1、本会議質問

○一般質問  大島芳江議員

○大島芳江 議員 私は最初に保育サービスの充実と保育料について伺います。
 1.57ショックと言われて少子化が社会問題となってから10年以上がたちました。これまで政府は総合的な少子化対策の指針として、少子化対策推進基本方針を決定し、新エンゼルプランや待機児童ゼロ作戦、少子化対策プラスワンなど、さまざまな少子化対策を打ち出してきました。しかし、出生率は下がる一方で、2003年の合計特殊出生率は1.29と過去最低を記録し、総人口に占める子どもの数も13.9%と過去最低を更新しました。東京では1.0、子どもの数も12.0%といずれも全国最低です。戦後最低を更新し続ける少子化に歯止めをかけようと2003年7月に少子化社会対策基本法や、次世代育成支援対策推進法、児童福祉法の一部を改正する法律が制定されました。
 国は次世代育成行動計画策定にあたっての指針を定め、住民の意見を反映させるために必要な措置として、地域特性や利用者のニーズの実情、サービス提供者の現状やサービス資源の状況、さらには子どもと家庭を取り巻く環境などの現状の分析を踏まえ、サービス利用者の意向及び生活実態を把握した上で、サービス対象者に対するニーズ調査を行うことが望ましいとしました。
 足立区は今年9月、次世代育成支援対策推進法に基づくあだち次世代育成支援行動計画を策定しました。区も策定にあたり、子育て支援アンケートを行いましたが、サービス利用者の意向及び生活実態の調査ではなく、子どもを養育している方たち、サービス対象者への調査でした。国民生活白書でも、理想の数だけ子どもが持てない理由は、男性も女性も「子どもを育てるのにお金がかかる」がトップで、経済的な負担の重さがわかります。他の調査でも、「保育サービスが高い」、「教育にお金がかかる」の項目が高位を占めています。また、保育所に入所していても、保育時間の問題など、保育所が利用しにくいという問題や、子育てと仕事の両立の課題の解決など、現実の深刻なニーズの把握が必要だったのではないでしょうか。区はサービス利用者の意向や経済状態を含む生活実態はどのようなものであると把握しているか、伺います。

区は子育て世代の経済状態を把握しているのか

 このアンケートでは、父母の就労形態や住いの状況などを聞いたあと、いきなり保育園児童の年齢別保育経費概算(月額)を保護者負担と税金による負担をグラフで示し、保育経費への税投入の負担感を印象づける資料を示した上で、保育所充実の必要性や利用者負担について質問しています。
 児童福祉法第24条に規定され、自治体の仕事となっている保育所運営にかかる費用だけを取り出し、待機児の保護者や保育所を利用しない区民に不公平感をあおり、受益者負担増へ意識誘導したのでは、正確な利用者のニーズ調査にならないと考えるが、どうか、答弁を求めます。
 次世代育成支援対策推進法及び児童福祉法の一部改正に対する国会決議では、保育所の待機児の解消を目指して保育所の整備、受け入れ児童数の拡大を図ることなどが掲げられています。区は2003年第4回定例会のわが党の一般質問に答えて、児童福祉法第24条ただし書きの「やむを得ない事由」について、「財政の問題というのは、一番、やむを得ない事例だと考えている」と見解を述べました。しかし、やむを得ない事由をどれだけ強調しても、自治体に課せられた「保育に欠ける児童を保育所において保育しなければならない」とする責務をいささかもあいまいにするものではないと思うが、どうか。
 また、行動計画策定指針では、地域における子育て支援のうち、保育サービスの充実については、「利用者の生活実態及び意向を十分に踏まえてサービスの提供体制を整備すること、特に待機児童が多い自治体では、保育計画等に基づいて、保育所受け入れ児童数の計画的な拡充を図り、待機児童の解消に努めることが必要」とされています。行動計画が子育て支援に関する総合的な計画とするなら、保育所増設計画を含め、待機児解消計画を示すべきと思うが、どうか、答弁を求めます。
 また、区は2004年第1回定例会のわが党の代表質問に、「今までは子育て施策の中に保育だけが中心として行われてきたところがあるが、今後とも柱の一つであることは変わらない」と答え、保育が子育て施策の中心から柱の一つに後退した認識を示しました。

