区長あいさつ


○鈴木恒年区長 平成17年第1回足立区議会定例会をご招集申し上げましたところ、議員の皆様方には、ご多用中にもかかわらずご参集をいただきまして、まことにありがとうございます。
 開会に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げます。
 最初に、昨年の12月、紀宮清子内親王殿下のご婚約の内定という慶事がございました。区民の皆様とともに、心からお祝いを申し上げます。ご夫君になられます黒田様は、我々と同じ地方行政に携わる東京都の職員であるということも、大変うれしいことであります。
 一方、昨年は、豪雨や台風による災害が多発するとともに、新潟県中越地震では大変な被害が発生いたしました。年末には、インドネシア・スマトラ島沖で大地震と津波が発生し、犠牲者が30万人を超えたという報道もなされております。被害に遭われた方々、さらに今なお困難な生活を余儀なくされている方々に対しまして、心からお見舞いを申し上げます。
 また、この2月には、ようやく三宅島へ帰島も実現いたしました。同じ都民として、今後の復興をお祈りしたいと思います。
 さて、平成17年度当初予算案のご説明に入る前に、本予算編成の背景やそこに至る経緯などについて、若干ご説明を申し上げたいと存じます。
 まず、昨年10月に、21世紀に入りまして初の区の将来像、ビジョンとなります基本構想を、議会や区民の皆様とともに、協働のもとで策定し、さらには区の憲法となる自治基本条例も制定いたしました。そして、行政評価の仕組みを組み込んだ基本計画も、この2月に完成することになっております。あわせて具体的な「協働のガイドライン」「行政評価マニュアル」を策定いたします。また、本年度中に、第二次構造改革戦略、中期財政計画を策定する予定であります。本予算は、こうした作業と同時平行的に編成したものであります。
 また、本予算は、中期財政計画とも相まって、平成16年度からスタートした「複数年度方式」を明確に意識して編成いたしました。学校改築を初めとする360施設、120万平方メートルにも及ぶ「都市更新」の課題、1995年に全国的に大量発行した地方債の償還期の到来問題、団塊の世代が退職を迎えることで退職金総額が高止まりをする「2007年」問題、来年から日本の人口の絶対数が歴史的に減少し始める「2006年」問題など、大変な課題が目前に迫っております。これらの要因を乗り越えるため、「複数年度方式」を採用した次第であります。
 続いて、「複数年度方式」に基づきながら、本予算を初めとする各年度の予算が、どのような意義づけをもって編成されなければならないかについて、説明をいたします。
 歳入面で注目すべきは、最大の財源である都区財政調整交付金と、2番目に大きい財源である国・都支出金の2つの動向であります。歳出面では、「区民・企業、団体等との協働の蓄積・発展と人件費の削減」という視点であります。
 まず、都区財政調整交付金でありますが、最近、石原都知事は、平成17年度東京都予算の税収に関連して、「追い風参考記録」という表現をされております。確かに、23区中心部のように、史上最高益を上げる有力企業が立地するところでは、瞬間的とはいえ追い風が吹いております。足立区もその恩恵を受け、平成16年度は最終的に900億円を超える交付金を見込んでおります。交付金は、単位費用を中心とする客観的な評価の仕組みにより算定されており、当区の場合は、「扶助費などの福祉需要が群を抜いて増加し続けていること、その一方で特別区民税等が減少し続けていること」などによるものであります。
 しかし、中心部での追い風がいつまで吹くかは、定かではありません。主要5課題を中心として財調制度自体が、平成17年度から18年度にかけて大きく変動する見込みであります。
 また、国・都支出金につきましては、三位一体の改革による影響が既にあらわれてきております。補助金等から税源への転換が始まっておりますが、その多くが2割程度の削減を伴っております。自治体としての財政自由度は高まりますが、その一方で実額が縮減するという流れであり、平成17年度から18年度にかけて全体像が見えてくると思われます。必要不可欠でありながら、変動し、区自身でコントロールできない財源の存在が、予算編成の歳入面の背景であります。
