区長あいさつ

○鈴木恒年区長 平成16年第1回足立区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員の皆様には、ご多用中にもかかわらずご参集いただきまして、まことにありがとうございます。
 開会に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げます。
 昨年は区長二期目のスタートを切らせていただき、区政、財政の改革を進めるとともに、新しい基本構想の検討など社会の構造改革の具体化という次なる課題への挑戦を行う地歩を固めることができました。
 私はこれまでも、区議会の皆様のご理解とご協力をいただきながら、簡素で効率的な区政運営を目指し、行政評価制度や区政の透明化、包括予算制度など区政の改革に取り組むとともに、区民との協働や民間活力の活用も積極的に進めてまいりました。昨年は、行政内部に重点を置いたこれまでの改革から、構造改革特区をはじめ庁舎跡における民間企業とのパートナーシップ事業の具体化など、直接区民の皆さんに、その成果が及ぶ改革へと、その領域を広げることができたと思っております。
 平成16年度は、区民の皆さんのニーズをさらにしっかりと把握し、懸案であった課題に一つ一つ結果を出し、また、そのための目に見える取り組みをさらに前進させてまいります。
 さて、国においては、さまざまな規制改革や地域再生による雇用の拡大と経済活性化の具体策が検討され、また、いわゆる三位一体の改革の具体化も進められております。三位一体の改革につきましては、税源移譲に一定の道筋はつけたものの、依然不透明感がぬぐいきれない状況であります。国の一般会計予算総額は対前年度比1.5%の増と昨年度に引き続き前年度を上回っておりますが、国債費が4.6%と大きく伸びております。同時に発表された地方財政計画では、対前年度比1.8%の減と2年連続で減少し、東京都の一般会計予算においても対前年度比0.4%の減少となっており、引き続き厳しい財政状況にあります。
 こうした中で、当区の平成16年度予算は、行財政運営方針にお示ししましたように、「子ども施策」「高齢社会施策」「まちづくり施策」「都市型産業・雇用施策」「環境施策」「電子自治体施策」の六つの重点項目に「安全と安心」の視点を加え、「安心と明るい未来を育む予算」といたしました。
 区政運営や予算編成に当たっての基本的な考え方でありますが、平成14年度決算における経常収支比率は対前年度比5.4ポイント増の84.9%となり、景気の低迷による税収の落ち込みと少子・高齢化の進行による社会保障関係費の増加が、これまでの財政健全化の努力や成果を上回る厳しくかつ構造的な圧力となって財政の健全化を阻んでおります。国は景気の基調は着実に回復していると判断しておりますが、生活保護費に代表されます扶助費の増加や今後の小中学校等の大量な施設更新の到来を考え合わせますと、中期的観点からの財政運営が不可欠であります。このような観点から、数年先を見据えた取り組みを、可能な限り早い時期から始めなければならないと考えており、平成16年度をその初年度ととらえ、なお一層の財政の改革と施策、事業の見直しに取り組むことといたしました。
 平成16年度当初予算の規模でありますが、一般会計では2,121億円、前年度より11億円、0.5%の増となりました。これは減税補てん債の借り換えに伴う123億円の歳入・歳出の増加によるものであり、これを除きますと、対前年度比112億円、5.3%の減額となっております。義務的経費のうち扶助費につきましては、生活扶助費16億円の増、人件費は14億円の減となっております。また、投資的経費でありますが、前年度より143億円、44.2%の減となりました。その内容は公共施設整備用地購入費の減や北千住駅西口再開発事業の完了、また、足立区文化芸術劇場「シアター1010」の完成に伴うものであります。
 国民健康保険特別会計予算額は686億円で、対前年度比2.9%の増となりました。これは景気の動向を反映した被保険者数の増加や介護納付金の増によるものであります。
 介護保険特別会計予算額は246億円で、対前年度比5.3%の増となりました。これは介護保険サービス諸費の保険給付費の増などによるものであります。
 老人保健医療特別会計の予算額は445億円で、対前年度比4.7%の減となりました。これは対象年齢の段階的引き上げによる受給者数の減少などによるものであります。
 なお、用地特別会計につきましては、用地の買い戻しを終了したため廃止をさせていただきたいと考えております。
 以上、区全体の予算総額は3,498億円で、対前年度比1.0%の減となりました。
 次に、歳出予算の主要事業について説明をさせていただきます。
 第1は子ども施策についてであります。