児童福祉法の定める保育所が子育て支援の拠点

 今回の行動計画の前提となった少子化対策プラスワンでは、子育てと仕事の両立支援が中心であることは変わらず、さらに加えて男性を含めた働き方の見直しや地域における子育て支援など、4つの柱に沿った総合的な取り組みを推進するとしています。
 今、保育制度と言うと、保育所制度のことと受け止められるほど、保育サービスに占める保育所のウェートは高いものがあります。児童福祉法第24条で定める保育所は、自治体の子育て支援策の拠点であり、中心であることは変わらないと思うが、どうか。また、この保育所にさまざまな子育て支援策も加えて進めるべきと思うが、どうか、答弁を求めます。
 次に、この10月、子育て支援サービス利用者負担適正化審議会から、保育料にかかる答申が出されました。この審議会は、子育て支援にかかるサービスの利用者負担はどうあるべきかを審議する区長の諮問機関として設置されましたが、さまざまな子育て支援サービスのうち、保育料についてのみ諮問され、審議されました。今後、保育料以外の子育て支援策の利用者負担について、この審議会で審議する考えか。また、区としてすべての子育て支援サービスについての利用者負担はどうあるべきと考えているのか、伺います。
 今回の答申では、保育園の保育料を見直すべきであるという意見に加えて、食費相当額を全世帯に求め、応益負担を求めた結果、生み出された財源を、他の子育て支援策に振り向けていくという意見も出されています。97年6月、児童福祉法改正で、年齢別の保育コストに応じた保育料を徴収できるという応益負担も可能となりましたが、同時に当該保育費用を徴収した場合における家計に与える影響を考慮することや、「保育料は現行水準を後退させないよう配慮し、また、低年齢児及び中間層に十分配慮するとともに、保育費用に対する公的責任を後退させないこと」という国会決議もつけられました。
 そもそも保育の実施に要する人件費や給食、おやつの食材から炊事食器、光熱水費、保育材料費まですべての費用は、保育の実施に責任を持つ市区町村が支払うことになっています。そして、市区町村は、保育に要する費用を扶養義務者から徴収することができるとの定めに基づき保育料を徴収しています。今年度から国の三位一体改革で、公立保育所運営費の国の負担金は一般財源化されましたが、国の負担分を計算する基礎は、人件費や給食費を含めた国基準保育料であり、しかも応能負担です。

保育料を支払っている利用者に食材費の負担を求める二重の誤り

このようにみずからの負担を軽くしようと考えている国でさえ、食材費相当額を取り出して、保育所入所の全世帯に負担させるという応益負担には立っていません。給食費も含めた保育料を支払っている利用者に食材費の負担を求めることは、二重の負担を求める結果となるだけでなく、国会決議にも反します。
 吉田区政の時代には、他区が保育料を値上げしても、子育て世代の暮らしを応援するために保育料の値上げを抑えてきましたが、鈴木区政に変わったとたん、36%もの値上げを行いました。あれからわずか4年、この間、区民税や生活保護、就学援助など、どの指標を見ても、区民の暮らしはますます深刻になっています。このようなときに子育て施策を展開するための財源を、同じ子育て中の区民に保育料を値上げすることで肩代わりさせるべきではないと思うが、どうか、答弁を求めます。
 次に、まちづくり条例について伺います。
 区は、区民・事業者との協働のまちづくりを進めるために、(仮称)まちづくり基本条例検討素案についてのパブリックコメントを昨年7月に実施しました。今、区内にはマンション建設や墓地造成、大型店出店など、さまざまな開発と良好な住環境を守りたいという住民との間で紛争も起きています。だからこそまちづくり条例は、住民合意に基づくまちづくりを推進し、住民が足立区という都市をつくり、住みやすく、質の高い環境をつくり出すためのシステムであってほしいと考えます。条例制定の基本的な考え方は、よいまちづくりをしようという宣言的な条例なのか、それともまちづくりのための具体的な手段をしっかり定める条例なのか、伺います。
 条例素案では、まちづくりの基本理念とともに、住民の意見を反映させた8項目のまちづくり基本方針を作成するとしています。これまで足立区のまちづくりに関するハード、ソフト両面からの方針は、まちづくり総合指針で示されていました。基本方針にはこれまでの総合指針に盛り込まれていた法的なまちづくり事業とともに、都市計画法や建築基準法などの個別的な法律によらず、民間の開発を規制、誘導する自主的な行政指導の面も含まれるのか、伺います。
 条例素案には、開発等の事業によるまちづくりに関して、「開発事業者は事業計画について区に事前協議することとし、区は必要に応じて勧告・公表ができるものとする」とあります。区はこれまでも環境整備指導要綱によって、事前協議、勧告、公表などの措置を取ってきました。この開発の手続きを条例に盛り込むことは、行政指導に法的根拠を持たせることになり、まちづくり条例の中で重要な部分になると考えます。区はこの内容を条文に盛り込むという考えなのか、伺います。

