1、本会議質問

○一般質問  さとう純子議員

 私は教育行政について質問します。
 初めに2学期制について伺います。
 足立区教育委員会は、今年4月から区立小中学校全校を2学期制に切り換えるとしていますが、実施を目前にして、不安と疑問がますます高まっています。
 区教委は、2学期制にすることによって、授業時間数が増加し、ゆとりが生まれ、確かな学力を育むとしていますが、モデル実施校からは、「授業時間数は3学期制のままでも増やすことはできます」と報告されています。それだけではなく、区教委は授業時間数を確保するために、学校行事の見直しを検討し、宿泊行事の事前、事後の学習時間が通常の授業時間数を圧迫しているとして、塩原自然教室の廃止と林間学園の閉鎖まで決めました。授業時間数の増加がメリットとされている2学期制と矛盾する話です。

教師からも子どもからもゆとりを奪う学校二学期制

 また、ゆとりができるという点でも、モデル実施校の中間報告では、「進路指導について、生徒・保護者への不安解消への取り組みに苦慮しており、不安を与えないために、4回の考査と学期末の評価以外に、実力テスト4回と、夏休み前の仮評価の通知を実施した」「学校独自の進学テストを実施した」としています。結局、学期末の10月と3月の通知表以外に、7月と12月に学習カードを発行するという、事実上の4学期制になり、子どもからも教師からもゆとりを奪い取りかねません。
 メリットとして長期休業が学期の中に含まれるため、学習の連続性や発展が追求しやすくなるという点では、教育専門家からは、逆に連続性が途切れてしまうとの指摘があります。横浜市では、夏休み後のテストの平均点が下がってしまったと報告され、「なぜ急ぐ」、現場に悲鳴、見えぬメリット「テストの点下がった」と報道されました。
 足立区教育委員会の言うメリットは、2学期制でなくても可能であり、急いで全校実施をするという論拠は既に崩れていると思うが、どうか、答弁を求めます。
 3学期制は高温多湿の真夏には夏休みを、寒さが厳しく、正月という民族行事のある季節に冬休みを設けることによって、1年間の学校行事と子どもの生活リズムを生み出し、学期を成長の節目としてきたもので、100年もの間、途切れることなく続いてきたというのは、それなりに合理性があるからだと考えられます。これを変えることは、教育制度の一大改革であるからこそ、足立区も試行の上に実施を検討するとしていたのではないでしょうか。
 江東区では、2学期制のメリット、デメリットを詳しく分析し、十分な検討が必要だとして中間報告を発表し、広く区民の意見を求めています。足立区は2学期制のメリットばかりをあだち広報に載せるなど、全校実施先にありきの進め方です。
 拙速な全校実施を凍結し、改めて子どもたち、教師、保護者などを含め、広く区民の意見を聞いて十分検討すべきと思うが、どうか、答弁を求めます。

少人数学級の流れに逆行する区教委

 次に、30人以下学級実現について質問します。
 どの子にも行き届いた教育をと願う少人数学級実現の運動は急速に広がっています。今月20日、兵庫県が今年4月から小学校1年生での35人学級を全県下で実施すると発表し、全国で30を超える道県と2政令指定都市が少人数学級に踏み出すことになりました。
 昨年11月、文部科学省はティームティーチングや少人数指導などに伴う教員の加配を、30人学級などの少人数学級の実施のために振り替えた場合も、国庫負担の対象にすることを明らかにしました。そして、今年4月からの実施に向けて、各都道府県の要望調査をしました。ところが東京都教育委員会は、区市町村教育委員会に連絡しないことを決め、一切知らせないまま、「東京都は該当がありません」と回答してしまいました。
 こうした東京都の態度は、区市町村の自治権を無視するあるまじき態度であり、区教委は少人数学級への意向調査を実施するように求めるべきです。このことについての文教委員会でのわが党の質問に対し、区教育委員会は「大変遺憾、抗議していきたい」と答弁しましたが、どのように行動したのか、お答えください。
 また、文部科学省の方針が変わり、少人数学級実現の条件が大きく広がってきたもとでも、区は全国の少人数学級実施の流れに逆行し、引き続き少人数指導に固執する考えでしょうか、お答えください。
 山梨県では、この間、文部科学省の国庫負担方針の変更を受けて、県内の学校に常勤の教員を配置する30人学級がいいか、学級規模はそのままで、非常勤講師の配置がいいかをアンケート調査をしたところ、9割の学校が30人学級の方を希望しました。これを見ても、少人数学級がいかに望まれているかは明らかです。
 足立区は平成18年度までに特別講師を全校に配置するとしていますが、ティームティーチングや少人数指導のために配置されている教員も含め活用し、段階的に30人以下学級を実現すべきと思うが、どうか、答弁を求めます。

