@「不良債権早期最終処理」方針を改め、実体経済を活性化する効果的施策を求める意見書(案)
金融庁のまとめによると、今年三月期での全国の銀行の不良債権は、三十二兆五千億円で、一年前と比べて二兆円以上増加し過去最大に膨らんでいる。この一年で、推計六兆五千億円を「直接償却」したにもかかわらず、八兆六千億円の不良債権が新たに発生したためである。
銀行不良債権問題は、バブル崩壊直後と現在とでは様相を一変している。九〇年代前半の焦点は、「住専」に象徴される投機的な融資と悪質な借り手の処理であった。
しかし、九七年度以降は、金融庁資料によると巨額の新規不良債権が毎年発生し、これが問題の中心になってきた。この原因は、消費税増税など九兆円もの負担増からはじまった大不況が中小企業の経営基盤を直撃し、大規模な資金繰りの悪化を引き起こしてきたからである。不景気が続いているから不良債権が解決しないのである。こういう時に、政府が「破綻懸念先以下」と足切りして、数十万の中小企業をつぶす「不良債権早期最終処理」を実行しようとするのは、まったく道理がない話である。
しかも、百万人もの失業につながる「最終処理」を実行すれば、景気はいっそう悪化し、新たな不良債権がこれまで以上に増えて問題の解決どころか、まさに「終わりなき『最終処理』」に陥ることは明白である。従って、次々と不良債権が増える悪循環に陥れば、銀行の経営基盤そのものも壊されてしまうものである。
よって足立区議会は、「早期最終処理」の実行で経営不振の中小企業をむりやり潰すのではなく、経営不振の原因を取り除くために、経済の六割を占める家計をあたためる効果的な施策で実体経済を活性化させることを強く求める。
右、地方自治法第九十九条の規定により、意見書を提出する。
平成 年 月 日
足立区議会議長名
内閣総理大臣あ て
経済財政大臣
金融担当大臣
経済産業大臣 |
A大企業のリストラを規制し、抜本的雇用対策を求める意見書(案)
五%の失業率に追い打ちをかけるように大企業がいっせいに空前の大リストラ計画を打ち出している。「読売新聞」の大企業三十社アンケート調査では、その合計だけでも進行中のものも含めて十六万人の人員削減を行うことが明らかになっている。他に、NTTの十一万人リストラ計画もある。大企業の経営者が、自分たちの目先の儲けのためには、労働者の雇用の問題にはいっさい責任を負わないと言う、モラル破綻の状況がいま競い合って起こっている。
「産業再生法」、「会社分割法」のもとで人減らしやリストラが横行している。それに加えて今度は「不良債権の早期最終処理」でさらに倒産と失業を生み出し、雇用悪化をすすめようとしている。
身勝手な人減らしの横行を許さないために、これまでのようにリストラを応援するのではなく、リストラを抑制するルールをつくることが必要である。
過剰なのは「雇用」ではなく、「労働時間」である。賃下げなしの労働の分かち合い、「サービス残業」の根絶の方向こそ追求されなければならない課題といえる。
よって足立区議会は、リストラ・雇用そのものを規制する法律の制定を求めるものである。
右、地方自治法第九十九条の規定により、意見書を提出する。
平成 年 月 日
足立議会議長名
内閣総理大臣 あ て
厚生労働大臣
経済財務大臣 |
B低所得者の減免、基盤整備など介護保険制度のすみやかな改善を求める意見書(案)
介護保険制度が発足して約一年半が経過しようとしている。
厚生労働省の調査では、現在の半額の保険料でも四十四%の人が「負担が大きい」と感じ、各種「介護実態調査」では、介護保険が始まって生じた負担は実施前に比べて「増えた」人が七割にのぼっている。昨年十月に六十五歳以上の第一号保険料徴収の際には、東京都内の自治体に五万件以上の問い合わせ・苦情・抗議が殺到している。「住民税非課税者」やわずか月額一万五千円以上の年金から保険料を天引きすることは国民の生存権を脅かすものとなる。このうえに、さらに今年十月から第一号被保険者の保険料が満額徴収となり,実質的には現在の二倍の保険料、年間の保険料負担は昨年の三倍に増える。
また、予想より利用者が少なく、利用を抑制しているためにほとんどの自治体で介護の給付実績が初年度の予算を大きく下回っている。介護を必要としている高齢者が、保険料や利用料の重さから十分なサービスを受けられない事態は、社会的介護の実現という介護保険制度本来の趣旨からいっても重大である。在宅サービスの利用者が、政府の当初予測より七十万人も下回ったことは、この事情も反映している。
また、特別養護老人ホームへの入所を希望しながら、入れないお年寄り(待機者)は全国で二十万人に急増している。政府の計画では二〇〇四年度までの五カ年計画で七万人の特養ホーム整備であり、現状に遠くおよばないものとなっている。