まちづくり基本条例に対する日本共産党の対案を提起

 住民の願いに応えたまちづくりを進めるためと言っても、明らかに違法な条例を制定せよと言っているのではありません。しかし、法律に定めのないものや、法令の範囲内であれば、知恵を出して、地域の特性に合ったより厳しい基準を設けることは可能です。例えば開発等の法的手続きの前に、協議を継続することによって開発計画案の調整を行うという事前協議はできます。地域の特性に合ったより厳しい基準で開発事業者を指導するには、行政、区民、開発事業者による協議をねばり強く続けることが重要と思うが、どうか。
 そのために公聴会の開催、一定規模以上の開発については、環境影響報告書の提出、縦覧と意見書の提出、区民により提出された意見書に対する開発事業者、あるいは行政の回答の義務、行政の措置に対する不服申し立てなど、公正で民主的な手続きを定めるべきと思うが、どうか。
 また、条例に定められた計画づくりや開発の審査を行うことを目的とした審議会の設置が必要と思うが、どうか。
 条例に基づいて開発事業者、行政、住民が相互に対等に、そして公正で民主的に協議が行われ、その過程で地域特有の開発の基準を開発計画に取り入れさせるプロセスは適法なものです。区は違反者への措置として勧告や公表という考えですが、地方自治法では、条例中に罰金等の刑罰を科すことができることになっています。より強い指導を行うという立場で罰則の規定を設ける考えはないか、伺います。
 素案にある地区まちづくり計画は、住民に身近な地区を単位として、住民参加によるまちづくりを進めるために重要と考えます。区は一定の地区に区分した市街地の環境整備計画をつくり、それに基づいて地区の住民と区が協働してまちづくり計画をつくるとしています。
 先日、金沢市に視察に行ってまいりましたが、金沢市まちづくり条例は、住んでいる人が住んでいるまちのルールをつくるという徹底した住民参加型のまちづくり条例でした。まちづくり計画は町会単位や小学校区程度の比較的小規模な単位で、その地区の特性に応じて、その地区にふさわしい建物、道路、土地利用などの基準を地区の住民が中心になってみずから決める。そして、このまちづくり計画を実現するために、市長とまちづくり協定を結ぶことができ、その他の区での開発行為は、計画段階で行政がチェックし指導する。さらに都市計画決定による地区計画として定めるよう市長に要請することもできるという内容でした。庁舎内にはまちづくりに関する担当課を同じフロアに配置するなど、住民がいつでもまちづくりの相談に来られるような配慮もされていました。時間はかかりますが、そこに住む住民を大事にする住民主体のまちづくり計画にするべきと思うが、どうか、お聞きしまして、この場所からの質問を終わります。

答 弁

◎石川義夫 福祉部長 私からは、大島芳江議員のご質問のうち、保育サービスと保育料についてお答えいたします。
 まず、あだち次世代育成支援行動計画のニーズ調査についてでございますが、区が行った調査は、就学前児童を持つ家庭の85%を占める2万2,000世帯を対象とし、アンケート内容は世帯調査や親の就労状況及び保育サービスの意向調査を行ったものです。この中には、当然、サービス利用者の意向や生活実態も含まれております。また、保育サービス利用者と接する機会の多い保育士とのグループインタビューも合わせて実施しております。指針に十分沿った調査であったと考えております。
 なお、アンケートにおいて、区政情報を提供した上でその意向を伺うことは、公平なニーズ調査結果を求める立場から当然と考えております。
 次に、児童福祉法第24条ただし書きのやむを得ない事由についてでございますが、保育に欠ける児童は保育所において保育しなければならないことが原則であるとの認識を持っており、自治体としての責務をあいまいにするものではございません。
 また、待機児につきましては、あだち次世代育成支援行動計画に基づき、認証保育所の計画的誘致、家庭福祉員の計画的増員等を中心に解消を図ってまいりたいと考えております。
 保育所につきましては、現在の財政状況では、認可保育所を計画的に配置していくのは困難であり、増設計画を策定する考えはございません。
 次に、保育所が子育ての拠点かどうかというご質問にお答えいたします。
 保育所は自治体の子育て支援策の拠点の一つであると認識しておりますが、仕事と家庭を両立させたい利用者にとっては、いわゆる認可保育所だけでなく、認証保育所、認可外保育室、家庭福祉員等、すべての保育資源が子育て支援の拠点になると考えます。
 その中で認可保育所を中心に、さまざまな保育資源を活用して、多様な子育て支援策を実施していきたいと考えております。
 次に、足立区子育て支援サービス利用者負担適正化審議会についてお答えいたします。
 審議会は子育て支援サービスに係る利用者負担の適正化を図るために設置された諮問機関であり、審議すべき事項が生じた場合には、審議することになろうかと思います。
 また、ご質問の利用者負担につきましては、受益と負担の適正化について、公平性の観点から適宜検討していくべきであると考えます。
 次に、保育料についてお答えいたします。
 保育料については、在宅子育て家庭との負担のあり方が適正でない現状を適正な方向に転換させていくことが必要であると考えます。このことは、先の審議会においても、多くの意見をちょうだいいたしました。今後は審議会の答申を踏まえて、保育内容の充実、子育て支援サービスの充実を図り、すべての子育て世帯が公平なサービスを受けられるよう努力してまいります。
◎佐野宏明 都市整備部長 まちづくり条例についてお答えいたします。
 現在、まちづくり条例の制定に向けて準備を進めているところでございます。この条例では、まちづくりを推進するための基本理念を定めるとともに、開発事業者等に対して事前協議を義務づけ、必要に応じて指導や助言できることを明らかにいたします。このようにまちづくりのための理念と具体的な手段を定めた条例とする考えです。
 次に、まちづくり基本方針についてお答えいたします。
 まちづくり総合指針による行政指導は、法的根拠によらないものでございました。このためまちづくり総合指針に盛り込まれていた指導要綱を見直すとともに、まちづくり条例を制定することにより、法的根拠を持たせるものでございます。
 次に、開発事業者等によるまちづくりに関する事前協議、勧告、公表等の手続きにつきましては、条例で定める予定でございます。
 次に、大規模開発に関する環境影響報告書の提出等につきましては、東京都環境影響評価条例に基づき対処するものと考えており、この条例で規定する予定はございません。
 次に、開発の審査等を行う審議会につきましては、開発等に関するきめ細かい基準を明確にして指導することにより、設置する必要はないものと考えております。
 次に、違反者への措置でございますが、勧告に従わない場合には、区民に公表することにより、開発事業者等に対する抑止効果があるものと考えております。
 最後に住民主体のまちづくり計画の推進についてお答えいたします。
 区は昭和61年度から区内を70地区に分け、それぞれの地区の特性に応じた地区環境整備計画を策定いたしました。現在、この計画をもとに、住民参加型の地区まちづくり計画を進めております。
 具体的には、住民がまちづくり地区連絡会を設立し、まち歩きや先進地区の視察等を行い、それぞれの地区の問題点を把握してまいります。その上でまちづくりニュース等の媒体で住民の意見・要望を集約してまいります。これらの活動をもとに、地域住民の皆さんと意見交換を行い、計画づくりを進めております。現在、関原地区をはじめ、11地区で地区まちづくり計画が策定されております。今後も住民との協働によるまちづくりをさらに進めてまいります。

