉内閣の「構造改革」の内容が、国民への耐えがたい「痛みの押しつけ」であることが日々明らかになるにつれ小泉内閣の不支持率が支持率を上回り、すでに国民の信任を失っています。 この時、小泉「構造改革」と同じ立場に立つ「足立区の構造改革戦略」を、区民の批判がどうあれ「すすめなければならない」としていることは、初めから「区民の批判は受け付けない」という「宣言」であり、すでに国民の信任を失った小泉路線のうむを言わさぬ押しつけです。 鈴木区政は、政府の「構造改革」とは違うといっていますが、自治体に権限のない外交・軍事・・その他の分野を除いて、公共事業を温存しながら福祉や教育を削減の対象として区の財政支出を削減することや「規制緩和」を歓迎し、みずから進んで実行するなど、その考え方に「違い」はありません。 鈴木区政は、本来「住民の安全・福祉を守る」べき自治体が、小泉「改革」による国民への「痛み」の押しつけに、上乗せする形でいっそう区民のくらし・営業を苦しめようというのでしょうか。以下、その具体的内容を明らかにします。 2、「足立区の構造改革戦略」の具体的内容 足立区は「構造改革戦略」の内容を「区政の構造改革」「財政の構造改革」「社会の構造改革」の三つに分けています。 ところで何をどう「改革」するかは二つの面があります。一つは「区民のくらし・・営業」の施策・予算をいかに削るかのための「改革」であり、もう一つは不況・倒産・失業・社会保障の後退などにより、日々「生きる糧」を奪われている区民を区政がどう支え「安心の区政」をどう築くかの「改革」です。 日本共産党は、もちろん後者の立場にたって「足立区の構造改革戦略」を検討しました。 1)「区政の構造改革」の内容 第一に、トップダウン(上意下達)の徹底です。 そのために、区長と職員との「対話」、職員研修の従来以上の重視などによって、すべての職員に「構造改革」にそった意識改革を徹底し「先進事例の創造と発掘」「行政経営品質賞」の設置と結びついた足立区独自の降格制度や表彰制度の検討など職員同士を競争させる「アメとムチによる職員管理」、政策、事業の「構造改革」的評価制度の確立など、徹頭徹尾区の組織と職員を「構造改革」に総動員する内容となっています。これが区民生活をどこに導くかは明らかです。 例えば「先進事例」の一つとして、区民にうむを言わせず強行した学校統廃合や学校選択の自由化などの「教育改革」を上げていることから見ても「先進事例」とする内容がわかろうというものです。 第二に、予算削減のために「公営」から「民営」への移行、各種補助金の「構造改革」型への整理・削減、扶助費の抑制です。 今後、区が「直営」する事業については「常に廃止あるいは民間委託等の可能性を追求する」としています。保育所については、都の認可外保育所である「認証保育所」がすでに導入されていますが、公立保育所の「民営化」を加速させるとしています。 また「区民の利便のため抱えている不採算部門をどうするか」などの立場から、公社等の運営する各種施設も「民営化」を検討していく。 各種補助金については「期限の導入」(サンセット方式)とともに「構造改革」の促進に沿うものに整理していく。さらに生活保護、失業保険受給者には、稼働能力の活用など「自立促進」を強力に指導し、扶助費を抑制していくとしています。 しかし、これらによる区民サービスの削減は明らかです。認可外の「認証保育所」は、公立に比べて保育士(保母)の配置基準が低く、高額な保育料を徴収するために、いまだ定員に達していません。老人クラブ運営費補助の一律40%カットで、元気高齢者の負担が増し、解散する老人クラブが出ています。社会教育団体の施設使用料減免制度の廃止も、各団体に深刻な打撃を与えるなど、区民の暮らしを支えるどころかいっそう深刻な影響を与えています。 生活保護世帯への法外援護の打ち切りや、保護法の趣旨を無視した行政指導などが行われている中で「自立を促進」する確かな対策もないまま、扶助費の抑制(削減)だけは明記されています。 第三に、公共事業(計画事業)については、「指定事業」「非指定事業」など細かく分類し、そのほとんどを実施事業としています。 