 乳幼児医療費助成制度につきましては、これまで所得制限を段階的に撤廃してまいりましたが、平成16年度からは就学前のすべての乳幼児の保険診療が無料となります。また、子ども家庭支援センターを土曜日もオープンするとともに、新たに3カ所に子育てサロンを開設いたします。さらに、子どもを持つすべての家庭の支援策として訪問型一時保育事業を開始し、安心して子育てができる環境をつくります。
 保育の待機児解消につきましては、保育園の新設による定員拡大により約42名、認証保育所の増設、保育ママの増員などにより約95名の定員を拡大するとともに、認可保育園の定員の弾力化による対応も進め、待機児の解消を図ってまいります。また、休日保育や病後児保育といった特別保育をさらに充実させ、多様化した保育ニーズに的確に対応してまいります。
 学童保育室の待機児解消につきましては、新たに5カ所の学童保育室を開設するとともに、平成17年4月を目指しさらに6カ所、200名分の整備を行う予定であります。これによりまして、平成14年度より集中して財源配分をしてきた学童保育室の待機児解消策は対象学齢児童数の20%相当の定員確保という所期の目標を達成することになります。
 次に、教育関係では、4月から全校一斉に二期制を導入するとともに、子どもの基礎学力の向上、新たな教育の仕組みづくり、そして地域、家庭における教育力の向上のため学力向上推進会議を設置し、教育改革を進めてまいります。また、わかる授業を進めるため、平成16年度は区独自に採用する特別講師を40名配置し、平成18年度までの全校実施を目指します。さらに、サタデースクールや土曜事業の支援を引き続き行うとともに、小学校と中学校の連携、学校と地域の連携を強化するため中学校通学区域にも青少年委員を配置いたします。
 この4月には、幼稚園と保育園の機能を融合させたおおやた幼保園を開設し、幼児教育と家庭的保育を組み合わせた新しい保育を開始いたします。
 また、第一中学校並びに千寿桜堤中学校の完成を控え、約30億円を計上いたしました。
 第2は高齢社会施策についてであります。
 特別養護老人ホームの整備につきましては、平成19年度までに1,674床という整備目標達成に向けて、用地購入費の助成を行うとともに、新たに用地取得費の貸し付け制度を設けるなど、積極的な支援を行ってまいります。平成16年度は、新規施設の3カ所と既存施設の増床分についての助成を予算化してまいります。
 また、あんしんネットワーク事業の一環として、語らいパートナーや痴呆性高齢者を抱える家族の負担の軽減を図るためにやすらぎ支援員を派遣いたします。さらに、高齢者緊急通報システム事業に加え、火災安全システムを導入し、ひとり暮らしの高齢者等の安全を確保します。
 区民の皆さんの健康と健やかな老後を目指す健康あだち21につきましては、保健総合センターを中心として、区民の協働により地域に密着した事業展開を引き続き推進してまいります。平成16年度は、区民の受動喫煙防止のため、飲食店等への普及啓発活動を実施してまいります。また、従来の触診にかわってマンモグラフィによる乳がん検診の通年実施を行うとともに、新たに導入したレントゲンCR装置を活用した肺がん検診をモデル事業として実施してまいります。
〔議長退席、副議長着席〕
 第3は都市型産業・雇用施策についてであります。
 区内中小企業をめぐる経営環境は、依然厳しく、また、日々変化しております。こうした変化を踏まえ、産業プランの改定を行うとともに、足立区産業振興基本条例の見直しを進め、新しい変化に対応できる区内産業の活性化を目指します。あわせて、区の観光振興の目的や施策の基本的方向性を明らかにする基本計画を策定し、区民や事業者との協働による取り組みを行ってまいります。
 区内産業の振興と活性化を図るための中核施設である(仮称)あだち新産業振興センターの整備を推進するとともに、北千住駅前に設置した大型ビジョン「あだちシティビジョン」を通じて、区内産業の情報をはじめ観光、文化、地域情報等を映像により区内外に発信し、地域の活性化をさらに図ってまいります。
 雇用関係では、ハローワークや株式会社リクルートと連携し、人材ビジネスを活用した雇用創出特区事業を推進してまいります。若年層の失業率が高い当区におきましては、30歳未満の区民を対象に、人材育成を通じた失業率の改善を進めてまいります。また、緊急地域雇用創出特別補助金を活用し就職サポートスタッフ等による、区内企業案内の作成や求職者グループワーク、あだち就職支援セミナーなどを実施してまいります。さらに、足立区雇用促進協議会の活動を通じて、インターンシップ(短期就労体験)など、勤労観教育についても取り組んでまいります。
 第4はまちづくり施策についてであります。
