<一般質問> 産業振興部をつくり区政の中心課題に 伊藤和彦議員 |
||||
○伊藤和彦議員 私は、産業振興行政について質問いたします。 小泉内閣が発足して半年余がたちましたが、構造改革路線のもとで、景気は歯止めを失ったように悪化し加速しています。日本経済の6割を占める家計消費は一層冷え込み、中小企業の倒産、廃業もさらに増加する見通しです。とりわけ深刻なのは、この質問通告したときからわずか3日後、失業率がまた史上最悪の5.4%を記録しました。 わが党は、雇用・失業対策という点では、何よりも100万人にも及ぶ膨大な失業者が生まれるような不良債権の最終処理はやめて、大企業の社会的責任を放棄したとも言えるようなリストラ計画を規制すること、これ以上の失業者を出さないことと同時に、雇用を増やすという点で、サービス残業の根絶、また、労働時間の短縮や年次有給休暇の完全実施、そして、国や自治体が本来国民のためにやるべき仕事に着手して、教育、福祉、防災など、それぞれの分野で人員を計画的に増やすことなど、提案してきたところであります。 そこで私は、雇用・失業問題の解決と景気対策について、当面の緊急対策として、以下の質問をいたします。 第1に、区の産業振興に対する位置づけについて伺います。私の住む地域でも「景気の見通しが立たないので、夏ごろから3人いたパートさんに辞めてもらった。10月ならパタッと仕事がなくなってしまって、夫婦で途方にくれている」と靴加工業者の話です。 区内の鞄製造の経営者は、「秋口はトラベル商品のスーツケースなどが動くシーズンなのに、テロ事件で昨年よりも売り上げが半分に減ってしまっている。鞄業界はかなり厳しい。在庫がさばけず、負債20億円で倒産した会社も出た。鞄など皮製品は足立の地場産業というなら、もっと位置づけしてPRしてほしい。融資のこと、モノづくりの人材育成などに力を入れてもらいたい」と話していました。 狂牛病問題で「こんなにお客が減り、売り上げが落ちたのは初めて。夜も眠れない。何とかしてほしい」という食肉店主や「月300万円の売り上げが、9月には10分の1になって、商売をやめようかと思っている」という焼肉店主。 区内のある卸業者は、代々から量販店スーパーと契約し、薄利多売で乗り切ろうと営業してきましたが、消費不況で在庫が多くなり、ついに約1億円の負債を抱えて倒産、40歳代の経営者が自殺を図るという事態も起きています。 鈴木区政のもとで、区内の事業所が激減し、足立区内の企業倒産件数は、2,000年度125件、その負債総額は823億円と過去最高であり、小泉政権誕生後、さらに今年9月現在、すでに88件、393億円にものぼっています。これまでは、中小企業対策は、国や都の施策であり、区が行える施策は限られていると考えられてきましたが、昨年の中小企業基本法の改正で、産業振興施策を法第6条で「その地方公共団体の区域の自然的、経済的、社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する」として、これまでの都道府県の広域行政から区市町村にも義務づけました。本格的に支援する行政の転換が必要であり、可能であると考えます。 区内中小業者は、地域経済と区税収入の担い手であり、同時に地域社会の支え手でもあります。景気回復の見通しが見えない中で、区内中小業者の深刻な状況をつぶさに受け止める必要があります。 そこで、産業振興行政を全庁的な重要課題として位置づけるべきと思いますが、答弁を求めます。 区内産業の実態調査をすすめ産業振興部の創設を 次に、激しく変化している社会経済状況の中で、区は、「平成13年度緊急経済対策上半期実施状況」を議会に報告しました。それによると、経済効果をつくり出す施策として、「IT講習会事業の実施、産業HPの開設…」など実施したとしていますが、区の緊急経済対策と銘打つには、あまりにもお粗末で不十分ではないでしょうか。区内の業者団体の役員は、「足立区に我々の厳しい状況を言ってもやってくれないし、あてにしていませんよ。ITこそ21世紀の産業だと言っていたのに、一転してIT不況ですよ。区内業者の実態にも合っていない」と話しています。 こうした不信感をなくすには、職員が業者の実態をしっかり把握し、業者の気持ちを共有してこそ、効果的な施策や協同の力が生まれるのではないでしょうか。 そこで質問しますが、産業振興を区政の重点にふさわしくするため、区職員による区民の暮らしと営業の緊急実態調査を行うべきと思いますが、どうか。 さらに、足立区をあげて知恵と力を集中して、区民の暮らしと営業を支援する緊急対策が必要ですが、現在の産業振興課では体制がなく、手が足りないと思います。産業振興対策で解決すべき課題に迅速に対応できる組織にするため産業振興部をつくるなど、体制づくりを強化すべきですがどうか、答弁を求めます。 次に、長引く不況から低迷している区内産業の現状を打開するため、区が不況対策などで区内業者と関連団体を対象にシンポジウム、懇談会などを開催し、区民とともに考え、知恵を出し合い、解決策を見出すことが必要と思いますが、答弁を求めます。 第2に、区内業者の仕事確保策について伺います。 