1、本会議質問

○一般質問  渡辺修次議員

○渡辺修次議員 私は小売商業の役割とこれからのまちづくりについて質問します。
 小泉自民・公明政権が進める構造改革、規制緩和の流れの中で小売業が減少し続けています。足立区の商店街振興組合も、加盟店舗の減少で存続も困難なところが増えています。そのため商店街としてのイベント開催もできにくい環境が増大しています。ある商店街振興組合の事例では、加盟店舗が43%に減少し、イベントに伴う個店負担額が増え、合意形成ができにくい。中元大売出しなどを実施すると、お客さんは商店街のすべての個店がイベントに参加していると思い込み、抽選券がもらえない店があると、不満を漏らすなど、お客に結果として迷惑をかけることになるなどの理由でイベントもやりにくくなったと役員の方は話しています。また、商店街としては、会員の中で、こうすればもっとお客が増えるのではないかなど、積極的な提案をする意欲ある商店がありますが、その意欲を商店街として受け止められない、願いが生かせないと悩みを語っています

衰退する小売業をどう支え、振興するか

 バブル崩壊以後の消費不況に加え、これまで大型小売業との商業調整が可能であった大規模小売店舗法を、アメリカの市場開放を受け入れて廃止し、大規模小売店舗立地法が施行されました。この施行によってこれからは商業調整はできないという法解釈が進み、大型チェーン店による無秩序な出店ラッシュと、営業時間の野放し状態に加え、規制を受けない500から990uの専門店など、中型店舗が急増し、足立区でも67店増えています。
 都の商工統計による、足立区内の売場面積別小売店数の推移を見ますと、100から499uでは、94年は463件が02年には554件と91件増えていますが、経営力の弱い50から99uでは1,029件が923件に106件、10.3%減少し、49u以下の店舗は94年に4,741件あったものが、02年には3,437件と1,304件、27.5%も大幅に減少しています。
 そこで質問しますが、区内の小売業が減っており、シャッター通りなど、商店街の空洞化が進んでいますが、この小売店舗が急速に減少している要因についての認識をお聞かせください。
 次に、小売店の役割について伺います。
 地域社会で果たしている商店の役割はかけがえのない存在です。中小商店・商店街は、区の税と雇用の担い手であります。さらにお年寄りをはじめ、区民が歩いて買い物ができる身近な存在として、区民の生活に必要な利便を提供するとともに、地域のまつりや伝統・文化、青少年の教育などの健全育成、防犯・安全、防災への貢献など、地域コミュニティの核として地域社会を支えています。豊かな商品知識と目を持ち、豆腐、和・洋菓子など、多彩なものづくり職の行使など、公共性を備えた存在であります。
 この商店・商店街を保護・育成することは、足立区の活性化のためにも、これからの少子・高齢化社会の進展の流れの中でますます切実な課題と考えますが、区としての認識をお聞かせください。
 次に、まちづくりとの関連で伺います。
 足立区では大店立地法が成立して以降、法律どおり商業調整はできないとの解釈で、事実上野放しにしてきたとの印象があります。しかし、先進と言われる金沢市や京都市では、小売業を守る視点に立ち、大店立地法の条文に即して、まちづくり条例に出店に際しての事前の十分な情報公開や事前協議の場をつくり、近隣商業者の声が反映できる条文を設け、環境保護の視点で、結果的に商業調整を進めるなどの保護をしています。営業時間についても、青少年の健全育成や犯罪防止の観点から、出店者に自主規制をさせるなどの規制となって働いています。