こうした現状をふまえ、足立区議会は、政府がすみやかに介護保険制度に関する以下の点で改善をはかられるように求めるものである。
記
一、 国の制度として、在宅サービスの利用料を、住民税非課税者まで無料にすること。在宅サービスの利用料を、当面最小限の緊急対策として、政府の「特別対策」を拡充し、新規利用者を含めて、すべての在宅サービスの利用料負担を軽減すること。
一、 政府の責任で、特別養護老人ホームの待機者の実態を調査し、その解消のための基盤整備計画を立て、着実に実行すること。
一、 このまま十月から予定されている高齢者からの保険料の満額徴収をおこなうなら、矛盾がいっそう深刻になる。保険料の満額徴収を凍結し、その間に、恒久的な保険料・利用料の減免制度、基盤整備計画を確立すること。
右、地方自治法九十九条の規定により、意見書を提出する。
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平成 年 月 日
足立区議会議長名
内閣総理大臣あ て
厚生労働大臣 |
C国民負担増と給付減を押しつける医療制度改革に反対する意見書(案)
小泉内閣が進める医療制度改革の内容が明らかになりつつある。一つはサラリーマン本人が医療機関の窓口で支払う患者負担を、入院、外来とも現行の二割から三割に引き上げることである。加入者の家族の入院の場合も二割から三割に引き上げられる。
また、現行では七十歳以上となっている高齢者医療の対象を七十五歳以上とすることである。これによって七十歳から七十四歳までの患者負担は、現行の一割から三割に引き上がることになる。
加えて、七十五歳以上でも所得によって現役世代と同じ三割負担とする案や、総医療費の抑制策も検討されている。
医療保険は、病気にかかったときにお金がなくても安心して必要な医療が受けられるという、いわば命綱とも言うべきものである。九割以上の国民に「三割負担」という負担増をおしつけることは、命綱を断ち切り、国民医療を破壊するものといわなくてはならない。また、大幅な負担増を強いることは、個人消費をますます冷え込ませ、深刻な不況にある日本経済に大きな打撃を与えることになる。
政府は、こうした負担増の理由に、高齢者の医療費が増加し保険財政を圧迫していることをあげているが、保険財政逼迫の根源的理由は、この二十年間ほどの間に医療費に占める国庫負担の割合を大幅に減らしてきたことにある老人医療費でいえば国庫負担の割合が一九八三年の老人保健法制定時の四四.九%から三一.九%(二〇〇一年度予算)に下がっている。このため老人医療費を支える各保険財政から拠出金がふくらみ、健保財政赤字の大きな要因となっているのである。
国民負担増は受診抑制を広げ、病気の早期発見、早期治療を困難にし、逆に病気の悪化進行を招き、社会的コストを引き上げるだけである。
よって足立区議会は、政府が検討中の負担増と給付減の計画をあらためて、国民医療を守るため、減らしつづけてきた国庫負担を計画的に元に戻し、高すぎる薬価を欧州並みに引き下げることを求める。
右、地方自治法第九十九条の規定により意見書を提出する。
平成 年 月 日
足立区議会議長名
内閣総理大臣 あ て
厚生労働大臣 |
D都立病院の縮小・削減、民営化に反対する意見書(案)
都知事の諮問機関である「都立病院改革会議」は、七月に十六ある都立病院を八ヵ所に半減させる「報告書」をまとめた。
都立病院改革会議の議論は、最初から都立病院に対する都財政の支出をいかに減らすかが一番のねらいとされ、民営化の結論が前提であった。
報告書の内容は、小児専門病院はすべて統合・廃止して府中病院内に小児総合医療センター一個所に統合し、都立病院として残す八病院のうち六病院は、特定の専門医療分野の「センター的機能病院」とする。その他の病院は、都立病院から切り離され、民営化や公社移管の対象とするものである。
いま、地域から都立病院をなくす計画に、都民からは「命綱の病院をなくさないで欲しい」との不安と怒りが広がっています。足立区民からも「足立区には総合病院がない。縮小どころか増設してほしい」「費用の面でも、安心して治療が受けられる病院をなくさないで」などの声があがっています。
そもそも都立病院は、東京都立病院条例第一条にもあるように「都内に居住する者の診療を行い、あわせて医療の向上に寄与する」との役割をもっている。また、都立病院の患者の権利章典には「だれでも、どのような病気にかかった場合でも、良質な医療を公平に受ける権利」がうたわれています。この精神こそ守るべきではないでしょうか。
よって足立区議会は、都立病院の縮小・削減、民営化計画に反対するとともに、都が十一月中に策定するマスタープランで「報告書」を既定の方針にすることなく、自治体と都民、患者、医療関係者に対する説明会や意見を聞く会を十分に行うことを求める。
