<一般質問>鈴木秀三郎議員 |
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○鈴木秀三郎議員 私は学校統廃合と少人数学級及び子育て支援にかかわる問題について質問します。 今年7月、国立教育政策研究所の研究グループは、小学校と中学校の児童生徒を対象に、クラスの規模別に学力を調査し、その結果を明らかにしました。 それによりますと、「20人以下の学級で授業を受けている児童生徒の学力が比較的高い。クラスの雰囲気や教師とのかかわりでもよい」と指摘し、さらに20人以下の学級では「勉強がどちらかというと楽しいという生徒が多い」「難しいことでも最後まで頑張って勉強したと望ましい学習態度も多く見られた」と指摘しています。 世界と日本の流れは少人数学級と小規模学校 山形県はすべての小学校、中学校に30人学級を導入することを決定しました。その理由の一つは、「繰り返し学習して、一定の力をつけさせる」と教育的効果を述べています。 また、埼玉県志木市では、国の研究所の調査などから、学級人数は20人前後が効果的と判明しているとして、学級崩壊やいじめの防止、学力向上のためにと、来年度4月から小学校1年生、2年生を対象に25人学級の実施を決め、県に協力を求めています。 こうした動きは、今日の学校において、いじめの克服、基礎学力の向上のためには、少人数学級が不可欠な条件であることを示しています。 今日、世界と日本の教育界の大きな流れは、小規模校と少人数学級の方向です。毎年国会へ約2,000万人もの請願が出されていますが、今年2月にも1,911万人以上の請願署名が提出されました。いま、30人学級を求める国民世論は大きく広がっています。 この流れに押されて、政府は公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律を改正しました。しかし、この改正法は、学級編成の標準数は40人に据え置き、30人以下の学級実現という国民的要求への責任と負担を地方自治体に押しつけるものとなっています。 いまこそ足立区も国の責任で30人学級を実現するよう強く求めるべきだが、どうか。また、自治体独自に少人数学級の実施も可能になったいま、区が少人数学級実現の計画をつくり、東京都に教員配置など、積極的に協力を求めるべきだがどうか、答弁を求めます。 ところで足立区は全く逆の方向です。40人学級を前提にして学校統廃合を進め、千住地域、第1ブロックだけで小学校と中学校合わせて5つも学校を潰すという、全国に例のないやり方です。 昨年9月、区は千住地域の学校統廃合計画を区議会に報告し、区民に示しました。区は「教育条件の不均衡是正と教育水準の向上を目的とし、子どもたちのあるべき教育のことを考えて決定したもの」として、統廃合計画を子どものためだと言っています。 しかし、実態はどうでしょうか。例えば計画では2年先の2003年度統合予定の第十五中学校では、今年度の1年生が急増し、1学級の人数も39人とすし詰め状態となっています。 一方、第三中学校では今年度1年生が1人もいない。来年度は1年生と2年生がいない、3年生だけの中学校になる異常な教育環境をつくり出しているではありませんか。 第三中学校では、今年の体育祭は2年生と3年生が力を合わせて成功させましたが、来年度の体育祭はやれるのかと、生徒から心配の声が出ているそうであります。 このように生徒や保護者に精神的に大きな負担を与えています。学校そのものが成り立たない事態を区みずからがつくり出しているではありませんか。 学校選択の自由化で統廃合を促進 また、柳原小学校の場合はどうでしょうか。今年度は各学年1クラスで、1年生は15人、2年生は13人、3年生は21人、4年生は15人、5年生は13人です。来年度、千寿第四小学校と統合すると、1クラス40人で計算しますから、統合後の学校では、学級平均児童数は2年生が89人で1クラス30人、3年生が80人で1クラス40人、4年生が111人で1クラス37人、5年生が96人で1クラス32人、6年生が95人で1クラス32人となりますから、柳原小学校の子どもたちは、すべての学年で1.7倍から3倍以上もの学級人数となってしまいます。 その上来年度から学校選択の自由化が始まり、1学級40人まで入学を認めることになっています。区が1学級40人制を前提に人数を増やすことを率先して進めているのであります。これでは子どもの教育条件をよくするどころか、悪くするものではないか、答弁を求めます。 次に、最近、荒川区では統合案に対して、保護者等の十分な理解が得られていないことなどを理由に、学校統廃合案を白紙に戻しました。1973年、旧文部省の初等中等教育局長と管理局長の連名の通達、いわゆるUターン通達では、学校規模を重視するあまり、無理な学校統合を行わない、地域住民との間に紛争を生じたりすることは避けなければならない。