先進自治体に学び商店街を守る規制強化を

 また、仙台市では、商業者団体の幹部が立ち上がり、このままでは商業者と地域住民が長年にわたり営々と築いてきたコミュニティと伝統が壊れてしまうと、市の商工会議所の中に、まちづくり専門の学者もメンバーに加えた商業政策協議会をつくり、まちづくり条例についての提言をしました。
 この提言づくりに当たっては、金沢市、京都市はもちろん、規制緩和で開発無制限になったため、商業者と地域住民が長年にわたり、営々と築いてきた既存の社会的ストックが破壊され、そこから安心して住み、暮らせる都市へ再生させたアメリカのシアトル、ポートランドまで視察しています。しかも提案にはまちづくり条例は一般市民及び関係各層の考え方が盛り込まれる必要があると、全市民の議論を呼びかけた内容となっています。この姿勢には感動を受けました。
 足立区もこれまで区の商工業者はコミュニティの核と位置づけてきました。この位置づけを踏まえ、区のまちづくり条例制定に当たっては、これらの先進都市に学び、区の商業文化の維持と地域の均衡ある発展を基本理念に据える。具体的には商店街や商業集積を消費者・生活者の視点から積極的に位置づける。また、循環型社会が叫ばれており、地域資源を有効に活用した地域循環型商業を重視するなど、区民の日常生活に欠かせない役割を持つ小売商業者の存続・育成に配慮した項目を盛り込むべきだと考えますが、答弁を求めます。
 次に、大規模小売店舗立地法の運用に関して伺います。
 区のこれまでの対応は、立地法の成立発効により、商業調整は一切できないとの解釈から、大型店の出店を事実上野放しにしてきました。
 仙台市では平成12年に仙台市大規模小売店舗立地法運用事務手続要綱を制定し、大規模小売店設置者に対し、市の実情に応じた適切な対応を求め、市の経済及び社会の健全な発展並びに良好な都市環境の形成を図るために活用しています。
 今年4月21日に全国で初めて立地法に基づき駐車場の位置を変更する勧告を業界最大手のイオン株式会社に出し、イオンはこの勧告に従う対応をしました。
 法の解釈を何よりも足立区の商業者と地域住民の生活環境の保持する立場に立つかどうかが問われてきたのではないでしょうか。立地法第1条の目的には「大規模小売店舗の立地に関し、その周辺の地域の生活環境の保持のため、大型小売店舗を設置する者により、その施設の設置及び運営方法について適正な配慮がなされることを確保することにより、小売業の健全な発達を図り、もって国民経済及び地域社会の健全な発展並びに国民生活の向上に寄与することを目的とする」と書かれており、この精神を活用して仙台市では、出店に際して市への事前説明と協議、市からの要望指導など、法の条文に即して周辺住民や商業者への説明に関わること、駐車場に関わること、駐輪場に関わること、騒音の発生に関わること、廃棄物に関わること、街並みづくり等への配慮など、適切な運用基準を設けるなど、届出に関する規定などを定めることにより、周辺住民や商業者の希望を反映させる努力をしています。
 区としても、仙台市と同様な足立区大規模小売店舗立地法運用事務手続要綱を制定し、周辺住民の理解と納得が得られる仕組みをつくる必要があると思いますが、答弁を求めます。
 最後に西新井栄町のイトーヨーカドー出店計画について伺います。
 6月14日に開かれた産業経済委員会への情報連絡によれば、西新井栄町1の19・20番地にイトーヨーカドーが店舗面積6万1,700u、1,600台の駐車場、1,300台の駐輪場を備える延べ床面積10万6,200uの超大型店の出店を平成18年2月着工、19年4月オープンの予定で計画されていることが明らかになりました。
 今年2月に北千住にオープンした丸井の出店で、足立区の小売店舗の割合は大型店が56.82%になり、区内の小売商店の営業をますます困難に追い込んでいます。葛飾区亀有には同じイトーヨーカドーが店舗面積7万5,000uの巨大なショッピングセンターを計画しており、足立区内へも計り知れない影響を与えることは明らかです。加えて西新井栄町のイトーヨーカドーが計画どおり出店すれば、小売商店に更なる困難をもたらすことは明らかです。近くのある商店会長は、「大型店との共存共栄と言うが、共存共栄している商店街があったら連れて行ってくれ」と語っています。まさに小売業を守るか否か、区の姿勢が問われています。
 現在、区とも協定して都市基盤整備公団、今は独立行政法人都市再生機構によって西新井駅西口住宅市街地整備事業が進められており、住宅や街並みが整うことを待つようにして、その隣接地に急きょ大型店の計画を提案してきた点では道義的にも問題ではないでしょうか。この予定地の西新井栄町19番地と20番地の間には、南北に区道が通っており、区が毅然とした姿勢を堅持すれば、この出店計画は断念せざるを得ない計画でもあります。この予定地は100号線に面しており、環七との交差点にも近く、1,600台の駐車場への出入りが周辺の大気汚染や騒音など、環境に与える負荷も大きな問題です。また、区立七中とも接しており、青少年に対する健全育成の面からも調整が求められるなど、小売業への影響だけではなく、まちづくりや環境、防犯の面からも検討を要する計画であります。
 区は具体的に出店計画が提出されたら、小売業を守り、周辺のさまざまな環境を守る立場に立ち、区道の付け替えなどはきっぱり断り、毅然とした対応をすべきだと考えますが、答弁を求めて質問を終わります。

