2、本会議の質問等

○代表質問  大島芳江議員

 私は、日本共産党足立区議団を代表して質問をします。
 最初に、2期目となった鈴木区長の政治姿勢について伺います。
 6月6日、有事法制関連三法案は、多くの国民の強い反対とアジア諸国民の深い危惧と憂慮の声を押し切って採決が強行され、自民党、公明党、保守新党の与党3党と民主党、自由党の賛成で可決成立しました。この法律の本質は、国会審議の中で、小泉首相が事実上の軍隊だという認識を示した自衛隊が、米軍が引き起こす海外での先制攻撃の戦争に公然と武力を持って参加することや、国民を罰則つきでこの戦争に強制動員するところにあります。このことは、基本的人権の最大限尊重などの規定を挿入したという修正や、それに関連した附帯決議によって何ら改められるものではありません。
 また、日本には、自衛隊を動かす法制がない、有事への備えは当然という議論もありましたが、有事三法がなくても、現行の自衛隊法の規定で有事の際に自衛隊を動かせることや、国民の生命、身体及び財産の保護に可能な限り努めることができることが国会審議の中で改めて明らかになりました。それなのに、あえて有事三法をつくったということは、現行法で整備されていない部分、とりわけ武力攻撃が発生もしていない段階で自衛隊が軍事攻撃に踏み切れるようにしたことに本来の目的があったのです。これが、武力攻撃の予測とかおそれなどの規定にかかわる事項です。
 そして、もう一つは、国民と自治体を戦争に協力させるために現行法を変質させたことです。国会で9割が賛成したといっても、国民の9割が賛成しているということではありません。6月10日、日比谷野外音楽堂には、全日本海員組合、全建総連、全日赤、新聞労連など、有事法制が発動されると強制動員の対象となる陸・海・空・港湾関係の労働者や市民5,000人が集まり、戦争協力を拒否する、武力で平和はつくれないと、有事法制を発動させない闘いに踏み出しました。我が党は、憲法第9条を正面から踏み破るこの歴史的暴挙に対して強い憤りを持って抗議し、この悪法の発動を許さず、これを廃止することを目指して引き続き奮闘するものです。

有事法制には自治体にかかわる重大な事項がある

 武力攻撃事態法には、地方公共団体は、武力攻撃事態への対処に関し、必要な措置を実施する責務を有するとされており、攻撃が予測される事態やおそれがある場合でも発動されることになっています。自治体は、国の方針に黙って従うことが義務づけられ、国から膨大な戦争業務を強制されることになります。まず、米軍や自衛隊への物品、施設、役務の提供です。このために、病院、診療所などの管理、区民の土地、家屋の取り上げ、物資の保管命令、収用、医療、土木建設工事、輸送関係者への業務従事命令などを自治体にやらせることになっています。区民の暮らしを脅かし、財産権など基本的人権を奪う仕事を自治体がやらされるのです。
 区長は、昨年第2回の定例会での我が党の質問に、地方自治体にかかわる具体的な事項を詰める段階で、特別区長会、全国市長会を通じて意見表明すると答弁していましたが、どんな意見表明をしたいと考えているのか、お聞きします。
 次に、今回行われた区長選挙は、自民、公明、民主、自由の4党が推薦した鈴木現区長と、日本共産党やあだち無党派の会が推薦し、新社会党が支持した吉田前区長の一騎打ちという大変激しい選挙戦でした。当選には至らなかったとはいえ、政党間の力関係での大きな差を乗り越えて吉田万三候補の獲得した8万4,304票は、選挙期間中、訴えてきた開発優先の区政から暮らし第一の区政への転換の政策が、不況に苦しむ多くの区民から共感と賛同を得たものと考えています。同時に、この票は、鈴木区政の4年間に対する区民の批判票でもありました。この区民の批判をどのように受けとめ、今後の区政運営にどのように生かしていこうと考えているのか、お聞きします。
 次に、足立区構造改革について伺います。
 2期目に入った区長は、13日の所信表明で、改革の一歩を踏み出した、1期目で残された改革課題を解決すべく、第2ステップへ移行しなければならないと述べました。区長は、国の財政改革や構造改革をよしとし、これを見習って構造改革戦略を定め、先取りするように1期目の改革を進めてきました。地方自治法第1条第2項には、地方自治体の役割の基本は住民の福祉の増進を図ることであることが定められています。
 そこで、この改革で、住民の福祉の増進がどこまで図られるのかという観点から、以下質問します。
 区の構造改革戦略は、小泉内閣の、いわゆる骨太方針第一弾に登場したニュー・パブリック・マネージメントと言われる新しい行政経営手法を導入したものと言えます。この行政手法は、これまで行われてきたような臨調行革路線とは異なり、従来行われてきた定数削減、予算緊縮、組織統廃合で行財政規模を縮小することに加えて、小さくした行政の内部に民間企業的な経営を大胆に導入するという行政の経営改革とも言われるものです。このやり方は、民間企業のように明確な経営戦略を立て、リスク承知で事業の選択と集中を行うということです。つまり、この経営戦略で重点とされた施策については、リスクはあっても行政として集中的に取り組み、それ以外の事務事業は撤退、廃止、統廃合、民間委託などで公的責任を放棄するということを意味します。
 区長は、この構造改革戦略で、市場原理に適合するような仕組みづくり、国の政策を率先して実施する仕組みづくり、民間企業の活動を保障する仕組みづくり、さらに行政に依存しない自助、自律の区民意識づくりを進めようとしています。しかし、福祉や教育など、住民にとってどうしても必要な公共的な仕事は民間任せにしないで、みずからの責任で取り組んでこそ自治体と言えます。自治体本来の仕事は、国がやらないことでも、住民のニーズに合わせて独自施策として実施したり、民間では採算がとれない分野を積極的に担って住民の福祉を増進することにあったのではないでしょうか。
 ところが、足立区にように、民間でできることは民間へと、民間並みの効率、民間ベースの採算基準で判断し、事業や施設の運営を民間委託や民営化で職員を削減し、事業の廃止、縮小で大きく後退させてしまっては、まともな自治体とは言えず、営利企業というほかないではありませんか。これでは、自治体の営利企業化、開発会社化を一層進めることになります。
 区は、この手法に基づき、平成16年度までの構造改革工程表を示していますが、この方向を進めれば、自治体として存在する意味がなくなってしまうのではないか、また、自治体本来の仕事をどのように考えているのか、お答えください。

