区長あいさつ |
鈴木恒年区長 平成16年第2回足立区議会定例会をご招集申し上げましたところ、議員の皆様方には、ご多用中にもかかわらずご参集をいただきまして、まことにありがとうございます。開会に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げます。 昨年の第2回区議会定例会におきまして、区政二期目に当たっての所信を申し上げ、それから、はや1年が経過いたしました。さかのぼる2年前の平成13年の第2回区議会定例会におきまして、「区政、財政、社会の3つの構造改革」を進めるということを申し上げてから、3年が経過したわけであります。この間の区政の構造改革を中心とする内部改革につきましては、たびたび議会にもご報告申し上げてまいりました。 そうした中で、今年4月には、昨年の7月から検討をしていただいておりました新しい基本構想の答申を審議会からいただきました。答申では、足立区の現状と課題を分析した上で、新しい基本構想の理念を「協働」に置き、まちづくり、暮らしづくり、人づくり、しくみづくり、といった観点からの具体的な提言がなされております。 現在、この答申をもとに新しい基本構想を第3回定例会に提案をさせていただくべく、全庁挙げて取り組んでおります。 さて、千住ミルディスの完成に伴って、千住地域への来訪者も、連日6万人前後の人々でにぎわっており、人の流れや町の雰囲気も急速に変わってきたようであります。報道によりますと、キーテナントである北千住マルイは、多くの店舗を整理統合して、このたびの出店を進めてきたということであります。徹底したマーケティングを行い、当地の発展可能性を十分に見きわめた上での決定であったことと思います。千住はもとより、足立区の持つ潜在的な力や魅力が、いま現実のものとなりつつあるのではないかと思っております。 ことしの秋口には、いよいよ足立区文化芸術劇場「シアター1010」がオープンをいたします。さらに、来年の秋には「つくばエクスプレス」が開業する予定であります。そして、これもまた長年の懸案でありました旧本庁舎跡地が、地元と議会の皆様のご理解、ご協力をいただきながら着工にこぎつけました。 こうした動きを、基本構想の答申にも述べられている文化や教育、そして経済の活性化に結びつけ、足立の魅力をさらに高めるようにしていきたい、こう強く思うものであります。 考えてみますと、千住という地域は、江戸時代から四宿の一つとして交通の要衝でありました。当然のことながら、交通とともに行き来する人々、そして文化の結節点でもあったわけであります。江戸以来何百年もの間、それこそ地理的な必然として、その役割を担ってきた地域が、それなりの潜在能力を維持しているのは、ある意味では当然のことと言えるかもしれません。 こうした状況とともに、もう一方で追い風となっておりますのが、文化や情報産業の育成に力を入れ、国際的に通用する競争力を持たせようという政府の「知的財産戦略」に代表される政策であります。 大きく時代を眺めますと、これまでの工業化社会が行ってきた工場などにおける画一製品の大量生産は、アジアなどの周辺国に移行しているということであります。かわって登場するのが情報化であり、知的財産、情報産業といった領域といわれております。こうした時代の変化にいち早く対応したアメリカに比べ、我が国はその移行におくれをとり、その後の長い低迷を歩んだわけであります。 しかし、いまやそうした経験を経て、国や民間を挙げての対策が進みつつあります。特許をめぐる国際収支は長年赤字状態でありましたが、平成15年は、その上期の時点で既に大幅黒字を記録しているということであります。アカデミー賞の部門に、新しく「長編アニメ部門」が設けられたということでありますが、その最初のオスカーを獲得したのは日本のアニメでありました。また、海外作品部門では、複数の日本映画が候補として上がったことも話題となりました。いまや、我が国の映像文化は国際的にも高い評価を受けつつあり、経済的な効果という点でも、大きな市場が期待されているわけであります。 こうした時代の先端の動きとともに連動しながら、学校跡地や民間の跡地開発がうまく相乗効果を発揮できるよう、区としてできることを、可能な限り取り組んでいかなければならないと考えております。 基本構想の答申では、これからの社会経済状況を「定常型社会」という言葉で表現しており、今後の区民と行政の協働のあり方について、さまざまな角度から提言がされております。 経済の成熟化に伴い、かつての高度成長期のような大きな右肩上がりを期待することはできません。高度成長は何百年という時代のトレンドの中での、極めて特別な時代であったという頭の切りかえが必要なのではないでしょうか。その上で、緩やかな成長、環境や資源に大きな負担をかけない持続可能な成長が、いま求められているということが言えます。