2、区長提案の議案について
第52号議案、足立区の債権の管理等に関する条例案に対する反対討論 村田晃一議員

○村田晃一議員 私は、日本共産党足立区議団を代表し、ただいま議題となりました第52号議案、足立区の債権の管理等に関する条例案に反対の立場から討論いたします。
 今回提案の条例は、区が保有する債権の管理の適正化を図るためとして提案されました。そのために債権台帳の整備や徴収計画の策定を行い、督促以下の手続を進めるというものですが、そもそもこの条例案の提案を待つまでもなく、これらの事務は、現行の条例の下で何ら支障なく行われているものであります。
 鈴木区長提案の条例は、第4条以下、区の債権の厳正な徴収に重点が置かれ、債権回収の手続を機械的、画一的取り立て中心に変更しようとするものになっています。こうした条例を定めたのは23区の中でもわずか2区にとどまっています。
 まず、今回の条例案が対象とする債権は、区が保有する債権のうち、強制徴収が可能な債権を除く、公法上の債権と私法上の債権ということになりますが、これらの債権のうちで、現行の個別の法令や条例に基づく督促や強制執行等の手続が規定されている債権については、これら個別の法令や条例の適用が優先されることとなっています。
 我が党は、この議案の委員会審議の中でも、債権の適正管理を定めた地方自治法第240条や地方自治法施行令第171条の規定及び現行の区条例の下で、区のすべての債権の適正管理は可能であり、また、個別の法令や条例に基づく債権については、改めてこれら法令や条例が目的とする趣旨を踏まえた債権回収を進めるべきであることを強調しました。
 区の答弁の中で、この条例案の目的の第一として、支払督促の申し立てができるようになるという説明がありましたが、支払督促の申し立ては現行の条例によっても可能なものであり、今回の条例案の第一の目的そのものに説得力がありません。また、議案の説明では、この条例を定めないといつまでも債権が残ってしまうという説明がされましたが、地方自治法第236条は、公法上の債権について、法律の特別の定めがある場合を除き、消滅時効の援用を必要とせず、また消滅時効の利益を放棄することができないと定め、債権が時効期間の満了のみをもって消滅するとしています。また、私法上の債権についても同様に、法律に特別の定めがある場合を除き、時効の援用は要しないものであることが、昭和38年2月19日付の国の通知で確定されているところです。この法律に特別の定めがある場合とは、地方税の徴収権についての規定を指すものであります。したがって、地方公共団体を一方の当事者とする地方税を除く金銭債権のすべてに適用があるものであり、いつまでも債権が残ってしまう事態を解消するためという区の説明にも全く説得力がありません。
 このように、区がこの条例の目的とした支払督促の申し立ても、債権の消滅も、いずれも現行の法令と条例の下で既に可能とされており、これらを目的とした新たな条例の必要性は全くありません。現行の条例の下で区の債権管理の適正化は十分に可能であり、新たな条例の必要性はないものであり、鈴木区長提案の条例は、機械的、画一的な債権取り立てを促進しようとするもので、地方自治体の債権管理の適正化の精神からも逸脱するもので、本条例案は直ちに撤回されるべきものであります。
 鈴木区長には、現行の条例の下での区の債権管理適正化のためのイニシアチブの発揮を求め、私の反対討論を終わります。