1、本会議質問 ○一般質問 鈴木けんいち議員 |
○鈴木けんいち議員 私は子育て支援策の充実・強化について質問いたします。 保育ニーズの高まりを反映して、政府は待機児ゼロ作戦を進めています。しかし、そこには構造改革で企業のリストラが進み、父親の失業が増えたり、収入が下がったりして、母親も働きに出なければならない家庭がどんどん増え、保育所に子どもが入れるようにしなければ、構造改革もこれ以上進められないという背景と、新しい産業を興し、新しい雇用を増やすには、保育分野が効果的という経済界の意向を受けたねらいがありました。そして、保育施設の運営は、民間を極力活用し、新設保育所については民営で行うことを基本とする等々、待機児解消の中心は民間でということが鮮明にされました。 こうして、それまでは各自治体で個別に行われていた保育所の民営化が、国の主導で行われるようになりました。 子育て支援の中核的施設として保育所を こういう状況のもとで、区は6月、子育て支援施策の新たな展開として、次世代育成支援地域行動計画の先行策定と同時に、公立保育園の民営化の方向を打ち出しました。 区はこれまでに区立保育園の運営を社会福祉法人に委託する公設民営を3園で実施してきましたが、今回の民営化方針は、保育施設そのものを民間に譲渡し、私立保育園に切り換えるという完全民営化です。しかも10年間で区立保育園の3分の1に当たる20園を民営化するという大規模なものです。保育所の民営化で生み出される財源と人的資源をさまざまな子育て支援策に投入するとのふれ込みですが、本当に子育て支援の充実になるのか、以下質問します。 第1に、区内で現在、60園ある区立保育園は、幼稚園入園児を除けば、就学前の児童の約3割が入所し、生活して、保育を通じて足立区の子育て支援の重要な部分を担ってきました。同時に保育所は、保育に欠ける子どもの外側にいる多数の子どもたちも視野に入れるべきでしょう。 最近では、保護者が家庭にいても、十分に子育てができない家庭が増えています。単に家庭の責任というよりも、地域全体の子育て能力が低下しているためです。 区立保育園は、保育園を利用している子どもと保護者だけでなく、区民全体に責任を負う区によって設立され、そこで働く保育士もその区に雇用されています。区民全体、とりわけ区内の子どもたちの成長全般に責任を持つ子育て支援施設として機能を発揮することのできる制度的保証があります。この地域に保育所があるから、安心して子育てができる。いざというときにはそこにかけ込める。そういう公立保育所が区内に60カ所あるということは、区民の宝であり、安心の基礎となるものであります。 公立保育所は行政に保育所を整備する責任があるとする児童福祉法の規定に基づいて整備されてきたものであるとともに、地域における子育て支援の中核的施設としての機能・役割があると思うが、どうか。 公立保育園の民営化について問う 第2に、区は民営化の理由として、さまざまな保育サービスの供給のためと言っていますが、私立でなければ多様な保育サービスは供給できないのでしょうか。この間の議会質疑の中で、公立で出来て私立でできないサービスはなく、私立でできて公立でできないサービスはないことを区も認めており、民営化の理由は成り立ちません。 私立保育所も児童福祉法に基づいて設置され、公立保育所と同じ基準で保育を実施し、公的保育の一翼を担ってきました。国の補助基準が低く抑えられているもとで、公立保育所に比べ、経営的には不安定な環境に置かれながら、創意と工夫、また犠牲的ともいえる努力で優れた保育サービスを提供し、地域子育て支援事業にも取り組んでいます。 いま、行政がやるべきことは、このような私立保育所に安易に依存し、不安定な経営基盤での自己犠牲的な保育を拡大・継続する方向ではなく、私立保育所が安心して保育サービスを充実できるよう支援することではないでしょうか。 また、認可保育所が不足しているもとで、補完的、緊急避難策として保育需要を担っている認可外保育施設への支援です。とりわけいま、東京都が私立保育園など、民間社会福祉施設が職員の定着率を高め、経験豊かな職員を確保できるようにと行ってきたサービス推進費補助の削減案を示しているもとで、区はこのような削減を行わないように、都に強力に求めるべきと考えます。そして今後、公的保育でどのようなサービスが必要なのかを検討し、一層の充実を図ることが必要と思いますが、どうか、答弁を求めます。 第3に、区が進めようとしている公立保育所の民営化は、最小のコストで最大のサービスの名のもとで進められている保育の市場化の流れに身を任せ、保育という最も人の手を必要とする分野で社会的に必要なコストを削減するものであり、経験のある保育士の確保を困難にして、保育の質を高める最も重要な部分を削るものです。住民に一番身近な自治体として、国に対し、こうした住民に不利益と不安を与える保育の市場化の流れに立ち向かい、子育て支援と保育の充実のために十分な予算措置も行うよう求めることこそ区の役割と思いますが、どうでしょうか。 第4に、住民生活にかかわるこれだけ大きな問題をこれだけ大規模に進めるのに、区民の意見も聞かずに強行するのはおかしいと思います。区がみずから示している区政透明化計画や区民との協働の政策にも反するものです。 武蔵野市では、公立保育園のあり方を考える委員会が設けられ、検討を加えた結果、1、職員構成が継続されることによって蓄積した知識・経験を生かしやすい。