持続的な成長という考え方は、いまや世界的にも共通のものと言えます。「定常型社会」とは、決して停滞社会という意味ではありません。大きな成長はないながらも、どのようにすれば活力ある生き生きとした社会が実現できるか、人々が生きがいと希望を持って元気に暮らせる仕組みがつくれるか、このことを、自治体だけでなく、国も、あるいは世界じゅうが模索しているということではないでしょうか。 そして、私は、そのかぎは「文化」であり、それを支える教育を基盤とした「人間力」ではないかと思うのであります。 文化や産業も、それを担い支える人材が足立の地に育っていってこそ、真の意味での足立区の活性化に結びつくわけであります。既に特区により始まっている雇用支援を教育分野にも結びつけ、足立区を担う人材と資源の蓄積を進めていく必要があると考えております。 こうした基本的認識に立ち、いま目の前にあるチャンスを確実に生かすことを基本に、足立区のさらなる活性化を進めなければならないと考えております。厳しい財政状況ではありますが、区民、そして議会の皆様のご理解をいただきながら、こうした課題に積極的に取り組んでいきたいと考える次第であります。 ところで、学校の統廃合に伴う跡地の活用と並んで、ある意味ではそれ以上に重要なことが学校改築であります。今後、大量の改築を計画的に進めていかなければならないわけでありますが、学校に限らず、360余の区有施設全体にかかる施設更新をどうするかという課題があります。学校、保育園などの建物に限らず、道路や下水など、都市基盤全体の問題ととらえますと、まさに都市全体の更新の問題であるということが言えるわけであります。 我が国始まって以来の大規模な都市の更新時期が、刻々と迫っているのであります。これをどのように乗り切るかは、今後の自治体の命運を分けると言っても過言ではありません。施設本来の目的が果たされているのか、そもそも、その施設の目的が、今日の社会状況の中でどのような意味を持っているのか、そうした原点に立ち返った見直しを厳しく行う必要があります。 こうした今後の施設のあり方、考え方、配置や整備のあり方を抜本的に見直す一方で、その管理・運営方法についても、さらに検討を加える必要があります。 今後は、民間の活力を最大限に生かし、指定管理者制度を活用するなど、具体的な検討を進めてまいります。 こうした内部改革を踏まえ、あるいはこれらと並行しながら、昨年の秋には「人材ビジネスを活用した雇用創出特区」、そして、この4月からは、福祉分野での「障害者社会生活えんじょい特区」の二つの構造改革特区が動き始めました。また、教育の分野におきましては、全く新しい施設である「おおやた幼保園」が開設いたしました。これまでの内部改革にとどまらず、区民生活に直結する、外からも見える改革の具体化が一歩ずつ進み始めたところであります。 区政の内部改革から目に見える改革へと進むに従い、ますます重要となりますのは、区民の皆さんの理解と協力であります。基本構想の答申は、「協働」を基本理念に掲げておりますが、協働のための大前提が情報の共有化であり、行政の透明性の向上であることは、言うまでもありません。 この点は「足立区政透明化計画」として取りまとめ、いま着実に取り組みが進んでおります。行政評価制度は、新しい基本計画を策定する際に、具体的な数値目標を掲げるという形で作業を行っております。行政の自己評価だけに終わらせないように、いかに区民の皆さんの評価をいただく仕組みをつくるかという観点から、「第三者評価」の仕組みも検討を始めたところであります。協働の相手方の多様化を進めるため、審議会等の公開や審議会の委員の多選や兼務の制限などのガイドラインも策定し、近々に実施をしたいと考えております。 さらに、外部監査制度につきましては、既に条例化を認めていただいたところでありますが、その契約案件を本議会に提案させていただきたいと思っております。 また、庁内公文書がインターネット上でも検索可能になり、どのような決定がなされているか、その概要について、誰でも、いつでも知ることができるようになりました。区のホームページにつきましても、より見やすくなるよう、リニューアルを行い、近日公開の予定であります。 以上、区政の内部改革から外部改革へ動きについて申し上げてまいりましたが、今後、こうした流れを一層広げ加速したいと考えておりますので、議員の皆様におかれましては、よろしくご理解とご協力を賜りますよう、お願い申し上げる次第であります。 最後に、今回ご提案申し上げました議案は8件、報告2件、諮問1件であります。各議案の提案趣旨につきましては参与よりご説明をいたさせますので、慎重にご審議の上、ご決定くださいますようお願いを申し上げまして、あいさつとさせていただきます。 ありがとうございました。 |
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