3、可決された意見書・決議、及び日本共産党提出の意見書案 
湯河原区民保養所の契約事務等に関する調査特別委員会への日本共産党の意見開陳

 去る4月25日、公明党の忍足和雄元議員の逮捕により発覚した湯河原区民保養所の委託事業者選定事務をめぐる汚職事件について、わが党は、真相解明と再発防止に取り組むことは、区民の付託に応える議会の責任と言う立場から、百条委員会も提案し、本特別委員会にも臨んできました。この贈収賄事件については、すでに判決も下り、刑も確定しました。しかし、議会での調査は、刑法の犯罪にあたるかどうか、犯罪として成立するかどうかを問題とする裁判のための捜査とは違い、その背景になにがあったのか、事件に結びつく要因が、行政当局や議会の中に存在していなかったか、業者選定を巡る契約方法に問題はなかったのかなど、区政における問題点を解明するためのものです。この点ではいまだ解明されていない問題もあり、この委員会が終了したとしても更なる調査と対策が必要と考えます。
 その第一は、裁判の中で事件の全容はほぼ明らかにされましたが、委員会審議の中で、わが党が指摘した業者変更を決めた時期については、裁判でもふれられていませんでした。業者変更を区として意思決定した時期は、文書として残っていないため特定はできません。しかし、業務委託していた東京ケータリングに食事などの改善要求をしたのが平成15年7月17日であることと、平成15年8月5日に事業者変更をするための選考委員会の要綱を部長決定として制定したことから、この間に業者変更の意思決定をしたのではないかと推測できます。これは、現担当の部課長はもとより、助役も認めていることです。裁判では、忍足元議員が勇駒から請託を受けたのが、平成15年6月23日となっていますから、元部長は、忍足元議員からの働きかけを受けた後に事業者変更を決めたとしか考えられません。事業者変更が先にあったのではなく、勇駒のために事業者変更まで行って、忍足元議員の要請に応えようとしたと言うのが真相ではないでしょうか。元部長の犯罪と言う点では、守秘義務違反にとどまらず、区政を大きく捻じ曲げる不正行為を行ったと言わざるを得ません。
 委員会では、今回の事件に元部長が関与することになった理由の一つに、当時公明党が反対していたという千住区民事務所及び北千住サービスセンターの移転統合案件について反対を抑えようとした取引であったことも明らかになりました。議案でもない報告事項をめぐって、なぜこのような取引に応じたのか、勇駒を委託業者に選定するために業者変更まで行ったのかについてはまだ解明されていません。区は、平成13年に「自己進化する自治体を目指す」として「構造改革戦略」を打ち出し、庁内分権を進めるために部別包括予算制度などを導入したことにより、各部長の権限が急激に強化されたことにあるのではないでしょうか。予算、組織・定数、評価の権限が各部に委譲され、部長の責任と判断でさまざまな決定ができるようになると同時に、なにか問題にぶつかった時にも庁内全体で対応するのではなく自己責任、自己判断で対応しなければならず、各部の責任と判断がこれまで以上に強調されたことが、今回の事件を引き起こす大きな要因のひとつになったと考えます。この点についての改善策はまだありません。
 第二に契約の問題です。元部長が、忍足元議員の意を受け、勇駒を受託業者にするためには従来の競争入札制を廃止して、行政裁量の余地の大きい公募制(プロポーザル方式)を採用しようと考えたことに見られるように、契約における公正性、公平性の担保が重要になっています。行政裁量を加えることが出来ないようなしくみづくりや、恣意的な選考を排除するために選考委員に第三者を入れることも必要です。区はプロポーザル実施基準の見直しを行いましたが、応募企業の提案内容については非公開であり、提案内容が、契約後も実施されているかの検証も不十分な内容となっています。また、プロポーザルの提案内容については、本庁舎跡利用のプロポーザルのように公開することを前提に募集することや、提案内容の実行をモニタリングする仕組みを早急につくる必要があると考えます。また、裁判では、勇駒は、忍足元議員から湯河原保養所の契約がとれたことの報酬として300万円の賄賂を要求されましたが工面できず、区から委託契約金を受け取ったその中から300万円の賄賂を支払ったとされています。元部長が漏洩した適正価格とは、1億4500万円以上、1億5500万円未満であれば、満点の100点で評価されるということでした。勇駒は賄賂分を含んで上限に近い1億5435万円で契約していることを見れば、少なくても300万円の賄賂分はもっと安く契約できたのではないか、区民の税金を無駄に使ってしまったのではないか、区の示した価格が適正であったのかと言う問題もあります。
 第三に、忍足元議員、加賀美元部長以外に、この事件に関与した者はいなかったのかと言う問題です。我が党が委員会で指摘したように、例えば東京新聞が4月28日付で、まだ容疑者だった忍足元議員が逮捕容疑の200万円のほか昨年4月から8月にかけて、数回にわたって計数百万円を受け取って、一部を他の人に渡していたと言う報道の真相も解明されていません。また、プロポーザルの採点基準で問題になった地元業者への50点の加点についても、裁判では、30点と50点の二つの加点が用意され、勇駒を1位にするために50点を採用したとされ、選考委員の中でも加点の多さに疑問の声があり、事前に契約課と相談しているから問題ないといって正当化し、強引に選考を進めてきました。しかし、区内業者への加点については、当時の契約課長が、点数については記憶にないと答弁していることを見ると部長以外の職員に不公正な行動はなかったのかと断定することはできません。
 第四に、区は再発防止に取り組むコンプライアンス推進計画を発表しました。この中に公益通報制度がありますが、報道機関や、一般区民はその対象となっていません。この一般区民などからの通報は、これまでどおり区民の声や各所管で受け付けることになり、各所管が調査し、適切な措置を講ずるとされています。しかしこれでは、今回の事件のように権限のある所管の部長が事件に関わっているような場合は適切に対応することができません。第三者によるチェックできる仕組みがどうしても必要です。外部からの通報に対応するしくみが確立されていなければ再発を防止することはできないと考えます。
 最後に、議会の政治倫理検討委員会が開かれ具体的な検討が始まりますが、長年公務員として勤め上げてきた元部長が、このような事件に関与したことについての質疑の中で、「自民・公明の反対する案件は、報告事項といえども勝手にやったら一晩ともたない。助役からも議員等の間でトラブルを起こすなといわれている」「区長、助役の顔を見て仕事しないで議員の顔を見ながら仕事をしていると言うのが現実。筋の通る行政にあこがれてきたが、それは非常にトラブルのもとになるし、現実の問題として難しかった」と答えているように、議会と執行機関との関係での圧力とは何か、なにをどのように圧力と感じていたのかについてもさらに調査が必要と考えます。
 以上述べたとおり、まだ未解明の部分も多く、いまだ疑惑が解けたと言う状況ではありません。徹底解明することが真の再発防止につながることを指摘し、意見表明を終わります。

