足立区地域経済活性化基本計画(仮称)についてのパブリックコメントへの意見

2004年10月25日
足立区経済観光課計画調整係御中
日本共産党足立区議団
足立区中央本町1−17−1
03(3880)5770

足立区地域経済活性化基本計画(仮称)についてのパブリックコメント

 足立区地域経済活性化基本計画(仮称)策定のため、あだち産業会議の「提言」をもとに意見を募集するとのことですので、意見を提出いたします。
 はじめに、今回の足立区地域経済活性化基本計画(仮称)策定は、もともと平成12年に策定された「あだち産業プラン」(計画期間8年間)の「中間見直し」として位置付けられていたものでした。それが「見直し」ではなく「改定」とし、名称も地域経済を活性化する視点を取り入れたものとするとされていますが、「あだち産業プラン」が前提にあり、これを踏まえた「改定」であることに変わりはないと考えます。
 これまでの区の計画では「限界がある」と述べていますが、区の説明では、検証は行なったというものの、残念ながらその内容は、区民にも、私達の目にも触れられておりません。本来ならそうした検証を参考に意見を述べたいところですが、それは見当たりませんので、区内産業の振興、地域経済の活性化を願う気持ちから私たちが気付いた部分、これまで述べてきた事柄を以下述べますので、よろしくお願いいたします。

 1、まず基本理念に関わる問題です。「産業振興施策」であれ「地域経済の活性化施策」であれ、意味するところはそれほど違いはなく、問題は地域経済の活性化を図るためにどうするのか、そのために区がどう役割りを果たしていくのかが大事だということです。
 経済はますます国際化し、国政の影響もますます大きくなってきており、一足立区だけでは解決できない状況も広がっています。しかし、だからこそ区の役割りはますます大きくなってきているのではないでしょうか。仮に「区が頑張ってもどうしようもない」という立場に立つなら、もっと小さくて弱い個々の事業者はいったいどこに拠り所を求めればいいのでしょうか。
 区が、国際化やIT化、また「構造改革」や「規制緩和」の荒波に揉まれ小船のように揺れ動く区内産業・事業者をしっかり支援し、育成し、こうした荒波や激動に「挑む力」をつけながらともに「協働」する―これが何よりも根底に置かれるべきことではないでしょうか。
 「提言」では、たとえば「産業活動そのものを区が直接コントロールすることは出来ない」と述べられていますが、だれも直接コントロールすることを求めたり期待している人はいないと思います。求められているのは産業活動が発展していくための支援であり、それは可能なことです。こうした区が積極的に産業を支援する役割りや、確固として地域経済活性化をリードするという姿勢に欠けているのが気になります。

 2、基本理念に関わって述べたいのは、区の役割りとして、国や都に対して言うべきことは言い、連携すべきことは連携して、国、都、区が一体となって産業の振興と地域経済の活性化にとりくむことです。「提言」では国や都が行なわない分野を区が担うとしていますが、地域では、この施策は国のもの、この施策は都のものなどと分けて考えること自体がおかしく、それぞれが相まって、いっしょになってこそ相乗効果も生まれます。

 3、現実は、製造業で言えば財界や大手企業の利益確保が優先される流れの中で、これまで大企業を支えてきた中小下請け企業への仕事を取り上げ、「産業空洞化」と言われるように海外へ生産拠点を移転する大企業の身勝手を規制しようとしない政治の責任が問われるべきです。「規制緩和」の流れの中で、例えば米屋、酒屋、薬屋などは「自由化」のもとで多くが廃業に追い込まれ、さらに、大型小売店舗立地法のもとで大型店や中型デイスカウントショップの出店が相次ぐなど、弱肉強食の競争にさらされて苦境に置かれている現実もあります。こうした「政治」に対して区内産業人を守る立場から言うべきことは言っていく姿勢を、言葉として盛り込むべきです。

