A足立区立学校設置条例の一部を改正する条例に対する反対討論 鈴木けんいち議員

 私は、日本共産党足立区議団を代表し、ただ今議題となりました第123号議案「足立区立学校設置条例の一部を改正する条例」に反対する立場から討論を行います。
 この条例案は、千住地域の小中学校をいっぺんに五つもつぶしてしまうためのものです。
そもそも今回の統廃合計画は、今から17年前の1984年、23区区長会が打ち出した「行革推進」目標の「事務事業整理縮小」のトップに、「より効率的な教育行政を進めるため」として「小中学校の適正配置」をあげたことがもとになっています。そこには「子どものため」という言葉はひとこともありません。
 本来子どもたちを真中におき、学力の向上やいじめ・不登校の克服など教育効果の向上、教育環境の改善を目指すべき教育行政が「子どもの利益」を投げ捨て、効率最優先の誤った行政改革目標のトップにかかげられた学校統廃合計画にひた走ってきたこと自体、最大の誤りです。
 足立区教育委員会は今回の計画を「教育効果向上のため」「子どものために」おこなうとの答弁を繰り返していますが、これが、23区区長会の方針にてらしても、また旧文部省の「Uターン」通達にてらしても何の根拠も説得力ももたない空虚な作り事であることは明白です。学力向上といじめ克服のためには、埼玉県志木市や山形県のように25人や30人学級を実現することこそ求められています。
文部省の研究協力者会議の座長も、「40人よりも30人が教えやすいに決まっている」「学級の大規模化は改善にならない」とのべています。ノーベル化学賞受賞の白川博士は「子どものためには20人以下がよく、財政難を理由にすべきではない」と新聞で語っています。
学校規模の問題で言えば世界保健機構が、生徒100人を上回らない規模という点では意見が完全に一致している、議論の余地がないと指摘しているとおりです。
 しかし足立区では、学校選択の自由化と結びついて1クラスの人数が増えています。統合予定校の十五中では新入生が急増し、1年生の1クラスの人数がすべて限度ぎりぎりの39人という「すし詰め」状態をつくりだしました。これでどうしてこれが教育効果の向上、教育環境の改善といえるのでしょうか。  
 やることが同じ日本のなかで志木市や山形県とまったく逆ではありませんか。 
 今教育に求められているのは、30人学級実現に向けて国や都に働きかけること、当面、3年計画で全校に非常勤講師を派遣し、実質的な小規模学級を実現すること、千住地域はその条件が整っている地域でありそのモデル地区としておこなうことなどです。
 当然のことながら、計画発表後1年が経ちましたが子どもたちや父母,まちの人たちの不安,怒りは消えるどころかますます強くなっています。そのことは、今議会にこの統廃合計画を延期し、見直しを求める陳情と請願が1万人以上の署名をつけて提出されていること、今月になってこの問題を考える区民の集会が開かれ、その規模も内容も大成功したことにも示されています。
 元宿小学校に通う子の母親は、「教育委員会の方々は、小規模校は活力や迫力に欠け問題が多すぎるとか,教員の目が行き届きすぎ児童生徒の自主性が育たないなどと言っていますが,反対に先生の目が一人一人に行き届かなくて登校拒否や問題行動が起きているのではないでしょうか。小さい学校には一人一人が大切にされ先生も生徒もみんな顔と名前がわかり全校の子と友達になれる良さがあります。学校が終わっても放課後も大きな子も小さな子もみんな一緒に遊んでいます」と語り、柳原小学校の6年生は、「人数が少ないけど,それだけ勉強もできるし,全校で遠足,全校リレーもできます。ほかの学校ではとてもできないようなことでも柳原小学校ではできます。だからできれば学校をなくさないでください」。
 さらに娘を三中に通わせている母親は「こんなに頑張っている子どもたちに来年も三中生としての体育祭をやらせてあげたいと、心から願っています」と声をあげています。
 子どものためというならばこういう声にこそ耳をかたむけるべきです。しかし足立区教育委員会がこうした声に耳を傾けた形跡はありません。そもそも今回の統廃合計画は子どもたちや父母、地域の人々が持ち出したものでも、望んだものでもありません。しかし区教委は発表したあとはあたかも決定であるかのごとく住民におしつけるだけでした。60回開かれたという説明会もその押し付けの場となり、あるPTA会長は「どこに住民参加があるのか」と疑問の声をあげています。さらに統廃合地域協議会は、統廃合が前提となっており、統廃合そのものに疑問を示すことが許されない場と化しました。
 本来住民が望むものであれば自由な論議の中で方向が決まっていくものであり、今回の計画がいかに異常なものか、この点だけでも明らかです。
 今からでも遅くはありません。最近荒川区では「統合案に対して保護者等の十分な理解が得られていない」ことなどを理由に学校統合案を白紙に戻しました。本条例の改定は見送り、子ども、保護者,まちの人たちの声を十分取り上げて見なそうではありませんか。よりよい教育の実現を願う議員各位の賢明なる判断を期待しまして討論を終わります。