「教育基本法の改悪に反対し、同趣旨の意見書の提出を求める陳情」の不採択に反対する討論

針谷みきお議員


○針谷みきお議員 私は日本共産党足立区議団を代表し、ただいま議題となりました15受理番号14、教育基本法の改正に反対し、同趣旨の意見書の提出を求める陳情について、文教委員会の不採択に反対し、本陳情の採択を求める立場から討論を行います。
 文教委員会の審議で、自民、公明の委員は、「教育基本法については、時代の要請で見直しの時期にきていることは間違いない。その点ではわが党も同意している」とか、「戦後教育の中でいろいろな問題が起こっているので、教育基本法は改正すべき」と発言し、本陳情を不採択にしましたが、今、なぜ教育基本法を改正しなければならないのか、明確な理由は示されませんでした。
 本陳情は、教育基本法が憲法によって示された国民主権、基本的人権の尊重、永久平和主義などの基本原則の実現を進め、教育への権利を保障するための基本的なあり方を定めた準憲法的意味を持つ法律であることを明らかにし、今、なぜ教育基本法を変えなければならないのかと、中教審答申による教育基本法の改正の動きに疑問を投げかけ、むしろ教育基本法に沿った教育が行われてこなかったことが教育危機をもたらしたのではないかと述べています。
 教育基本法は1949年、戦前の忠君愛国の教育が日本を戦争に駆り立てたことを反省し、国民のための教育を目指して制定され、前文では「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。」と定められました。そして、第一条において教育の目的を「人格の完成」におき、第三条において「教育の機会均等」を定め、第十条において条件整備を教育行政に求めました。
 こうした教育基本法のもとで、国民の運動もあり、1981年には50人学級から40人学級が実現、昨年からは43道府県で30人学級などの少人数学級が実現されています。
 教育基本法は古くなったどころか、世界人権宣言や国連の子ども権利条約など、国際的な教育の流れにつながる優れた法律であることは明白です。
 ところが文部科学省は、教育基本法の趣旨を踏まえた施策を進めるのではなく、競争と管理の教育体制をつくり、受験戦争を進め、過度なまでに競争を強いたことが、子どもたちにストレスを与え、学力の低下などをつくり出しました。こうしたみずからの失政への反省もなく、その上、国際競争に打ち勝つ国家戦略としての教育改革が必要であるとし、21世紀を切り開く心豊かでたくましい日本人の育成という観点から教育基本法の全部改正を主張するに至りました。
 また、基本法に盛り込むという教育振興基本計画は、政府が中長期的な教育目標を決めて、教育現場に指示するなど、政治による教育介入に法的根拠を与えるものであります。
 自民、公明両党が6月16日に合意した中間報告では、教育の目的に愛国心を据えるとした上で、文言を「国を愛する」にするか、「国を大切にし」にするかは、参議院選挙後に結論を出すとしています。しかし、愛国心は本来、国民1人ひとりの見識や社会の自主性にゆだねられるべきものです。政府が法律で上から押しつけるやり方は、民主主義の原則と相容れません。
 それをあえて教育基本法に盛り込むことは、最近の入学・卒業式における処分をふりかざしての君が代、日の丸の異常なまでの強制に見られるように、強制の教育を全国に広げようという意図を持つものと言わなければなりません。「お国のために命を投げ出してもかまわない日本人を生み出す。……これに尽きる」と自民、民主などの国会議員でつくる教育基本法改正促進委員会での発言が見事に語っているように、教育基本法改正のねらいは、憲法9条を改正し、アメリカの言いなりに再び日本を戦争する国にすることにあることは明白であります。
 今、必要なのは、憲法や教育基本法の理念に基づく教育が徹底されてきたのかを根底から問いかけ、その理念が実現されていない現実を認め、その実現に向けて、信頼と協同の教育を進めることであります。
 日本共産党は、改めて教育基本法改悪を許さない国民的な運動を呼びかけ、こうした動きに国民の厳しい審判を下すことを訴えて討論を終わります。
※ 区議会では議案や請願・陳情に対して反対討論は認められていますが、単独の賛成討論はしないという申し合わせがあり、反対討論があるときのみ賛成討論ができることになっています。