鈴木区長は、「さまざまな融資と2・2・2住宅プランで景気回復!」と言ってきましたが、大谷田と西綾瀬の2ヵ所、68戸の建設後の見通しはなく、また、西綾瀬の集合住宅は、大手不動産開発会社が受注し、区内業者に回ってきた仕事はわずかです。一方、区の契約実績は、98年度工事関係、物品関係合わせて約287億円、99年度は259億円、2,000年度は240億円です。区の300億円近くにのぼる契約事業は、地域経済への波及効果は大きいと考えます。区内業者の仕事確保策の一つとして、区が発注する学校や区施設の改修、修繕など区民生活に密着した工事費の予算を増やし、地元業者優先で計画的に進めることが必要であると考えます。 区内業者の施工に限定した板橋、目黒区などで助成制度が実施されている住宅リフォーム工事は、仕事確保、良好な住宅を維持できるし、地域経済の活性化にとっても一石三鳥ともいえる施策です。 しかし、区は縮小、凍結しようとしています。西新井のマンション管理人さんは「マンションのリフォーム助成は、管理人仲間に、あれはよい制度だから利用したほうがいいよと話していたんだ。そうしたら予算がないとかでなくなってしまった。足立区はお金があるじゃないの。復活してもらいたい」と言っています。 仕事確保策として住宅改良助成を拡充せよ そこで伺いますが、まち場の業者の仕事確保にすぐつながる住宅改良助成事業は縮小、凍結ではなく、助成予算枠を増やし、継続すべきですが、どうか。 また、区は、区内業者に限定すれば、経済効果はあると認めているように、区内業者を利用した区民の住宅リフォーム工事に対し、例えば消費税分の5%を助成するなどの制度を新設すべきだと思いますが、答弁を求めます。 第3に、雇用対策について伺います。 政府は総合雇用対策として、雇用保険法や労働者派遣法などで45歳以上の中高年の再就職促進と雇用創出を図ることを柱に雇用対策臨時特例法を決めました。法律は、訓練延長給付に関し、45歳以上60歳未満の中高年が複数の訓練を受けることを可能にしています。訓練延長給付は、失業手当の給付期間後も公共職業訓練の期間中は最長2年間、同手当を受けられる制度で、また、自営業者など雇用保険対象外の失業者への月額20万円の生活資金貸付制度を創設することを決めました。政府がこうした施策を行わなければならないほど、失業者の生活は深刻です。 国の補正予算に盛り込まれた新たな緊急知識雇用創出特別交付金事業は、区がこれまで行ってきた緊急地域雇用特別交付金事業の教訓を踏まえて、最大限活用し、雇用拡大を図るべきと思いますが、答弁を求めます。 次に、9月議会で我が党の代表質問に「今後とも雇用については、さまざまな産業振興施策を推進することによって確保するよう努める」と答弁しましたが、その具体的な雇用についての対策を示していただきたい。 生活資金のために応急小口資金の活用をはかれ 次に、リストラなどで失業して、生活困難にある区民を救済するため、足立区応急小口資金貸付条例の第1条(目的)に示されている、「災害、疾病等により応急に必要とする生活費用の調達が困難な区民に対し、小口資金を貸し付けることにより、その生活の安定と住民福祉の増進を図ることを目的とする」という精神に基づいて、区長の特認事項に失業も加えるべきと思いますが、答弁を求めます。 また、国が創設する生活資金貸付制度(年利息3%半年据え置き)を活用した場合に、区が利子補給をする考えはないか、答弁を求めます。 最後に、このほど区は、区内の企業約20社の人事担当者と直接面接ができるという区役所庁舎ホールで「マイタウンあだち就職面接会」をハローワーク足立と共済で開催しました。この企画は、近年にない情勢にかなったものと私は思いました。区として、こうした機会を今後とも推進すべきと思います。 花畑に住む31歳のKさんは、区内の精肉問屋に勤めていましたが、狂牛病の問題で会社は赤字続きで、11月20日に会社から「他の会社に行くように」と言われ、辞めざるを得なくなりました。また、35歳のSさんは、NECのプログラマーとして10年以上勤務をしてきましたが、ブログラマー35歳、年齢制限で会社から「明日から君は来なくていい」と一方的に言われ、いまは仕事探しの毎日です。 こうしたリストラに遭遇して窮地にある区内労働者の相談に、総合的に応じられるように、区民の権利を守るものとして社会保険労務士、労働基準監督署員、弁護士、税理士、中小企業診断士、労政事務所、職安職員など専門家を集めて行う総合労働相談の窓口を設置する考えはないか。答弁を求めてこの場での質問を終わります。