区民の暮らしは深刻、区民負担をふやすべきではない

 次に、工程表では、減量に向けた取り組みの維持と歳入の確保策を各部で検討するということになっています。この4年間で、鈴木区政は、保育料の36%値上げや学童保育保護者負担金の65%値上げ、社会教育団体の施設使用料免除制度の廃止など、区民に負担増を押しつけてきました。区民の暮らしが深刻になっているときに、保育料の値上げや手数料、使用料の見直し、学校開放時の施設使用料の新たな徴収など、これ以上の区民負担をふやすべきではないと思うが、どうか。
 また、生きがい奨励金支給事業のあり方について見直しを行うという計画となっていますが、どのように見直そうとしているのか、お聞きします。
 次に、鈴木区長の法定1号ビラには、前区政では赤字転落、現区政は財政健全化達成、また、借金で赤字をふやし続けることは、子どもたち、孫たちに重荷を背負わせることだけではなく、やがて最低限のこともできなくなると書いてありました。
 財政問題では、全国共通の自治体の財政指標は実質収支であり、足立区では一貫して黒字であったことを改めて繰り返す必要はないと思いますが、借金が制限されるようになるところにまで落ち込む危険性を心配するのであれば、そのような借金財政にした鈴木区長が助役を務めていた古性区政こそ批判すべきではありませんか。古性区政は、その最後の4年間で、それまで618億円だった借金を1,313億円と倍加させ、区財政を悪化させました。吉田区政は、この残された1,300億円を超す借金を引き継ぎ、新たな借金を減らし、返済額をふやすというやり方で区財政を立て直す道を開きましたが、わずか2年8カ月で膨大な借金を大幅に減らすことなどできるわけもありません。この古性区政時代の借金が区財政を行き詰まらせた原因と思うが、どうか。
 また、鈴木区長になってから、大型公共事業などに係る投資的経費の増大で、新たな借金となる起債発行額は、平成15年度当初予算で見ると、平成14年度の2倍増、92億5,800万円となっています。今年度予算で新たな借金を倍加したのは、23区の中でも足立区だけです。起債発行残高も、1,244億9,300万円となっています。また、15年度以降、既に支払いが予定されている債務負担行為額は43億7,700万円ふえて258億7,800万円にもなっています。大型開発事業につぎ込むために借金をふやし続けるのでは、区民の将来にわたる財政負担は重くなるばかりではないか。
 次に、区長は、1期目に行った包括予算制度を今後の構造改革の基礎と述べています。この予算制度の仕組みは、まず、すべての事業を投資的経費と経常的経費に分類し、人件費を含む経常的経費の予算編成については各部に権限を移譲します。各部は、配分された一般財源と国や都からの補助金などの特定財源で事業を行い、最終的に残ったお金は半分を基金などに積み、あと半分は次年度以降の予算枠に加算するというものです。
 ここで、問題なのは、包括予算制度といっても、開発にかかわる投資的経費は、最初からこの制度の対象外となっていることです。しかも、各部は、コスト感覚に基づいて事業を執行し、予算を残せば、それが評価され、褒賞が与えられるという仕組みの中では、結果として予算や事業執行を抑制することになっていくのではないでしょうか。このやり方は、これまでどおりの大型開発は温存したまま、人件費や高齢者、障害者、子どもたちの福祉サービス、教育に係る予算など、経常的経費の増大を抑え、削減することを優先する姿勢のあらわれと思うが、どうか。
 この投資的経費の問題では、区も、このまま推移すれば重大に事態なると判断しました。財政健全化計画では、現状での厳しい財政状況のもとでは大幅なおくれもやむを得ないと、計画事業を15年度までに一般財源ベースで30%削減することを目標に、年間180億円程度に圧縮したいと言いました。しかし、投資的経費の増大に歯どめがかけられず、平成15年当初予算では323億8,500万円と2倍近くに膨れ上がっています。
