「あだち都市農業振興プラン(案)」のパブリックコメントに対する意見

2005年2月3日
日本共産党足立区議団


T パブリックコメントの募集の仕方について
 1月25日付足立区広報に、「パブリックコメント」『あだち都市農業振興プラン(仮称) の策定にあたり意見を募集します」と掲載されましたが、プランの案は、「区のホームページへの掲載と併せて、産業振興課で配布し、広く意見を募集しています」と案内があるのみでした。
 パブリックコメントについては、今年度からいくつかの「区が重要」といもわれるものに対して行われていますが、パプリックコメントは「全区民を対象とするもの」また、目的は、「区民参画の機会を提供するとともに、区民に対する『説明責任』を果たし、区民との協働と区政透明化を推進すること」(2004年12月4定例議会、わが党の代表質間にたいする区の答弁)と答えています。そうであるなら基本構想・基本計画・自治基本条例を広報で発表したようにパブリックコメントをかけるものは案内だけでなく内容を紹介するべきではないでしょうか。
 区はすでに各家庭にパソコンがあり、ホームページが活用されていると認識されているのでしょうか。必ずしもそうなっていないと思います。一度調査をしてみたらどうでしょう。その上にたって募集のかけ方を考えるべきでないでしょうか。今回のパブリックコメントについても、「都市農業について区民が広く認識を深めるとともに意見を広く募る機会」ととらえ、広報に内容を掲載しないで応募をかけた2週間の期間にかぎらず、再度の周知と期限をこえての意見募集を行っていただきたい。
U、「計画」の理念やめざすもの、基本的考え方、啓発についての意見
1、  足立の農業は区内総生産の1%にも満たないが、農地面積は3番目(115ha)で、23区でも有数の「生産地」「都市農業の支え手」となっている。足立区にとって「農業」は、都市における緑地の保全にとっても大きな役割をしめ、消費者に最も近い、地産地消の農産物の産地でもある。例えば枝豆は、「鮮度が命」といわれ、都民にとって、足立の枝豆は最も「新鮮に食べられる」「品質がいい」と主に料亭で利用されている。他の「つまもの」についても同様である。しかし、都市農業の役割や足立の農業の周知度は、充分とはいえない。こういった足立の農業のすばらしさをもっと積極的にアピールし、足立区民にとって、「足立の農業が誇りに思える」ところを目標において、緑地・環境保全にもつながる都市農業としての発展の方向性をもったプランとしていただきたい。
2、  あだち都市農業振興プラン(案)(以降「プラン」と記載)にも記載されていますが、都市農地・農業の果たす役割を区民に啓発することが大事です。私たちは、以下の点について、特に重要と考えます。基本的な考え方、理念などとして重視していただきたい

