T、可決した意見書
(1)税源移譲を基本とする「三位一体の改革」に関する意見書

 現下の地方財政は、バブル経済崩壊後の税の大幅な減収に加え、国が経済対策の一環として実施してきた国税及び地方税を併せた政策減税、景気対策による公共事業の追加等の経済財政運営により、財源不足が拡大し、危機的な状況にある。
 各都市においては、徹底した行財政改革に積極的に取り組んでいるが、個性豊かな地域社会の形成、少子高齢化への対応、地域経済の活性化等の新たな行政課題に直面しており、真の分権型社会を実現するためには、自己決定及び自己責任に基づく地方税財政基盤の確立が喫緊の課題となっている。
 政府においては、平成14年6月25日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」(骨太の方針第2弾)に基づき、国庫補助負担金、地方交付税、税源移譲等を含む税源配分のあり方を三位一体で改革し、6月末までに改革工程表をとりまとめることとされている。
 この三位一体の改革に当たっては、地方分権の基本理念を踏まえ、地方分権改革の残された最大の課題である、国と地方の役割分担を踏まえた税源移譲等による地方税財源の充実強化が必要不可欠である。
 よって、足立区議会は国会及び政府に対し、次の事項についての早期実現を強く求めるものである。

1 基幹税の再配分を基本とする税源移譲等の地方税財源を充実強化すること
2 地方交付税を通じた財源保障機能と財源調整機能を堅持すること
3 国庫補助負担金の廃止及び縮減は、単なる地方への財政負担の転嫁とせず、税源移譲等と一体的に実施すること

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

  平成15年6月17日
                 議  長  名
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
内閣官房長官         あ て
経済財政政策担当大臣
総務大臣
財務大臣
経済産業大臣


(2)郵便投票制度等の改正を求める意見書

 現在の公職選挙法における郵便投票制度では、ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者や、対人恐怖症などで投票所に行けない知的障害者は、選挙権の行使が出来ない状態にある。この状況について「郵便投票において代筆が認められていない現行の選挙制度は法の下の平等に反する」、「郵便投票制度を重度身体障害者に限った選挙制度は憲法違反である」などと、ALS患者等が国家賠償請求訴訟をおこした。これを受け地方裁判所の判決は、原告の訴えは退けたものの、「原告等が選挙権を行使できる投票制度が無かったことは、憲法違反と言わざるを得ない」、「現行制度は憲法の趣旨に照らして完全ではなく、在宅投票の対象拡大などの方向で改善が図られてしかるべきものである」など、行政府に現行制度改善の努力を求める判断を下した。
 これらの判決に関して、政府高官も「投票困難な人々の投票機会を確保することは重要な課題と認識している」と発言している。
 我が国の郵便投票制度で投票できる人は、自書できる人で、身体障害者手帳等の交付を受け、障害の程度が定められた基準に該当する人のみである。また、郵便投票ができる人でも、手続きが煩雑である等、選挙権の行使が困難な状況にある。従って、民主主義の観点からも、早急に制度を改善し、こうした人々の参政権の確保を図るべきである。
 よって、足立区議会は国会及び政府に対し、下記事項の所要の措置を早急に講じ、選挙権(投票の機会)という基本的権利を行使するにあたっての障壁を、一刻も早く取り除くことを強く求めるものである。

1 障害者や難病患者、要介護状態の高齢者等、郵便による不在者投票対象有権者の範囲を拡大すること
2 ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者等、自筆が困難な人のために在宅代理投票制度を導入すること
3 現在の郵便投票制度における資格証明や申請手続き等の簡素化を図り、容易に投票できるように改善を図ること
以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出する。

  平成15年6月30日
                 議  長  名

衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣     あ て
総務大臣


(3)外国人学校への大学入学資格付与早期実現を求める意見書

 近年、我が国に中・長期的に滞在する外国人が増加しており、その子ども達の多くが日本国内にあるインターナショナル・スクールや外国人学校に通学している。
 しかし、現在彼らが我が国の国立大学などを受験しようとする場合は、大学入学資格検定に合格しなければ入学試験を受けることができない。
 一方、政府の規制改革推進3か年計画(平成14年3月29日閣議決定)は「インターナショナル・スクールにおいて、一定水準の教育を受けて卒業した生徒が希望する場合には、我が国の大学や高等学校に入学する機会を拡大する。」と入学資格の弾力化を提案した。
 これを受け、文部科学省は本年3月に、教育に関する規制緩和の一環として、米国の西部地域学校大学協会(WASC)など3つの英米学校評価機関によって認定された欧米系のインターナショナル・スクール16校に大学入学資格を認めることとした。しかし、中華学校、韓国学校、朝鮮学校などアジア系を中心としたその他の外国人学校17校は除外される結果となったため、アジア系学校などの関係者が強く反発し、文部科学省は当初の方針を撤回してアジア系学校などにも入学資格を認める方向で再検討することとなった。
 能力に応じて全ての人に差別なく教育の場を保障しようとする国際人権規約や子どもの権利条約などの趣旨、すでに一部の私立大学などはアジア系学校の卒業生に入学資格を認めている現状などを鑑みても、欧米系学校とアジア系学校を差別することは問題である。
 よって、足立区議会は政府に対し、全ての外国人学校に通う子ども達が平成16年度の大学入学資格を与えられるよう、早急に具体的な方針を示すことを求めるものである。

以上、地方自治法第99条の規定により、意見書を提出する。

  平成15年6月30日

                 議  長  名


内閣総理大臣     あ て
文部科学大臣