 1月に策定された中期財政計画には、包括予算制度を適用されない投資的経費の10年間の計画的執行内容が書かれています。北千住、竹の塚、西新井、千住大川端、新田地区の開発では、いまわかっているだけでも総事業費はおよそ1,800億円、そのうち、かなりの金額を区が負担しなければなりません。しかも、このような大型公共事業の大部分がゼネコン対応で進行し、区内業者はなかなか参入できません。この長期不況の中で、区内には、区内業者でも施工することができる大震災に備えるための学校や区民施設の改築など、区民の安全を守り、区民が望む緊急な公共事業が山ほどあります。
 今後、進められようとしている大型開発事業は、地域住民と時間をかけてじっくり協議し、財政状況を見ながら、計画的に区民施策とのバランスをとって進めるべきです。また、実質的には、区内業者が排除されるPFI手法は当面凍結し、区内業者の仕事確保にもつながる生活密着型公共事業を推進すべきではないか、答弁を求めます。
 次に、区民の暮らし、福祉を守る区政運営について伺います。
 国の構造改革方針のもとで、不良債権処理の加速化、リストラの促進、社会保障の改悪、負担増などが強行され、労働基準法や年金の改悪、消費税増税計画など、将来に対する不安は大きくなるばかりです。区民は、失業や倒産、生活苦という大変深刻な状況に追い込まれています。このようなときだからこそ、自治体は、より一層真剣な対応を行い、区民の暮らしや福祉を守る取り組みが求められています。
 それには、区民の暮らしを維持向上させ、区内の民間事業者に投資力をつけさせることに区の財政支出を優先して行うという暮らし第一の区政運営に切りかえていただきたいのです。こうすれば、区民が地域内の資金循環の担い手として、繰り返し投資する力を持つことができるようになり、地域経済を活性化する決め手になると考えるからです。大型開発優先の区政運営では、大型公共事業への財政支出のほとんどを外部ゼネコンが吸い上げて、外部の資源を持ち込み、雇用でさえ地域外から持ってくる場合が多く、これでは地域内の経済力が高まることにはなりません。
 この立場から、我が党が実施した区民アンケートなどに示された切実な要求を実現するために、次の何点かを提案させていただきます。
 小泉構造改革は、大企業の無法なリストラや不良債権処理の加速などと言って、国策として失業者をふやし、中小企業を倒産に追い込むようなやり方がまかり通っています。総務省が発表した4月の完全失業率は5.4%、完全失業者数は前年同月比で10万人もふえ、4月としては過去最多の385万人に達し、多くの国民がいつ失業するかわからないという深刻な不安にさらされています。東京商工リサーチの調査では、希望・早期退職者を募集した上場企業は、調査を開始した1998年から2003年3月までで673社に上ることがわかりました。しかも、募集年齢は、働き盛りの40歳以上に集中しています。リストラの対象になっているこの年代は、住宅ローンを抱え、子どもの教育費も高くなる世代です。大手企業のリストラが、雇用不安の高まりに一層拍車をかけています。
 失業、廃業により生計の維持が困難になった世帯に対し、再就職までの間の生活資金貸し付ける離職者支援貸付制度は、政府の総合雇用対策に基づき、国の制度として創設され、社会福祉協議会が実施主体となって実施されています。しかし、貸付対象が、生計中心者の失業、廃業に限られ、不安定な経済状況のもとで収入が著しく減少したり、他の貸付金などが受けられなかったりする区民に対応できません。
 舎人に住むTさんは、58歳、プラスチック加工の自営業を営んでいます。会社員だった妻が死亡した後、妻の収入もなくなり、不況の中で自営の仕事も少なくなって収入が激減してしまいました。そんなとき、子どもが私立大学に合格し、入学金150万円を納めなければならなくなり、月10万円の住宅ローンも滞る状況になってしまいました。仕事は少なくなっても廃業はできず、生活保護も受けられない状況の中で、一時的な貸し付けができるような制度があればと切実に望んでいました。
 梅田のSさんは、会社が倒産し、失業しました。妻がパートで働いていますが、失業給付金とパート収入だけでは生活していくのがいっぱいです。この4月、子どもが高校に入学し、入学金を含め、支度金が70万円ほどかかり、毎月の住宅ローンの支払いも大変です。せめて、就職先が決まるまでの間、入学支度金や住宅ローンに充てられている貸し付けが受けられないかと強く望んでいました。