投資的経費や維持修繕費など巨額な費用負担を要することや、それへの批判も考慮して、いまある施設の廃止・・縮小を検討し、建設についてはPFIや外注(アウトソーシング)などの手法を使うとしていることも特徴です。 過去の豪華庁舎に象徴される「箱もの」行政こそ、足立区の「財政不健全化」の最大の要因であったにもかかわらず、その反省もなく、最近では、区民に明確に拒否された「ホテル建設」さえ議会の公式の場で明言していることは驚きです。結局、区民の暮らし・営業を支える予算を削って、大きな「計画事業」に区民の税金を注ぎ込む、元の区政に逆戻りではないでしょうか。今すぐそれほど区民の税金を使わないですむPFIや外注で、といっていますが、大型公共事業推進には変わりありません。 そもそもPFI(民間主導の公共事業)とは、これまで足立区がやってきた公共事業を、資金調達から建設、管理運営まで民間企業群にまかせる手法のことをいいます。 足立区はこれを「すべてを『官』が独占していいのか」「『民』ができることは『民』にまかせる」べきだなどと、もっともらしく言っていますが、要するに公共分野を民間の営利事業に開放することです。 本音は、これまでの大型公共事業優先の施策が、全国的にも膨大な借金を残して破綻したにもかかわらず、なおかつ都市再開発など大型事業をどんどんすすめたい。そのためにはPFI手法は、お金の調達も建設も民間企業群がやってくれるから、足立区は当面の予算を出さずにすむPFIこそ「魔法の杖」だというところにあります。 しかし、この手法には、公共性が担保できるか、リスクも背負い後年度負担が大きいこと、大企業主導とならざるを得ないことによる区内業者締め出しなど、様々な問題があります。これらのことを明らかにせずPFIを宣伝するのはきわめて危険と言わざるを得ません。 第四に、NPO(民間非営利組織)、ボランティアの「利用」です。 足立区は「構造改革」をすすめる重要な視点の一つとして「区民との協働」をあげ、企業、団体、NPOなどあらゆる力を結集して「協働」による「構造改革」をすすめるとしています。 しかし、NPOとかボランティアは、住民が自らの考え、判断で自主的に社会的活動をする団体で、行政の意向に関係なく、自主的、自発的に活動するところに本来の役割があります。行政とは対等・・平等であり、信頼関係を築くことが行政の役割ではないでしょうか。 足立区のNPO、ボランティアに対する態度は、みずから果たすべき責任を放棄し、その分をNPO、ボランティアに肩代わりさせるものであり、区としては「安上がり行政」の一端をNPO、ボランティアに担わせるものとなっています。しかも、最初から区民犠牲の「構造改革」を促進するという「枠」がはめられた上での「利用」です。 はたしてこれが、NPO、ボランティアの健全な育成・・発展につながるものでしょうか。きわめて疑問に感じるのは私達だけではないでしょう。
2)「財政の構造改革」の内容 最大の特徴は、福祉の「敵視と削減」が太く貫かれていることです。 「足立区は景気の低迷によって税収が減少する一方、福祉需要が急増するという構造的な問題点がある」として、「福祉の急増」を財政構造の問題点にあげ、「この」財政構造を「区政の構造改革」に合わせて「身の丈にあった」財政構造にする、としています。 そのうえで、これまでの福祉・教育の切捨て、公共料金の値上げ、施設・事業の民間委託など徹底した区民犠牲の「行革」を、「他の自治体に誇るべき一つの組織文化になっている」と天まで持ち上げ、今後も「サービスにかかる経費の削減=減量経営」を厳しく維持していくとしています。具体的には、前述した補助金等の再構築(削減)、自立促進による扶助費の抑制です。 しかし、「福祉の急増を財政の問題点として、これを『身の丈に合ったものに』する(削減する)」ということほど歪んだ視点はありません。 もともと、足立区財政の最大の構造的問題点は、日本共産党が事実にもとづいて再三立証・・指摘してきたように、古性区政(鈴木助役)時代の「財政力を大幅に上回る投資的経費の増大」(身の丈を上回る豪華な土木・建設事業=都市再開発)にあります。それを「福祉の増大」に求めているところに根本的・致命的な誤りがあります。 「福祉の増大」も、祝うべき長寿(高齢化)に対して、年金・医療・福祉など社会保障を削ったり、失業・倒産を政策的に急増させている小泉内閣の「構造改革」にあります。 