基本構想特別委員会 9月29日 前半の質問

鈴木けんいち議員


○鈴木(け)委員 議論が混乱して、どういう方向を目指すのかわからないような発言もあったが、午前の最後の質疑になるので、よろしくお願いする。私は最初に基本構想の策定方法に関わって質問する。区は基本構想策定に当たって、公募による区民委員会を設置したけれども、その理由は何か、お伺いする。
○政策課長  これは構想の序章にも記載しているが、区民の皆さんの生活感覚と言うか、区民の日常的な課題、区民生活に根ざした構想づくりをしたいということで、広くいろいろな区民の皆さんのご意見を直に伺うというねらいで公募したということである。
○鈴木(け)委員  生活感覚に根ざしたということで、大変いい理由かなというふうに思う。区は今回の基本構想の策定方法として、「区をいくつかのグループに分けて公募し、でき上がったグループごとの基本構想は、区の方で手を加えず、そのままの形で、総体として区の基本構想とする」と述べてきた。これは昨年の7月25日の第1回の基本構想審議会での政策経営部長の発言である。この審議会の前に配付された資料でも、「9つの公募の区民委員会による成果物は、原案をそのまま基本構想に載せることとする。基本構想は総論、各論、区民委員会基本構想の3つの要素から構成することを想定している」このように説明が書いてある。これらの説明に変更はないか。
○政策課長  基本的な考え方については、区民委員の皆さんからいろいろ出していただいた考え方を構想に反映し、場合によっては基本計画あるいはさらに具体的な事業実施計画へ反映していくということで、大きな考え方については変更はないと考えている。

区民意見の反映はどのようになるのか

○鈴木(け)委員  基本構想あるいは基本計画というふうになっているが、先ほど読み上げた説明によれば、「区民委員会によるグループごとの基本構想は区の方で手を加えず、そのままの形で総体として区の基本構想とする」このように政策経営部長が発言している。これとちょっと違ってきているのではないか。
○政策経営部長  確かにそのようなお話を申し上げた。現実には区の基本構想として正式に成立させるためには、議会の議決が必要になる。しかしながら、区民の9つのグループがつくったものについては、我々、全く修正していないので、いくつかの矛盾をはらんでいる。例えば年金問題を取れば、20代の若い人たち、学生などと高齢者の年金問題は利害がぶつかるわけで、こういったものをわざと調整しないという形でやってきているので、このようなものを議決するのは議決の趣旨に沿わないだろうということなので、今回、議決いただこうとしている構想は、区の方でつくった構想案である。その上で実質的には、これを冊子にきちっとつくった上で、議会あるいは住民の方に配布するわけだが、そのときは区の構想と区民がつくった9つをセットにしてお渡しする。だから、それをごらんになった区民は、こういう構想ができたのだ、これのもともとは区民がつくったのだというものをセットで配布するような形で、実質的に前に申し上げた方向でいきたいというふうに考えている。
○鈴木(け)委員  そうすると、昨年、政策経営部長の説明にあったように、区民委員会によるグループごとの基本構想は、総体として区の基本構想だということでよろしいのか。
○政策経営部長  行政側として正式につくった基本構想は今回出す案で、これは中の論理が矛盾しないように調整し、庁内の調整をとり、いろいろなところとも話し合いしてつくっている。これを議決していただく。ただし、実質的に区民等に配布するときには、これだけを配布するのではなく、区民の八十数名の方がつくった手づくりの基本構想もつけて、読まれる方が、こんな議論を、区民の方々が直接つくって発意した。それを前提にして議会の議決を得た構想があるのだというふうに両方、セットで読んでいただけるように配慮するということである。
○鈴木(け)委員  そうすると、総体として区の基本構想とするということだと思う。その点は否定されていない。そうすると、この区民委員会の検討結果の中で提案されているもので、基本構想に入っているものもあるが、入っていないものも相当ある。そうすると、これらは基本構想であり、行政がつくった構想には入っていないけれども、今後、基本構想として基本計画など、さまざまな施策に反映していくのだというふうに考えてよろしいか。
○政策課長  9つの区民委員の構想、ここに述べられているものは、区としての正式な、今この委員会でご審議いただいている構想のもとになったものだけれども、正式な計画という意味では、例えば基本計画との関係でどうなのかということについては、必ずしもイコールではないだろうというふうに考えている。したがって、区民委員の提案の中で述べられていることについては、それを具体化する場面で、例えば先ほどの問題にもあるように、矛盾した意見もあるわけなので、そのどちらを政策選択するのかということは当然、起こってくるだろうというふうに考えている。
○鈴木(け)委員  矛盾したと言っているが、例えば少人数学級の実現というのが高校生、大学生のグループにある。これはほかのグループ、例えば大人数学級にせよという意見が出ているわけではない。しかし、この少人数学級の実現ということは基本構想には入っていない。そういうものをきちっと入れるのか入れないのかということが問われている。そういうことで基本構想に入っていない。では基本計画に入れるのかと言うと、それもちょっとあやしい。そうすると、最初の説明はどうなるのかというふうに言わざるを得ないが、どうか。
○政策課長  例えば少人数学級の問題については、団塊の世代グループでは、少人数学級、必ずしも是としないという意見も複数出ている。そういった意味では、最終的な成果物に言葉として表現されているかどうかはともかくとして、それぞれの問題について複数の意見が出ているのも事実で、実際の区の計画化あるいは事業化に当たっては、その都度区民委員の意見がどうであったかということを踏まえながら検討していくべきだろうと考えている。
○鈴木(け)委員  そうすると、どれを入れるのか、どれを入れないのかという判断基準は何か。私の認識だと、最初に区民委員会を設置し、その声を聞いてそれを尊重してそれそのものを基本構想にするのだと言うが、だんだんと後退、変わってきているというふうに思う。
○政策経営部長  今回、議会にお示ししてご審議いただいているのは、あくまで基本構想ということで、これはビジョンの世界である。しかしながら、基本計画というのは、プランニングの計画の問題で、区民委員がつくった手づくりの構想の中にも、ビジョンのものと計画レベルのものと、場合によっては単年度の予算もごちゃ混ぜになっているという状況が現実にあって、それは修正していないということがある。ただ今の少人数学級をどうするかというふうな問題については、子どもの教育をこっちへ持っていこうというのはビジョンとしてあるが、そのために少人数学級が有効なのかどうかとか、さまざまな仕掛けがあるわけで、その辺はプランのレベルで、財源、効果その他を考えながら、基本計画なり、その下のレベルで具体的に決定していくという仕組みになるということである。