 次に、歳出面では、官業の民間開放、民活、官活など、各種協働分野の拡大による事業やサービスの質的向上とコストダウン、そして、それと表裏一体の人件費の削減があります。協働分野の拡大では、当区は25年前から全国自治体の先頭グループを走り続けてまいりました。人件費についても同様で、平成16年度最終予算の段階では、人件費比率が20%を切る水準まで低下いたしました。昭和57年度の職員定数が5,853人で、仮にその後の清掃移管職員数を加算いたしますと、ピーク時には優に6,000人を超えたわけでありますが、17年度定数では、初めて4,000人を割り込みました。これを近い将来3,000人の水準まで落とす必要がありますし、それを実現しなくてはならないと考えております。協働分野の拡大と定数削減により、事業等の質と量を落とすことなく、さらに100億円相当の人件費を教育や福祉、まちづくりの事業費に転化すること、言いかえれば、苦しいけれど持続可能で、区自身でコントロールできる「歳出の構造転換による実質的な財源の捻出」が、予算編成の歳出面の背景であります。
 続いて、大規模プロジェクトの方向性についてご説明をいたします。
 教育、福祉、まちづくりなどにまたがる大規模プロジェクトについては、ここ数年、徹底した検討を続け、特に昨年9月から、最終的な選択と集中を行ってまいりました。そのうち、まちづくりについては、西新井駅西口、新田、北千住駅東口、千住大橋駅等、都市再生機構などとの協働事業に絞り込まれてまいりました。これらについては、事業費が巨額であること、それぞれ1,000戸単位の中堅所得階層向け集合住宅の建設と、それによる特別区民税の増収が将来見込まれることなどにより、基本的には都市再生機構の金融機能を活用した延払い方式を採用しようと考えております。事業は着実に進める、財源については建設国債の趣旨にならって後年度に分散するという考え方であります。
 一方、義務教育施設や地域福祉施設のように、そのような方式が望ましくない分野もあります。小・中学校の改築には、国等の補助金、起債以外にどうしても用意しなければならない一般財源、いわゆる「真水」が必要であります。また、特別養護老人ホーム等につきましては、原則、民設民営で設置していますが、これらにつきましても「真水」の建設補助金などが必要であります。一部については、設置主体の肩代わりによる実質的な延払い方式を採用しておりますが、こうしたことが常態化すると、近い将来「真水」自体が枯渇するおそれがあります。
 このようなことから、平成16年度最終補正予算と平成17年度予算を連動させて、関連基金への必要不可欠な積み増しを行いました。「複数年度方式」の趣旨に基づき、平成20年度までに、負債と基金残高のバランスを、少なくとも23区平均程度に近づけておきたいと考えております。
 次に、本予算の重要な背景であります「足立区のまちの形、姿が現在どう変わろうとしているのか」について、説明をいたします。
 昨年2月に、北千住駅西口再開発事業が完成し、シアター1010も9月にオープンいたしました。これにより、多くの人たちが駅から街に回遊し、商店街もにぎわうようになりました。
 本年3月には、竹ノ塚駅西口南地区再開発事業が完成し、つくばエクスプレスは、最近の情報によりますと、8月24日開業と聞いております。
 デジタルファクトリー、黒澤 明映像スタジオなどの(仮称)あだち新産業振興センターは、来年4月に竣工し、東京藝術大学の学部・大学院は、来年9月に移転、開学することになっており、「文化産業・芸術新都心構想」の中核施設が出そろってまいります。また、(仮称)日暮里・舎人線は、平成19年度には開通の予定であります。
 さらに、構造改革特区や地域再生計画など、規制緩和の最先端手法を活用した事業も含まれております。
 足立区は、現在、まちの形、姿が変わる大きなチャンス、50年に一度の好機を迎えていると言っても言い過ぎではないと思います。厳しい財政状況のもとではありますが、このチャンスを逃さず、必要最低限の未来への投資、子や孫の時代への相続の義務を果たしてまいりたいと考えております。
 こうした考えのもとで編成いたしました平成17年度の当初予算案の規模は、一般会計で2,132億円、前年度より11億円、0.5%の増額予算となりました。特別区債の借り換えや基金の再編整備に伴う歳入歳出の一時的な増減を除いて実質的な比較を行いますと、対前年度比で51億円、2.6%の増額予算となっております。
 平成17年度の予算は、新しい基本計画の実現を目指して、「魅力と個性のある美しい生活都市」、「自立し支えあい安心して暮らせる安全都市」、「人間力と文化力を育み活力あふれる文化都市」、この3つの重点項目を中心に、「活力と安心で魅力あるまちを創る予算」といたしました。