鈴木区政もまた、介護保険の欠陥に対応できない低所得の人々の減免を拒否し「生活保護を受ければよい」と議会答弁を繰り返しているではありませんなか。 「福祉の急増」とは、国政、都政、区政の「悪政」の結果であり、憲法、地方自治法に規定された「人権保障」を厳しく守る「改革」こそが政府と鈴木区政の果たすべき責務ではないでしょうか。 前吉田区政は、福祉・・教育・・営業を守りながら、ホテル建設など大型開発事業を抑えつつ、財政再建の道のあることを事実で証明しました。 しかし、鈴木区政は「都市再開発事業は推進」、そのために「福祉を『身の丈』に合わせて削る」というのでは、区民犠牲の「逆立ち」財政を、「足立区の構造改革」としてすすめるものと言わざるをえません。 3)「社会の構造改革」の内容 足立区の社会というのは、区民の様々な歴史を経て、現在の社会が構成されてきました。 「社会の構造改革」というなら、現在の区を構成している社会のどこに問題があるのか、それをどういう方向へ、どういう手段で変えていくのか、憲法・地方自治法の本旨から、区がかかわる分野は何かなどに留めるべきではないでしょうか。 ところが今後は、自分の意志・力でみずから活動し、また他に働きかける「能動的市民社会」が重要になるから、自治体としての役割は「市場の育成や能動的動き」に対等の立場で支援し、「市場の持つ能動的機能がマイナスに働くような場面では補正を行う」としています。 また、今後の区民生活の方向は、基本構想を協働して創るなかで、区民自身に展望を持ってもらうとしています。 これも驚くべき暴論です。自治体には「住民のくらし・福祉をまもる」という自治法上定められた責務があります。ところが、今後の区民生活がどういう方向になるのかは、区民自身にまかせる。足立区は「市場の育成」(中小業者や一般区民のくらしや営業を守ってきた様々な規制をできるかぎり撤廃し、自由な競争の中で力のあるものが残り、力の弱いものは敗退するという弱肉強食の世界)や、力のある人を応援していく。しかし、この「仕組み」がうまくいかない時は、この「仕組み」の根本は変えず、多少の手直しをすることがこれからの足立区の仕事だというのです。 ここには憲法25条に規定された「人権保障」を、地域(自治体)で実施するという自覚も認識もなく、みずから小泉流「構造改革」の下請け機関への変質があるだけです。 こうしたことを前提に「社会の構造改革」が具体化されています。 第一に、子ども施策です。 ここでは、「開かれた学校づくり」協議会で授業診断、学校評価の実施。学校選択、「特色ある学校づくり」をすすめる中で、適正な競争原理を導入する。学校統廃合や「習熟度別授業」の実施が並べられています。 これらは、「競争」でなく「共同」による学校づくりを、「勝ち組」と「負け組」に分ける「習熟度別授業」ではなく、「すべての子どもに基礎学力の充実を」、学校統廃合による「多人数学級」ではなく「30人以下学級」の実現などという、多くの国民・区民の願いにそむくものです。 保育園の今後の方向は、社会福祉法人や企業との「協働」、保育ママの「活用」、公立保育園の「民営化」の促進となっています。 つまり、区みずから保育園を建設・運営する記述は一つもなく、すべて民間、企業に「おまかせ」で、はたして「良好な保育環境の維持」や「待機児解消」ができるのでしょうか。 また、子どもの「虐待」問題を重視し、「子ども家庭支援センターによるネットワーク」の創設、教育・・福祉・・衛生・地域振興部などとの横断的な連絡機構を設け、児童相談所やNPOなどと連携を取りながら積極的な解決にあたるとしています。 これは積極的な視点です。 しかし、肝心の教育・福祉・衛生など区民生活の土台に関わる分野を国・都とともに容赦なく切り捨ててきた流れとどう整合するのか問われています。 第二に、高齢社会施策です。 健康で明るい高齢社会をめざして「健康あだち21」運動の推進、元気高齢者の就業支援としてシルバー人材センターの充実、庭の草取り、大掃除、犬の散歩等を新たな「事業」としておこし、その事業主体を「シルバー会社」やNPOにまかせ、区はこれを支援するなどとしています。