また、「小規模学校には教員と、児童・生徒との間に人間的触れ合いや個別指導の面で小規模校の利点が考えられるので、総合的に判断した場合、なお小規模校として存置し、充実させる方が望ましい場合がある」と指摘しています。荒川区では、結果としてこの通達に沿って対応したと言えるのではないでしょうか。 第1回定例会で我が党小野議員の、学校統廃合計画についての質問に対して、区は「ご質問の文部省通達の趣旨を尊重して進めている」と答えていますが、しかし、やっていることは全く逆ではありませんか。 千住地域の学校統廃合計画が明らかにされて以来、さまざまな意見が出されています。例えばいまの小学校の3年生、4年生、5年生の子どもたちは、義務教育が終わる中学校卒業までに二度も学校統合に出会うことになる。区は子どもたちのことを考えていないではないかとか、私たちは少人数クラス、少人数の学校で、何年もよい体験をし、そのよさを実感している。区が私たちの意見をまともに聞こうとしないのはおかしいと声をあげています。また、PTA・保護者が区教育委員会に地元地域での話し合いを求めても、統廃合が前提でなければ話し合いは平行線だと、地元での話し合いには否定的ではありませんか。 さらに千寿小学校PTAのアンケートの結果は、82.4%が統合反対です。柳原小学校や千寿小学校のPTAは反対決議をしています。区は子どもが少なくなるから仕方がないと理解されているなどと言っていますが、PTA・保護者と子どもたちの理解が得られたなどと言える状況では全くありません。旧文部省のUターン通達の趣旨にも反していることは明白ではありませんか。 区は旧文部省Uターン通達を尊重していると言うのなら、小規模学校のよい点を認め、住民の合意を得られていない、教育的な配慮を欠いた学校統廃合計画を凍結した前吉田区政の立場に立ち返るべきではありませんか。 伺いますが、千住地域の学校統廃合計画の押しつけをやめ、今議会に提案予定の学校設置条例案は撤回し、拙速な来年度の学校統廃合は中止すべきではないか、答弁を求めます。 学級崩壊、いじめ対策として特別講師の派遣を 次に、第1回定例会での我が党の小野議員の質問で、30人学級が実現できるまでの間、最低限の緊急措置として、TT配置の学校を除くすべての学校に非常勤講師の配置を求めました。これに答えて区は、「国の5カ年計画による少人数指導のための教員上乗せ配置について、区も積極的に教員配置の申請をしていく。とりあえず千住地域に配置し、将来的に全体に広げる」という趣旨の答弁をされました。 昨日の本会議では、「児童生徒の習熟の程度を踏まえて、少人数の課題別の学習を行うため、区独自の特別講師の派遣制度を検討し、モデル実施をしていると述べ、国、都の動向を見ながら、5年を目途に全校に導入する」と答えています。しかし、いま、緊急に求められているのは、学級崩壊やいじめの防止、学力向上のための区独自の特別講師配置であります。習熟度別による少人数学習集団など、差別選別教育とならないように配慮しつつ、TT配置や特別加配がされていない小学校49校と、中学校15校に3カ年計画で早急に実施すべきだがどうか、答弁を求めます。 次に、区立幼稚園についてです。区はこれまで「幼稚園教育要領を実践する標準的な幼稚園として、足立区の幼児教育の中心的な役割を担っていく」、また、「幼児教育振興の計画・調整を行うためには、幼児教育の実績、ノウハウの蓄積は欠くことができない」として、区立幼稚園の幼児教育の研究成果を私立幼稚園や保育園に普及し、その役割を果たしていくことなどと言ってきました。しかし、区は少子化により経営危機にある私立幼稚園を支援するためにとか、旧文部省の幼稚園教育要領に基づいて、3歳保育を残る3つの区立幼稚園でやるためにと言って、2002年3月末で、大きな住民の反対がある中で関屋幼稚園と江北幼稚園の廃園決定を強行しました。 さらに8月23日の文教委員会では、「区民に約束していた区立幼稚園での3歳保育については、私立幼稚園の体制が整備されているからやらない」と言い、「旧文部省の幼稚園教育要領は、3歳保育をやらなければいけないとは言っていない」などと、驚くべき答弁をしています。区立幼稚園が3歳保育をやらないで、どうして幼児教育の実績、ノウハウの蓄積ができるのでしょうか。また、幼児教育の中心的な役割が果たせるのでしょうか。これでは学校教育法に基づく公教育としての区立幼稚園そのものを否定することになるではありませんか。区立幼稚園でも3歳保育を行い、足立区の幼児教育の中心的な役割を担える幼稚園にすべきと思うがどうか、答弁を求めます。 次に、保育園の待機児解消の問題です。足立区の入所待機児数は減ったとは言え、今年度当初で469人、9月現在約830人と増加し、相変わらず全国的に見ても高い待機児数です。 鈴木区長は就任後間もなく、保育料を36%もの大幅値上げをし、待機児解消を図るとしていました。しかし、この間認可保育園は全く増設せず、定員数の弾力化や、保育室や認証保育所など、他の保育資源の活用で対応してきました。