2、子育て事業など、関係機関とのネットワークが図りやすい。3、保護者にとって安心感があるなどをあげ、公設公営で改革に取り組むべきとの報告が出されました。 区立保育園の民営化は中止し、真に子育て支援として必要な施策を十分な期間と十分な区民参加を得て検討すべきと思うが、どうか、答弁を求めます。 次に、認可保育所の増設について伺います。 いま、全国的に保育所への入所を希望する児童が増え、政府の待機児ゼロ作戦のかけ声にもかかわらず待機児は増え続け、過去最高となっています。足立区は全国的にも待機児の多い自治体で、23区では一番待機児が多い区となっています。今年は昨年と比べても増えており、それだけに保育園への入所を希望する声は本当に切実です。待機児とは保護者が労働または疾病などで児童を保育できない場合に、国と市町村の責任で保育をする義務があるのに、その保育が受けられず待っている状態です。 したがって、待機児解消は、国と地方自治体の最も基本的な責務の一つであり、その対策の基本は認可保育所の設置です。区市町村は認可保育所の設置を申請すれば、国と都から合わせて建設費の4分の3の補助が受けられ、その後の運営費にも補助されます。ところが区は第3回定例会のわが党代表質問への答弁で、「待機児解消策として、認可保育園を設置していく考えはない」と述べるなど、自治体としての責任を投げ捨てる姿勢であり、決算特別委員会では、認証保育所や保育ママなどで対応していきたいと述べ、児童福祉法でやむを得ないときと、緊急避難的、補完的に位置づけられている保育形態に待機児解消の本体を担わせようという態度であります。 青井の3歳の子どもがいるTさんは、「夫がリストラにあい、やっと再就職できたが、収入が大幅に下がり、妻ガパートで働き始めました。子どもを認証保育所に預けたが、保育料が高く、パートで働いた分が消えてしまう。何とか区の保育園に入れてほしい」と希望しています。 いま、多くの方が「子どもが生まれてからパートで働き始めていますが、認可保育所に入れなかったので、認可外の保育施設に預けたら、保育料が高く、パート収入は全部なくなってしまい、かえって支出が増えて働いても生活が楽にならない」、こういう声に区はどう答えるのてしょうか。答弁を求めます。 区が行った次世代育成支援行動計画策定にかかるアンケート(10月発表)では、今後、子どもの世話をどのように希望しているのかとの問いに、「自分でみていきたい」は大きく減少していますが、「認可保育園に入れたい」は1.4倍へと大幅に増えています。認可外の保育室や認証保育所に入れたいという希望は減少傾向なのと合わせてみると、いかに認可保育所への入所希望が強いかわかります。 いま、求められている子育て支援策は、結婚しても子どもを産むことをためらう社会、子育てに不安がいっぱいで、楽しさよりも、苦しみを連想する社会から、誰もが安心して子どもを産み育てられる社会への転換を目指す総合的な対策であり、その中にしっかりと子育てと仕事の両立支援を位置づけ、待機児解消計画を策定、実行することです。 そのためには、区の責任で財源と人材をしっかり確保し、最大の区民ニーズである認可保育所の増設を進めながら、蓄積された経験を持つ保育士を増やしていくことが欠かせません。 ところが区は、待機児が23区で最多となっているもとで、認可保育所の増設計画はつくらないまま、豊かな経験を持つ公立保育園の保育士を減らし、コスト削減を目的とする民営化だけ進めるというのでは、財政と人材の誤った使い方であり、区民ニーズにも反するものだと思うが、どうか。 保育所建設費は100人定員で概ね2億円前後であり、その4分の3は補助が下ります。区内建設業者の仕事確保になるとともに、保育職員の雇用拡大にもある。公有地を活用すれば有効利用にもなり、子育て支援と合わせて一石三鳥にも四鳥にも効果があると思うが、どうか。 国に対し、待機児ゼロ作戦と言いながら、コスト論ばかりを優先して、公立保育所の統廃合など、待機児解消に逆行するような誤った規制緩和政策を中止するとともに、待機児の多い自治体には、公立保育所を増設するための予算措置を取るよう求めるべきと思うが、どうか。 次世代育成支援地域行動計画策定の先行自治体として、全国的にも待機児の多い足立区で保育所増設計画の数値目標を明確に掲げた素案をつくり、全国のモデルとなるよう奮闘すべきと思うが、どうか、答弁を求めてこの場からの質問を終わります。 答弁 ○石川義夫福祉部長 鈴木けんいち議員のご質問にお答えいたします。 まず、保育園は児童福祉法第35条により、市町村は政令の定めるところにより、知事へ届け出て設置できることになっており、私立保育園の認可状況と保育需要を勘案して整備してきたものでございます。 また、地域においては、子育て支援の中核的施設としての機能・役割を持っていると考えます。 次に、保育サービスの充実についてでございますが、民営化を契機として、多様な保育サービスを展開していきたいと考えており、このことが結果として公立保育園の保育サービスの充実につながるものと考えております。 私立保育園への支援については、現在、国基準に基づくもの、都基準によるもの、区の法外援護実施要綱による区単独分としてのもというように、運営費の助成を行っており、私立保育園が安定して保育サービスを実施できるよう支援しているところでございます。 次に、子育て支援地域行動計画を策定し、さまざまな区民ニーズに応えていくためには、財源の確保は非常に重要であると考えております。 