予算特別委員会 第6日目 午後 小野委員
規制緩和のねらいは大企業の利益確保策

○小野委員 最初に、先ほど赤旗問題がありましたら、一言言っておきますけれども、あの問題については、全文削除をしておわびを2回やりました。既に決着済みの問題、そして共産党の区議団云々という話もありましたけれども、編集権が区議団にあるわけではありませんものですから、そういうことで言ったわけです。一言言っておきます。
 それで質問に入ります。
 区長さんは先日の第1回定例区議会の本会議で、我が党の針谷議員の代表質問に答えて、「足立区の現状認識について、多くの区民は、これまで行われてきた護送船団方式や公共部門を公務員が独占し続けたり、過剰規制により民間活力をそいだりといった構造を直さなければならないと考えている。また、多くの区民や区内企業も進み始めている改革をとめ、護送船団方式や過剰規制の世の中に戻すべきだとは考えていないはずだ」と答弁をなさっております。これは、これまで公共部門としてやってきた分野を、民間企業にやらせる上で邪魔な規制は過剰規制として排除していくことを多くの国民、区民が望んでいると理解してもよろしいでしょうか。

○区長 そのとおりであります。

○小野委員 もともと規制緩和というのは、日米の大企業、多国籍企業の要請を受けて、構造改革の2本柱の一つとして登場してきたものなのですが、公的規制というのはどういう定義なのか、お答えをどなたか、していただけますか。

○企画部長 世の中は市場原理だけでは絶対回らないわけで、そういうことですから規制部門等かあるわけでございますから、本来の意味の公的規制というのは、市場では救えない、いわゆる市場の失敗等を救済するような形で公的規制を行なうということだと考えております。

○小野委員 そうですね。実は95年に総務庁が出している規制緩和の推進の現況というリポートがあるのですね。この中で、法的規制は国民や企業の自由な活動に任せていたのでは、国民生活の安全が損なわれる。産業経済の健全な発展が望めないなどの問題が生じるおそれがある場合に、公共の福祉に寄与する特定の政策目的を達成するために、一定の活動を禁止したり、活動に先立って行政庁の許可、認可などを得なければならない等の制限を加えたりするものであると言っているわけです。
 それで、ちょっと質問しますけれども、例えば大店舗法が撤廃されましたが、大店舗法は過剰規制に当たるのでしょうか。

○産業振興課長 大店法の改正、施行については、私はそのようにとらえておりません。

○小野委員 考えていない……いないね。
 それでは、薬屋さん、お米屋さん、酒屋さん、これも規制緩和の対象になっていますけれども、この三つの業種についても過剰規制と考えておりますか。

○産業振興課長 いまお示しいただきました三つの設置緩和等については、私どもの方ではいかんともしがたい内容でございますので、私の方から評価をするのはいかがなものかと、答弁は差し控えたいと思います。

○小野委員 何……過剰規制と考えているかどうかだけ答えてください。

○産業振興課長 恐れ入ります。私見は述べることができませんので。

○小野委員 企画部長はいかがですか、どう考えていますか。私見でいいです。

○企画部長 非常に微妙なので、本来やるべき公的規制なのか、それとも逆に消費者のために規制緩和をするのがいいのか、非常にここはボーダーラインだと考えております。ただ最終的には、こういった分野も自由化されていくのだろうと、しかしなるべく痛みを伴わないステップでやるべきではないかと考えております。

○小野委員 そうしますと、過剰規制といわれる規制はどんなものでしょうか。区長さんがお答えになった過剰規制の過剰というのは、具体的にどんなものがありますでしょうか。

○中野助役 例えばバス事業者、独占して非常にその自治体の交通網を不便な形で残されるという規制がございますし、過去にいわせればガソリンスタンドですとか、行政指導で規制をしているのもありましたし、それから、さっき大店舗の話も出ましたけれども、大店舗も逆に見れば消費者保護という議論もありますから、大店舗だけで規制をするというのは過剰ではないかと考えております。

