8、付属資料
B 区長あいさつ
○鈴木恒年区長 平成18年第2回足立区議会定例会をご招集申し上げましたところ、議員の皆様方には、ご多用中にもかかわらずご参集をいただきまして、まことにありがとうございます。
 開会に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げます。
 初めに、竹ノ塚駅の鉄道立体化についてでありますが、私は昨年の第2回足立区議会定例会におきまして、「緊急の対応や抜本的な解決に向けて、最大限の努力を行う所存であります」と申し上げました。一連の緊急対応につきましては、本年3月9日の歩道橋の開設によりまして完了いたしましたが、抜本的な解決は鉄道立体化でしか達成できません。踏み切り事故から1年を経過した本年3月15日には、私も、ご遺族を初め、地元の関係者や議会の皆様とともに事故現場で献花と黙祷をさせていただきました。亡くなられたお二方のご冥福をお祈りするとともに、鉄道立体化の早期実現をお誓いいたしました。今後も、区民の方々、議会の皆様方とも力を合わせて、鉄道立体化を進めてまいりたいと思います。
 次に、「月刊文藝春秋4月号」を初めとする足立区についての一面的な報道についてでありますが、私は、努力した者、一生懸命頑張っている者が報われる社会であるべきだと思っております。そして、健全な社会を構築していく上で大事なことは、チャレンジしたが失敗した者、運悪く成果が報われない者、さまざまなハンディキャップを負っている者、このような方々が社会のセーフティネットによって救われ、チャレンジできる仕組みなのではないかと考えております。
 そのために、区は基本構想を柱として各分野の計画に基づき、さまざまな事業に取り組んでまいりました。雇用や年金などの専門相談員を活用した生活保護者の自立支援、若者の就労や自立を集中的に支援する「あだち若者サポートステーション」の開設、創業・改業、経営革新を支援するビジネス・チャレンジ事業や事業者の受注拡大につなげるアイデア提案事業など、区独自の施策も展開しております。また、4月には区内産業活性化の舞台となる「あだち産業センター」がオープンいたしました。今後も足立区民の生活水準の向上につながる施策を強力に推進してまいります。
 また、足立区のイメージを高めることにより、新たな区民を迎え入れていくことも重要な課題であると思っております。シアター1010、あだち産業芸術プラザに加えて、本年9月に開学予定の東京藝術大学千住キャンパスにより、千住地域には文化と芸術の施設が集積いたします。これらの施設、また、展開される事業との連携を深めまして、新しい文化を創造し、発信するまち「足立」を実現してまいります。こうしたことによって、区民の皆様と力を合わせ、まさしく「協働」により、理不尽で不当な報道や記事をはねのけていきたいと決意を新たにしたところであります。
 「足立区の家庭の経済格差が子どもたちの学力格差に直結しているのではないか」という報道もなされましたが、私は、足立の子どもたちは十分能力を持っていると思っております。もとより学力は、自立した一人の人間として力強く生きていくための力、いわゆる人間力の基礎的な部分を構成するものであります。平成18、19年度は、学校・家庭・地域の協働により子どもの教育にかかわるあらゆる力を結集し、人間力の育成につながる学力向上に取り組んでまいります。そのために、まず区単独経費でステップアップ講師を小・中学校に配置し、少人数指導等による「わかる授業」を計画的に実施するとともに、普通教室にエアコンを設置するなど、学習環境を整えてまいります。
 学習定着度と朝食の摂取については、相関関係が高いということが、教育委員会が行いました調査によっても明らかとなっております。朝食を含め食生活は大きく変化しており、「食」を大切にすることがおろそかにされたり、栄養の偏りによるさまざまな問題も生じています。そこで、本年5月に家庭・地域・行政の協働によって、未来を担う子どもたちの「食」を大切にする心を育て、合わせて大人自身も食生活を見直していく計画を策定するために、食育推進計画策定委員会を設置いたしました。食に関する正しい知識を選択する能力の習得、食の安全性への認識、食文化の継承など多面的に検討してまいります。学力向上は、教育委員会だけの取り組みではなく、さまざまなセクションの協働によって推進していく必要があると考えております。
 さて、昨年度、まちづくりの基本方針を定めた「都市計画マスタープラン」の改訂を行いました。また、「愛着を育み魅力を創る」を基本理念として「住宅マスタープラン」も改訂いたしました。本年度は「緑の基本計画」の見直しを行ってまいります。見直しに先立って行った平成16年度の緑の実態調査によりますと、足立区の緑被率は16.3%で、10年前の調査と比較し、わずかながら上昇をしております。緑は「潤い」や「心の豊かさ」をもたらすだけではなく、まちの景観の向上、地球温暖化やヒートアイランド現象の緩和に大きな役割を発揮いたします。持続可能で人と自然が共生するまちづくりの観点から見直しを行ってまいります。
