8 付属資料 A区長挨拶(6月28日) |
○近藤やよい区長 平成19年第2回足立区議会定例会をご招集申し上げましたところ、ご参集いただきまして、まことにありがとうございます。 開会に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げますとともに、所信の一端を申し述べさせていただきます。 初めに、このたびの選挙戦におきまして、ご推薦を賜りました自由民主党、公明党、民主党の皆様、並びに各種団体、区民の皆様に対しまして、心より御礼を申し上げます。 議会と執行機関は車の両輪に例えられるところですが、区民の代表として選出されました50名の区議会議員の皆様方とご一緒に、今後4年間、足立区を力強く望ましい方向に発展させる原動力として、ともに働けますことは無上の喜びでございます。何とぞよろしくご指導、ご協力いただきますようお願いを申し上げます。 次に、最近の地方自治をめぐる議論の動向でございますが、地方間の格差是正をにしきの御旗として、ふるさと納税制度なる議論が声高となっております。人口構成や個人の所得格差、企業の集積の偏在によって必然的に生じる個人や地域間の問題が、意図的に地方と大都市、とりわけ23区を中心とする東京のみを強者とし、それ以外の多くの地方都市を弱者とするがごときの世論誘導が行われております。本来であれば、地方格差を是正するための制度である地方交付税を充実しながら国の税源地方に移譲する、そして、あわせて権限と責任分担を明確にする、そういった議論と行動が必要ではないでしょうか。 東京都の石原知事を初め、特別区長会では、この問題に対しては、断固として反対する姿勢を明確にしております。これは、東京に住み、そして暮らすすべての方々と心を一つにして対応する必要がある極めて大きな問題でございます。受益と負担という税制の原理をねじ曲げてまで、国がこれを強行しようとするのであれば、区議会を初め、区民の皆様と協働して反対姿勢を貫く覚悟でございます。 また、「都区のあり方検討委員会」の議論では、特別区の再編を含む区域のあり方についても検討の俎上に上がっております。歳入の多くを都区財政調整交付金に依存している足立区の現況下においては、都区のあり方、国を含めた地方制度改革、そして税制の動向など、さまざまな状況を総合的に分析判断し、区民生活がどのようになっていくのかを常にシミュレーションして、最適な対応策を迅速に展開していくことが必要です。このことは、区民の理解と協力がなければできません。そのためには、職員定数の適正化などの行政改革はむろんですが、特に財政に関する状況を区民にわかりやすく開示することが欠かせません。できる限り早いうちに、発生主義会計に基づく本格的な財務諸表を作成・公表いたします。 同時に、財政健全化法の成立を受けまして、校舎や第三セクターを含めた連結ベースでの資産や負債など、区の財政状況をつまびらかにすることにより、区民との協働を一層強固なものとしながら、職員のコスト意識を喚起し、他の自治体は無論のこと、先進の民間企業にも負けない、より効率的な行政運営を実現してまいります。 さて、このところ政治や行政に対する国民の信頼を根底から揺るがすような事件が相次いでおります。一つは、社会保険庁による年金記録不備を原因とする年金制度に対しての、もう一つは、コムスンの不正問題による介護保険制度に対しての不安感であります。 区長といたしまして、それぞれの所管部に対して、早急に状況を把握するとともに、区民の皆様に対する最大限の支援策を検討するよう指示したところでございます。とりわけ、 コムスンのサービスを受けられている約500名の区内の利用者につきましては、今後も安心して介護サービスが受けられるように対処すること、また、不正な請求が日常化していたとの報道もありますので、断固として不正は許さない対応を行うよう指示いたしました。 一部の人間の信じられないようなミスや行動が、政治や行政の全体に対する国民の強い不信感となって地方行政にまで降りかかることは心外でございます。区は一層のコンプライアンスの徹底に努めてまいりますと同時に、区長交際費につきましても、全面公開するだけでなく、その使途につきましても改めて検討してまいります。 次に、マニフェストについてでありますが、議員の皆様もよくご存じのとおり、今回の区長選は、地方の首長選挙におきまして、マニフェストの配布が許された初めての選挙でありました。そのため、私も区民の皆様やマスコミから、その実現について多くの質問をいただきました。このたびのマニフェストは、抽象的な公約ではなく、有権者と私の具体的なお約束であり、この実現は今後4年間、区長として私に課せられた大きな使命の一つでもございます。 そこで、25項目の具体的な内容につきまして、それぞれの担当所管の責任者にインナーマニフェストの作成を指示したところございます。マニフェストが有権者と私のお約束であるのに対して、インナーマニフェストは、担当所管と私の約束です。項目ごとに目標・目的を共有し、責任を明確にしながら、早期の実現を図るものです。その上で準備できましたものから、順次区議会にご提案させていただきます。 既に本定例会に提出ております義務教育終了までの医療費の無料化のための議案を初め、早い段階で実現可能な項目や、4年間かけて段階的に実現を図っていく項目などいろいろございます。