3、区長提案の議案などに対する討論 ②市場化テスト条例反対討論 9月29日 針谷みきお議員 |
ただいま、議題となりました第99号議案「足立区における公共サービス改革の推進に関する条例」案について、日本共産党足立区議団を代表して反対の立場から討論を行います。 本案は、「公共サービス」のもつ50兆円規模の市場を財界・大企業に明け渡すことを最大の目的として本年、5月成立した「市場化テスト法」にもとづき、足立区の公共サービスを「市場化テスト」で具体化するための条例案であります。 市場化テスト法そのものはプライバシーの侵害や公共サービスの低下が指摘されていましたが、その後、示された実施方針でもそのことは裏付けられています。 本条例案は市場化テスト法でさえ設けている制限を取り払うなど重大な逸脱と危険性があらわになっています。 本条例案は付託をうけた総務委員会で、私の質問中に自民党委員により質疑打ち切り動議が提出され公明党委員の賛成により強行可決されたものであります。 本条例案に反対する第一の理由は、重大な法律違反と個人情報の漏洩の恐れが危惧され、かつ、経費の削減にもならず、サービス低下はさけられないからであります。 区は委員会の答弁で「もともと民間には、こうした業務のノウハウはないため、12月から区が民間派遣会社の派遣社員に区民事務所業務について、研修をおこなう必要があり、21業務のひとつ一つ教えなくてはならない」と述べているのであります。これでは官民競争という建前にも反し、結局、区民サービスの向上より、企業のもうけ口をまっさきにつくろうとするものであることは明白です。 サービスの向上につながるのかという問題では、国の市場化テスト法では民間開放できる「特定公共サービス」は戸籍、納税、外国人登録、住民基本台帳、印鑑登録証明など6項目に限定され、さらに「受付およびその引渡しに限られる」ため、民間事業者の派遣職員には「行政処分」である審査や照合つまり、申請内容や必要書類の確認などはできないため、常勤職員の仕事になります。 一番難しいとされる受付での問合せや苦情、相談業務など区民との対応に派遣会社の派遣職員がとまどうことは避けられません。それは3年間しか派遣することができない条件のもとではノウハウが蓄積しにくいからであります。スピードはおち、区民を待たせることになるのではないでしょうか。 さらに、区は初年度、4つの区民事務所で常勤職員を7名減らし、派遣職員を17名増やすので、さして経費削減にならないと認めているのです。サービスが低下し、さして経費削減にならないことをすすめる必要はありません。本当にサービスを向上させたいなら、区の職員を減らさず、非常勤職員を採用すればできることです。 第二に情報漏洩の危険は避けられないからであります。区は区民事務所の業務委託で取り扱う個人情報の一覧表を明らかにしましたが、21業務でダブりも含めれば400項目にも及ぶ膨大なものです。たとえば、印鑑証明では実印の印影、住基カードでは本人の写真とシリアル番号、外国人登録では旅券番号、税情報で言えば所得金額のうち、営業等、不動産、配当、利子、公的年金など100項目を超えます。さらに滞納があれば未納額、不能欠損、差し押さえ中、公判中などもわかることになります。また、滞納処分の種類、軽自動車税では登録ナンバー、車の種類、国民健康保険では加入、喪失の情報、母子手帳では性病の健康診断有無の情報などありとあらゆる個人の詳細な情報を民間企業の派遣職員は知る得ることになります。 区はセキュリティ対策として物理的・技術的セキュリティを厳重にかけているとしていますが、要は人的セキュリティであります。40万人の個人情報が流失したKDDIの事件では個人情報保護法の施行にともない、ハードディスク等の記録媒体をもたないでサーバーに接続する端末を導入したり、システムルームへの入退室にあたり指紋認証システムを導入するなどの対策を講じたにもかかわらず、業務委託社員によってもちだされてしまったのであります。要は外部委託そのもののリスクが高く、情報漏洩の危険は大きいといわざるを得ません。 第三は「偽装委託」の疑いがあるからであります。市場化テスト法による「特定公共サービス」の業務委託とは「いったいの業務を民間事業者が行うことを定めた」ものであり、区民事務所に民間会社の職員を派遣する足立区のようなやり方は「偽装委託」の疑いがあり、社会問題しつつある大企業の「偽装請負」と何ら変わらないことは明らかであります。このことは本日の読売新聞にも指摘されています。 区はこのことを指摘され、「現在、内閣府とつめている」と苦し紛れの答弁をしていますが、法的に疑義のあるものをわかっていながらしゃにむに推進するのは、市場化テストさきにありきと言わざるをえません。 もし、これが失敗しても「あとは野となれ山となれ、わが亡き後に洪水は来たれ」というようなやり方はあまりにも無責任ではありませんか。 第四は条例案、第2章第6条で「公共サービス実施方針」を策定することあります。この「公共サービス実施方針」には、これまで足立区がすすめてきた民間委託や指定管理者制度などを「みなし公共サービス」「簡易」「プロポーザル」などに仕分けています。 この「公共サービス実施方針」を挿入することで、足立区の条例は「市場化テスト法」の枠を超えているのであります。 このことは全国の先陣を切って、「民間委託」のすべてを「公共サービス改革」の名で束ね、個別法で禁じている業務の民間委託を際限なく広げ「極小の自治体」をつくろうとしていると言っても過言ではなく、到底認められません。こうした条例案は可決すべきではないことを主張し、反対討論を終わります。 |
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