≪付属資料≫区長挨拶

○鈴木恒年区長 平成14年第2回足立区議会定例会を招集申し上げましたところ、議員の皆様方には、ご多用中にもかかわらず、ご参集をいただきましてまことにありがとうございます。
 開会に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げます。
 私は、昨年6月第2回区議会定例会におきまして、区政の構造改革、財政の構造改革、社会の構造改革が必要であることを表明いたしました。9月には、足立区の構造改革戦略を検討素材としてお示しし、区議会の皆様のご意見をいただき、また、広範な区民の皆様のご議論もいただいて、この6月末には戦略として確定する予定であります。区議会はもとより、区民の皆様、さらにはさまざまな団体や企業の皆様との協働なくして、構造改革をなし遂げることはできません。改めて、区議会の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げる次第であります。
 言うまでもなく、この構造改革を進めるに当たっては、区役所みずからが変わらなければなりません。それには、まず、区の組織、制度を改革し、権限と責任を持った自律型組織へ転換することが必要であります。
 そこで、平成15年度の予算編成、組織・定数管理から、各部自己検証、自己責任システムを導入し、予算編成、定数配分、行政評価を各部に権限委譲する庁内分権を実現いたします。
 そのため、本格的に部別包括予算制度を導入いたします。この制度は、各部に、人件費を含む経常経費について、一般財源ベースで予算編成枠を付与し、各部はその枠内で自主的に予算を調整するものであります。既に、平成14年度予算編成の中で、衛生部、環境清掃部をモデルとして試行を行っております。この試行の結果を踏まえ、来年度の予算編成から、すべての部で実施するものであります。区民サービスの向上を目指す各部間の健全な競争を促し、効果的、効率的な事業実施が可能となるものと考えております。
 さらに、組織・定数の枠配分制度を実施いたします。組織編成のうち、係の編成は各部に権限を委譲し、定数については内示した枠内で各部がその責任で配分することといたします。各部の裁量を認めることで、より機能的な組織編成ができると考えております。そして、これらを行政評価制度と連動させ、各部は、みずからが行った事務事業を成果主義の観点に立って自己評価し、見直すことで、区民の満足度をより高めることができると確信しております。
 以上のような制度を有効に機能させるためには、何よりも組織と制度を動かす職員の意識改革と新しい職員像の創造と確立が必要であります。足立区人材育成基本方針では、政策形成能力、問題解決能力、説明能力等を職員に求めております。これからは、さらに、顧客満足を考慮する、事業コストを意識し事務事業の本来の意義と成果を考える、営業センスを持って協働の働きかけができるといった新しい職員像の創造が必要であると考えます。トリプル研修やOJT等、研修を再構築するとともに、先進事例開発支援制度等を創設して、職員の意識を高め、時代の流れに即応できる職員を育成してまいります。
 社会の情勢は刻々と変化しており、最新の動向を注視しつつ、この変化に即応した改革を進めていかなければなりません。区役所みずからが、制度、組織、職員の改革を行い、区政の構造改革、財政の構造改革を進めることによって自己進化する自治体を目指してまいります。
 ところで、国の動向は、地方自治体にとって大きな影響を与えることは否定できません。しかし、区としては、決して受け身ではなく、地方自治体として可能な限り主体的、積極的に国に対して提案や行動を展開していくことが必要であると考えます。
 国においては、総合規制改革会議や経済財政諮問会議が、規制改革特区や構造改革特区の構想を打ち出したことは新聞報道等でご案内のとおりであります。これは、規制緩和などによる経済効果や問題点などを把握し、全国規模に広げるための社会実験を特定の地区について行うというものであります。地方自治体からの提案によって進め、できるものから着手し、各省庁の調整を円滑に進めるため、首相等がリーダーシップを発揮するという内容のものであります。
 足立区は、足立区の構造改革戦略の方向性やこれまでの区政の改革の実績を踏まえ、この特区構想にチャレンジしてみたいと考えております。足立区の構想といたしましては、生活創造特区、都市再生特区、市場創造特区の三つの特区を考えております。