それぞれの実現の道筋や課題を公表し、行政のプロセスの透明化を図り、全力を挙げて取り組んでまいります。 次に、安全と安心のまちづくりでございますが、鈴木区政2期8年におきまして、都市基盤や交通網は飛躍的に充実いたしました。しかし、残念ながら木造密集市街地や緊急自動車の通行も困難な細い街路など、課題も残っております。 先般は千住地域におきまして、とうとい人命と多くの財産が消失する痛ましい火災が発生し、このような災害に対する脆弱性があらわとなりました。被災された方々には、心より哀悼の意を表するとともに、お見舞い申し上げたいと存じます。 また、2年前、踏み切り事故が起こり、お二人の区民がお亡くなりになった竹ノ塚駅付近の鉄道高架化も大きな課題でございます。 こうした点からも、ぜひとも安全で安心できるまちづくりを力強く推進しなければならないと考えます。このためにも、歳出構造を見直し、都区財政調整制度で算定されている程度の都市基盤整備に対する投資は行っていくべきと考えます。 また、区長選挙期間中、大変残念なニュースが入ってまいりました。本年1月から3月までの刑法犯の発生件数ですが、この足立区が23区中ワーストワンとなったというものです。人口割にすれば23区中8位となりますが、区民の安全や治安に対する不安感を思えば、看過できるものではありません。 実際、地域においては、お年寄りや幼い子どもが被害者となるなど、安全と治安が脅かされる事件が少なからず発生しています。もちろん治安の維持・回復は、単に警察頼みで実現するものではなく、区としても青色回転灯パトロールカーの導入など、積極的な取り組みを開始しているところでございます。「協働で築く力強い足立区の実現」の一つのモデルケースとして、町会・自治会はもとより、PTAなどさまざまな団体と幅広く連携を強化しているところですが、残念ながら、その取り組み状況にも地域で温度差があるのも現実です。 そこで、区長みずからが、区民の皆様との対話を充実し、協働の必要性を強く訴えること、いわば「協働のトップセールス」を行ってまいります。さらに、区政の最前線を担うさまざまな職域、職層の職員に対しましても、広く対話する機会を充実してまいります。 また、こうした区民の皆様との直接対話のほか、記者会見の定例化など、みずから区のスポークスパーソンとして、区政にかかわる情報の積極的な提供に努めてまいります。 区民の危機への対応は、あらゆる分野で想定する必要があります。公衆衛生の分野におきましても、本年3月以降、東京都を初めとする関東地方で「はしか」が大流行いたしました。区といたしましては、各保健総合センターで麻疹ウイルス抗体検査を実施するとともに、区内契約医療機関で、全額公費負担により2歳から中学生までの児童に予防接種を始めたところでございます。このたびは「はしか」の流行ということでありましたが、過去にはO−157、ノロウイルスなどの流行も経験したところであります。大規模な感染症の流行は、今後も想定されることから、庁内の危機管理体制を一層整備し、関係機関と連携することによって、区民の健康被害を最小限にとどめる取り組みを強化してまいります。 また、0歳から後期高齢者までの予防に重点を置いた施策を強化し、区民の皆様の健康づくりを図ってまいります。 次に、区民の生活水準の向上についてでございますが、足立区は23区全体の約19%を占める都営住宅が存在し、生活保護を初めとする福祉需要も抜きん出ております。さらに、財政構造を見ますと、区税収入は歳入の20%弱にとどまる一方、歳入の多くを都区財政調整交付金に依存するという、極めていびつな構造となっております。 このような構造を改革していくためには、商店街や区内産業の支援はもとより、創業や改業のバックアップを強化することで、足立区の産業の底上げを図り、「創業するなら足立区で」、この言葉が広く認知されるよう進めながら、足立区民の生活水準の向上に努めてまいります。 また、つくばエクスプレスや来年開業予定の日暮里・舎人ライナーなど、進みつつある交通網の充実を契機として、足立区のイメージアップを図り、新たな区民を迎え入れていくことにも強力に推進してまいります。 次に、行政改革でございますが、足立区はかねてより積極的に行政改革に取り組み、職員1人が担当する区民の数は約170人と、23区中トップの数字となっております。しかしながら、いままで申し上げました状況をかんがみれば、これでよしとするわけにはいきません。鈴木前区長が手がけられた行政改革、区政の構造改革をさらに前進させるとともに、規制改革や特区などの新しい取り組みに果敢にチャレンジし、他の自治体経営の範となるよう努力してまいります。そのため、私を補佐する副区長の1人に経営・行政改革担当という特命を与え、全体的な調整を図ってまいります。 次に、教育と環境の問題でございますが、青年会議所主催の区長立候補予定者による公開討論会の最後に、高校生から「足立区は近接する周辺地区とともにどのような役割を担っていくべきか。23区の中で今後どのような存在となっていくべきと考えますか」との質問がありました。みずからのことばかりで四苦八苦するのではなく、新しい足立区の今後を考えていく上で、非常に示唆に富んだ鋭い質問と感じました。 