再質問

○大島芳江 議員 何点か再質問をさせていただきます。
 まず、一番初めのサービス利用者の意向、経済状態を含む生活実態はどのようなものであると把握しているのかと質問しているのです。どういう調査をしたのかというふうに質問しているわけではありませんので、区としてサービス利用者の意向、生活実態、経済状態を含むものをどう把握しているのか、答弁を願いたいと思います。答弁もれです。
 それから、負担の公平の問題で、特に子育て施策の問題で、すべての世帯が公平なサービスをというところで、保育料の値上げで保護者に肩代わりさせるべきではないと私申し上げましたけれども、公平なという部分の問題です。児童福祉法の第24条というのは何かと言うと、これはまず家庭保育に欠ける子どもが、例えば親の労働とか病気、そういうもので欠けてしまう、その子を保育園に入れることによって、その子どもが初めて家庭で保育されている子どもと同じレベルになるのだ、そのための施策として自治体に課せられた責務なのだとなっているわけです。そういう点で言えば、家で子育てをしている方たちと同レベルでこの問題を考えるというのでは、やや土俵が違うというように私は思います。そういう意味で、すべての世代が公平なサービスを受けるということでありますが、公平という点でも、24条で定められた保育所に入れるということは、この公平なサービスの中では別の問題だというふうに考えますが、その点についての答弁をお願いいたします。

再答弁

◎石川義夫 福祉部長 まず、1点目のお答えでございますが、大島議員のご質問の中で、アンケート等が不十分だろうというところから把握していないのではないかというご質問でございましたので、十分な調査をした上で、把握しているということで、特に集計の中に意向とかは述べられております。例えばサービス利用者の意向につきましては、これから充実させてほしい事業はどういうものがあるのかというようなこととか、あるいは保育園を選ぶときの基準はどうなのかとか、そういうことで、サービス利用者の意向については把握しております。
 生活実態につきましても、例えば有料でも保育サービスを必要とする理由が仕事だとか、そういう実態については把握してございます。また、サービスの中で一番大きい保育料でございますが、これも階層別の徴収をしているわけでございまして、その実態については、どの階層に何人いるのかというところで十分把握しているところでございます。
 第2点目の保育に欠けるという条件でございますが、収入を得るために保育に欠ける方もいらっしゃると思いますが、最近は女性の社会進出であるとか、あるいは収入を得るために働いているという方が多くいらっしゃると思います。そうすると、在宅で子育てをしている人と、保育園に預けている方との不均衡な負担があってはいけないということで、その適正化を図りたいということで考えております。そういうことから今回の審議会で答申をいただいたところでございます。