 まず、生活創造特区は、身の回りの生活の質の向上につながる地域経済・社会の活性化を足立区全域で展開していくものであります。人材、福祉、教育、流通、環境などの各種生活分野と各種事業主体、事業手法等、それらにかかわる規制改革を多面的に組み合わせ、相乗効果の高い生活創造特区を目指すものであります。そして、その成果を足立区の総合的なまちづくりに生かしてまいりたいと考えております。
 次に、都市再生特区は、本年4月5日に公布された都市再生特別措置法によるものでありまして、当区としては千住地区を都市再生特区として考えております。これは、地域経済・社会の活性化を図るため、民間投資を促進する取り組みを支援する、人が集まる交通結節点を重点事項として取り上げるという全国都市再生のための緊急措置の趣旨を受けたものであります。
 そして、市場創造特区では、いままで足立区にはほとんどなかったような産業、雇用の市場を創造し、産業、雇用について区内外へ拡大していくことを考えております。
 なお、この規制改革特区及び構造改革特区については、6月末を目途に中間の取りまとめが行われると伺っておりますが、いまだ不透明な部分があり、さらに情報収集に努め、弾力的な対応を心がけていきたいと考えております。
 このように、国の先進的な動きに対応する一方で、先ほど申し上げました足立区が進める構造改革は、足立区の現状を踏まえた地に足のついたものでなければならないことは言うまでもありません。足立区の構造改革は、足立区の構造的問題点を明確にするとともに、足立区の持てる資源を生かして、区議会、区民の皆様、さまざまな団体や企業の皆様と協働することによって初めて可能となるものであります。幸い、足立区は、多くの資源に恵まれております。中でも、地域で支え合う風土がまだ残っていることは大きな財産であります。特に、町会、自治会等、地域団体が区政に果たしてきた功績は大変大きなものがあります。こうした基盤の上に、さらにNPO等、新たな協働の相手方を拡大しつつ、構造改革を進めてまいります。
 さて、区長に就任して3年が経過し、任期は残すところあと1年となりました。私は、「希望のもてる生活者のまち・足立」を実現するため、高齢者や弱者が安心できるまちづくり、安心して子育てができるまちづくり、安全に住める防災、環境まちづくり、生活者、中小企業に優しいまちづくり、意欲と生きがいを育てるまちづくりを公約としました。そして、議会との協調関係、区民への迅速な対応と十分な説明、報告、区民の皆様の協力を得ることを基本姿勢とし、2年間で赤字体質からの脱却、地域経済の活性化のための景気浮揚策、都市整備と福祉の充実、これらを実現させるための行政改革の推進の四つの重要施策を掲げて公約の実現に努めてまいりました。
 この3年間で、財政健全化計画を策定し、実施し、区民の皆様のご協力をいただく中で、平成13年度決算での赤字脱却を果たすことができました。さらに、職員に対して、スリム、スピード、サービスの3Sを提唱し、第三次行政改革大綱を定め、行政改革を強力に推進してまいりました。その結果、厳しい財政状況の中ではありましたが、新たな産業の振興施策を打ち出すとともに、高齢者福祉施設等の整備や保育の待機児解消のために多様な保育サービスを拡大するなど、公約の実現にいま一歩のところまで達することができたと考えております。
 また、本年第1回区議会定例会あいさつで、私は新しい基本構想の策定に着手することを表明いたしました。現在の基本構想が策定されてから10年になります。この間、バブルの崩壊、地方分権推進一括法の施行、都区制度改革など、大きな社会経済状況の変化がありました。いまや、区が基礎的自治体としての責務を果たしていくため、従来の行財政運営、組織運営を根本から見直す時期にきております。そうした変化を踏まえ、新たな足立区を築いていくための基本的な方針として、新基本構想を策定する必要があると考えております。策定に当たっては、区民との協働を基本として、区民の主体的な参画により進めてまいります。
 私は、今後、安全、安心、安らぎのあるまちづくりと希望と活力のある区政を推進してまいりたいと考えておりますが、新基本構想とともに、足立区の憲法的な意義を持つ足立区自治体基本条例の制定も視野に入れて検討してまいります。早急にメンバーを選出し、具体的な作業に取りかかる予定でありますので、新基本構想策定に当たりましても区議会の皆様のご理解とご協力をいただきたくお願い申し上げます。
 なお、今回ご提案申し上げました議案は17件、報告5件、諮問2件であります。各議案の提案趣旨につきましては、参与よりご説明いたさせますので、慎重にご審議の上、ご決定くださいますようお願い申し上げまして、あいさつとさせていただきます。ありがとうございました。