可決された意見書・決議

@都市計画税及び固定資産税の軽減措置の継続を求める意見書

 我が国の景気は回復の兆しが見られると言われているが、経営基盤の脆弱な個人企業者及び中小零細企業者にとっては未だに深刻な経営環境であり、本格的な景気の回復には至っていない。
 こうした中、東京都が実施している「小規模住宅用地にかかる都市計画税の軽減措置」、「小規模非住宅用地に対する固定資産税・都市計画税の減免措置」及び「負担水準が65%を超える商業地等の固定資産税・都市計画税の軽減措置」は、厳しい経営環境にある個人企業者及び中小零細企業者にとって、事業の継続や経営内容の健全化への大きな力添えとなっている。
 東京都が都財政を優先させ、これらの軽減措置を今年度限りで廃止することになれば、区民、個人企業者及び中小零細企業者の経済的、心理的影響は極めて大きく、景気に与える影響が強く危惧される。
 よって、足立区議会は東京都に対し、現在の景気状況における区民の税負担感に配慮し、下記事項を平成18年度以降も継続するよう強く求めるものである。



1  小規模住宅用地にかかる都市計画税の軽減措置
2  小規模非住宅用地に対する固定資産税・都市計画税の減免措置
3  負担水準が65%を超える商業地等の固定資産税・都市計画税の税額を、負担水準が65%の場合の税額まで軽減する措置
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
  平成  年  月  日
議  長  名
東京都知事  あ て

A構造計算書偽装問題の全容解明と再発防止等を求める意見書

 去る11月17日に国土交通省は、千葉県市川市の建築設計事務所が、マンション等の耐震性を示す「構造計算書」を偽装していたと発表した。 同省の調査では、偽装物件は建築基準法で必要とされる耐震基準の3割から7割程度の強度しかなく、震度5強で倒壊の恐れのあるマンション等もあり、被害住民はもとより、国民の不安と憤りは日ごとに高まっている。
 建築確認及び検査業務は、平成10年の建築基準法の改正に伴い、特定行政庁の建築主事に加えて、国土交通大臣又は都道府県知事の指定を受けた民間の指定確認検査機関も行えるようになった。
 一連の偽装問題は、国による指定確認検査機関への指導、監督が不十分なために発生したことは否めず、国の責任は極めて重大である。
 よって、足立区議会は政府に対し、構造計算書偽装問題の全容解明を徹底して行い、建築確認制度の早急な見直しなど再発防止に努めるとともに、被害住民に対する相談・支援体制の整備や生活支援など、実効性ある対策を講じるよう強く求めるものである。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
  平成  年  月  日
議  長  名
内閣総理大臣
国土交通大臣