区の都合に沿って取捨選択した基本構想

○鈴木(け)委員  今、政策経営部長は少人数学級をビジョンの分野だと言った。そうであれば、基本構想に入れればいいではないか。今回の基本構想そのものは、答申が出た。そのあと、今回、議会に提出されている基本構想というのは、区の手が相当加えられている。冒頭部分は全部、区が書いたという形になっている。必要であればいくらでも手が加えられるわけだから、入れればいいのではないか。どうか。
○政策経営部長  私が申し上げたのは、少人数学級というのはビジョンではなく、プランの問題だというふうに申し上げたので、例えばビジョンの段階で、足立区の子どもたちの学力を向上させ、自立的な生徒をつくるというビジョンがあるとすると、そのためにどういう方法が有効なのかということはプランの段階に入ってくるので、そのときに例えば25人学級がいいのか、あるいは生活集団としては40人なり何なりにしておくけれども、別な形で少人数教育をするのか、どれが一番有効なのか、そのときは財源の問題もからむ、この辺をプランの問題だというふうに申し上げた。
○鈴木(け)委員  この基本構想は区民意見を重視するとか、策定過程においても、区民との協働で行った、これは今議会の区長のあいさつでも言っているが、結局、区の方針に沿ったものは反映するけれども、区の方針に沿わないものは反映しないというのが実態だというふうに思わざるを得ない。そういう意味でこの基本構想を読むと、冒頭の部分で、この基本構想というのは、区の構造改革戦略で、基本構想の改定を区政の構造改革の大きな課題として取り上げた。だから、まず構造改革戦略があって、これに基づいて基本構想をつくろう、出発して、内容までこの構造改革戦略に沿って選択しているというふうに言わざるを得ない。次に、この基本構想で人口減少社会という規定が出てきた。これは審議会の答申の段階ではなかった。これが説明もなくと言うか、突如登場して、しかも人口減少社会という規定に基づいて施設配置も語られているということだが、人口減少社会について、審議会でどういう議論がされたのか。
○政策課長  人口減少社会という言葉がそのまま使われたかどうか、議事録を調べないとあれだが、いずれにしても少子高齢という社会が今後、進んでいく。その中でいろいろな財政負担も含めて、区全体の仕組みあるいは施設などについても、それを支えていくことが非常に難しくなってくるという議論はいくつかの分科会でなされたということである。
○鈴木(け)委員  あまり議論されていない。人口減少社会ということでは議論されていない。言葉としてはされていないということだ。ところが、今回の区の構想案に登場した。そこの段階でちょっと驚いたが、実は今日、私の家に基本構想特集のあだち広報が配られた。おそらく区内全戸に配付されたのだと思う。この中を読むと、冒頭部分に、「日本社会においては、人口減少社会の到来という大きな時代」こういう文章から始まる形になっている。全体は基本構想そのものの流れになっているが、ずっと読んでいくと、基本構想そのものには、こういう記述は冒頭の部分にはない。ところが、特集号には書いてあるということで、基本構想に書いていないことを広報には書いてしまうということで、大変強い意志を持って人口減少社会ということを位置づけている。いわば基本構想にどんどん入ってきているという感じがする。区は人口減少社会というのをキーワードというふうに考えているのか。
○政策課長  これは最近のいろいろな論評などを見ても、かなり大きな課題だというふうには認識している。