(仮称)緊急生活保障制度の創設を求める

 このように、国の制度や他の貸付制度などのはざまになる区民に対して、生活資金だけでなく、入学支度金や住宅ローンのつなぎ資金などにも充てられる貸付金として(仮称)緊急生活保障制度を創設する考えはないか、お聞きします。
 次に、区内の公社や第三セクターなどを含めた公的機関が発注する公共工事や委託事業などの契約は、区内業者優先を貫くことはもちろんのこと、公共事業の現場で働く建設労働者の賃金や労働時間、労働条件も適正に確保することも必要です。不景気になると、民間工事、公共工事を問わず、そのしわ寄せは施工単価や労務費の引き下げとして末端施工業者や現場労働者に向けられてきます。そのため、建設労働者の賃金は常に不安定な状態にあり、明確な賃金体系の確立や労働条件の整備も不十分なまま、低賃金、長時間労働といった労働環境に置かれています。建設業界は、重層の下請構造で成り立っていると言われ、下請階層が下に行くほど、同じ労働であっても賃金が切り下げられる構造になっています。
 北海道の帯広市や函館市は、下請適正化指導要綱を作成し、公共工事の受注業者に対し、市が積算した設計労務単価を職種別に示し、この水準を踏まえて現場労働者に適正な賃金、労働条件を保証するよう指導することなどを市発注業者に徹底しているとのことです。
 足立区でも、公共工事においては、たとえ何次の下請労働者であっても、その地域の標準的な賃金水準を下回らないよう、条例などで元請が末端の下請労働者の労働条件を確保する義務を負わせることや、賃金の最低基準を定めるなどして低賃金を規制し、生活できる賃金や労働条件の保護を行う考えはないか、伺います。
 次に、長引く不況のもとで、個人消費の落ち込みは、商店街やまちそのものを衰退させる要因となっています。区内中小企業の第4・四半期の景況調査によると、いずれも先の見通せない厳しい状況が続いていると言えます。小売業でも、売り上げの停滞、減少、大型店との競争の激化、商店街の集客力の低下の順で経営上の問題点が上げられています。
 区も、地域社会の最新の動向について、住宅地内にスーパー、家電などの出店が盛んであると言い、北千住駅西口再開発ビルには丸井、竹ノ塚駅西口南地区再開発ビルには西友という大型店の出店が決まっています。大型店の出店、撤退とともに、チェーン店やドラッグストアー、家電量販店のような専門店の進出が地域商店街の売り上げ減少や住民生活を振り回しています。
 こうした厳しい状況の中でも、何とか展望を切り開こうと独自で努力している商店街に、自治体の支援が適切になされてこそ、活性化に向けて一定の成果が上げられるのではないでしょうか。地域の商店街や中小業者は、日々の人間関係の中で地域住民のきめ細かいニーズを把握し、それにこたえた創造的な商品の製造、販売やサービスを提供してくれる存在です。高齢化が進む中で、高齢者が地域に住み続けられるまちとして守っていくためにも、地域コミュニティの核としての商店街の活性化を重視する必要があります。
 京都市の西新道錦会商店街振興組合では、お客さんに得してもらうことを徹底してやっているということです。お客さんに、ここのお店、商店街に行くと得すると感じてもらえるかどうかが売り上げにはっきりとあらわれることを認識して、個店の努力と商店街の活動がなされていて、そのことが地域の消費者にもはっきりと伝わっているということです。具体的には、振興組合として、大小さまざまなイベントを含めて年間に43ほどの事業を行っていますが、その中でも高齢者に好評なのが買い物のときにお金の出し入れをしないで済み、4%という高いプレミアをつけたエプロンカードと言われるプリペイドカードや、事務局が一括して複数の商品の注文を受けるファクスネットです。
 そこで、足立区でも、足腰が弱って買い物が困難な高齢者にファクスを貸し出し、地域情報や商品情報を発信するとともに、受注を共同化して、複数の店の商品をファクスで注文を受け、配達もするサービスや、商店街の中の空き店舗や空き地などを活用し、買い物で疲れた高齢者が一休みできるような休憩所を設置するなど、高齢者が日常的に生活のよりどころとなる事業を拡充する商店街に支援する(仮称)高齢者サポート商店街支援事業を行う考えはないか、お聞きします。
 また、吉田区政の時代に、街路灯の電気代補助をそれまでの2分の1から3分の2に引き上げ、喜ばれましたが、空き店舗がふえ、商店街街路灯の電気代負担も困難になっている商店街も多いことから、商店街街路灯の補助金をふやす考えはないか、答弁を求めます。
 次に、介護保険の利用料の軽減策についてお聞きします。
 介護保険制度は、3年ごとに事業計画と保険料の見直しを行うことになっており、足立区では、介護保険の軽減を求める住民の運動と、毎議会ごとに取り上げ続けた我が党の提案もあって、保険料の据え置きと低所得者の軽減策も実施されることになりました。
 内閣府が2002年8月に出した介護サービス価格に関する研究会報告書の「介護サービス市場の一層の効率化のために」を見ると、介護保険導入前の1999年との比較で、訪問介護サービスを利用した人の割合は、全体では2〜3倍にふえているのに対し、世帯年収400万円以下の低所得者だけを取り出してみると、利用した人の割合は10%減になっています。そして、同報告書では、制度見直しに向けて改善すべき点の一つとして、「低所得者が真に必要な介護サービスを受けられないということのないよう十分配慮していく必要があります」と指摘しています。