 4、次に、「提言」では、新しく地域経済を活性化する視点を取り入れるとされ、これが「新たな基本理念」ともなっています。大事な視点だと思います。 
 区内消費を拡大する区内循環型経済への取り組みについてのべられていますが、これは、サービスの活用者・消費者の役割りを重視しようというものだと理解します。この点では区内業者を利用・活用することが、区外業者や全国チェーン業者などを利用するより何倍もの経済波及効果があり、地域経済活性化につながることについて述べたいと思います。
 足立区は東京全体の平均よりも小規模事業所が多いが、従業員29人以下の事業所に勤務する従業員の割合で見ると東京全体が43%なのに対して足立区は61%と高くなっています。区内業者は所得が増えればそれだけ多く区に納税するとともに区内で消費する額も増えることが予想されますし、そこで働く勤労者の生活と消費を支えることになります。ある経済学者の試算では建設工事では地元業者で行なった場合は、そうでない場合の約80倍の経済波及効果があると言われます。材料の購入はだいたい区内で行なわれ、関連業者との連携もだいたい区内業者、働く人も区民であり収入と雇用に結びつくなどです。ついでに言うならアフターケアも地元業者なら小回りがきいてすぐ来てくれます。
 商業も、地元商店で買い物をすればその商店の収益に応じた納税は区に入り、区内消費の拡大も見込めます。しかし、全国展開の大型店やチェーン店で買い物をした場合、その収益は本社・本店に集結され、外資系の企業であれば海外へと流れていきます。
 大型店は雇用を創出するという指摘がありますが、「大型店でパートで働いて、帰りにそのお店でお惣菜を買ったらその日の給料分が消えた」という話があるように、「自己完結型」の側面があります。
 これに対し、地元商店で買い物をすれば、その収益で商業者は生活を営むため地域で消費をし、仕入れをするなど「地域開放型」の側面が強いといえます。
地域経済の活性化をいう場合、「区内業者自らの協力」にとどめず、@区がこうした区内産業人の存在意義を再認識し、育成・支援を強め、いっそう区内業者が区民ニーズに応えられるようにすること、A区内産業人のこうした側面・役割りを、消費者としての区民にもお知らせして啓発することなどを盛り込むべきです。

 5、観光とともに福祉や環境、災害防止、教育などの分野を重視した施策の展開で区内産業支援、地域経済活性化を図る観点を大きな柱に据えるべきと考えます。区も、これから施設更新の時期を迎えるといっていますが、これらの施設が本来持っている目的を失わせない範囲で、改築、再生、または再利用することは、工事の発注、観光化への転用、従事者の雇用拡大につながると考えます。
 たとえば区立二中跡は売却してしまえばそれで終わりですが、「金八記念館」にするなど観光資源化すれば、地域経済活性化につながります。

