足立区基本構想に対する反対討論
伊藤和彦議員 |
○伊藤和彦議員 私は日本共産党足立区議団を代表して、ただいま議題となりました第85号議案、足立区基本構想に反対の立場から討論を行います。 「足立区基本構想の改訂」は、序章で述べているように、社会経済状況の大きな変化を受け、平成14年6月に策定した「足立区構造改革戦略」の中で、区政の構造改革の大きな課題として位置づけられました。足立区構造改革戦略は、政府の進める小泉構造改革を鵜呑みにし、区民に痛みを押しつける方向を長期の枠組みの中で規定し、より強行に進めようとするものであります。 反対の理由の第一は、民意の反映の問題です。基本構想は地方自治法第2条4項により「その地域における総合的かつ計画的な行政の運営を図るため」定めるものであり、区はそれに即して事務処理を行うようにしなければならないとするものです。区の将来を12年間にわたって規定するものだからこそ、十分民意を反映させることが必要なのです。 区は構想の策定に当たって、「区民をいくつかのグループに分けて公募し、でき上がったグループごとの基本構想は、区の方で手を加えず、そのままの形で、総体として区の基本構想にする」、「9つの(公募の)区民委員会による成果物は、原案をそのまま基本構想に載せることにする」と説明しました。 しかし、実際には区民から出された「少人数学級の実現」(高校・大学グループ)、「大規模店舗に対抗できる商店街の維持・活性化に向けた支援策」(勤め人グループ)、「地場産業への育成支援」(自営業者グループ)、「高齢者・障害者にやさしい街」(団塊の世代グループ)、「中学生・高校生が自由に遊べる場所、活動できる場所」(子育て中のグループ)等々は、構想に反映されたとは言えず、当然やるべき区民委員会の成果物も区長の都合のよい方向で取捨選択しております。 第二は、審議会、区民委員会で十分論議していない「人口減少社会」という規定が突如出され、全体を支配したことです。これはニューパブリックマネージメント(新しい公共)の考えと相まって、スリム化、効率化の名のもとに区の責任分野を大きく縮小する方向を打ち出しました。 少子高齢化が進展すると言って、合計特殊出生率の低下をあげ、「人口自然減を社会増によって補うための施策を展開する」、さらに「担税力ある区民の増加を図るため」「都市計画、土地利用の面などの更なる工夫」で、「区外から担税力ある区民の流入を図る」としています。これらを総合すると、この構想の目指す方向は、低所得者をなるべく減らし、そういう人たちに代わって担税力ある人々を呼び込もうとしているのではないでしょうか。 「構想」はまた、足立区には都営住宅や社会福祉施設等が集積していると言って、「区内の都営住宅は戸数・構成比において23区最大」「また、区内の生活保護世帯、身体障害者手帳所持者、愛の手帳所持者がいずれも23区最大」「構造的に低所得者層が多く、福祉ニーズも大きいため、区の財政的な問題の要因となっている」と言って、都営住宅や障害者、低所得者などを区財政の圧迫の要因として敵視する立場に立っています。 例えば都営住宅の問題です。「構想」が言う「23区内の公営住宅の偏在を解消」し、「まちづくりの土地資源として有効活用を図る」とは、区内の都営住宅を減らし、空いた土地をほかの目的に使うことを示唆しています。そもそも公営住宅法は、目的で明確にしているように、国と地方自治体が協力し、健康で文化的な生活を営むに足る住宅を整備し、住宅に困窮する低所得者に対し、低廉な家賃で賃貸するものなのです。 「構想」はもっぱらこうした行政の支援を求め、必要としている人々を危険視しているのが特徴であり、最も自治体が果たすべき役割を後景に追いやろうとしています。 第三に、「第5章 構想の実現にむけて」でも示されたように、「新たな協働関係、すなわち新しい公共を形づくる」として、新しい手法を取り入れたものです。そもそも「新しい公共」とは、企業の効率化の手法を行政管理に取り入れたものであり、それ自体は自治体の公共性に沿った政策立案や諸政策の優先順位など決める基準とはなり得ないものです。また、基本理念は「協働で築く力強い足立区の実現をめざします」としています。しかし、区は「協働」の相手と考える区民を「株主としての区民」「顧客としての区民」「パートナーとしての区民」「指導すべき区民」「規制しなければいけない区民」と5分野に分け、差別選別の認識を持っていることです。 また、人づくりの基礎となる学校教育分野では、「開かれた学校づくり」「学校選択の自由化」「二期制」の導入など、競争原理を広げる学校教育改革による差別選別教育を十分な検証もないまま一層加速・定着させようとしています。 区民生活の実態は、福祉への切実な要望、雇用の不安、所得格差の拡大、地域経済の衰退など、生活と営業上の困難や子どもの教育、区民の安全問題など、解決すべき課題が山積しています。この区民が安心して豊かに暮らしていける足立区の将来像は、「力強い足立区」ではなく、わが党が提案したような憲法、地方自治の基本に立ち、「やさしさ・希望・魅力あふれる足立区」を目指すべきではないでしょうか。 「足立区基本構想」で示している足立区の進む方向は、憲法、地方自治法で示された自治体らしい自治体とは大きくかけ離れたものであることを指摘し討論を終わります。 |
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