B 改造エアガン対策の強化を求める意見書

 昨今、通行人や対向車両などに対して改造エアガンを発砲する事件が相次いで発生し、大きな社会問題となっている。エアガン自体は違法ではなく、所持も違法ではないが、改造により威力を増すことによって大変危険な「武器」、「凶器」となる。
 警察庁は事件の続発を受けて、10月11日、各都道府県警察等に対して、改造エアガンに対する取り締まりの強化等の通達を出しているが、単に警察による取り締まり強化のみならず、関連する業界団体による自主規制の強化、販売店等への指導強化等、多角的、総合的な対策を講じて、改造エアガンによる事件の再発防止に全力を挙げるべきである。
 よって、足立区議会は政府に対し、下記事項を実現するよう強く求めるものである。



1  インターネットにおけるサイバーパトロールを徹底して、改造エアガン、改造用の部品の販売等について取り締まりを強化すること。
2  前項に関連して、プロバイダーやサイト運営者に対して、改造エアガンの出品や情報提供に関する自主規制を促すこと。
3  玩具としてエアガンを扱っている業界団体に対して、改造防止のための自主規制等を行うよう求めること。
4  青少年への影響を考え、警察等から保護者等に対して、エアガンに関する広報を行うこと。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
  平成  年  月  日
議  長  名
内閣総理大臣
経済産業大臣      あ て
国家公安委員会委員長

議員提出第17号議案

C 子育て支援策の充実を求める意見書
 
 少子化対策が求められている今日、単に少子化への歯止めをかけることだけを目的とする支援策ではなく、親たちが子育てをしやすい社会を実現し、子どもたちが健康で生き生きと輝く社会を実現するための視点が重要である。
 子育ては、今や地域や社会全体で取り組むべき課題であり、東京都が子育てのための環境整備、子育て家庭への経済的支援など、子育て支援策を充実することが求められている。
 よって、足立区議会は東京都に対し、下記事項を実現するよう強く求めるものである。



1  乳幼児医療費助成の所得制限を撤廃するとともに、対象を小学生以上に拡大を図ること。
2  妊産婦健診に対する公的助成の拡大及び出産育児一時金の増額を図ること。
3  不妊治療に対しての公的支援を図ること。
  以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
  平成  年  月  日
議  長  名
東京都知事  あ て

可決・上程できなかった日本共産党提案の意見書案
@ 大企業・大資産家へのゆきすぎた減税を改め、能力に応じた負担を求める意見書(案)

 今、庶民大増税とともに、社会保障給付費を経済の伸び率以下に抑えないと、経済も財政も破綻するかのような議論が、政府からも財界からも行われている。2003年1月に、日本経団連が発表した「奥田ビジョン」では「法人税の更なる減税」「社会保険料の会社負担分をなくす」ことを要求する一方で、消費税は「段階的に引き上げて16%にする」、所得税も「各種控除制度を縮小・廃止する」などの庶民大増税を求めている。
 すでに法人3税は、経団連の要求に基づいて15年間に11兆7000億円も減税される一方で、国民の所得税・住民税の負担増が続いており、所得格差がいっそうすすんでいる。しかも、今、大企業は、バブル時代を上回る史上最高の利益をあげ、「企業の余剰資金」は2004年末で82兆円と空前の規模になっていると指摘もされている(民間シンクタンク調査)。産業再生法が施行されて以降、認定されたリストラ計画は372件、人員削減計画は99608人、企業への減税額は計、980億7500万円にものぼっている。このうえ法人税は減税し、その分、庶民に消費税、所得税の大増税を強いるのはあまりに理不尽である。
 さらに、大金持ち、特に株主・大資産家へのへの優遇もすすんでいる。所得税・住民税の最高税率が引き下げられ、庶民のなけなしの預貯金の利息にかかる税金は20%なのに、大資産家の年間何億円もの株式配当や譲渡所得にはわずか10%の税率しかかけられなくなった。こうした不公平は是正されるべきである。
 よって足立区議会は、大型公共事業や軍事費などの税金のムダ使いをやめるとともに、大企業・大資産家へのゆきすぎた減税をやめ、能力に応じた負担を求めることによって、財政を立てなおしながら、社会保障の充実をはじめ国民の切実な願いに応えていくことを求めるものである。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 平成 年月日           議長名