生活保護や都営住宅を敵視する鈴木区政の基本構想

○鈴木(け)委員  部分的な問題とか、あるいは言葉の問題であれば、そう取り上げることもないが、いわば社会のあり方全体を規定する事柄である。この人口減少社会という問題だが、区は人口減少社会論に合わせて、これからの社会を再構築しようとしているというふうに思う。では、目指す社会の方向とは一体どういう方向なのかということについて触れていきたいと思う。構想の7ページには、「区内の都営住宅は、戸数・構成比において23区で最大、また区内の生活保護世帯、身体障害者手帳所持者、愛の手帳所持者がいずれも23区最大、構造的に低所得者層が多く、福祉ニーズも大きいため、区の財政的な問題の要因となっている」と指摘している。都営住宅居住者とか、低所得者、障害者などを区財政圧迫の要因としている。また、9ページでは、合計特殊出生率の低下をあげている。そして、こうした減少傾向は今後とも変わる気配は見えておらずとした上で、人口の自然減を社会増によって補うというふうに書いている。もう1カ所、13ページ、「今後、担税力のある区民の増加を図るために、都市計画、土地利用の面など工夫し、区外から担税力のある区民の流入を図るための施策が重要となってきている。」このように書かれている。これを総合すると、この構想が目指す方向は、低所得者とか障害者とか、こういう方々はなるべく減らす。追い出すというわけではないかもしれないが、住み続けたり、よそから移ってこないようにしようという方向が非常に強く表れている。そういう人たちにかわって、いわばお金持ちの人、担税力のある人々を呼び込もうという方向が見えてくる。そこで私は、比較的低所得者が多いと言われている都営住宅について取り上げたいと思う。都営住宅は公営住宅だけれども、公営住宅法では、第1条で、「国と地方自治体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し」と規定している。これに対して、基本構想ではどういうふうに書いてあるかと言うと、「23区内での公営住宅の偏在を解消し、まちづくりの土地資源として有効活用を図る」と書いてある。これは区内の都営住宅を減らし、空いた土地をほかの目的に使うということではないか。
○政策課長  先ほどの広報の記事で、人口減少部分については、今回の構想に触れていないということだが、序章の部分で、3ページあたりに、人口減少社会についての記述がある。これを広報の方に反映させたということでご理解をいただきたいと思う。それから、今のご質問だが、都住については、少なくとも足立区に都営住宅が偏在しているということは事実なので、この偏在を解消して、バランスのとれた地域社会をつくりたいということで、この記述があるというふうにご理解いただきたい。
○鈴木(け)委員  今の人口減少社会の問題だが、人口が減少するというのは書いてある。しかし、人口減少社会の到来は、別のそういう社会になるのだという、社会全体の規定だから、これは全然違う概念に変わっていく。都営住宅の問題だが、同じ基本構想では、「若年層、学生、留学生など、幅広い層が居住できる社会住宅的な役割へ転換を考える」と書いてある。若年層、学生あるいは留学生なども住めるようにする。これは大変いいことだと思う。しかし、先ほど申し上げたように、足立区での都営住宅を減らそうという方向、こういうことを思っているわけだから、総戸数が増えない中で、こういう方々に入ってもらおうとすれば、住宅に困窮する低額所得者は、今でも入れない状態があるわけだが、ますます入れなくなるという方向になってしまうのではないかと思うが、どうか。
○政策課長  全都ということで考えると、そういった課題があるいはあるかもしれないが、足立区の構造、こういったものを考えたときに、果たしてすべての需要を足立区だけで引き受ける必要があるのか、それから、低所得者を中心に、都営住宅の住環境がどんどん進んでいくという場合に、高齢化も進むわけだが、その中で、かつては都営住宅も多くの区民の方が入れるような制度だったというふうに聞いているが、現に働いている人、あるいは若い人、そういった活力は地域社会の中から極めて少なくなってくるというのは、現にお住いになっている方にとっても問題である、悩ましいことだというふうに伺っており、そういった住環境のバランスというものを回復する意味でもこういった政策が必要ではないか、このように考えている。
