5 意見書・決議など

【日本共産党提出の意見書案】

@自衛隊による違憲・違法な国民監視活動の中止を求める意見書(案)

 自衛隊の情報保全隊が国民のあらゆる活動を系統的に監視していたという事態が明らかになった。
 今回明らかになった文書は、陸上自衛隊・東北方面情報保全隊が作成した「情報資料について(通知)」と題するものと情報保全隊本部が作成した「イラク自衛隊派遣に対する国内勢力の反対動向」と題するものである。
 前者では、自衛隊のイラク派遣反対の活動を記載するとともに、「消費税増税反対」、「医療費負担の凍結・見直し」、「国民春闘」、「小林多喜二展」の取り組みなどが記載され、国民のあらゆる活動を監視下においていたことを浮き彫りにしている。後者では、情報保全隊が組織をあげてイラク派遣反対活動の監視に特別の体制をとっていたことを伺わせている。
 文書はいずれも「関係団体」「内容」「勢力等」や「個人名」まで記載し、監視、収集した国民運動を「民主党と連合系労働組合」、「日本共産党系」、「社会民主党系」などと勝手に区分することまでしている。映画監督や画家、写真家、ジャーナリストなどの動向も監視下におき、地方議会の活動までも監視対象にしているのである。
 これら情報保全隊の活動は、集会、結社及び言論、出版などの表現の自由を保障した憲法第21条、個人の尊厳、生命、自由・幸福追求の権利を保障した憲法第13条、信教の自由を保障した憲法第20条に違反することは明白である。
 また、自衛隊法にも根拠を持たない違法な活動であり、写真の隠し撮りなどは国民のプライバシーを侵害する犯罪行為である。
 武力を装備する集団である自衛隊が、政府の政策や自衛隊の活動に批判的な市民や政党の活動を監視していることは、民主政治の基礎を危うくさせる恐るべき事態である。旧日本軍の治安機関であった憲兵隊がやがて国民全体の監視機関となり、国民を弾圧する機関となった戦前の経験を彷彿させるものと言わなければならない。
 ことは自衛隊のイラク派遣に賛成か反対かなどという問題にかかわりなく、国民の自由と民主主義にかかわる問題であり、どんな理由をもうけようとも許されるものではない。
 よって、足立区議会は政府に対し、自衛隊情報保全隊の活動の全容を明らかにするとともに、違憲・違法な監視活動をただちに中止させる措置をとるよう求めるものである。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 平成  年  月  日
                   議  長  名
内閣総理大臣、防衛大臣  あて

A「消えた年金」問題を国の責任でただちに解決することを求める意見書(案)

 5千万件をこえる年金記録が「宙に浮き」、受給権消滅や年金減額の原因となっている「消えた年金」問題は、公的年金にたいする国民の信頼をゆるがす深刻な問題となっている。
 今回の問題は、保険料を納めてきた国民には何ら非がなく、ひとえに国に責任があることは言うまでもない。厚生労働省は、「宙に浮いた」年金記録の問題を十分に把握してきたにもかかわらず、抜本的な対策をとらなかったばかりか、国民年金については、問題解決に必要な台帳まで廃棄してしまったのである。政府、とりわけ歴代の厚生労働大臣の責任はきわめて重大である。
 政府は、問題の全容を国民の前に明らかにし、自らの責任と過失を認めて謝罪するとともに、年金記録紛失という被害にあった国民すべての年金受給権を守るためにあらゆる手段をつくすべきである。
 よって、足立区議会は国会及び政府に対し、国の責任で問題の解決をはかるため、下記事項の早期実現を強く求めるものである。


 無年金者も含め、すべての加入者、受給者に保険料の納付記録を直ちに送るなど、調査すること。
 「宙に浮いた」年金記録は、調査対象、方法を限定せず、統合できる可能性のある記録をすべて探し出し、その情報を本人に知らせること。
 年金記録が消失している被害者について、記録証拠なしでも状況証拠で解決すること。
 コンピューターの入力ミスをただすため、社会保険庁などが保管している手書き記録と徹底的につきあわせ修正すること。
 国民の身近な窓口で相談できるような特別の体制を、国の責任でただちにとること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
  平成  年  月  日
議  長  名
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣  
厚生労働大臣

B「後期高齢者医療制度について、高齢者の生活実態と意向に十分配慮した仕組みとすることを求める意見書」(案)

 後期高齢者医療制度が来年4月から導入されようとしている。制度によると75歳以上のすべての高齢者が、現在加入している国民健康保険や健康保険を脱退し、高齢者だけの独立保険に加入することになる。
 いままで家族の扶養となり保険料の負担がなかった人を含め、すべての後期高齢者が保険料を負担し、しかも大多数の人が年金から「天引き」されることになる。
 保険料は東京都後期高齢者医療広域連合で今年11月を目途に決められるが、厚生労働省の試算では平均月6,200円になるといわれている。介護保険料とあわせると月1万円を超える負担となる。
 いま高齢者は、老年者控除の廃止や年金課税の強化などで急激な負担増に見舞われている。この高齢者にさらに過酷な負担を負わせることになる。
 厚生労働大臣は国会答弁で、「天引き額が年金額の2分の1を超えないように配慮する」と述べたとのことだが、年金の半分が天引きされるという事態は、とても「配慮」などとは言えるものではない。
 しかも、従来75歳以上の高齢者からは、「保険証は取り上げない」とされてきたものを、この制度により保険料を払うことができない高齢者から保険証を取り上げ、短期保険証・資格証明証の発行が行われることになる。
 これらのことからしても、後期高齢者医療制度における保険料負担の軽減は喫緊の課題となっている。また、被保険者である高齢者の意思を制度の運営にきちんと反映させる仕組みをつくることも重要となっている。
 よって、足立区議会は東京都後期高齢者医療広域連合に対し、後期高齢者医療制度の発足にむけ、下記事項の実現を強く求めるものである。


