5、定数削減問題に関して

区議会議員定数削減条例に対する本会議討論
3月27日 ぬかが和子議員

議員定数の削減「足立区の議員数は本当に多いのでしょうか?」
―与党が5名削減を強行―


○ ぬかが和子議員 ただいま議題となりました議員提出第8号議案、足立区議会議員の定数条例の一部を改正する条例について、日本共産党区議団を代表して反対討論を行います。

法定の定数は56名→45名に削減
 地方自治法第91条に、議員の定数についての定めがあり、人口64万人の足立区の法定数は56人です。今回、提案された5名を削減すると、足立区の定数は現在の50人から45人となり、法定数よりも11人も下回ります。

異例中の異例な強行採決
 区議会では議会改革について、議会のあり方検討会で議論を行い、その中で定数削減については、意見の一致を見ませんでした。議会のあり方検討会は、区民には完全非公開であり、議会運営委員会に報告されて初めて区民の目に見えるガラス張りの状況で議論されるはずでした。しかし、昨日行われた議会運営委員会では、議員定数問題は、このあり方検討会の結果が報告すらされていない段階で、突如議案として提出されました。
 私たちは、このような重大な問題について、正式な委員会に付託をして、区民も傍聴できる条件のもとで十分に議論することを求めました。他の議会では、地方自治法に規定されている議会運営委員会や特別委員会を設置して議論をしているのが常です。しかし、昨日はそれすら拒否をし、本日まで十分な説明もなく、ただいまの質疑への答弁でも、なぜ5名減らすのか、その根拠もあいまいなままで議案提出をした翌日に採決を強行するというのは異例中の異例であり、決して認められるものではありません。

区民と行政をつなぐパイプを細める
 議員定数問題は、地方政治における民主主義の基本問題です。地方自治体は国の議院内閣制と大きく異なり、執行機関である首長と議事機関である議会の議員を住民の直接選挙で選ぶ二元代表制をとっており、それぞれ独自の権限と役割を持っています。地方議会の基本的役割は、大きく分けて住民の声を代弁し、住民の意思を代表する区政と区民をつなぐパイプ役としての役割、区政をチェックし、執行機関に対する批判・監視する役割、条例を立案し、定める役割があります。住民自治の発揮という意味でも、議会の基本的役割と機能は強めるべきと考えます。そのためには、議員の数は一定程度確保されていなければならず、議員定数の削減は、この議会制民主主義の重要な役割を弱め、区民と行政をつなぐパイプを細めるものです。
 先ほど行われた提案理由の説明では「地方公共団体の一機関として、常にその組織と運営の合理化に努めることは当然」と述べられましたが、議員定数削減を行財政改革の対象として議論することには大きな問題があります。

「議員定数は議会の審議能力、住民意思の適正な反映を確保することを基本とすべき(全国都道府県議長会)」
 2005年3月に全国都道府県議長会が出した「都道府県議会制度研究会中間報告」では、こう指摘しています。「議会は地域における政治の機関であり、行政体制の一部ではない。したがって、議員定数の問題は、単に行政の簡素合理化と同じ観点からのみ論ずる問題ではない。議員定数は議会の審議能力、住民意思の適正な反映を確保することを基本とすべきであり、議会の役割がますます重要になっている現状においては、単純な定数の一律削減論は適当ではない。また、競って定数削減を行うことは、地域における少数意見を排除することになりかねない点にも留意すべきである」と警鐘を鳴らしているのです。
 行革の一環として、議員の定数削減を他の区と競い合い「少ない方がよりよい」とする論は、突き詰めれば「議会は必要ない」と、みずからの存在を否定していくことになりかねません。

他に直ちにやることはたくさんあるー本当に行革のため?自らの報酬は削減しない与党の姿勢
 議会の効率化や経費節減が必要だというのなら、ほかに直ちにやるべきことはたくさんあります。この定数削減は、次の区議会議員選挙が行われる3年後に実施されるものですが、我が党が再三にわたって提起してきた費用弁償や報酬の削減などは、3年後を待たずに、やる気になればすぐにできるものです。これらについては、議会のあり方検討会でも十分な議論もされずに実施を見送り、定数の削減だけを強行し、区民と区政とのパイプを細くすることが、真に議会の活性化や効率化を目指す姿勢と言えるのでしょうか。

人口14000人に一人の議員に
 住民の意思を正確に反映するためには、直接民主主義がありますが、現代の民主主義のあり方の優れた一つの知恵として、選挙によって一定数の住民の代表を選び、住民にかわって政治を進めるという代議制度、間接民主主義があります。その議員の定数を人口比から見てもより少なくすることは、それだけ住民の意思が行政に反映されなくなることを意味しています。
 足立の議員定数は、現在でも決して多くはありません。今年3月現在の議員1人当たりの人口で見ると、先ほどの話にもありましたように、一番少ない千代田区は住民1,822人に1人議員がいるのに対し、足立区はいまでも住民1万2,615人に1人しか議員がいません。これは23区でも5番目であり、それだけ区民の声や意思が反映されにくい状況です。提案通り議員数が削減されれば、23区で3番目、江東5区では2番目、1万4,016人に1人しか議員がいないことになり、23区で特に住民の声が届きにくい区の一つになってしまいます。

「何をやっているかわからない、役割が見えない」議員のあり方こそ問われるのではないでしょうか
 区民の中に「議員定数を減らすべき」という声があるのは、私たちも承知しております。本来、自分たちの声を代弁するはずの議員を減らせという声が多くあがる理由は何なのでしょうか。「議員は何人いても私たちの生活はよくならない。何をやっているのかわからない。だから人数も減らすべき」という議会や議員の役割が見えないことの表れではないでしょうか。増税負担増、不安定な雇用、医療費も上がり、年金は天引きされる、税金の無駄遣いが連日報道される…政治家は一体何をやっているのかという具合で、いわばいまの政治に対する不信です。
 これを払拭するには、議員が日夜研鑽し、住民の負託に十分応えていける議会活動の前進を目指し、住民の代表としての審議能力、立法能力のより充実した議会としていくことしかありません。定数を削減することで解決する問題ではありません。議会や議員の透明性を上げ、区民にわかりやすくするために、議会中継の拡充を初め、一層の努力と工夫こそ必要です。
 議会の議席は議員個人の特権ではなく、区民の代弁者としての役割であり、区民のものです。その区民に知らせることもなく、区民が意見を届ける機会もなく強行するとに対し強く抗議をし、討論を終わります。