 内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、経済財政・金融担当大臣
 厚生労働大臣、衆議院議長、参議院議長   あて

A 日本外交の障害となっている政府閣僚の靖国神社参拝の
中止を求める意見書(案)

                              
 小泉首相は、10月17日秋の例大祭に合わせて、総理大臣として5回目の靖国神社に参拝し、国内外から厳しい批判があがり、予定されていた中国や韓国との首脳会談が中止になる等日本外交の障害になっている。また11月に開かれたAPEC(アジア太平洋経済会議)でも厳しい批判を受けた。さらに、麻生外務大臣が21日に米のテレビ番組でのインタビューで、靖国神社に付属する軍事博物館である遊就館の役割について「事実の展示」だけと侵略戦争を正しかったとする「使命」を肯定する発言が世界中に日本の侵略戦争を正当化している態度に批判を広げている。
 小泉首相や閣僚がどう弁解しようと靖国神社にある遊就館の役割は、侵略戦争の歴史を否定し、日本軍国主義の侵略を美化し、正当化する運動体のシンボルの役割を果たしている。この神社に参拝することは結果としてこの立場を支持していると解釈されることになる。
 第2次世界大戦後の国際的な出発点は、日本、ドイツ、イタリアが行った戦争が犯罪的な侵略戦争だったという共通の認識に立ち、国際紛争の解決の手段として武力によらない話し合いによる解決を多くの国が目指す立場を進めている。
 日本も現憲法に、この戦争による国民とアジアの国々への犠牲を強いた政治を反省し、政府の責任で二度と戦争はしないと国際社会に公約し、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持する決意と、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと誓った。
 2005年9月に国連創設60周年記念総会で、国連特別首脳会議の「成果文書」には、国連憲章の諸原則、国連の中心的役割、紛争の平和解決、多国間主義などを今日の国際関係を律する基本原則として確認した。さらに国際秩序の新たな担い手として、自主的な平和共同体の動きが東南アジア諸国連合(ASEAN)、南米諸国共同体、アフリカ連合(AU)など発展している。
 こうした国際的流れの中で、日本の閣僚が靖国参拝を続けていることは近隣のアジア諸国をはじめ、国際的な孤立を深め、国益を大きく損なう結果をもたらすだけである。
 よって足立区議会は、平和の国際関係を発展させ、経済の相互互恵を進め、アジアとの真の友好連帯を発展させる立場から、首相をはじめ政府全閣僚が靖国神社参拝を行わないことを強く求めるものである。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
    年 月 日
 議長名
内閣総理大臣・内閣官房長官・各国務大臣あて

B 国民に負担増を強いる医療制度改革に反対する意見書(案)

 厚生労働省はいま、「医療制度構造改革試案」をまとめ、短・中長期の計画をすすめようとしている。この「改革」の中心は、医療費の伸びを抑え、総枠に止める仕組みに作り変えることにある。これまで社会保障制度の柱の1つにとして国民が病気になった場合には、一定の負担で病気を治し、社会復帰をさせるという立場から国民皆保険制度として「安心」を保障してきた。しかし、この間02年10月老人医療費1割負担などの実施で、6割の高齢者が受診抑制(全国保険医団体連合会調べ)せざるを得ない事態が広がっている。
 今回の「改革試案」が実施されれば、高齢者を中心に医療にかかれない深刻な事態を招きかねない事態になる。
 第一に、後期高齢者を別立ての保険制度にし、75歳以上のすべての対象者から保険料を徴収する。負担は1割とする。70歳〜74歳までの人は原則2割負担、夫婦世帯で年収520万円以上の「現役世代並」の人は3割負担とする。入院した場合介護保険と同様にホテルコスト(部屋代・食事代)徴収する。          第二に、「保険免責」制度を導入し、必要な治療であっても保険が使えない仕組みを導入し、大幅な自己負担は必要になる制度にする。
 第三に、必要な医療はすべて保険でおこなうという公的医療保険原則を廃止し「混合診療」をかいきんすることである。
 こうした「医療構造改革」が実施されれば国民の命は「金」次第という深刻な事態になる。とりわけ年金所得の減、課税増、介護保険の負担増など高齢者に深刻な打撃となる。
 足立区議会は、国が社会保障制度としての医療制度を堅持し、お金の心配をしなくても安心して治療に専念できる仕組みを充実させる立場から「医療制度構造改革試案」を撤回し、自己負担を減らす真の改革を求めるものである。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 平成  年  月  日
議 長 名
 内閣総理大臣
 厚生労働大臣
 財務大臣     あ て
 衆議院議長
 参議院議長