 保険料の設定は、被保険者の所得・生活実態に応じたものとし、公費負担比率を引き上げることによりその軽減をはかること。
 短期保険証・資格証明証の発行は原則として行わないこと。
 国民健康保険制度にならい、「運営協議会」の設置など被保険者および都民が制度の運営に意思を反映できる仕組みをつくること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
  平成  年  月  日
議  長  名
東京都後期高齢者医療広域連合長 あて
C医師不足の解決と地域医療を守ることを求める意見書(案)

 地方でも都市でも、医師不足が重大な社会問題となるなか、大都市・首都東京でも、産科や小児科の廃止が深刻な事態にある。
 今日の医師不足には、さまざまな要因があるが、「医療費適正化」の名の下で医師数を抑制しつづけたこと、また、診療報酬の大幅な削減、国公立病院の統廃合などにより、地域の「医療崩壊」を加速している。
 これは政府の責任で緊急に解決すべき問題である。
 よって、足立区議会は国会及び政府に対し、深刻な医師不足を解決し、崩壊の危機にひんした地域医療体制を立て直すために、下記事項の早期実現を強く求めるものである。


 妊産婦・乳幼児の命と健康を守るために、産科・小児科確保の緊急対策を実施すること。公立病院・公的病院の産科・小児科切り捨てをやめること。産科・小児科の診療報酬を緊急に引き上げること。周産期医療の拠点づくりを国の責任で行い、医師と助産師の連携を支援する対策を推進すること。
 医師抑制を改め、医師を抜本的に増員すること。医療現場の実態を踏まえた計画的な増員を行うこと。とくに、医師不足が深刻な地域については医学部定員をただちに増やすとともに、地域枠・奨学金などで地域への定着を図ること。
 勤務医が安心して働ける環境を整備し、医療の安全・安心を高めること。看護師・スタッフの増員など、勤務医の過重負担を軽減する支援策を講じること。女性医師の働く環境の整備、家庭生活との両立支援を行うこと。医療事故に対応する第三者機関・無過失補償制度を創設すること。
 診療報酬の総額削減路線を改め、高薬価や高額医療機器の実態にもメスを入れつつ、医療の質と安全の向上、医療従事者の労働条件の改善、地域医療の支援など、必要な分野を増額する診療報酬の改革を進めること。公的保険・公的医療の拡充で、地域医療を立て直すこと。公的病院は地域医療・住民福祉の拠点として必要な予算を確保すること。
 不足地域・診療科への医師の派遣と確保に国が責任を果たし、全国的な医師派遣システムを確立して、都道府県の取り組みに対して財政支援すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
  平成  年  月  日
議  長  名
衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、厚生労働大臣

D都営住宅の使用承継制度の変更を延期し、見直しを求める意見書(案)

 これまで都営住宅の使用承継は3親等親族(親、子、祖父母、孫、兄弟姉妹、おじ、おば、おい、めい等)に許可されてきた。そもそも、同居できる親族は所得制限など条件にあった者のみであり、当然、使用承継できる状況にある。
 昨年8月、東京都は多くの都民の反対にもかかわらず、都営住宅の使用承継を、原則配偶者に限定する規則改定を行った。
 同規則はこの8月25日に施行されるもので、すでに各都営住宅には「名義を承継できるのは名義人の配偶者のみとなります」との通知をした。
 足立区には33,074戸の都営住宅と535戸の区営住宅があり、影響を受ける。高齢化も進んでおり、不安の声がうずまいている。
「愛の手帳3度の娘と暮らしている。東京都に問い合わせをしたら障害が軽いから承継は出来ないといわれた。娘はどこで暮らせというのか」「親の介護のために仕事をやめ、やっと同居が認められた。親が亡くなった後たった6ヶ月以内で就職をして生活する見通しはもてない」など悲痛な声が多数寄せられている。
 国土交通省は、2005年12月、各都道府県に対し公営住宅に関する「運用指針」を通知したが、実施するかどうかは各都道府県で決めることであり義務化ではない≠ニしている。すでに京都府は従来どおりにするとしている。
 足立区民に大きな影響をおよぼす制度変更の実施を延期して、区民の声を聞き、見直しをすべきである。
 よって、足立区議会は東京都に対し、区民に大きな影響をおよぼす制度の変更の実施を延期して、区民の声を聞き、見直しをするよう強く求めるものである。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
 平成  年  月  日
                   議  長  名
東京都知事 あて