 まず、歳入につきましては、特別区税が331億円と対前年度比マイナス1.4%、金額にして5億円の減となりました。財政調整交付金は、原資となる調整三税の伸びを踏まえ、対前年度比6.1%増の875億円を計上しております。また、投資的事業の推進や義務的経費などに対応するために、基金から61億円を繰り入れるとともに、旧第三中学校及び旧竹の塚北小学校用地の売却収入21億円を計上いたしました。
 国民健康保険特別会計は720億円で、前年度より34億円、4.9%の増となりました。これは受診率の増などによる療養給付費の増によるものであります。
 介護保険特別会計は301億円で、前年度より55億円、22.4%の増となりました。これは介護サービス諸費の保険給付費の増が、介護保険事業計画の見込みを大幅に上回ったことによるものであります。
 老人保健医療特別会計は451億円で、前年度より6億円、1.3%の増となりました。これは、制度改正の影響を考慮した見込みより医療費が増大したことによるものであります。
 以上、特別会計を含めた予算総額は3,603億円余で、対前年度比3.0%の増となりました。
 次に、一般会計の歳出予算でありますが、新しい基本計画の3つの分野別に主要事業をご説明いたします。
 「魅力と個性のある美しい生活都市」の分野では、8月開業予定の「つくばエクスプレス」と、平成19年度開業予定の「(仮称)日暮里・舎人線」の駅前交通広場の整備を進め、便利で快適な公共交通ネットワークの拠点を築いてまいります。あわせて、新線開業をにらんだ駐車・駐輪場対策事業の充実や放置自転車の撤去時間延長など、区民生活の安全と利便性の向上を図ってまいります。
 また、佐野・六木地区及び上沼田南地区での土地区画整理事業を引き続き推進するとともに、つくばエクスプレス八潮駅へのアクセス道路となる補助第274号線や、綾瀬車両基地を地下で横断する補助第258号線、関原三丁目地区の補助第138号線など、都市計画道路の整備を進めてまいります。
 さらに、細街路整備助成事業を大幅に拡充するとともに、洪水ハザードマップの作成や、大災害が発生した場合を想定した住民参加による復興模擬訓練などの、災害に対する備えを進めてまいります。
 「自立し支えあい安心して暮らせる安全都市」の分野では、子育て関連で、昨年6月に開始しました、だれでも必要なときに利用できる一時保育の子育てホームサポート事業を大幅に拡充いたします。あわせて、子育てサロンを新たに4カ所増設するとともに、「あだち子育てガイドブック」を作成するなど、安心して子育てができる環境をつくってまいります。
 また、待機児ゼロの実現とさらなる保育サービスの充実を目指しまして、認証保育所の増設を初め、保育ママの拡充を図るとともに、引き続き公立保育園の民営化を進めてまいります。
 同じく、学童保育室の待機児解消につきましても、4月に4カ所の学童保育室の開設をすることで、総室数86室、増設分や民設も含め、本年度よりも145名多い定員数3,345名を確保いたします。これによりまして、この間の目標であった定員率20%を達成することができました。今後とも民間活力を活用した柔軟な学童保育室の運営を推進してまいります。
 特別養護老人ホームにつきましては、平成18年2月に(仮称)「プレミア扇」と(仮称)「ハピネスあだち」のオープンと、その他新規2カ所への助成及び貸し付けを行っていくとともに、「筋力トレーニング」など介護予防事業の強化を図ってまいります。
 同時に、障害者が住みなれた地域で安心して生活し続けることができるように、旧竹の塚北小学校の跡地を活用しまして、知的障害者入所更生施設と身体障害者療護施設を整備する社会福祉法人に助成を行ってまいります。
 また、採血によって検査ができる前立腺がん検診事業を開始するとともに、予防接種率の向上に向けまして、月1回、土曜日の午後に予防接種外来を実施いたします。
 環境施策では、資源循環型社会の一層の推進に向けて、平成17年度からペットボトルを区内全域の集積所で回収するとともに、23区で初めての粗大ごみの日曜収集を開始いたします。また、グリーンスクールモデル事業の実施や、「3R推進キャンペーン」、環境フェアなどにより、区民の皆様との協働事業を拡大してまいります。
 「人間力と文化力を育み活力あふれる文化都市」の分野では、教育関係で、引き続き子どもの基礎学力の向上、新たな教育の仕組みづくり、地域や家庭の教育力の向上を図ってまいります。特に、義務教育の9年間を一貫したカリキュラムの中で、子どもたちの個性と能力を伸ばす小中一貫教育推進事業や、授業を少人数による学習集団で行うなど、指導方法を工夫した授業を展開するため、ステップアップ講師を採用、配置いたします。また、学力向上に向け、各学校の自主・自律的な取り組みを支援する「がんばる学校支援事業」を推進いたします。