狭い保育室に布団を重ねるようにして昼寝をさせたり、雨の日は子どもがいらいらして落ち着かないなど、詰め込み保育も限界であり、民間依存だけでは解決できないことは明白ではありませんか。 昨日の本会議において、区は「公立保育園で解消するためには経費がかかる」と答えていますが、足立区と同じように待機児が多かった横浜市では、少子化対策特例交付金を活用して、小規模保育所整備事業で9カ所、270名の定員増、民間保育所新設事業で9カ所を整備し、780人の定員増、合計で1,050人の定員を増やし、一気に待機児解消に向かっています。 先進自治体に学び、保育園の待機児童の解消を 足立区の今年度当初の待機児数で見れば、定員100名程度の保育所なら5カ所あれば解消できるのです。区が本当に待機児を解消する意思があるかどうかが問われています。区は公有地を活用するなど、保育園を増設し、早急に待機児の解消を図るべきではないか、答弁を求めます。 次に、学童保育の問題です。今年度の申請数は3,095人となり、学童保育定員を大幅に上回る申請数です。入室不承認の数も356名にも達しています。このほかあきらめて申請しなかった3年生が211人、2年生が131人もいます。しかもこの数年間は毎年異議申し立てが出されています。こうした状況は早急に抜本的な対策が必要であることを示しています。今年度の足立区の学童保育待機児数は382名となり、東京都内でも飛び抜けて多くなっています。 区は少子化対策特例交付金を活用して、「昨年度と今年度で200名程度の増設に向けて取り組んでいる。」また、「新設を主軸にやっていく」と、2002年度開設に向けて取り組んでいまが、区長公約である待機児ゼロにはほど遠い状況です。しかも少子化対策特例交付金がなくなる2002年度以降については、増設計画が明らかになっていません。区長の公約への対応が問われています。区は待機児解消のため、学童保育室増設の年次計画をつくるべきではないか、答弁を求めます。 次に、学童保育時間の問題ですが、東京都の放課後児童健全育成事業実施要綱は、開設時間については、「概ね下校時から午後6時までとし、実情に応じて区市町村等が定める」と規定しています。この学童保育時間の夕方6時までの延長については、既に東京23区のうち18区と、大半の区が実施しています。 第2回定例会での我が党ぬかが議員の質問に対して、区はこの学童保育時間の夕方6時までの延長について、「今後、検討する」と答えていますが、改定された東京都の放課後児童健全育成事業実施要綱を守るべきではないか。6時までの時間延長をいつまでに実現するのか。 さらに、住区センター管理運営委員会に委託されている学童保育室でも、保育時間の6時までの延長ができるように体制の整備を図るべきだがどうか、答弁を求めます。 最後に学童保育料の値上げ問題です。今議会に学童保育室条例の一部改正の条例が提出されようとしています。これは学童保育料・保護者負担金を月額3,900円から6,000円に1.5倍以上も値上げするものです。値上げが実施されれば、23区でトップクラスの保護者負担金になります。足立区の学童保育室は、67カ所ありますが、このうち55カ所が住区センターの管理運営委員会に委託され、ボランティアの善意によってのみ成り立っています。 保護者からは、住区センター委託の学童保育室に、当面、最低1名の正規職員配置をと要望が出されていますが、他区で行っているように、学童保育指導員には、児童厚生職など、常勤の専門職員を配置し、指導に当たられるように改善することこそが求められています。 区は先の第2回定例会で、「昭和61年以降見直しがされていないので、見直しの時期にきている」と述べていますが、しばらく上げていないから値上げしてよいというものではありません。学童保育料を突然1.5倍以上も値上げすることは、子育て支援に逆行するものではありませんか。昨年の保育園保育料の大幅値上げに続いて、若い世帯に追い討ちをかけるものであります。学童保育料の大幅値上げは、子育て支援の立場からも中止すべきではないか、答弁を求めます。 以上でこの場での質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○加賀美照男福祉部長 保育園の入所待機児についてでございますが、足立区では定員数の弾力化は、保育水準の低下を来すことのないよう、適切に実施しております。また、保育ママ等の民間保育資源の活用は、待機児解消にとって、極めて重要であると考えております。 さらに現在、関屋幼稚園跡を活用し、認可保育園の設置を検討しておりますが、今後ともさまざまな施策を組み合わせながら、待機児の解消を図ってまいります。 ○河合宏地域振興部長 学童保育に関してお答えいたします。 まず、学童保育室増設の年次計画についてでございますが、ご指摘のとおり、学童保育室の需要の伸びに対応するため、少子化対策特例交付金を活用して、学童保育室の増設に取り組んでいるところでございます。 