子どもの安全と教職員の健康について

 次に、子どもの安全と教職員の健康について伺います。
 子どもに携わる教職員が健康であることは、子どもにとって大切なことです。区は労働安全衛生法に基づいて、平成14年3月29日に、学校職員の労働安全を確保し、健康障害を防止するとともに、快適な職場環境の形成を促進するため、足立区学校安全衛生管理者等設置規程を改正し、「事業者である足立区教育委員会は、労働安全衛生法その他関連省令に基づき、目的の実現に努めなければならない」としました。規程によると、委員会は区教委、校長、教師、労働組合などの21人の委員で構成され、月1回の会議を開き、目的の実現に努めるとしています。しかし、実態は14年度は2回、15年度は3回の会議開催のみとなっています。また、学校安全衛生管理者を設置する義務のある50人以上の教職員がいる学校は2校ありますが、いまだに設置されていません。
 教員の労働時間は労働者の中で一番長いことが日本の産業労働者のストレスと健康総合調査で報告されていますが、先日も教師の過労死が認定されました。
 足立区の多くの教職員も、健康への不安を訴え、病休や精神疾患が増加しています。また、休職や途中退職とともに、今年は現職死亡者が5人にものぼっています。事業者の責務として、労働安全衛生法と設置規程に基づいた改善を早急にすべきと思いますが、答弁を求めます。
 全国で学校を舞台にした犯罪や児童・生徒を対象にした犯罪が増え、大きな社会問題となっています。今、子どもたちの安全を図るために、子ども110番として地域の方に協力を得たり、学校への防犯カメラの設置など、さまざまな対応策を立てています。しかし、犯罪を防ぐためには、人の目が何よりも大切と、全国各地で地域のコミュニティづくりが進められています。
 学校には教師以外に警備員、用務員、学童擁護員、給食調理員、事務職員など職員が配置され、以前は教師以外に1校当たり平均11名の職員がいました。今、学校は退職不補充方針のもとで、教員以外の職員は、事務職員も含め1校当たり2名から4名のみで、数年後は用務員も警備員もゼロになります。残るわずかな事務職員についても、東京都教育委員会が「首都の安全を図るため」と、警視庁の増員のために警察に出向させる方針を表明し、こんなに学校の安全が叫ばれているのに、学校の安全を無視しているのではないかとの声があがっている事態です。学校にも人の目が多い方が、子どもたちの安全が図れると思いますが、いかがでしょうか、答弁を求めます。

学力テストの押しつけは学校の序列化をはかるもの

 次に、一斉学力テストについて伺います。
 東京都教育委員会は、全都の中学2年生を対象に5教科の学力テストを2月20日に実施し、さらに2005年1月には中学2年生に加えて小学校5年生でも調査を実施する計画です。テストの結果は課目や出題分野ごとの正答率を区市町村ごとに公表するとしています。学力向上を図るための調査と言いますが、全生徒を対象にした学力テストの成績を自治体ごとに公表することは、競争的な教育を激化させかねないだけでなく、地域をも序列化することであって、足立区はどこの区よりも上か下かなど、必ず勝ち組と負け組みの地域ができ、区民にとっても大きな問題です。だからこそ中央教育審議会も2003年10月の答申で、「学校間の序列化等につながらないよう、データの取り扱いについては十分配慮することが必要」と指摘しています。東京都に対し、区市町村を序列化する公表はやめるように強く申し入れるべきと思うが、どうか、答弁を求めます。
 また、東京都教育委員会は、学校別の公表は、各行政に任せるとしています。週刊誌では、千代田区を例に、「公立中学校−人気校はここだ」「学力テスト公表で小学校選抜大加速・負け組学校はまちから消えていく」と報道しています。大手学習塾とも連携した学力テストを区独自に実施した荒川区では、学校別の平均点の公表のみならず、教科ごと分析までインターネットで公表したために、子どもたちに、保護者に、教師に、学校に、そして地域にまで大きな混乱を招いています。区教委は学力テストの結果を学校別に公表して学校間を競わせることはやるべきではないと思うが、どうか、答弁を求めます。
 子どもの学力は一度のテストの結果のみで分析できるものではありません。そもそも教育は教育基本法の目的でも述べられているように、どの子にもある人間としてのすばらしさを伸ばすことを何よりも大切にする人格の完成を目指すことです。学力調査は学校の教育活動に即して行われるべきであり、教育現場から離れたところでつくられる学力テストでは、学力向上への教訓を引き出すことは困難と言われています。
 また、競争と成果を子どもに強いる教育は、点を取るための教育を横行させ、結果として手間ひまかけての本当の確かな学力を育む取り組みや創造的な教育実践を隅に追いやることになるのではないでしょうか。足立区独自のいっせい学力テストは行うべきではないと思うが、どうか、答弁を求めてまして、この場からの質問を終わります。