 さらに、学校改築事業につきましては、統合新校となります千寿双葉小学校の改築に着手してまいります。また、これまでも計画的に推進してまいりました小中学校の耐震補強工事につきましては、計画を前倒しして平成20年度までにすべての学校が完了するよう、今後、4年間で42校の耐震補強工事を進めてまいります。
 昨年オープンしましたシアター1010や東京藝術大学の誘致決定など、区民の文化芸術活動のための環境が充実しつつあります。こうした動きをさらに加速化するとともに、区民の皆様の幅広い文化芸術活動を支援するために、10億円の(仮称)文化芸術振興基金を新たに設置いたします。
 また、区内経済活性化を促進するため、「産業人との協働」、「創業及び改業の支援」、「雇用の拡大」を図る企業提案型経済活性化推進事業を実施いたします。これは、区の施策に合った新たな事業を産業人から提案していただく「委託事業」と、優れた事業計画を有するベンチャー起業家や新たな分野に事業展開しようとする方々を応援する「補助金事業」との2つを、3年の期間を設けまして取り組んでいくものであります。
 同時に、東京藝術大学を初め、高等専門教育機関や先端技術を有する企業の誘致を促進し、産学協働の産業活性化を目指すため、地域再生計画推進事業を展開してまいります。
 さらに、人材ビジネスを活用した雇用創出特区の定着に引き続き努めるとともに、(仮称)あだち新産業振興センターの整備を推進してまいります。
 以上、分野別の主要事業をご説明申し上げましたが、本一般会計予算編成の過程でも新しい取り組みを行いましたので、2点ほど説明をいたします。
 まず、財務省などで取り入れられております「予算見合いの原則」を本格的に取り入れたことであります。これは、新しい事業をやりたいセクションは、自己責任で、その財源を確保してから前進しなさいという原則であります。従前から言われていた「スクラップ・アンド・ビルド」の原則が、組織総体の原則になっておりまして、個々のセクションの自己責任が明確でなかったため、余り実効性を持たなかったのに比べまして、組織内分権と自己責任、総体的な財政秩序の維持をかたく結びつけているのが特徴であります。包括予算制度を導入して以来、各部においてその趣旨を生かす取り組みが徐々に行われてまいりました。本予算では、福祉部が2年がかりで保育料の適正化に取り組み、それによって見込まれる2億5,000万円の財源を、部の自己責任で子育て支援施策の拡充に投入しました。包括予算制度の本来の趣旨が本格的に生かされ始めた予算編成であったと考えております。
 次に、本予算の編成から、初めて基本計画と予算の完全リンクが始まりました。現在でき上がりつつある基本計画の34の施策群と114の施策、これらと本予算の800近い事務事業が階層構造をなして結合しました。1年数カ月後には、計画と決算が結合することになり、その段階で、行政評価指標による徹底した事後評価が行われることになります。この評価につきましては、事業部と庁内評価組織による自己評価、区民、学識経験者等による第三者評価、それと監査委員評価が多面的に行われる予定でありますが、当然のことながら、区議会の皆様方にも十分な評価と検証を行っていただきたいと思います。
 以上が、平成17年度の予算編成における特徴であります。
 次に、平成16年度最終補正予算案について申し上げます。
 今回ご審議いただきます補正予算は、一般会計が71億4,000万円余の増額補正であります。国民健康保険特別会計は3,000万円余の増額補正、介護保険特別会計は3,000万円余の増額補正、老人保健医療特別会計は13億円余の増額補正であります。
 以上、平成17年度当初予算案及び平成16年度最終補正予算案につきまして説明をさせていただきました。
 なお、今回ご提案申し上げます議案は47件、報告1件であります。各議案の提案趣旨につきましては、参与よりご説明をいたさせますので、慎重にご審議の上、ご決定くださいますようお願い申し上げます。
 終わりになりましたが、大きな転換点となります平成17年度を乗り切り、21世紀の確固たる展望を開くためにも、区議会の皆様方の一層のご理解とご協力を心からお願い申し上げまして、あいさつとさせていただきます。ありがとうございました。