介護サービスの利用料―区独自で3%の軽減策を

 訪問介護サービスの利用料は、国の特別対策として、低所得者で介護保険制度実施前まで無料で利用していた人だけを対象に、ホームヘルプサービスに限って利用料負担を3%にする軽減措置がとられてきましたが、今年度から2倍の6%に引き上げられてしまいました。その後も、段階的に負担をふやし、最終的には10%にするということですが、国の見直しを待つのでなく、低所得者が真に必要な介護サービスを受けられないということがないよう、区独自で3%の軽減策を継続する考えはないか、また、新規該当者にも適用する考えはないか、お聞きします。
 次に、青年の雇用対策についてお聞きします。
 2003年度版「国民生活白書」によると、デフレが長期化する中で、正社員になりたくてもなれない人を中心に、フリーターが1990年の183万人から、2001年時点で417万人と、2.3倍に急増したと指摘されています。卒業後に正社員としての就業希望はあっても、景気低迷による労働需要の減少や企業の雇用戦略見直しから、新規採用を厳しく抑制し、雇用を調整していることなどで、実際に正規社員となれる人は少なく、失業期間が長くなると働く意欲を失い、仕事を探すことすらやめてしまう人が多いと指摘されています。また、若年層の雇用の悪化は、若者の暮らし向きも悪くなり、結婚や出産を控える人も出てきて、未婚化や子育ての経済的負担が高まる中で、少子化がさらに進むことが懸念されるとまで言われています。高校卒業生の就職も最悪の事態となっていることが、厚生労働省の資料でも明らかとなっています。
 このような若者に対して、無料就職相談窓口の設置や区独自で雇用を拡大することなど、若年層の雇用対策を積極的に進めるための対策が必要と考えますが、区の考えをお聞きします。
 最後に、旧本庁舎跡地利用についてお聞きします。
 旧本庁舎の跡地には、区民要望と地元のにぎわいを基本に、産業振興センターを中心とした施設計画をつくるべきであるというのが、我が党の一貫した主張です。我が党が考える産業振興センターのあるべき姿については、昨年12月議会で提案しましたが、信用保証協会も含め、区内産業の核となっている機関を集中させ、技術、経営、融資などの相談や指導、情報、資料の収集、技術研究や開発、研修機能を持たせ、区内産業の支援、振興策が丸ごとできるような機能を持つ中核・中心施設とすることです。
 ところが、鈴木区長のもとで進められてきた内容は、区独自で跡利用計画を区民に提案することができず、区民の財産である跡地を定期借地権つきで民間企業に貸し出しすることを条件に、民間企業がみずからの営利活動のための施設を提案させるというプロポーザル方式をとりました。区民要望も地元要望も聞かないまま、最優秀案と決定されたO案は、民間企業の要望を優先させ、土地の権利金も保証金も取らず、安い地代で貸し出して、その中にわずか2割程度の区民施設である産業振興センターを導入するというものです。地元のにぎわいという点でも、集客力は、スポーツクラブ、レストラン、コンビニが主なもので、中心施設のSOHOや十八番市場などの利用者は、利用者全体の1割程度しか見込めないというものです。
 しかも、O案を最優秀案と決める過程での疑惑が指摘されたまま、提案事業者と基本協定を結んだことは許されません。基本協定では、事業内容の最適化に向けて、継続して協議することは可能であり、その協議で合意されれば、施設内容及び機能の変更も可能となっています。
 地元のにぎわいにも産業支援にもならない現計画を見直し、施設計画に区民要望を最大限盛り込むべきと思うが、どうか。また、近隣商店街や町会など、地元の要望はどのように反映させようと考えているのか、答弁を求めまして、この場所での質問を終わります。