@食糧の自給率を高めるためにも農地を確保することが重要です。日本は自給率40%と先進諸国の中でも最低です。外国に食糧を依存していたら今回の大震災・大津波のような時に、その国から輸入できるでしょうか。「プラン」でも「食料自給率の向上のいったんをになう」ことをめざしていただきたい。
A都市農地で耕作し、収穫する農産物は新鮮で安全な作物であり、地産地消に結びつき輸送などの環境負荷(フード・マイレージ)とコストがかからず、環境にやさしい農産物になると思います。
B都市農地は、保水機能があり災害時には区民の安全・安心な避難場所としての役割や、普段には区民にうるおいとやすらぎを与えることができます。
Cいま、地球温暖化のもとでこれまで経験したことのないような異常気象や災害が起きています。(昨年の42・7度という気温やスマトラ沖地震・津波等、)地球上の環境の変化が大きく影響していると思われます。
 しかも、人間による自然環境破壊からくるのであれば、人間による自然環境保護の観点から都市にみどりを増やしていく、農地であれば生産が伴うことですからいっそう重要です。地域経済の発展にもつながります。
D農産物は日照と関係が大きく係わります。天候よる作物の不作の場合は保証するなど農家の営業とくらしをまもることが重要と考えます。
V「生産緑地」について
 足立区は生産緑地面積40.8haで、23区内生産緑地面積地区面積の7.7%を占め、練馬区、世田谷区、江戸川区、杉並区についで5番目に位置しています。
 しかし、農地面積と生産緑地面積の関係で見れば、農地面積は115.6ha(23区内農地の13.9%)なのに、生産緑地面積は40ha前後(23区内生産緑地の7.7%)で比重としても少ない。これは、農地であっても、生産緑地として指定を受けている所が少ないことの現れであります。しかし、区のプランの目標は「40haを維持する(H26年)」とあります。
 自給率を高める観点から、すでに区としても実施したように、生産緑地でない農地を保有している農家に協方を仰ぎ生産緑地地区を追加指定しいっそう広げるようにするべきと思います。生産緑地を増やす、積極的な目標をもって「生産緑地」を増やしていただきたいと思います。
 農家にとっては、30年の営農の要件や、相続の問題、土地の活用法など、生産緑地に移行する上での悩みもあるので、それらの課題を整理し、アドバイスや積極的なバックアップを行っていただきたい。後継者間題の悩みについても、今回のプランで打ち立てた農業ボランティアの育成から農家への派遣などを積極的に行い、「農家の問題は個人の問題ではなく、緑地保全や防災対策、都市農業の重要性など、足立区民みんなの問題」といった見地で、意識的に取り組み、生産緑地の拡大へとつなげていただきたいと思います。
W 組織体制について
 国や都は、「都市農業の振興」にむけて明確かつ具体的な目標を持つ自治体に対して支援を特化する傾向もあります。今回の計画では、区や農業者などの役割分担が明記されていますが、これから実施する事業も数多くあり、区が果たす役割も多くあります。あだち都市農業振興プランを推進するためには、足立区政、および産業振興行政においての農業分野の位置づけを高める必要があります。計画を着実に推進するためにも、組織体制の充実をしてほしい。
X 具体的な計画への意見
1、 「都市と調和した持続性ある農業の確立」分野への意見
・ 「市場出荷や地場流通事業の際の集出荷場所の設置支援」「エコファーマーの育成支援」「トレーサビリティの推進」などの新規・拡充事業については、積極的に、早期に事業化し推進してほしい。
・ 「集出荷場所の設置支援」だけでなく、例えば花卉でいえば、現在チューリップの球根の保管所が都市農業公園内にありますが不十分であり、「農業生産基盤の整備と促進」の立場から、球根などをまとめて保管できる場所の拡充も検討していただきたい。
2、 「活力と魅力ある産業・あだちの農業の確立」分野への意見
(1)地産地消の推進について
・ 多くの区民が地場農産物に購入意欲を示している(75%)。現在区内に9ヶ所ある農園直売所はブドウ、トマトなど期間限定の直売所から、週三回定期的に営業しているところまで多岐にわたるが、さらに区としてもPRを広げ、「足立公認直売所」の看板表示などを行い、消費者にも安心して買える支援を強めていただきたい。また、直売所を増やすよう、目標数値も明記して取り組んでいただきたい。
・ 「地場流通組織体制の整備と支援」「直売意向農家への流通・販売体制の指導・助言支援と経営の充実」「直売のネットワーク化」「共同直売所の設置」などの新規・未実施事業は、具体的・積極的に推進していただきたい。
(2)農産物のあだちブランドの確立について
・ 「市場出荷におけるブランド化の推進」「ロゴマークの使用促進」「統一段ボール箱・結束テープ等の導入支援」だけでなく「足立ブランド野菜・農産物」のネーミングも工夫する、「食べよう!高級な足立の野菜キャンペーン」など、消費者にとってもインパクトをもたせる工夫をしてアピールしていただきたい。
(3)環境保全型農業の推進について
・ 農地が農地として存在しているだけでも、地球温暖化対策、雨水流出抑制など環境保全に貢献している点が多々ある。このプラスの影響力を積極的にアピールしていただきたい。
・ 「堆肥置き場整備への助成」「雨水利用施設の整備推進」「農地沿道緑化整備の推進」「有機・減農薬栽培の奨励・支援」などを着実に推進していただきたい。
3、 「地域と共生し協働して育む農業の確立」分野への意見
(1)区民農園の整備 について―現在20農園、1718区画の区民農園があるが、依然として拡充の要望は強い。しかし、今計画での区の目標は「現在の規模の維持を図る」となっている。確かに農地が減少する中ではあるが、それでも区民農園を増やす積極的な目標を持って取り組んでいただきたい。
 また、団体貸し(5年間)については応募が少ない、個人の区画は場所にもよるが抽選でもあたらないという不均衡も見られる。区民からすれば「不公平」という声もある。集団で借りてやりたいという声もあるのは事実なので、充分な検証を行い、必要なら要件の見直しも行っていただきたい。
(2)農業体験の推進 について―23区でも有数の農地があることは、大きな利点である。これを生かし、区内の多くの子どもたちが、「産みだす」喜びを体験できるよう、農家に支障をきたさない工夫をしながらも、充実する目標を持って取り組んでいただきたい。
(3)農業ボランティアの育成 についてー担い手として「プラン」にもありますが、団塊の世代が定年をむかえる時期にあるなかで農業に第二の人生を見出して、農業ボランティアとして支えるよう、支援するような事業を展開するなど考えられないでしょうか。
(4)他産業・他業種等との連携事業の推進 について
@ 小売店・飲食店等との連携 について―
 現在でもPRはしていないが、農家と契約して足立の野菜を活用している商店も沢山ある。連携を強める積極策を打ち出し「新鮮・おいしい足立の野菜が買える、食べられる店」「長持ち!足立の花卉が買える店」など商店のPRと結びつけるのぼり旗をつくって支給するなど、支援策をもっと充実していただきたい。
B 教育機関との連携 について―
・ 学校給食で「足立の野菜を食べられる日」を各学校で年に1回でもいいから設けて、「フレッシュ農業・足立」パンフも活用して栄養士さんとも連携してランチルーム学習を行う、区(産業振興部)としてもこれを支援するなど、行っていただきたい。
・ 小学校3年生で足立区の産業についての学習を副読本「わたしたちの足立」でおこなっているが、その中でも、充分に都市農業の役割について位置づけて学習できるよう、働きかけていただきたい。

以上