答弁

○江口由紀夫教育改革推進担当部長 2期制のご質問について一括してお答えいたします。
 まず、授業時数の確保についてですが、平成16年度は本年度と比べ、暦の関係で5日ほど授業日数が減少します。来年度は特に2期制を実施しなければ授業時数の確保は大変難しいと考えております。
 また、教員の多忙感につきましては、2期制の実施で生み出されたゆとりにより、長期休業前のあわただしさが解消され、落ち着いて学習を進められることが教育課題推進校の実践からも報告されております。教育委員会は自信を持って平成16年度からの全校2期制実施を行ってまいります。
 次に、2期制の再検討についてですが、教育委員会では、平成14年度から2期制の研究に取り組み、平成15年4月に校長会、保護者の代表を交えた2期制検討委員会を発足させました。ここで学校や保護者の意見をいただき、これらの検討結果等を区報や教育だより等で区民に周知したり、学校の保護者会で説明して理解を得てまいりました。今後もより充実した2期制となるよう、区民への広報や学校への支援を継続してまいります。 次に、30人以下学級について一括してお答えします。
 文部科学省からの事務連絡に関しては、23区教育長会で東京都に申し入れをいたしました。
 次に、現在の教育委員会の考えは、これまでの本会議における答弁のとおり、学級編制については、生活集団としての40人学級を維持しつつ、学習集団としての少人数指導の充実に努めてまいります。
 次に、特別講師の配置予定については、ティームティーチングや少人数指導のために配置するもので、学級担任としての配置は考えておりません。
 次に、教職員の健康についてお答えします。
 区では平成14年度に区立学校全職員を対象とした安全衛生委員会を設置するなど、これまで安全衛生管理の体制を順次整備してまいりました。今後とも職員の安全と健康のため、委員会を初め、事業の充実を図ってまいりたいと考えております。
 また、大規模校への衛生委員会の設置につきましては、既に来年度の設置に向け準備しております。
 次に、子どもの安全についてのお尋ねですが、技能系職員の退職不補充を進めるに当たっては、子どもたちの安全も考慮しながら、業務委託の実施や非常勤職員の配置を進めてきたところでございます。
 さらに、学校の職員だけでなく、地域の方々との連携を含め、多くの目で子どもたちの安全を確保する体制づくりに取り組んでまいります。
 次に、学力テストについて一括してお答えいたします。
 都教育委員会の学力調査ですが、序列化をするような公表ではなく、各学校の課題や学力向上策を都が考察し、公表するよう求めているところであります。
 区の公表については、現在、学力向上検討委員会等で検討しておりますが、区内の学校同士の競争ではなく、自校の教育活動の一層の充実と確かな力を育むためにも、学校の課題と学力向上策が明らかになるようにしてまいりたいと考えております。
 足立区独自の学力テストについてですが、都の調査は一部学年のみの調査であり、児童・生徒1人ひとりの経年的な学習の状況等を把握し、個に応じた指導を行うためには、区独自に調査を行う必要があると考えております。
  教育委員会といたしましては、区独自の調査を実施の方向で学力向上推進会議等で検討してまいります。

再質問

○さとう純子議員 2点再質問と言いますか、ちょっとすれ違っているかなと思いまして質問いたしますが、私は2期制について、改めて子どもたち、教師の保護者などを含めて意見を聞いてはどうかという質問をしたのです。と申しますのは、今、説明会ということでやっていますけれども、区民の声はほとんど反映されていない、決定したのを報告するという説明会なのです。昨日の本会議でのわが党の質問に対しても、住民参加と言いますか、区民との協働を実現するためにも、区民の意見を区政に反映させるために、さまざまな住民参加の工夫を行うことが必要だというふうに答弁なさっているのです。その点でいきましても、先ほどの答弁にもありましたように、代表の方の意見を聞いたということですが、私も例に出しました江東区では、受益者である子どもや保護者の不安を解消しなければ2期制もデメリットになるのではないかということで、中間報告を区民に発表して、それから検討し直すというふうになっているわけです。その点で、私は改めてやる気があるのかないのかという質問をしましたので、ここをお答えください。
 もう1点、私は30人学級については、実現すべきと思うがどうかというふうに質問いたしました。その上の質問で、少人数指導に固執する考えかということでは答弁をいただきましたが、30人学級の実現をすべきということで、検討なさってお答えをいただいたのかどうかも確認したいのです。以上2点です。

再答弁

○岡田行雄教育指導室長 私からは、改めて保護者から意見を聞いてはどうかということについてのご質問にお答えいたします。
 これまでにも指導室の方で、学校ごとに行われておりました保護者対象の説明会などで、こちらから説明させていただきましたし、また、2月16日に行いました教育課題推進校全校の報告会にも、多くの保護者が参加していただきましたが、そういうところで、もしご意見がありましたら、ご遠慮なく寄せてくださいというようなことで呼びかけております。したがいまして、今後も改めてこういう会を設けるという考えはございません。常時、保護者の方の意見を聞いていくということでございます。

○江口由紀夫教育改革推進担当部長 30以下学級について、教育委員会で検討したかというご質問でございますけれども、内部で常時検討させていただいております。その上でのご答弁でございます。以上でございます。