○河合 宏地域振興部長 まず、産業振興行政の位置づけについてお答えいたします。 産業振興行政につきましては、第四次基本計画に重点課題の1つとして位置づけられているところでございます。 次に、区職員による緊急実態調査についてでございますが、先に鹿浜清議員のご質問にご答弁申し上げたとおり、緊急地域雇用創出特別交付金事業を最大限活用し、区内全体のデータベースの基礎資料の収集を図るため実態調査を実施してまいります。調査に当たっては、可能な限り区内中小企業の実情を肌で感じ、産業プランの計画実現を図っていくため、職員も調査に従事する予定です。 次に、体制づくりの強化についてでありますが、先に鹿浜清議員のご質問にご答弁申し上げたとおり、産業振興に関する施策を総合的に推進するため、現在、組織改革検討委員会において、部制を含めた検討をしているところでございます。 次に、シンポジウムや懇談会の開催についてでありますが、シンポジウムや懇談会の設置については、すでにあだち産業会議において、産業界を初めとする各種団体からご意見を伺う機会を設けているところから、新たな会議等を開催する考えはございません。 次に、緊急地域雇用創出特別交付金事業の活用についてでありますが、新たな交付金事業は、新規雇用の大幅な創出拡大を主眼としておりますので、区としても、この趣旨を生かせる事業を厳選し、実施したいと考えております。 次に、具体的な雇用対策でありますが、区は、直接的な雇用政策を行う権限はありませんが、今後ともあだち産業プランの着実な推進と、ハローワーク足立の就職面接会や、区役所2階の産業振興コーナーにおける内職・パート相談の支援等を通して、雇用の確保に努めてまいります。 最後に、総合労働相談の窓口設置についてお答えいたします。一般的な労働相談につきましては、広聴相談事業として対応しております。また、労働相談のうち、専門的な相談については、労政事務所の所管業務と考えておりますので、区で独自に窓口を設ける考えは、現在のところございません。 以上です。 ○石塚昭二都市整備部長 私からは、住宅改良助成についてのご質問にお答えいたします。 住宅改良助成につきましては、区の財政事情の悪化に伴い、当面縮小、凍結されたもので、現状では復活することは大変困難であります。しかしながら、住宅金融公庫、さらには東京都のマイホーム資金融資あっせん制度、マンション改良工事助成制度等がありますので、これらを区民の方に周知をしているところでございます。 次に、リフォーム助成制度についてお答えをいたします。 リフォーム助成制度の新設につきましては、現下の区の財政状況のもとでは、極めて困難であると言わざるを得ないということでございます。 私からは以上でございます。 ○加賀美照男福祉部長 応急小口資金についてお答えいたします。 応急小口資金は、災害、疾病などにより応急に必要とする資金の調達が困難な区民に対し、小口資金を貸し付けることを目的とした制度であり、生活資金の貸付を対象としてはおりません。 したがって、ご要望の失業時における生活資金を貸し付けることは考えておりません。 また、国の第二次補正予算において、厚生労働省では生活資金貸付制度を創設すると報道されております。 しかしながら、いまだ制度の内容が不明確でありますので、今後の国の動向を注目してまいります。 以上でございます。
○伊藤和彦議員 私の質問は、雇用、仕事確保策ですぐ実現可能なものを提案させていただきました。しかし、区の答弁は、区内業者の実態を見据えて、解決策も、あるいは真剣に検討する姿勢も全く見られない。不況の中で苦しんでいる区民業者の実態から見ても理解が得られないし、納得がいかない。本当にのんきな答弁だというふうに思います。いくつかやりたいのですが、時間の制約もあるので、2点について私は再質問したいと思います。第1は、産業振興行政は、基本計画の重点課題の一つとして位置づけているという答弁でしたが、言葉で重点だと言って強調しても、区内業者への的確な支援になっていなければ何にもならないわけで、施策が生きて初めて重点と言えるのではないか。平成12年度の決算では、一般会計の歳出総額2,125億円に占める商工費はわずか1.1%です。重点にふさわしく予算をつけてこそできるのではないでしょうか。重点になっていないから私は質問をしたので、再度お伺いをしたい。 第2点目は、応急小口資金の問題です。生活資金の貸し付けを対象としない、貸し付けることは考えていないという大変冷たい答弁です。この条例は、質問の中でも示したとおり、「災害、疾病等により応急に必要とする生活費用の調達が困難な区民に対し」と、明確にしております。条例を狭く解釈して、区民を救済しないというのは問題です。再答弁を求めます。
○河合 宏地域振興部長 まず、産業経済費のパーセンテージの問題ですが、ご存じのように、非常に財源が拡大していく中、民生費については相当増大しております。そういう中において、他の経費がどうしても縮小する中、産業経済費については、投機的な経費も含めて現状維持を図っているということであります。 なお、他につきましては、相乗効果が高い事業、例えば本年度行いましたリレーイベントにつきましては、数倍の経済効果をねらって事業を打つという形で、今後もやっていきたいと思っております。 ○加賀美照男福祉部長 先ほどもご答弁申し上げたように、応急小口資金につきましては、生活の中における一時的、臨時的な資金需要に対して対応していくというものでございまして、恒常的ないわゆる一般的な生活資金というものにつきましては、全体の社会保障体系の中、例えば生活保護制度等で対応すべきものでありまして、応急小口資金の対象とはなり得ないものでございます。 ○議長 以上で質問を終結いたします。 |
![]() |
![]() |