右、地方自治法第九十九条の規定により、意見書を提出します。
平成 年 月 日
足立区議会議長名
東京都知事あて |
E乳幼児医療費助成制度を国として創設することを求める意見書(案)
少子化問題への対応として、子どもの病気の早期発見、早期治療を支える環境づくりが不可欠である。経済的理由によって、子どもの治療を妨げることはあってはならず、医療費の心配をなくすことは、重要な子育て支援となっている。
国民的な要求を反映して、今日では全国すべての自治体が何らかの乳幼児医療費の無料化、助成措置を講じるに至っている。しかし、その助成措置の内容は、自治体ごとにまちまちであり、対象年齢や活用方法などで大きな格差が残されている。また、厚生省の指導によって、償還払いとしている自治体も少なくなく、利用者はそのつど、自治体窓口へ出向く手順をふむことになり、利用しにくい状況がある。
このため、国の制度として小学校就学前までの乳幼児の医療費の無料化を求める声が強まり、「国の助成制度創設」を求める意見書を可決した地方議会は九百に迫り、都道府県レベルでは二九都府県議会におよんでいる。また、日本医師会は義務教育終了までの無料制度創設を求めている。こうした動きをふまえ、今年六月二十二日の参議院本会議において、「少子化対策推進に関する決議」がおこなわれた。そこでは、「乳幼児医療費の国庫助成等出産・育児にかかわる経済的負担の軽減」を「重点的に取り組むべき」としている。
国の「無料制度」が創設されれば自治体ごとの格差を是正し、どの子も等しく大切に育てられる重要な条件となるものである。
よって足立区議会は、一刻も早く、自治体間の格差や利用上の繁雑さを是正し、利用しやすい乳幼児医療費の無料制度、負担軽減措置を、国として創設するよう強く求める。
右、地方自治法九十九条の規定により、意見書を提出する。
平成 年 月 日
足立区議会議長名
内閣総理大臣 あ て
厚生労働大臣 |
F東京都に乳幼児医療費助成制度の所得制限の撤廃を求める意見書(案)
長引く不況のもとで、区民生活が深刻さをますなか、子育て家庭にとって、子どもの医療費負担が軽減されることは切実な願いとなっている。この願いにこたえ、東京都の医療費助成制度が、九四年に創設され、以降順次対象年齢が四歳、五歳と拡大され、今年度遂に就学前まで対象が拡大された。
こうした制度の拡充は、子育て家庭に大きな激励となっている。しかし、所得制限があるなかでは、一定の格差が生じている。子育てにおいては格差をなくし、どの子も等しく医療がうけられるよう所得制限を撤廃すべきである。
よって、足立区議会は、乳幼児の生命と健康を守り、すべての子育て家庭の医療費負担の軽減を求める立場から、乳幼児医療費助成制度の所得制限撤廃を、東京都に対して強く求める。
右、地方自治法九十九条の規定により、意見書を提出する。
平成 年 月 日
足立区議会議長名
東京都知事あて |
G京都議定書」の早期批准を求める意見書(案)
国際社会では、温室効果による地球温暖化を防止するために、一九九四年に大気中の温室効果ガスの濃度を抑える気候変動枠組み条約が発効し、一九九五年の第一回締約国会議では二〇〇五年までに九〇年比二〇%削減案を合意した。
九七年の地球温暖化防止京都会議が採択した議定書は、二〇〇八年から二〇一二年における先進工業国の温暖化ガス削減目標を、欧州連合八%、アメリカ七%、日本六%など、全体で五・二%とした。さまざまな問題点をもちながらも、温暖化ガス削減の拘束力ある数値目標を初めて定め、まず工業国が担い、達成をめざすとしたものである。
アメリカが京都議定書に調印しながら離脱を表明し、日本政府がアメリカの態度を批判せず、みずからの早期批准も言明せずに、「議定書の死文化」が危惧されるなかで、今年七月、第六回締約国会議が開催された。そこでは、議定書の発効を願う世界の世論を背景にした粘り強い交渉によって、京都議定書の運用ルールの主要部分であらためて合意が図られた。
すでに衆参両院では、アメリカの離脱表明に「大変遺憾」と表明しながら、日本が京都議定書を「早期に」「率先して」批准することを全会一致で決議している。日本政府は京都会議の議長国として京都議定書をとりまとめた責務を果たし、アメリカの態度の如何にかかわらず、ただちに批准をおこない、議定書の具体化でも積極的に貢献すべきである。
右、地方自治法弟九十九条の規定により、意見書を提出する。
平成 年 月 日
足立区議会議長名
内閣総理大臣
あ て |
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