介護保険はこれまでの制度を変えずに、その「定着」と「安定的運用」をすすめる。 特別養護老人ホーム、老人保健施設、療養型病床群、グループホームは、民間主導で整備する。また、高齢者福祉サービスの利用者「満足度」を向上させるために、業者や利用者及びその家族の苦情を汲み上げる「仕組み」を充実し、サービス向上のために業者の自主的・・自立的な活動を支援するとしています。 さて、「健康で明るい高齢社会」をめざすとしていますが、そのためには疾病の早期発見・早期治療、すべての高齢者が充分な介護を受けられる制度と施設の充実、社会参加への支援などが必要です。 ところが今までやってきたのは何だったのでしょうか。 生活習慣病で医療を要する区民を、全ての検診から排除する区民検診の改悪がはかられ、病気の早期発見を遅らせ、悪化させる恐れのある仕組みが導入されました。介護保険の負担が重いため、保険料の未納や介護サービスの利用をみずから減らすなどの事態が広がっています。それなのに他区でも広がっている介護保険の保険料・利用料の負担を軽くする足立区独自の対策は「最後の一区になってもやらない」と公言する始末です。 ○介護保険の所得段階別第1号被保険者数の推移
その上、施設整備も民間任せで、この方針は今後も変えないと言っています。 元気高齢者のための老人クラブ運営費補助も一律四割も削ってしまうなど、「お年よりいじめ」とも言えることを平然と強行してきました。 何でこれで「健康で明るい高齢社会をめざす」といえるのでしょうか。言っていることと、やってることがアベコベではないでしょうか。 第三に、まちづくり施策です。 ここでは北千住、竹ノ塚駅前再開発の促進、日暮里・舎人線、常磐新線の建設促進と駅周辺整備、旧本庁舎跡利用の方針確立、既存の社会資本の有効活用などとなっています。 ここで注目すべきは旧本庁舎跡利用の問題です。 何をつくるかを、企業に提案させ、足立区がその中から最優秀案を決めましたが、この外、これまでの過程で提案された開発案についても、総合的に比較検討していくとしていることです。その中には「ホテル」や「千寿小学校(跡地)等との一体開発等」が入っています。 ホテル計画が、あれほど区民による明確な審判がくだっているにもかかわらず、「審判がくだったものとは考えていない」「ホテル建設を望む区民は多く、建設したい」との議会答弁につながっています。また、子どもと保護者、地域住民などの願いをふみにじって廃校を強行した「千寿小学校(跡地)との一体開発」となれば、巨額な税金が使われ、その「しわ寄せ」が、区民の生活・営業のさらなる削減となってあらわれる事は必至です。 第四に、電子自治体施策についてです。 電子自治体とは、電子情報を紙情報と同等に扱う行政のことです。政府はIT国家を目指すとしています。ITとは、インターネット、通信、コンピュータなど情報に関する技術のことで、利便性は高いが、問題も多く含んでいます。 国がきめた住民基本台帳ネットワークに基づき、全国どこでも住民票の届出ができ、発行もしてもらえるようになるというのが宣伝文句で、本人確認情報(氏名・住所・生年月日・性別及びその変更情報)が登録され、今年の8月、すべての区民に11桁の住民票コード番号が通知されます。やがて個人ごとに住民票カードを持たされますが、カードに入れる情報の内容によっては、個人のプライバシーが侵害される可能性も生じます。 国民総背番号制の実質的なスタートとなり、住民の個人情報をまもる自治体から提供する(流通させる)自治体になる懸念があります。 現在、個人情報保護の法律案が国会で審議されていますが、その内容には様々な問題点が指摘されており、この内容にもかかわってきます。また、経済的理由での機器の購入が出来ない人や、機器を使えない、いわゆる「情報弱者」対策も必要ではないでしょうか。 これからの区政の基本方向―日本共産党の提案 区民のための改革が必要です 「生活が苦しくなった」が7割以上−日本共産党の「区民アンケート」への回答の結果です。 そんな中でも、多くの区民は自立し、みずから律し、けんめいに生活や営業をしています。いまさら足立区に「自立」を押し付けられなくてもです。 ○区内倒産件数の推移
