3、区長提案の議案などに対する討論
B那須区民保養所廃止条例反対討論

10月20日 ぬかが和子議員


 ただいま議題となりました第102号議案、足立区区民保養所条例の一部を改正する条例について、日本共産党足立区議団を代表して反対討論を行います。
 本条例は、平成5年に竣工した、一番新しく、一番人気のある那須の区民保養所を廃止するための条例です。「政策判断」で廃止をするといいますが、委員会で区も答弁したように、区民から「那須の保養所について廃止してくれ」という要望や申し入れは全くない中、区が勝手に「使命が終わった」と判断をし、廃止を提案したものであり、とうてい認めることはできません。
 区は、「国の公共施設改革の閣議決定で、公共保養所の早期廃止、または民営化その他の合理化をすすめており、地方自治体についても、同様の措置の要請がきている」といいました。しかし、国の通知は、廃止の義務付けではなく、区の自治体がそれぞれ判断することです。現に、新宿区では、箱根の区民保養所の廃止を撤回し、存続をきめています。
 那須区民保養所は、今でも高い利用率となっています。民間ホテルの客室稼働率の平均は60〜70%といわれる中、下がったといっても平均77%の客室稼働率であり、休前日の土曜日やゴールデンウィーク、夏休みなどは、ハガキで申し込んで抽選にあたらなければ宿泊できない状況は全くかわりありません。
 また、那須区民保養所は、トイレ・お風呂に車椅子のまま入れる部屋など、障害者などのバリアフリー対応が、充実しております。那須の地域には珍しく、ベッドのある部屋も多く、高齢者・障害者にやさしい公ならではの施設になっています。区内のある難病患者の団体の代表は、「那須の区民保養所は他の施設とくらべても使いやすい、なくなると身体障害者が多い私たちが泊まるところがなくなってしまいます。残していただけるなら何でもしますから、どうか残してください」と涙声で訴えておられました。
 今、介護予防の充実が叫ばれるなか、介護予防に最も効果的といわれる外出支援の一環としても、区民保養所の役割は、ますます重要となっており、工夫次第で区民の財産を生かす方法はいくらでもあります。
 委員会で区民部長は「いまどき温泉宿泊業を自治体がやる時代ではない」と言いましたが、とてもホテル計画をすすめた人の発言とは思えません。こうした発想の根底にある市場原理主義・コスト主義、もうかっているかどうかだけで判断することは、大きなあやまりです。区民保養所は、単なる温泉旅館ではありません。条例に定められた「区民の健康増進に寄与し、もつて福祉の向上を図ることを目的とする」役割・使命は、いまこそ生きるものです。
 区は、「単純売却でなく、3年から5年間、区民優遇の枠を設置する」などと言っていますが、数年後に区民優先の枠もなくなり、廃止することには変わりがありません。しかも、その数年間ですら、今までどおり休前日に区民が全室使用できる保証はどこにもありません。
 部長は「単に資産を持っていればいいということではない」と答弁しましたが、区民保養所は、管理職個人の資産ではなく、区民の財産です。土地取得と建設費をあわせて30億円近くかけつくった4000u近い土地と施設の区民の財産を、わずか1億2千万円台の価格で売払うことを、区民の声も聞かずに区の都合で行なうべきではありません。
 最後に、廃止条例の可決前、すなわち廃止が決まってもいないのに、9月10日付広報に「那須区民保養所を条件付で売却します」と掲載し、事業者を募集したことは、前例のない異常な議会軽視・議会無視であり、許されるものではありません。しかもそのことを委員会で質されると、「財価審の審議などでもこのようなケースは往々にある」と開き直り答弁を繰り返しました。しかし、財産価格審議会が、廃止が決まっていない施設を売却の公募にかけるなど二重にありえないことで、委員会でこうしたその場しのぎの答弁をすること自体が重大な問題です。手続き上も重大な齟齬がある本条例を、議会として認めることもできません。
 区民要望の強い区民の財産を安易に売り払う区の姿勢を改めるよう、強く求めまして、討論を終わります。