○小野委員 いま進められている規制緩和の大部分というのは、そのほとんどは、区民の暮らしや業者の営業にとって大きな痛みを伴うものだと思っているのです。過剰規制といわれる過剰のうち、バス事業のことを言っていましたし、大店舗も違った答弁になってきましたけれども、そもそも最初に言ったとおり、規制緩和というのは日米多国籍企業がもっと自由に商売をやらせてくれと、そのためには、日本だけがんじがらめの規制があったのでは自由な商売ができないから、撤廃してくれよということを受けて、直接的には第1次行政改革審議会、メンバーのほとんどは大企業の代表者あるいはファミリーですね、この会長は土光さんでしたし、このとき経団連の名誉会長をやっていました。委員には大槻文平日経連の会長、あるいは伊藤忠商事の相談役とかいろいろあるわけです。だから、もともと国民の暮らしのための規制緩和が中心ではなくて──中心ですよ、全部が全部とは言っていないですよ──中心は日米多国籍企業の企業活動の自由を保障するために行われたもので、これは国民の暮らしに大きな痛みを与えるものだということになると思っているのです。
 例えば足立区の場合の大店舗の撤廃も含めまして資料をもらったのですが、一番新しい資料が平成9年しかありませんから、平成9年の商店数が6,177、年間販売額が540億円、大規模小売店舗というのは第1種、第2種あわせて63店舗、売上高が1,581億6,000万円。小売店の方が5,460億円ということになっていまして、これを見ますと、小売店に占める大型店の割合というのは1%ですね、この時点では。
 これが小売店全体の年間販売額に占める大型店の販売額の割合は29%、1%の大型店が3割の売上高を占めるようになる。これは平成9年ですら、現時点においては、恐らく大型店の売り場面積も、年間の売り上げ販売額も大きく上回っているのだろうと。大型店舗も63ということではないだろうなと思うのです。
 この影には、多くの商店が廃業する、転業する、シャッター通りが生まれるという背景に、この規制緩和があったわけです。それで、商店の皆さんは、この規制緩和は区内の商店の方々も規制緩和万歳だよということには、絶対なっていないのですね。
 それから、酒屋さんの数を見てみますと、平成3年度は427件、これが平成11年度の数字しかありませんが342件と、大型店でお酒もどんどん売ってもいいですよと規制緩和になりましたから、極端に減ってきているのです。みんなお酒屋さんやっていけないと。
 それから、お米屋さんですけれども、これも平成3年186店足立区でありましたけれども、11年度の数では140店、これは大型店も含むのです。この業種について大型店とあれがどうという分類がなかったものですから。
 それから、薬屋さんは、平成3年度は231件で、平成11年度が242件、これは医薬分業によってふえたのですけれども、薬も量販店がどんどん進出をしてきていますから、だから、薬屋さんも、私の代で終わりですよ、やっていけませんよとなっています。ですから、商業の分野でも、規制緩和というのは、区民の区内の業者に大きな痛みを押しつけている。
 先ほど企画部長さんは、消費者のためにもなっている部分があるんだと、確かに安く買えるというのはいいのですけれども、しかしこれはほとんどの部分が、例えば衣料品などでいえば外国の、特にアジアに生産拠点を丸ごと移してしまって、いま、産業の空洞化というのが大問題になっていますから、結局、それがすべてリストラだとか労働条件の低下だとか、給料の低下だとかということに結びついて、生活そのものが小さくなってきていますから、同じなのですよ。そういう点でいうと、規制緩和イコール、すべての区民が喜んでいるし、戻したくないと思っているという一般の大きなくくり方というのは間違いだと思うのです。
 おっしゃったとおり、規制緩和には、もちろん全体の中では国民の暮らしに役立つような規制緩和もあるでしょう。これは明治時代から続いているような官僚規制といいますか、そういったものは確かに撤廃したほうがいい。しかし、いま言ったように、全体の規制緩和の大きなねらいというのは、そういうところにあるのではないということを指摘しておきたいと思うのです。
 もう一つ、規制緩和の問題で、保育所設置の規制緩和が行われましたが、これもいままで保育所設置の規制は過剰規制だったと思っていますか、どうですか。

○児童福祉課長 過剰規制というよりも、国等の補助金をいただくための条件は非常に厳しいものであった かなという感じはしております。

○小野委員 保育所問題も規制緩和によって大変な問題が起きているわけでしょう。これは極端な話ですけれども、例の池袋西口のちびっこ園の事故とか。この規制緩和というのは、国の規制緩和で主な規制緩和はどこにあると思いますか。

○児童福祉課長 従来、民間保育園につきましては公共団体、自治体もしくは社会福祉法人にしか、その経営は認められておらなかったわけでございますが、株式会社等の参入も建前上広げられたということでございます。