民営化により生み出された財源、人的資源を投入するとともに、国に対しても、全国市長会、特別区長会等を通じて、十分な予算措置を行うよう要望してまいりたいと考えております。 次に、今回の計画では、運営主体が区から法人に変わるということで、認可保育園としてのサービスは継続していくことから、広報紙、メディア媒体等による通常の周知を図ったところであり、特に政策に反しているとは考えておりません。 また、十分な期間と十分な区民参加ということですが、区民の代表である議会への報告、2回の保護者説明会、要請行動への対応、4回にわたる要望事項についての協議を通じて、区民の皆様の意見を取り入れ、反映させていただいたと考えております。 次に、認可保育所の増設についてお答えします。 まず、認可保育所を利用している保護者と、認可外保育所を利用している保護者との間で、サービスに対する負担の違いが大きいということは十分認識しているところでございます。 したがいまして、在宅で子育てしている家庭との関係も視野に入れながら、適正なサービスと負担のバランスについて検討してまいりたいと考えております。 次に、待機児の解消につきましては、基準内での定員枠の拡大、認証保育所のさらなる誘致、家庭福祉員の増員等を中心として解消を図ってまいりたいと考えておりますが、今後、予定されております公団等、大規模開発による保育需要の発生には、民設民営で認可保育所を中心に設置するよう、開発事業者に要請していきたいと考えております。 次に、保育所建設につきましては、民設民営でも、保育職員の雇用や区内建設業者の仕事確保になると認識しております。 今後とも大規模開発による認可保育所や認証保育所のさらなる誘致等を通じて、区内の雇用拡大、区内業者の仕事の確保につなげていきたいと考えております。 次に、国への要望でございますが、国に対して規制緩和等の政策変更を求めることは考えておりませんが、待機児解消、保育サービスの充実のために予算措置をしてもらうよう、特別区長会を通じて国、都に要望してまいりたいと考えております。 次に、保育所増設計画ということでございますが、次世代育成支援地域行動計画では、すべての子育て家庭に対する支援が義務づけられており、その施策についての数値目標を設定していくことになっております。 しかしながら、現在の財政状況を考えますと、認可保育所の増設は厳しいものがあり、数値目標を持つことについても考えてはおりません。 再質問 ○鈴木けんいち議員 再質問させていただきます。 お答えをいただかなかった部分がだいぶありまして、まず、第1問目は、児童福祉法に基づいてと言いましたが、児童福祉法の第24条に、「市町村は保育に欠ける児童を保育所において保育しなければならない」というふうに規定されております。これとの関係はご答弁されませんでしたけれども、関係がないということなのでしょうか。 それから、同じ質問では、地域の子育て支援施設の中核としての役割もあるのではないかとお伺いしておりますけれども、これはどうなのでしょうか。 それから、民営化に当たっては、十分な意見を聞いたと言っていますが、民営化を決めてから聞き始めた。しかも、その聞き方が足りないからもっと聞いてくれという陳情、署名まであがって議会にも付託されたところであります。全く事実と違うご答弁になっておりますので、決める前の段階でのことを聞いておりますので、その点でのご答弁をお願いしたいと思います。 3点目、認可外保育施設に預けている方の負担の格差については認める。しかし、在宅のということでありますが、児童福祉法で市町村に義務づけられている入所で保育する、そういう観点で質問しておりまして、在宅の方がどうでもいいということではなくて、認可保育所が子どもを保育する義務から言って、その格差をどうするのですか、その点でのご答弁がありませんでしたので、お願いいたします。 再答弁 ○石川義夫福祉部長 まず、1点目の24条の関係でございますが、ご指摘のように、「保育所において保育しなければならない」という規定でございますが、ただし書きとしまして、やむを得ない事情があるときは、その他の適切な保護をしなければならないということでございまして、財政の問題というのは、一番、やむを得ない事例だと考えております。そういう意味から認証保育所や保育ママということでその代替としているところでございます。 2点目、答弁漏れだということでございましたが、地域においての子育て支援の中核的施設としての機能、役割を持っていると考えているところでご答弁はさせていただいているところでございます。 それから、事前に意見を聞いたのかということでございますが、ご答弁の中で、認可保育園としてのサービスはずっと継続していくわけでございまして、その内容が公立でやるか、私立でやるかということでございますので、それにつきましては、経営の主体が変わるだけで、サービスの内容は変わらないということから、事前の意見は聞いておりませんが、事後につきましては、先ほどご答弁いたしましたとおり、議会の報告から始まり、保護者の説明会、あるいは要請事項についての協議を通じてご説明をしたということでございます。 最後のご質問につきましては、24条のからみだと思いますので、先ほどご答弁したとおりでございます。 |
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