第106号議案「足立区保育所の保育の実施に関する条例の一部を改正する条例」についての反対討論
渡辺修次議員 |
○渡辺修次議員 ただいま議題となりました第106号議案「足立区保育所の保育の実施に関する条例の一部を改正する条例」について、日本共産党足立区議団を代表し、反対の立場から討論を行います。 反対理由の第1は、保育園に預けている子育て世帯に40%もの大幅な負担を強いる条例だからであります。鈴木区長は、吉田区政時代に据え置かれてきた保育料を、就任早々36%も値上げし、今回の値上げで事実上約2倍にし、23区最高の保育料にしてしまいました。政府の調査でも、子どものいる世帯の所得が大きく下がっているもとで、子育て支援に逆行することは明らかです。そして今回の値上げは、所得の低い世帯により重い負担を強いる内容ともなっていることに加え、非課税世帯からも保育料を徴収する過酷な内容となっています。 非課税世帯には、本則では3歳未満児では月3,600円、年間4万3,200円も徴収します。子育て世帯の収入が低いことは、区も熟知しており、足立区の認可保育園利用者世帯のうち、AからCの3階層が27%、D1からD8階層が45%と、前年度収入が共働きで約300万円以下の所得の低い家庭が72%を占めています。 区民の声でも、今でさえ「保育料は厳しい。収入の3分の1を占めているので大変」「女性の収入には限りがある。その中での保育料の割合が多すぎる」など、現保育料でも重さに耐えかねた声があがっています。 また、わが党区議団が実施したアンケートで、「子育て支援について何が必要ですか」の項目で一番多かったのが保育料の軽減で27%もありました。こうした区民の声と生活実態を考えるなら、保育料は据え置くことが暮らしを守る自治体としての区の責務ではないでしょうか。 第2に、児童福祉法の精神を無視し、自治体としてはやってはならない手法をとったことです。児童福祉法第24条で、市町村は、保護者の労働または疾病その他の政令で定める基準に従い、条例で定める事由により、その監護すべき乳児、幼児または第39条第2項に規定する児童の保育に欠けるところがある場合において、保護者から申し込みがあったときは、それらの児童を保育所において保育しなければならない。ただし、付近に保育所がない等、やむを得ない事由があるときは、その他の適切な保護をしなければならないと明記されています。 この法には保育所行政は区の責務であること、家庭保育に欠ける児童が、健全に育成される権利を定めています。家庭保育に欠ける子どもは、保育園に入れて初めてその子どもが家庭で保育されている子どもと同じレベルになることを定めています。この保育園に係る食材費をはじめ、必要な経費は当然、税金で賄い、同時に利用者は所得に応じて食材費を含めた利用料を負担しています。その食材費を故意に保育所経費から抜き出して、食材費の負担は当然という論法は成り立ちません。こうした論法を押し通すことは、結果として児童福祉法の定めに反し、保育料の二重取りだと指摘せざるを得ません。 さらに重大なことは、区が区民に検討素材として情報提供したねらいが意識誘導策であったことです。区は本来、児童福祉法第24条で定められた責務に従い、保護者から申し込みがあった場合、認可保育園で保育しなければなりません。ところが待機児が多くなっているにもかかわらず、認可保育園の建設は計画すらつくらず、同条のただし書きを根拠に認可保育園での定員枠を膨らませて詰め込む弾力的運用と、認証保育所や保育ママの増員で対応してきました。認可保育園と比べて利用料が高い認証保育所や保育室利用者には、認可保育園利用者と同等の支援を講ずる責務が区にはあります。その責務を棚上げした上で、同じ保育施設利用者と比較して、認可保育園利用者がいかに負担が少ないかと思わせる情報を流しました。この手法は足立区の責務を投げ捨て、認可保育園利用者に負わせる不当なやり方ではありませんか。 さらに、子育て支援策として、幼稚園利用者も在宅子育て世帯とも比較するなど、次元の違う施策を同列に置いて、税金の使われ方を数字で示すという卑劣な手段を弄しました。加えて働いて収入を得ているから、負担増は当然だという声も聞かれますが、働いている女性も当然ながら所得税、住民税などを負担しています。認可保育園に税金を使いすぎており、不公平だと言いながら、この税負担は全く無視しています。 このような意識誘導は自治体の責務を投げ捨てた異常な方法であり、次世代育成計画が掛け声だけで、ここに費やす費用は、認可保育園利用者の保育料を値上げした負担増の範囲でしか考えていないことが透けて見えます。ここには少子化社会対策基本法や次世代育成対策推進法の精神からも反しています。少子化が急速に進行している今こそ、区民が子どもを安心して生み、育て、子育てに誇りと喜びが感じられるさまざまな施策を抜本的に推進することこそ求められているのではないでしょうか。 最後に議案提出の異常さです。執行機関と議会は車の両輪とよく言われます。執行機関のチェック機関としての役割を持つ議会は、区民の代弁者として執行権をチェックするために、議案などは事前に十分調査し、区民の声も直接聞いて、審議の準備をすることが議員の職責の一つです。この職責を果たすために、足立区議会運営要綱にも、議案については、質問通告締切日の2日前までに各会派控室に配付すると定めています。しかも開会前の11月30日の議会運営委員会で、わが党の針谷議員から、追加議案はあるのかと質問した際に、明確に、ありませんと答弁しました。さらに自民党やわが党の本会議質問に対しても、「区広報に載せてから」「今後は審議会の答申を踏まえて、保育内容の充実、子育て支援サービスの充実を図り、すべての子育て世代が公平なサービスを受けられるよう努力します」と答弁しましたが、答弁が終わった直後に突如議案を提出することに豹変しました。この態度は本会議での執行機関の答弁に責任を負わず、結果として区民から選ばれた議員の職責を否定することになりました。 今回の提案は8日の中間本会議に提案され、審議は翌9日に開かれた厚生委員会で審議されました。これでは主権者である区民にどの程度知る機会があったのでしょうか。この議会で自治基本条例が制定されましたが、この条例で定める情報の公開にも、区民参画という考え方からも外れ、区民からの意見を反映する機会も奪い、闇雲な提案と、十分区民に周知や意見も聞かず、議会で決定してからという結果を押しつけるおよそ民主主義のかけらも感じられない異常な決め方を選んだことです。この結果は質疑打ち切りまでして賛成した会派の責任も問われることを指摘し、討論といたします。 |
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