答弁

○鈴木恒年区長 大島芳江議員の代表質問にお答えいたします。
 有事法制でありますが、外部から武力攻撃を受けた場合の緊急事態における基本理念と手続を整備する法律が、国会で圧倒的な賛成で成立したことは画期的なことだと考えております。
 お尋ねの地方自治体にかかわる事項への意見でありますが、この法律を、使わなくて済む法になるよう、外交防衛政策を一層高める努力を政府に期待する一方、今後、議論となる国民保護法制の動向など、具体的な状況を注視しながら、必要があれば特別区長会または全国市長会を通して表明してまいります。
 次に、今回の区長選挙の結果につきましては、私は、多くの支持をいただき、4年間の区政運営が評価されたものと意を強くしているところでありますと同時に、改めて責任の重さを痛感しております。吉田候補に投票されました8万4,000余票につきましては、もちろん批判票もありましょうし、もっと頑張れという辛口の励ましの票もあるのではないかとも考えております。
 いずれにいたしましても、いま、区民が一番望んでいることは何かという原点に戻り、かつまた、将来のために、いま、やらなければならないことは何かを見きわめながら、今後の区政運営を進め、全力を挙げて区民の信託にこたえてまいりたいと考えております。他のご質問につきましては、参与から答弁をいたさせます。

○坂田道夫政策経営部長 私からは、構造改革に関する一連のご質問についてご答弁申し上げます。
 まず、今日の厳しい社会状況を乗り切り、将来に備えるためには、従来の改革の手段や枠組みを超え、既存の構造をもとから改め、かつ、区政の隅々まで徹底するといった考え方に立って改革を進めなければならないと考えています。そのためには、足立区の構造改革戦略にあるような改革への取り組みは不可欠であります。自治体の役割は、社会状況の変化に伴って変わっていきます。足立区としては、これまでの取り組みだけでなく、自治体として新たな課題にも対応していくことのできる自己進化する自治体を目指して改革を進めております。
 続いて、我が国における第三次産業の4分の1を占めるとされている公的サービス分野を米国並みに民間へ開放すると、最大で800万人の雇用が創出されると推定されています。足立区としては、公的サービス分野の規制緩和を進め、引き続き民間にできることは民間へ移行していくことにより、自治体として本来果たすべき役割の着実な遂行と児童虐待や雇用など、従来、着手できなかった分野への取り組みに重点を置いていく考えであります。今後も、構造改革を着実に進めながら、住民福祉の増進に努めてまいりたいと考えております。
 続きまして、負担金、使用料などの見直しは、受益者に対して決して過度な負担を強いるものではありません。サービスにかかったコストについて、応分の負担をその能力に応じて求めるものでありまして、受益者間の負担の適正化を図るとともに、広く区民全体の公平の原則を維持するものです。
 生きがい奨励金支給事業につきましては、平成13年度に見直しを行い、現在は足立区内共通商品券を配布しております。生きがいに関しては、人それぞれがさまざまな希望や考えをお持ちであり、高齢者に多様な学習や活動の場を提供していくことも、その一環と考えています。今後、現行の生きがい奨励金支給事業も含め、全庁的に検討を行ってまいりたいと思います。
 続いて、4年前の区長就任時には、区財政が危機的状況にあり、財政健全化は最大の課題でした。この窮状を区民の皆様と共有し、ご理解をいただきながら、平成15年度予算をもって財政健全化計画の当初の目標を達成いたしましたことは、多くの区民の皆様にご理解をいただいているところであります。
 また、ご指摘の公共事業についてですが、生活密着型の事業だからこそ、現在の区民と次世代の区民の方々にも負担していただくことが合理的であり、かつ、理解されているところであると考えております。足立区の未来を見据え、ここで育つ子どもたちが誇りを持って住み続けたいまちをつくるためには、学校の耐震補強を含め、道路や文化施設の整備も重要であります。今回の起債に当たっては、義務教育施設整備事業を初め、臨時地方道路整備事業、(仮称)総合文化センターの整備などが主なものとなっております。
 続きまして、投資的経費につきましては、多額の経費を要することや、道路用地の確保や学校の改修計画、各種施設の改修のように、長期的な視点から財政計画や区政全般を見渡した計画的な事業実施が求められています。そのため、包括予算制度の中では、単年度で収支を完結する事業予算としての経常経費とは区分しております。
 続いて、ご指摘の北千住駅や竹ノ塚駅の地区再開発事業につきましては、都市基盤整備がおくれている当区において、その実現は区民の悲願であり、足立区の発展と区民生活の利便性を向上させるためにも不可欠なものであります。また、その他の面的開発についても、同様の事情がある中で、官活や民活により区負担を最小限にすべく努力をしているところであります。
 中期財政計画でのその他の投資的経費は、学校や保育園の整備、公園、区道の維持管理経費など、区民に身近なものばかりであります。このような生活密着型公共事業については、極力区内業者の参入を実現していきたいと考えております。