また、足立区に登録している社会教育団体(地域学習団体)だけでも952団体、その構成員3万6千人近くの人々が、趣味・娯楽・サークル・ボランティアなどで、人生をより豊かに送る様々な活動に多くの区民がたずさわっています。 しかし、政府の失政のために人生半ばで失業・・倒産で生きる糧を失い、あるいは病に倒れて、自分だけの努力では生きられない人々が増えていることも事実です。 区内倒産件数は、平成11年度81件から同13年度131件へ。生活保護世帯は平成11年度8225世帯から同13年度9565世帯へ。 小中学校の児童生徒のうち、就学援助を受けている数は、平成11年度1万3065人から同14年度1万6197人へ等となっています。(表参照) 区民はだれでも不安のない、より豊かな人生を求めています。この願いに応えるのが政治の大事な仕事です。 学習し活動する区民には、区有施設の有料化で困難を持ち込むのではなく、学習・・活動を保障する条件整備をすすめる。生活困難な区民には、福祉を削り「自立」を強要するのではなく、あらゆる手立てをつくして生存権を保障するなどです。 この立場から、以下「区民のための改革」(案)を提案します。 1 お金の使い方を「区民のくらし第一」に改革することです。 新たな借金を年100億円程度に抑え、それを上回る返済計画を実行しなければ、財政再建はできません。その上で、「区民のくらし・営業を守る」ことを予算の主役にすえ、たとえば介護保険料・利用料の減免、30人以下学級や損失補償付融資制度の実現など福祉、教育、産業振興の充実をすすめることです。 再開発、まちづくりなどを、大企業主導のPFIを中心にすえるのでは、区内業者の仕事確保にはなりません。公共事業は、「地域密着・生活型」が中心にすわるよう改革することです。 2 区民のくらし・営業をまもる規制は必要です。 労働基準法、食品衛生法や保育園の設置水準を下げないこと、有料老人ホームを劣悪な環境に置かないこと、高層マンション建設から住民環境を守ること、中小企業と商店を守り育てることなど、区民のくらし・営業を守るための「規制」は充実こそ必要です。 政府の「規制改革」がすすむ中でも、自治体としてあらゆる創意・工夫をこらして住民のくらし・営業をまもる最大限の努力をすることです。 同時に、区民とともにあらゆる場を通して「住民のくらし・・営業破壊」のための「規制改革」に反対の声と運動を広げることです。 3 「民営化」は「住民サービスの質と量を拡充できる」ことが前提です。 「不採算部門」であるかどうかは、「民営化」の基準にはなりません。本来、自治体の仕事とは、企業からみて採算に合わない部門を担当しているからです。「はじめに予算削減ありき」の「民営化」に住民の姿はなく、区のやるべき責任の放棄につながります。 「民営化」はまず、それぞれについて「住民サービスの質の向上と量を拡充できるか」を、区と区民の充分な議論と、その結論を尊重して決めることです。 4 職員研修は、憲法・地方自治を深める方向の充実に改革することです。 職員は住民犠牲の「構造改革戦略」徹底のための研修ではなく、全体の奉仕者として憲法・地方自治の趣旨を生かし、住民のくらし・営業を支えるために「何が出来るか」といった研修を充実することです。 また、職員同士の「競争」ではなく「共同」で区民のための仕事をすすめることです。 5 自主・独立のNPOの組織化や活動を支援することです。 ボランティア、NPOは、自主的、自発的に活動し、行政などからも独立している団体です。行政の下請け機関ではありません。 あらかじめ、住民犠牲の「構造改革戦略」をすすめる「協働」の相手方の一つとして、行政が「枠」をはめるのは正しくありません。自由・闊達に社会的活動をすすめる団体として、無条件に援助することが必要です。 |
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資料―構造改革戦略工程表 ※全部ではなく、いくつかの概要です。
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資料2 鈴木区政になってから、切捨て、切り下げられた区民施策の主なもの一覧
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