○鈴木(け)委員  足立区だけで引き受けろと言っているわけではない。今ある都営住宅を減らしたり、あるいは住めなくするような方向ではないのかと言っている。公営住宅法の第1条の目的で、書いてあるように、国と地方自治体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、そして入れるようにするというのが本来の自治体の役割、なすべき方向なのではないか。その一端を足立区も担っていくことこそ、本来の自治体らしい自治体の方向ではないのか、基本構想はそういう方向であるべきではないかということを申し上げたわけだ。もう一つ、基本構想の中では、社会住宅ということが触れられている。社会住宅の特徴は何かと言うと、自治体は建設補助と家賃補助は行うが、実際の建設と運営は民間が行う、このように説明がされている。これは先ほどの公営住宅法から見ても、公的責任の後退あるいは放棄ではないか、お伺いする。
○政策課長  社会住宅について、社会住宅的と言うか、そういった考え方で再構成ができないかということの一つの表現で、必ずしもここで規定しているような形のものを、厳密に適用していくということではないが、ここで説明しようとしていることは、ここの前段に書いてある、低所得者に限定された区営住宅あるいは都営住宅の入居があるが、それを本来の社会住宅、より開かれた、現に住宅に困っている方、所得に関係なく、そういった方に利用してもらうような形に変えられないかという提案である。
○鈴木(け)委員  この基本構想では今、いくつか見たけれども、行政の支援を必要としている方々を、専ら危険視と言うか、そういう見方で見ている。しかし、本来、行政というのは、税の再配分機能も生かして、弱い方、あるいは低所得者、そういう方々を支援することこそ果たすべき役割だというふうに思う。しかし、そういう役割を小さくする、身を引いてしまうという方向を持っているから、基本構想で非常に大きな特徴としてニュー・パブリック・マネジメント、日本語では新しい公共というふうに言われているが、こういう手法に頼ろうとしているのだというふうに言わざるを得ない。私、この問題を本会議で取り上げ、ニュー・パブリック・マネジメント、新しい公共という手法は効率化の手法であって、生活に根ざした政策の立案とか、政策の優先度を決める基準とはなり得ないのではないかというふうに申し上げたけれども、そうしたら、最適な基準であるかのような答弁があったが、そういうことか。
○政策経営部長  我々も、今の事態を打開するのにどういう方法があるか、いろいろなことを考えてきたわけだが、その中でニュー・パブリック・マネジメントの手法は、海外はもちろんのこと、日本国内でも相当有効だということで使っている。ちなみにニュー・パブリック・マネジメントの考え方は、効率性ではなく、有効性というところで考えているということである。なお、例えばこれに代わる、もっと斬新ですばらしい手法があれば、我々もそっちに行くわけだが、ちなみに申し上げておくが、例えば地方自治法第2条の安全・福祉などという話は、経営手法では全然ないので、そんなのは当たり前の話だから、その先に地方自治法第2条にあることを、今の財源の中でいろいろな協働の仕組みをつくりながら、どうやれば有効にできるのかという議論をしているわけで、そこに使える技法であれば、ニュー・パブリック・マネジメントでなくても、ほかのものをご紹介いただければそれを使うということである。
○鈴木(け)委員  ほかにもっといい手法があればそっちを採用したいという、ちょっと頼りない発言に変わってきたが、今、有効性ということを言った。何が有効なのか、いろいろなことがあって、これは有効だ、これは有効でないということになるから、有効性ということは、今、政策経営部長がおっしゃった範囲でいっても意味がない言葉になってしまう。ニュー・パブリック・マネジメントというのは、有効だというふうに判断されている基準というのは、行政の効率化、民間企業の経営の効率化手法を行政に導入して効率化を図ることが有効だということで採用されている。だから、答弁が後退していると言うか、有効性そのものを、今の答弁では否定をしてきているような感じである。人口減少社会論のもとで、行政負担を一層軽くする。行政は助かるだろうけれども、区民はますます大変になる方向、これが今度の基本構想の目指している方向だというふうに言わざるを得ない。どう考えても、この基本構想は憲法や地方自治法が目指す自治体らしい自治体というあり方とはどんどんかけ離れていってしまうというふうに思う。そういうことを指摘して私の質問を終わる。