答弁

○坂本寛文産業経済部長 私からは商店街外のお尋ねについてお答えいたします。
 まず、区内での小売店の転廃業が相次いでいることは承知をしております。これらの要因としては、バブル経済崩壊後の景気の低迷や消費者ニーズの多様化、需給のミスマッチ、さらには深刻な後継者不足などが大きな要因であると考えております。
 次に、地元商店街の役割については、地域コミュニティの核として重要であると認識しております。これまでコミュニティ施設活用商店街活性化事業等を通じ、子育て支援施設や高齢者への利便提供などを行ってきました。
 今後とも、これらの施策を計画的に展開することにより、商店や商店街の活性化に努めていきたいと考えております。
 次に、大規模小売店舗立地法に基づく事務処理についてでございますが、この事務処理は都道府県並びに政令指定都市の事務とされております。このため仙台市においては、その権限として立地法の事務処理手続要綱を制定し運用しているものです。
 東京都では仙台市と同様に要綱を制定し、適正に事務処理を行っているところですが、足立区には法の運用権限がないため、事務手続要綱の制定をすることができません。

○佐野宏明都市整備部長 私からまちづくり条例に関するご質問にお答えします。
 現在、まちづくりの手続き等を定める条例の制定に向けて準備を進めているところでございます。この条例では、総合的・計画的にまちづくりを行うため、区民に広く意見を求めながら、まちづくりの基本方針や基本方針の実現のため地区環境整備計画を策定していく考えでございます。
 また、開発等事業者に事業計画に関する事前協議を義務づけ、周辺環境に配慮し、安全で良好な市街地の環境づくりに貢献するよう指導していく予定でございます。
  なお、個別の商業者の育成等につきましては、現在、産業経済部で策定中の(仮称)地域経済活性化計画等の中で検討していく予定でございます。
 次に、西新井のイトーヨーカドーの出店につきましては、大店立地法第4条の指針に基づき、近隣の生活環境に悪影響が及ぶことがないように誘導してまいります。
 また、出店に際しての土地利用計画などについても、地域住民や周辺商店街と十分な協議を進めていくよう事業者を指導し、西新井駅西口周辺地区の防災都市づくりを進めていきたいと考えております。

再質問

○渡辺修次議員 小売業の保護・育成というのは、区としても、立場上は私どもの提案とは同じではないかと思ったのですが、産業経済部長の答弁は、大型店の出店、あるいは専門店のディスカウントショップの出店などが、地元の小売業に相当大きな影響を与えると私は思っているのですが、そういう認識がないということが先ほどの答弁では聞こえたのですが、大型店の影響は全くないというふうに考えているのかどうか、再度お答えいただきたい。
 それから、事務手続要綱は、区の権限がないというのはわからなかったのですが、それならば東京都に対して、足立区としても、野放しではなく、まちづくりの視点から商業調整ができるように、都へきちっと要望すべきだと思うのですが、その考えがあるかどうか、お答えいただきたいと思います。

再答弁

○坂本寛文産業経済部長 まず、第1点の商業者の認識でございますけれども、先ほどご答弁申し上げましたとおり、地元商店街の役割ということでは、地域コミュニティの核として重要であるという認識には変わりはございません。したがいまして、そのコミュニティの核として重要であるというところをどのように育てていくかということについて、さらに進めて、計画的に商店街の活性化に努めたい、このように考えているところでございます。
 2つ目の大店立地法の点でございますが、これも先ほど答弁申し上げましたとおり、東京都では仙台市と同様に要綱を制定し、適正に事務処理を行っている、このように認識しているところであります。

○渡辺修次議員 1番のシャッター通りとか商業店が減っている原因について、先ほどのお答えでは、大型店の影響は全く触れていない答弁だったから、そういう認識かと改めて確認したのですけれども、それに対して2つ目の問題にすり替えて答弁しているので、再度1番に対して答弁してください。

○坂本寛文産業経済部長 その原因はたくさんあろうかと思いますけれども、私どもとしては、先ほどご答弁申し上げましたように、まずはバブル経済崩壊後の景気の低迷によって、消費者の消費行動に影響が出ているということ、2つ目には消費者ニーズが多様化している。これはいかにコミュニティの核としての商店街であっても、そのニーズに対応するような消費がなければ、商業として成り立たない部分もあるだろうというふうに思います。言い換えれば、一つには需給のミスマッチということだろうとして、先ほど3点目に需給のミスマッチということを申し上げました。
 もう一つは、商店街の状況として、これは私どもも承知しているところですが、深刻な後継者不足、こういうものがいろいろある、これが大きな要因だろう、このようにご答弁申し上げたところでございます。