足立区文化芸術劇場の指定管理者の指定について

針谷みきお議員


 ただいま議題となりました第42号議案、足立区文化芸術劇場の指定管理者の指定について、日本共産党足立区議団を代表し、反対の立場から討論を行います。
 本案は前議会で設置いたしました足立区文化芸術劇場の指定管理者を株式会社コミュニティ・アーツに指定しようとするものです。
 足立区文化芸術劇場は、平成10年3月に総合文化センター基本構想で掲げた芸術・文化、舞台芸術の創造拠点、芸術文化の情報発信拠点、舞台芸術の人材育成拠点、人々が出会う交流拠点として広く区民の利用が図られるという崇高なコンセプトで運営されるものであります。わが党は文化芸術劇場の設置にも賛成し、区民文化の向上に資する施設として文化芸術劇場が大きな役割を果たすべきであると考えています。
 区は「専門性や効率的な経営の点から、赤字を行政が補てんする体質ではなく、株式会社なら経営責任を明確にできる」「自由な経営の展開で収益性を高められ、区に頼らないで自立してやってもらえる」として株式会社コミュニティ・アーツにしたと報告しています。しかし、コミュニティ・アーツを指定管理者にして、専門性や効率性が本当に確保できるのでしょうか。
 反対の第1の理由は、株式会社コミュニティ・アーツを指定管理者にしなくとも専門性は確保できます。この専門性については、文教委員会の答弁で、「生涯学習振興公社には専門性がないため自主事業さえできない」と答弁しています。
 しかし、平成15年度、足立区生涯学習振興公社の西新井文化ホールにおけるイベントは、36事業も展開しており、中村紘子、千住真理子、錦織健など、芸術性と収益性を求めた一流のプロモーターとの共催事業を22事業、白雪姫など興行商品を買い取り提供する3つの買取事業、区民との協働による10の自主事業と、積極的に興行を展開しております。16年度は40事業に増やしており、公社でも努力、工夫すれば、専門性を生かすことは十分可能であることを示しています。
 このように西新井文化ホールでは、少ない予算の中でも、スタッフの努力と工夫で一流歌手のコンサート、舞台芸術など、株式会社でなくても、長年培われた専門性を生かし、より廉価な費用で、より質の高い文化を区民に提供しているではありませんか。株式会社でなければ専門性が発揮されないという根拠はどにもありません。
 第2に区は、効率性、自立性を理由に、株式会社でなくてはならないと発言していますが、これまた予算委員会の審議の中でも、現状のやり方では根拠がないことが明らかになりました。
 来年度予算では、シアター1010、文化芸術劇場の運営経費として、管理運営費用として株式会社コミュニティ・アーツに5億2,500万円、うち管理運営負担金5億円、株式会社への貸付金2,500万円、文化芸術劇場建設経費となっていますが、実際は開館記念事業、つまり柿落とし事業として4億7,500万円、計10億円余の予算を組んでおります。
 ところが株式会社コミュニティ・アーツは、16年度、区が10億円注ぎ込んで会社はやっと281万円の利益しかあがらず、本来会社が負担すべき人件費についても、区の文化芸術劇場建設予算と劇場の管理運営委託予算の両方から出しています。
 来年度以降も区が運営費の5億円よりも余分に支援をしないと、館長やプロデューサーの人件費も賄う見通しが見えない、とても区の言う株式会社だから効率的な経営だと言えるような会社の収支予算になっていないのです。
 もし17年度以降、区からの財政支出を減らすとすれば、興行収入を大幅に増やすために、結局、入場料を高くするなど、区民負担を求めることになり、総合文化センター基本構想や芸術劇場の設置目的に反することになりかねません。
 第3は、本来、指定管理者を選定する場合には、株式会社を含むさまざまな指定管理者を指名し、その中から選ぶことが指定管理者制度の趣旨であります。しかし、区は初めから株式会社コミュニティ・アーツ先にありきで、何ら他を検討した経過もありません。しかも株式会社コミュニティ・アーツの社長の会社経営について、ローカル新聞などに株式会社コミュニティ・アーツの公開株の売却をめぐる不可解な出来事や、なぜ鈴木区長の選対責任者が社長と、株式会社運営の不透明さが指摘されるなど問題点があることも言わないわけにはいきません。
 教育長は「一番悪いのは費用対効果が低いのに、税を注ぎ込み続けることだ」と言いましたが、区は初年度10億円、その後毎年5億円注ぎ込み、その上更なる財政支出をしなければ、館長も会社の社員の給料も維持できないような会社に効率性や自立性があると言えないことは明らかではありませんか。さらに毎年5億円の管理運営費はどこがやってもかかる経費であるならば、これまた株式会社でなくてはならない根拠はどこにもないではありませんか。
 わか党は足立区文化芸術劇場の管理運営に当たっては、株式会社コミュニティ・アーツ先にありきではなく、法の趣旨に沿って指定管理者を見直すよう求め、反対討論といたします。