しかし、学童保育室増設の年次計画につきましては、学校選択の自由化による需要動向を見守る必要があるとともに、設置場所の確保に当たって、総合的学習の時間への取り組みなどによる施設状況の変化により、設置条件の整備に相当の検討を要することから、計画化は非常に困難な状況にあります。 次に、学童保育時間の延長についてでございますが、学童保育時間の夕方6時までの延長につきましては、他区の実施状況、延長時間帯の需要等を十分に調査し、今後、検討してまいります。 なお、住区センターの体制整備につきましても、これに合わせて検討してまいります。 次に、学童保育料の値上げについてでございますが、学童保育料につきましては、昭和61年以来改定されておらず、受益者負担の適正化の観点から改定せざるを得ない状況にあると考えております。 以上です。 ○内藤博道教育改革推進担当部長 国や都への要望についてお答えいたします。 学級編成につきましては、生活集団としての40人学級を維持しつつ、学習集団としての少人数指導の充実に努めていく考えでございます。したがいまして、30人学級についての国への要望を行うことは、現時点では考えておりませんが、TT配置等の少人数指導計画の早期実現について国や都に働きかけていきたいと考えております。 なお、区教育委員会といたしましては、区独自の特別講師派遣制度による少人数指導を実現し、きめ細かなわかる授業を実施してまいります。 次に、少人数学級のご質問でございますけれども、現在、文部科学省の「少人数のための加配」、東京都の「TT加配」を実施しているところであります。足立区としても、わかる授業を推進する一方策として、区独自の特別講師派遣制度を検討しております。千住地域をモデル地域と指定し、本年度は調査研究校として第三中学校と第十五中学校で実施しているところであります。その成果を踏まえ、国や都に協力を求めながら、5年を目途に全校に導入してまいります。 ○小川正男教育委員会事務局次長 初めに小中学校の学級の編成につきましては、現行の国、東京都の制度に基づいて行っております。適正配置計画は、等しく充実した教育環境をつくるため、学校の適正規模化を図るものでございます。ご指摘の十五中学校につきましては、区費による特別講師を3名配置し、わかる授業を進めております。 なお、適正配置計画にあわせ、新しい学校教育モデルプランとして学校を支える仕組みを示し、このプランの実施により学校教育の向上を図ってまいります。 次に、学校統廃合計画については、昨年9月からPTAや町会に対する説明等を行った上で、地域の代表の方々で組織した統合地域協議会において話し合いを進めてまいりました。協議会のメンバーにつきましては、町会長、青少年委員等、地域の代表者及び当該地域の校長、PTA会長等、学校の代表者等により構成されており、協議会では地域の総意が確認できるものと考えております。その中で委員の皆様からいただいた貴重な意見を尊重し、新校設立に向けて積極的な取り組みを行っております。 また、学校設置条例案の撤回をとのことでありますが、千住地域の適正配置全体計画は、教育改革の一環として魅力ある教育環境づくりを目指すものでございまして、地元と十分協議しながら計画どおり進めてまいります。 次に、区立幼稚園に関するご質問でございますが、区立幼稚園を含む幼児教育振興のあり方につきましては、平成12年度の都区制度改革の教育事務移管を前提として、文部科学省の幼児教育振興プログラム、過去の当区の幼児教育に関するプロジェクト答申を踏まえ、再検討を行ったものでございます。 幼児教育振興につきましては、従来の幼児教育のほかに、地域の子育て支援の仕組みづくりを視野に入れ、幼児教育振興の総合的な計画、調整を行う専管組織の設置を行い、その充実を図ってまいります。 また、区立幼稚園につきましては、幼稚園教育要領を行う実践園と位置づけ運営を行っていくとともに、幼児教育の実績、ノウハウ等を蓄積してまいります。なお、3歳児保育につきましては、私立幼稚園に受入体制がありますので、区立幼稚園としては実施しないことにいたしました。 以上です。
○鈴木秀三郎議員 いま、私立幼稚園で3歳保育についての体制があるからやらないと相変わらず言っているのですけれども、私は区立幼稚園が幼児教育の中心的な役割を担っていくというふうにすべきではないかと聞いているのですが、それとの関連ではどうか、1点答弁をお願いいたします。 ○小川正男教育委員会事務局次長 私どもとしては、幼児教育につきましては、ご案内のとおり、区立の幼稚園と私立の幼稚園、圧倒的に数が多いわけでございますけれども、そちらと合わせて幼児教育の振興、あるいは幼児教育に力を入れてまいりたいというふうに考えております。 |
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