 6、具体的な施策について
(1)  ものづくり及び起業家の定着支援が重要と考えます。区の空き施設の活用で創業支援室やSОHО支援室を設けたりして起業家定着をはかること、区内工業の後継者づくりや若手への支援策を強めること、伝統産業・地場産業の育成、技術の継承を目指す施設を設けること、航空高専など専門学校や専門技術者などとの交流、マイスター制度の創設、チャレンジショップの支援の強化など、できるかぎりの知恵と創意を発揮すること。
(2) 「足立ブランド」について
 区内産業製品「足立ブランド」や、異業種交流などでつくられた新製品の販路拡張を区が全庁的に行なえるようにすること、区役所の展示品を購入できるよう連絡先・注文カードを設置すること、アンテナショップの拡大、葛飾区伝統工芸館のような常設展示と販売ができる施設の設置、区のホームページや民間の協力を得たオンラインショッピングの創設など行い充実すること。
(3)  融資制度については、生業資金の貸付要件をもとにもどして借りやすくするなど、足立区に特に多い小規模・零細業者への対策を充実すること。その他の融資制度の充実、商工相談を夜間にも開催することや、新産業振興センターで経営相談から融資相談、融資の実行まで総合的に相談・支援にあたれるようにするなど、体制・機能を強化すること。
(4) 商店・商店街支援
 区として、区内商店街や小売商業を「街の宝」、「コミュニテイの核」と位置付け、発展させる立場で比重を高め次のようなことを行なうこと。
@特色を生かした商店街づくり
 たとえば、千住地域は老舗の活用や宿場町を生かした商店街づくり、西新井地域は西新井大師、竹の塚地域は寺町を生かした商店街づくりなど。
A高齢社会に対応した商店街に
 たとえば、半径500メートルまたは小学校単位を生活行動圏とし、その範囲に食料品、日用品、電気製品など必要な商品が購入ができる店がある「ライフエリア構想」を位置付けて推進することや、商店街にお休みどころの設置、ファクシミリによる情報発信と注文や宅配ができるシステムの創設など。
B空き店舗対策・支援策の充実
 たとえば学童保育や介護関連施設、老人いこいの場やよろず相談所、蔵などを活用した映画上映スポットや音楽練習場など、住民の拠り所、若者のコミュニテイコーナーとなるような利用などを積極的に。
Cイベント支援
 商店街が行なうイベントへの支援を充実すること、朝市、夕市、商店会祭り、大売出しなどへの助成を拡充すること、若い顧客層のために一時託児所設置への支援など。
(5) 大型店出店に関連して
 「大型店栄えて区内商業枯れる」という事態を招かないよう対策と支援をつよめることが重要と考える。
 いま足立区では、北千住駅前に丸井、亀有駅西口にイトーヨーカドー、西新井の日清紡跡地に東関東一のイトーヨーカドーが出店と出店攻勢が続いている。その特徴は商圏が広域に渡る大型化した複合商業施設になっていること。区内商業の壊滅的な影響をもたらす危険が指摘されている。
 商店街は地域のコミュニテイの核とも位置づけられているように、ここが衰退することは地域コミュニテイの問題でもある。「共存共栄」が強調されているが、「大型店と商店街が共存共栄しているところがあったら連れて行ってくれ」(商店主)というのが実態。
 さまざまな面から言って、大型店の出店に関わって、使用できるあらゆる規制をしていくことなど、区内の商店街を守る立場から区が役割りを発揮すること。
(6) 雇用対策
 区民の雇用を増やす観点からも区内業者優先や育成支援をつよめ、雇用拡大に結びつけること。シルバー人材センターへの事業委託の拡大、区独自の雇用補助事業の展開など行なうこと。
 青年の雇用対策については、
@ カウンセリングやインターンシップ研修など、雇用関連サービスを1ヵ所で受けられる「ワンストップサービスセンター」を設けることなど相談・研修機能を充実するとともに、区として青年雇用の実態調査をおこない対策に反映させること。
A リクルートによる就職支援だけでなく、区内業者が若者を新規採用したら助成金を支給するなど推進策を講じること。 
B 国や都に、公共分野での青年雇用を増やすようはたらきかけるとともに、区も保育士や学校図書館司書など必要な人員確保で青年を採用するなど、雇用の拡大につとめること。
C 青年の雇用の厳しさを青年の意識の問題として捉える傾向を改め、政府をはじめ抜本的な対策に取り組むよう区がリードすること。
(7) 観光について
 歴史や文化に根ざした区内の観光資源形成や開発にもっと力を入れていくとともに、区外から人を呼び込むことだけを考えるのではなく、区民自身が楽しみ、誇りに思えるような観光資源に光を当てていくこと。
(8) 農業に関係して
 足立の農産物のPRをいっそう進めるとともに、区内の子どもたちが愛着を持てるよう、学校給食との連携を強めること。
 足立区は、少なくなったとはいえ、23区の中では農地が多く存在し、小松菜、枝豆、ほうれん草収穫も十分にあります。区内で収穫できたものを学校給食に使用できれば、一定の消費量を確保し、安定します。まさに地産地消になります。地元の、旬の食べ物を積極的に選び、食べること、つまり「地産地消」を進めることが、環境負荷を少なくし、「食の安全」につながります、そして区の農業者の将来性にもつながっていきます。
以上