○小野委員 要するに、規制緩和によって、例えば職員配置とかが緩くなったのですよ。従来の国の規制よりも、認証保育など東京都がやろうとしている保育制度は、常勤職員の配置が、国の制度は8割ところが認証保育は6割でいいとなっていったわけです。
 それから、保育料も国基準まで取っていいというのですから、0歳児ですか、たしか8万円まで取っていいと、しかしこれは基本であって、これ以外に延長保育や何かをやりますと、これまた別に取ってもいいとなるわけです。そういうことになると、公立というか、認可保育園に入れなかったお母さんたちがそこに入れようと思っても、今度はとても高くて入れないという問題が起きてきていますね。
 実はこの認可保育園の増設計画がなくて、そして民間の保育園をどんどん活用しなさいというところが一番大きな問題だと思うのです。
 時間がないので余り詳しく言えませんけれども、規制緩和というのは、そういう点では一くくりにして過剰規制だということでなくて、もう少しこういう点が過剰規制でありまして、こういう点については区民はもとに戻すということは考えておりませんと言ってくれると、私たちとしてはなかなか理解できるのですけれども、一くくりにして過剰規制は区民は決して望んでいませんというあれなものですから、では過剰規制とは何だということになるわけです。
 この問題での最後ですけれども、実は橋本龍太郎さんという前の総理が、政権奪還論という本を書いている。このときは実は細川内閣のときで、自分たちは野党に下ったときだったのですね。このときに書かれた規制緩和でおもしろいことを言っているので、ちょっと一言だけ紹介しておきますけれども、 この中で「規制緩和はすべて国民生活にプラスに働くと決めつけることは非常に危険な発想だ。規制緩和によって競争原理が生じ、新規産業を促すとともに、競争による価格低下が期待できることは否定しない。しかし、ある意味では野放し状態を容認するという危険性も必ずつきまとう」と、それで、一つのエピソードを紹介しているのです。
 この橋本さんの友達がタクシーに乗ったときに、運転手さんに細川内閣の印象を尋ねたのだそうです。そうしたらすごく頼もしいと、自民党と違って柔軟なところがいいと、特に規制緩和はすばらしい、どんどんやってほしいと答えたのです。この友達が規制緩和されたらどうなるかということを細かく説明したと。つまり、個人タクシーの免許も規制の一つだ、その規制がなくなったらだれでも自由に個人タクシーを走らせることができるようになる。タクシーの料金も規制の対象だ。この規制がなくなれば、料金は自由に設定できるようになる。そうなると、乗客はより安いタクシーを選ぶようになるから、いまと同じ料金設定では乗客がなかなかつかまらなくなるだろうと。いまと同じだけの収入を得るためには、料金をもっと下げて、いま以上にたくさん働かなければならなくなるかもしれない。これを聞いて、たちまちこの規制緩和に反対になったというのです。
 規制緩和という言葉は、浸透している割には具体的な中身や緩和後の状況といった情報は、意外に一般には伝わっていない。いま行われている規制緩和の大部分は、保育の問題でも食品衛生の問題でも、それから、労働法の問題でも、いま言った商業の問題でも、国民生活にかかわる大部分が、逆に国民に犠牲を押しつけるものになっているということを指摘しておきたいと思います。
 それで、きのう途中までやった教育問題ですが、これも余り時間がなくなりましたけれども、実は足立区が新年度から実施する特別講師派遣事業、これは文部科学省の少人数のための加配事業と、都の教育委員会のTT加配を補完する制度とするとなっています。
 1人でも教員が欲しい現場では喜ばれているものだし、我が党ももちろん賛成なのですけれども、問題は習熟度別授業の固定化、押しつけになるかどうかというところが一番問題なのです。
 習熟度別授業の固定化というのは、教師と専門家によって重大な問題点を指摘されていて、無批判にこれを取り入れるべきものではありません。我が党が文部科学省のインターネットで出してみますと、少人数のための加配授業は、必ず習熟度別授業にするということにはなっていないのですね。
 また、東京都の教育委員会のTT加配は、足立区が出した主な事業の概要説明の図式を見ましても、習熟度別とは必ずしもなっていない。したがって、2001年度の定例議会で我が党の鈴木けんいち議員が質問をしたことに、教育改革推進担当部長がお答えいただいておりまして、「特別講師の活用はティーム・ティーチングや習熟度別授業による少人数指導の方法が考えられますが、特に習熟度別授業は児童生徒一人一人の個性や能力を生かし、わかる授業を実施する上で効果的な指導方法の一つであると考えております」と、指導方法の一つだということになっておりますが、これに間違いありませんか。

○教育改革推進担当部長 その後、行革委員会でもご答弁を申し上げましたけれども、非常に効果的な指導方法の一つだと確信をしておりますので、今後全校に取り入れていきたいと思っております。

○小野委員 そうすると、そのときの答弁とはこの質問の内容とは違ってきますね。

○教育改革推進担当部長 加配やTTの特別講師の制度そのものは柔軟な対応をしていきたいと。学校の方で、自分のところは教諭や地域と話し合ってTTでやりたいということであれば、その加配教師の活用についてはTTということで、それは認めていこうと。ただ教育委員会としては、習熟度別については別途に全校で実施すると考えております。

○小野委員 わかりました。
 もう一つ、この間、聞き損なった点ですけれども、学校配当予算を自分から5%削って要求しているという問題を聞いたときに、お答えが、「特に平成14年度につきましては、小学校のコンピューターの導入等、またインターネットの接続等またその他の経費の増が見込まれているのでやむを得ず減にさせていただきました」というご答弁だったのです。
 「特に14年度につきましては」ということになっていますから、そうすると、15年度はそういうことにはならないのではないかと思うのですけれども、いかがですか。

○教育総務課長 15年度について、増要員について は小学校パソコンの第3期分が予定されてますが、それを含めまして検討してまいります。

○小野委員 最後に一つ、教師用の指導書の問題ですけれども、これ削れましたから、でもこれは必要だという点についてはお認めになると思うのですが、いかがですか。それだけ聞いて終わりにします。

○教育総務課長 必要と考えておりますので、各学校ワッセントずつ配付しようと、いま作業中でございます。