○石川義夫福祉部長 私からは、緊急生活保障制度についてお答えいたします。
 失業した方については、国の失業給付や社会福祉協議会での離職者支援資金貸付制度があります。また、子どもの教育費に関する貸付制度としては、区の育英資金や公的機関による奨学金、社会福祉協議会で行っている修学資金貸付制度等があります。さらに、本年4月から、低所得世帯で緊急的かつ一時的に生計の維持が困難になった方を対象に、社会福祉協議会において緊急小口資金貸付制度が開始されました。したがいまして、これらの制度の活用により、個別に対応していただきたいと考えております。

○坂本寛文産業経済部長 私からは、まず、公的機関が発注する契約についてお答えいたします。
 区が発注する契約の区内業者優先につきましては、庁内で組織する足立区経済活性化推進本部で策定した平成15年度足立区経済活性化推進事業の中でも規定し、全庁的な取り組みを積極的に行っております。さらに、区内官公庁についても、同様の取り組みを依頼しております。
 また、資金の最低基準の規制についてでございますが、自治体の区域を超えた全国を視野に入れた法律による規制であり、国の所管する業務と考えております。このため、区の条例事項とは考えておりませんが、国や東京都と連携しながら、機会をとらえて企業等に対する啓発を行ってまいります。
 次に、商店街への支援についてですが、さきに白石正輝議員に答弁しましたとおり、昨年の9月には商店街振興プランを策定し、そのプランに従い、商店街の空き店舗対策としてコミュニティ施設活用商店街活性化事業を推進しているところでございます。
 一方、商店街街路灯の電気代補助でございますが、平成11年より補助率を2分の1から3分の2に変更して商店街の負担を軽減してまいりました。当面は、現在の補助率を継続してまいりますが、包括予算制度の中で一層の創意工夫を行うことによって、その負担の軽減に努めてまいります。
 若年層の雇用対策についてお答えいたします。

若年層の雇用機会の拡大を約束

 13日の本会議初日に芦川武雄議員にお答えしたとおり、今年度、ハローワーク足立において、若年求職者に対する職業相談、職業紹介を行うヤングコーナーが設置されたほか、区といたしましても、本年4月に設置した足立区雇用促進協議会において、雇用創出都区を含め、若年層の意識啓発やスキルアップを図るなど、雇用機会の拡大を図ってまいります。
 次に、旧本庁舎跡地利用についてお答えいたします。
 この計画は、千住地域ににぎわいを創出し、区の産業振興及び経済活性化を図ることを目的に、区と民間事業者とのパートナーシップのもとに進めていく事業であり、特定の事業者を利するためのものではありません。本計画は、あだち産業会議においても十分検討され、議会においては区民委員会、公共財産等活用調査特別委員会、中小零細企業経済対策調査特別委員会の3委員会において審議されてまいりました。また、地域関係団体等にも、議会の動向を含め、説明をし、ご理解を得ながら進めてきており、区民要望についても議会へ報告を行うなど十分な対応をしております。
 権利金と保証金については、本計画が区の政策である区内産業の振興に資するという事業目的から、本年第1回定例区議会において議決をいただき、免除が決定されたものであります。
 また、地代については、区財産価格審議会で定めた定期借地契約の貸付料の基準を適用したもので、適正な価格であり、安い地代とのご指摘は当たりません。
 また、事業案の選定に当たっては、区民代表者、学識経験者、行政代表により構成された審査委員会において、2次にわたる公平かつ客観的な審査を経て最優秀案として決定されたものであり、疑惑の入る余地はありません。
 区といたしましては、本計画の事業目的を達成し、区内産業の振興と地域のにぎわいのため、一日も早く事業の実現が必要であると考えております。したがいまして、現計画を見直す考えはありません。

○佃朝明区民部長 介護保険利用料の軽減についてお答えいたします。
 ホームヘルプサービスの3%軽減制度は、介護保険開始時に国の特別対策として経過措置で実施されたものであります。したがいまして、区といたしましては、独自に継続することは考えておりません。また、新規利用者で負担が困難な方々につきましては、足立区介護保険サービス利用者負担額の軽減制度をご利用いただきたいと存じます。今後とも、PRに努めてまいります。

