小泉内閣がすすめる医療制度改革の内容が明らかになってきている。
厚生労働省案では、サラリーマン本人が医療機関の窓口で支払う患者負担は、入院、外来とも現行の2割から3割に引き上げられる。現行では、70歳以上となっている高齢者医療の対象を75歳以上に段階的に引き上げ、70歳から74歳までの患者負担を2割とすることも計画されている。また、75歳以上の高齢者は1割負担とされているが、これまでの外来の場合の負担上限額(月3,000円から5,000円)は廃止され,入院とあわせて一気に月42,000円(低所得者を除く)まで上限が引き上げられることになる。財務省案は、3割負担をさらに徹底して、70歳から74歳までの高齢者も含め、一律に3割負担を求めている。
医療保険は病気にかかった時に、お金がなくても安心して必要な医療が受けられるという、いわば命綱というべきものである。9割以上の国民に「3割負担」という負担増を押しつけることは、命綱を断ち切り、国民医療を破壊すると言わなくてはならない。また、大幅な負担増を強いることは、個人消費をますます落ち込ませ、深刻な不況にある日本経済に大きな打撃を与えることになる。
政府は、高齢者の医療費が増加し、保険財政を圧迫していることを負担増の理由としているが、保険財政逼迫の根源的理由は、この20年間ほどの間に医療費に占める国庫負担の割合を大幅に減らしてきたことにある。老人医療費でいえば、国庫負担割合が、1983年の老人保健法制定時の44.9%から31.9%(2001年度予算)に下がっている。このため老人医療費を支える各保険財政からの拠出金がふくらみ、健保財政赤字の大きな要因となっているのである。
負担増は、国民の受診抑制をひろげ、受診抑制は、早期発見・早期治療を困難にし、逆に病気の悪化・進行を招き、社会的コストを引き上げるだけである。
また、70歳から74歳までの高齢者が、高齢者医療制度から国民保険制度に組み入れられることは、足立区の国保財政に重大な影響を与え、出口のない矛盾を自治体と高齢者に押しつけることになる。
よって足立区議会は、政府が検討中の負担増と給付減の計画を改めて、国民医療を守るため、減らしつづけてきた国庫負担をもとにもどすことを強く求めるものである。
以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出する。
年 月 日
議 長 名
内閣総理大臣・厚生労働大臣・財務大臣・総務大臣
衆議院議長・参議院議長 あて
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