 北千住駅西口再開発事業の竣工により、この4月に千住ミルディスT番館内に足立区文化芸術劇場がオープンいたします。この劇場は、足立区の文化力の向上と地域の活性化を目指した、区の文化芸術の拠点となる施設であり、本年9月から7カ月にわたる開館記念事業を展開し、区内外にアピールしてまいります。
 また、竹ノ塚駅西口南地区再開発事業につきましても、平成16年度末の完成を目指して、着実に推進してまいります。
 さらに、区内公共交通の充実及び沿線地域の活性化を図るため、日暮里・舎人線及びつくばエクスプレスの建設を引き続き促進いたします。二つの新線で5駅の駅前広場整備を推進してまいります。このほかの鉄道関連では、西新井駅に車いす対応型エレベーター3基を設置いたします。これで西新井駅のバリアフリー化が完了し、区内15駅中、エレベーター、エスカレーターの未設置駅は3駅となります。
 また、西新井駅西口周辺地区につきましては、防災都市づくり推進計画の重点地区としまして、災害に強く、良好な住環境を備えた町並みの実現に向けて、防災生活圏促進事業や密集市街地整備促進事業などを重点的に推進してまいります。
 佐野・六木地区及び上沼田南地区での土地区画整理事業も引き続き推進するとともに、都市計画道路整備事業として綾瀬車両基地立体交差事業や(仮称)新田・豊島橋の整備などを進めてまいります。
 第5は、環境施策についてであります。
 環境問題は多くの要因が複雑に影響し合っており、その解決のためには区民、事業者、行政が相互に協力、連携していかなければなりません。そこで、区民や事業者、NPO等が行う質の高い環境の創出を目指す先導的な活動を支援するため、足立区環境基金を創設し、活動のための経費を助成いたします。
 また、昨年度に引き続き、太陽光発電システム設置費助成事業を継続するとともに、区の管理施設に太陽光発電装置や風力発電装置を設置するなど、クリーンエネルギーの普及や環境教育への資源として活用してまいります。
 さらに、リサイクルの推進、普及啓発の強化に向け3R推進キャンペーンの実施やキッズISO事業を本格的に展開してまいります。
 第6は電子自治体施策についてであります。
 電子自治体の実現に向け、電子申請・電子調達システムの都区市町村共同開発・運営に参加するとともに、業務のアウトソーシングを進めてまいります。
 最後は安全と安心についてであります。
 安全と安心への区民要望は非常に高く、行財政運営方針でも特に配慮すべき事項といたしました。区内における犯罪の傾向は、日常生活に身近な犯罪が多いことに特徴があると言われており、区民、地域と一体となった区民運動として展開することが効果的であります。そこで、夜間パトロールの実施や地域防犯活動団体への助成金交付、防犯カメラの設置を希望する町会・自治会、商店街に対して設置経費の2分の1を助成するといった新規事業を進めます。区が管理する施設につきましても、治安・防犯上の観点から安全点検を徹底し、緊急性の高い問題箇所の改善を進めてまいります。
 また、防災意識の啓発や日ごろから安全な避難経路を確認できるよう防災マップを作成するとともに、災害備蓄品の更新に努めてまいります。
 交通安全についてでありますが、区内では自転車による事故が多く、平成14年中の交通事故負傷者のうち実に33%、全体の3分の1が自転車事故によるものであります。自転車の安全な乗り方、ルールをしっかりと身につけるため、小学生を対象とした自転車安全運転免許証事業をスタートいたします。
 さらに心身に障害のある方が地域で安心して住み続けられるよう、平成19年度開設を目指して、知的障害者入所更生施設及び身体障害者療護施設を整備してまいります。これは、東京都の「障害者地域生活支援緊急3カ年プラン」を活用する予定であり、旧学校用地を社会福祉法人に売却して民設民営で施設整備を図る方向で検討を進めてまいります。
 次に、平成15年度補正予算について申し上げます。
 今回ご審議いただきます補正予算は、一般会計が72億1,000万円余の増額補正であります。国民健康保険特別会計は7億8,000万円余の増額補正、介護保険特別会計は7億3,000万円余の増額補正、老人保健医療特別会計は5億2,000万円余の増額補正であります。用地特別会計は290万円余の減額補正であります。
 以上、平成16年度当初予算及び平成15年度補正予算につきましてご説明をさせていただきました。
 なお、今回ご提案申し上げます議案は42件、報告2件、諮問1件であります。各議案の提案趣旨につきましては参与よりご説明をいたさせますので、慎重にご審議の上、ご決定くださいますようお願いを申し上げます。
 終わりになりましたが、大きな転換点となります重要な年を乗り切り、21世紀への確固たる展望を開くためにも、区議会の皆様の一層のご理解とご協力を心よりお願いを申し上げまして、あいさつといたします。
 ありがとうございました。