再質問

○大島芳江議員 何点か再質問をさせていただきます。
 まず最初に、区長の政治姿勢のところで有事関連三法案の問題ですけれども、これで一番問題にしたのは、予測またはおそれといったことがあったときでも武力攻撃ができる内容に変えたという問題でありまして、そういう意味ではそういうことがない方がいいという区長の考えと、そういう事態に立ち入らない方がいいということはあるのですが、おそれや予測でも、そういう事態になってしまうところに大きな問題があるわけです。
 そして、先ほどの話の中では、今後できる国民保護法の問題などでいろいろなことが論議されるので、その段階で必要があれば意見を言うとおっしゃいましたけれども、いまの段階では必要がないと考えていらっしゃるのでしょうか。
 それから、必要があればといっても、どんな意見表明をしたいと考えているのかという点については述べられておりませんでしたので、その点についてお聞きしたいと思います。
 それから、区長選挙の問題につきましては、批判票もあるけれども、辛口の励ましもあるのではないかなどということで、吉田候補のとった8万4,000余票を評価いたしておりましたが、私たちはこれは明確に現区政のやり方に対する批判票だと受けとめております。謙虚に批判として受けとめて、この問題について今後の区政運営に反映させていかなければならないのではないか、そういう謙虚な気持ちもないのかと思いましたので、もう一度、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
 それから、構造改革の問題のところで、大型開発とあわせてPFI手法について、当面、凍結すべきではないかと。これは、特に先ほど述べましたように、地元の業者がなかなか参入できないような仕組みになっているというところから、この問題については凍結したほうがいいのではないかということを言ったのですが、これについてのお答えがありませんでしたので、これについては再答弁をお願いしたいと思います。
 それから、福祉の分野で、先ほど緊急生活保障制度の提案をさせていただきましたが、福祉部長さんの方から、るる制度は読み上げられましたけれども、私たちが言っているのは、そういった制度があることを承知の上で、そのはざまになってしまう人たちを何とか救えないか、このことが、むしろ自治体としてやらなければならない、国の制度などで救えない人たちを救うことが必要ではないかという立場で提案をしておりますので、そのはざまになる人についてどのように考えていらっしゃるのか、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
 それから、産業経済の関係で言いますと、先ほど賃金の最低基準を条例で定めるのは全国的な問題に絡めて難しいと、これは最賃制の問題を意識して言われているのかと思いますが、先ほど私が提案をいたしましたのは、北海道の帯広や函館でやっているような下請の方たちの賃金を適正に指導していくという立場で、ここは市が積算しているのですけれども、区が、それぞれの建設労務の単価を積算することなどで、末端の下請の方たちの賃金も元請からきちんと払われているのかどうかということを保障していくような指導を自治体としてする必要があるのではないか。この立場で、条例や指導が必要ではないかという角度で質問をさせていただきましたので、区の方としてそういうことをやることができないのかどうなのか、そのお答えをいただきたいと思います。

再答弁

○鈴木恒年区長 再質問にお答えいたします。

有事法制が通り「これで普通の国になった」と答弁

 有事法制のことでありますが、先ほどご答弁申し上げましたように、国会におきまして大多数の賛成で成立した法律でありまして、私の考えとしましては、これで普通の国になったなと、そんな感じがするわけでありまして、いまの時点では問題ありとは言えないのではないか。ただ、これから決められていきます国民保護法は、国を守り、国民を守るのが目的ですから、この辺のところが見きわめられない以上は何とも言えない状況であります。
 それから、8万余票の吉田候補の得票につきましては、私の予想以上の票をとっていただいたということで、もちろん謙虚な気持ちで受けとめておりますが、これから、このことにつきましては、私どもの区民に対する情報提供がもっともっと正確に区民に伝わるように努力をしていかなければいけないのではないかと思っております。

○石川義夫福祉部長 先ほどお答え申し上げましたとおり、それぞれの制度のはざまということでございますので、個別に対応していくべきではないかと思ってございまして、そういうことで先ほど個別に対応していただきたいと考えておりますというお答えを申し上げたところでございます。

○坂田道夫政策経営部長 PFIにつきましては、ご存じのとおり、財政の負担をできるだけ平準化するということ、さらには民間企業の創意工夫を持ち込むということで、我々は積極的に取り組んでいきたいと考えておりますが、特に今後、学校等で地元の事業者の確実な参入を保証するような資金をつくった上で積極的に導入していきたいと考えております。

○坂田寛文産業経済部長 私への再質問でございますけれども、まず、当初のお話にありましたように、賃金ということになりますと、これは下請業者の賃金ということで、議員さんお話の最賃法の制限を受けていくということでございます。
 もう一つ、いわゆる下請ということになりますと、これはいずれも経営者になりますので、契約自由の原則、契約の重視という問題になってまいりますから、あくまでもそれが重視されないときは最終的には司法権の扱いになりまして、これに対して直接的に条例を制定して契約の関係の中に行政機関が関与することは不可能だと考えております。