 本年4月に策定しました「環境教育基本方針・実施計画」は、足立区における持続可能な社会実現のため、幾つかの重点プロジェクトを提示しております。その一つでありますが、4月から弥生小学校と古千谷小学校において、全国で初めての「循環型食品リサイクル事業」をモデル実施しております。これは、給食や家庭の生ごみを学校で減量化し、それをリサイクル施設で肥料にして、その肥料を使い農家で作った有機野菜を学校給食の食材の一部にするとともに、児童に食育、環境教育を行うという事業であります。ここでもキーワードは協働でありまして、学校、事業所、商店街、農家などとの協働により、このような先駆的な事業展開を進めてまいります。
 次に、本年3月に公表されました「首都直下地震による東京の被害想定」は、前回の平成9年度の想定と比較し、区内の震度6強の面積が大幅に拡大しており、深刻な被害が想定されているところであります。安全・安心は区民生活の根本であり、災害発生時の被害を最小限にするため、新たな被害想定に対応し、「足立区地域防災計画」の見直しを進めてまいります。また、これまで区民、区内事業者との協働により災害に強いまちづくりを進めてまいりましたが、大規模な災害が発生した場合、広域連携が不可欠であります。このことを踏まえ、9月1日に八都県市との合同総合防災訓練を区内4カ所の会場で実施いたします。
 次に、明るく活力ある高齢社会の構築についてであります。これからの10年は、総人口が減少していく中で、いわゆる団塊の世代が高齢者となり、平成27年には、我が国の国民の4人に1人は高齢者という超高齢社会になると言われております。このような状況を踏まえまして、3月には介護予防と高齢者の権利擁護を前面に押し出した「高齢者保健福祉計画」を策定いたしました。
 まず、25カ所の地域包括支援センターを中心に、新たに創設された地域支援事業と介護保険の予防給付のプランを適切に作成し、要介護状態の重度化を防止してまいります。
 次に、4月に施行されました「高齢者虐待防止法」には、通報義務、立ち入り調査権、警察の協力等が盛り込まれ、行政による積極的な虐待防止を行うことが可能となりました。これを踏まえて高齢者保健福祉計画では、虐待防止の手順を明示し、早期発見、通報、相談、措置の体制を確立いたしました。また、成年後見制度の活用も虐待の防止に有効な方法であります。身寄りがなく判断能力が不十分な高齢者の方々については、区長が家庭裁判所に成年後見の申し立てをするということになっております。足立区ではこれまでも区長申し立てを初めとする高齢者の権利擁護体制について、全国でもトップクラスの整備を行ってまいりました。今後も、高齢者の人権を守るために、積極的に対応をしてまいります。
 これから高齢者となる団塊の世代が単にサービスを享受する存在となるのか、それとも経験や知識を地域に還元する存在となるのか、このこといかんによっては、地域社会の有り様も大きく変化するのではないかと考えられます。区では今年度から3カ年「団塊世代の地域回帰推進事業」を行います。今年度は、区の中部及び南部地域を対象に、健康や趣味、また、仕事やネットワークづくりなどの内容の「地域ライフを楽しむ情報満載講座」等を開催してまいります。明るく活力ある高齢社会を実現するためには、区民との協働をさらに効果的なものにしていく必要があると考えております。
 そして区は、今まで述べてきたような教育や福祉、まちづくりなどに必要な財源を確保するため、さらなる行政改革に取り組んでまいります。したがって、今後の区政運営におきましては、職員のさらなる資質の向上が不可欠であります。そのために、昨年12月に足立区人材育成基本方針を策定いたしましたが、今年度はこれまで管理職を対象に行っておりました「目標による管理」の自己申告制度を全職員を対象に実施してまいります。私は、足立区の職員は優秀であり、これまでも自らの仕事について真摯に取り組んでいるものと自負しておりますが、これを契機にさらに職員の責任感が高まり、課題解決能力が身に付いていくのではないかと期待しております。
 また、4月から区議会の皆様のご賛同を得てコンプライアンス推進の一環であります「提言・要望等の記録の開示制度」と「公益通報制度」の運用を開始いたしました。区民や企業との協働を推進していく過程では、常に法令遵守を心掛ける必要があります。これらの制度を確実に運用することによりまして、区民の信頼を確保してまいります。
 最後に、今回ご提案申し上げました議案は14件、報告2件、諮問2件であります。各議案の提案趣旨につきましては、参与よりご説明をいたさせますので、慎重にご審議の上、ご決定くださいますようお願い申し上げまして、あいさつとさせていただきます。ありがとうございました。