周辺区として、厳しい現実に立ち向かわざるを得ない足立区が、自信と希望を持って、「誇れるふるさと」と呼べる足立区として生まれ変わっていくかぎは、まずは、教育と環境であると私は考えます。 人生を生き抜いていくための学力の向上は必要であります。しかし仮に学力に自信を持てない子どもであっても、自分の居場所を発見したり、また、みずからに対する価値を見出し、将来に希望が持てるよう、きめ細やかな対応を行う必要があります。そこで、子ども政策を総合的に推進していくため、子ども・家庭担当の副区長を置いてまいります。 私自身、子ども時代を振り返って思い出すのは、友人と駆け回った花の咲き乱れた土手や、びしゃびしゃ水をかけて遊んだ公園なと、自然とのかかわりの中の風景であり、決して高層ビル群や大型幹線道路の風景ではありません。足立で育って、足立をふるさととする子どもたちに対して、その思い出とともによみがえる美しい風景を一つでも多く残しておきたい、また、つくり出したいと考えております。そのためには、川に囲まれた区の特性を生かして、水辺空間の整備や健康遊具などがそろった個性的な公園づくりなど、休日に個人や家族がそろって憩える場所の創出に努めてまいります。 また、本年度中に策定を予定しております第二次足立区環境基本計画の中に、CO2 やさまざまなごみの削減目標など、庁内はもとより、消費者、事業者に対しても具体的数値を盛り込むことで、持続可能な社会の構築のために取り組む先駆的な自治体としての姿勢を示してまいりたいと考えております。環境が経済とのトレードオフだった時代は既に過去であり、現在は環境に対する意識が文化のバロメーターの一つとも言えます。この分野におきましても、協働の意識を強く持って、区民参加型の環境行政を力強く推進してまいります。 私は、これまで申し上げてまいりました取り組みを通じて、「幸せを実感できるまち足立」の実現を目指していく決意でございます。ご協力いただけるすべての方々の英知を結集し、その先頭に立って、各種施策の推進に誠心誠意努力してまいる所存でございます。改めまして、区民の皆様、並びに議員各位のご理解とご協力を心からお願い申し上げ、私の所信といたします。 次に、補正予算案につきましてご説明申し上げます。 平成19年度予算は、包括予算制度のもと、年間の財政運営を見通した総合予算として編成されたものでございますが、小学校1年生から中学校3年生までの児童に係る通院医療費の自己負担分を、本年10月から全額助成するため、子ども医療費助成事業につきまして補正計上することといたしました。ご審議いただきます一般会計補正予算は、2億3,800万円余の増額補正でございます。 今回ご提案申し上げました議案は11件、報告2件、諮問1件でございます。各議案の提案趣旨につきましては参与より説明をいたさせますので、慎重に審議の上、ご決定くださいますようお願いを申し上げます。 (7月10日) 〇近藤弥生区長 本定例会におきましては、多数の重要な案件につき、慎重なご審議の上、ご決定をいただきまして、まことにありがとうございました。 本会議並びに各委員会を通じて承りました貴重なご意見、ご要望につきましては、十分その意を体し、区政進展のため努力してまいります。 また、本日は副区長並びに教育委員会委員の任命につきまして、ご同意をいただき、重ねて御礼を申し上げます。 さて、大変残念なことに、本会期中に足立区に関する2つの事件がマスコミを賑わしました。事件の内容につきましては、ここでの説明は省かせていただきますが、この2つの事件を通じて、私が痛感いたしましたのは、スピード感の欠如と説明責任を十分に果たそうとしない役所の体質です。事件そのものもそうですが、事件の処理、発覚後の対応のまずさが新たな火種を生むこと、テレビや新聞などは、広報紙よりも早く細かく区民に情報を伝えることのできる貴重な手段であるという意識や危機感が全く感じられませんでした。このことは区長である私も含めて猛省をする必要があることはもちろんですが、その根本的な原因が役所の体質や土壌にあるとするならば、それを徹底的に変えていくことが私の使命と考えております。臭いものにはふた、事なかれ主義、異論も議論も許されない職場ではなく、もっと風通しのよい区役所をつくっていくために全力を尽くしてまいります。 また、区長を矢面に立たせないことが組織の責任と考えていた職員も多いと聞いておりますが、私には行政のトップとして、常に自分の口から真実を語らなければならない責任があります。それにより降りかかってくるさまざまな火の粉を恐れず、逃げず、正面からぶつかっていく覚悟でございます。ですから、副区長を初め教育長、職員全体に私のそうした姿勢を今後ことあるごとにメッセージとして発信し、理解を求め、支えていただけるよう心を砕いてまいります。 議員各位におかれましては、一連の事件に関し、いろいろとご心配をおかけいたしました。改めてお詫び申し上げますとともに、今後このような事態を起こさぬよう、職員一同一丸となって組織改革、意識改革に取り組んでまいります。ご理解、ご協力をお願い申し上げまして閉会のごあいさつとさせていただきます。 |
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