4、決算特別委員会の質問 学力テストのような競争教育では真の学力向上にはならない 第4日目 さとう純子議員 |
○さとう委員 午後の最後ですので、どうぞよろしくお願いいたします。 私からは、教育長にお尋ねしたいのですけれども、教育長は本議会で新井委員から日の丸、君が代についての東京地裁の判決について、驚くべき判決と言いながら、日の丸、君が代を皇国思想や軍国主義思想の精神的支柱だと断じていることと言って質問したことに対して、教育長は、「信じられない判決だ」と答弁をいたしました。 判決文はどうなっているかということですが、ここの部分はこう書かれています。「我が国において日の丸、君が代は明治時代以降、第二次世界大戦終了までの間、皇国思想や軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきたことがあることは否定しがたい歴史的事実であり」と述べています。いわゆる歴史的な事実だということです。 教育長はこの記述について、答弁でありましたように、「いまの教育現場の実態を全く無視した信じられない判決」だということでしょうか。 ○ 教育長 私は、教育現場の実態を無視したと表現を申し上げましたのは、もっと単純な話でございまして、教育指導要領で国歌斉唱を指導すると明記してございます。もし指導すべき教師が国歌斉唱時に机に座ったまま、厳粛な場でそういう態度をとるというようなことがもし許されるとすれば、これは教育現場として大変混乱を招くことになると、そういった意味で、そういったことを推奨するような判決であるということで、教育現場の実態を無視した信じられない判決だという表現をさせていただきました。 東京地裁の判決は思想信条の自由を踏みにじる規制は違憲というもの ○さとう委員 そうですね、歴史的事実ということは事実ですので、これを否定するものではないということですね。 次にそのことをちゃんと判決文に書いてあるのです。判決文の結論としてこう書かれています。「国旗国歌法の制定、施行されている現行法下において、生徒に日本人としての自覚を養い、国を愛する心を育てるとともに、将来国際社会において尊敬され信頼される日本人として成長させるために、国旗国歌に対する正しい認識を持たせ、それを尊重する態度を育てることは重要なことである。そして、入学式、卒業式等の式典の意義、役割を考えるとき、これら式典において国旗を掲げ、国歌を斉唱することは有意義なものと言うことができる」と書いてあるのですね。 このことについて、教育長は、それでもいまの教育現場の実態を全く無視した、信じがたい判決だとおっしゃるのでしょうか。 ○教育長 判決文の一部をそういうような形でご紹介されて、それが判決の精神であると主張されると大変困るのでありまして、もう少し判決の趣旨をしっかりと踏まえてご質問をいただきたいと思います。 ○さとう委員 踏まえてと申しましても、判決文をそのまま読んだのですね。教育長は判決文を読んだのかどうか、どこをとらえて新井委員の質問に答弁したのかわかりませんが、それでは、まとめとして、結論として、判決文にはこう書いてあります。「しかし、懲戒処分をしてまで起立させ、斉唱等をさせることは、いわば少数者の思想、良心の自由を侵害し行き過ぎた措置であると思量する次第である。国旗、国歌は国民に対し強制するものではなく、自然のうちに国民の間に定着させるというのが国旗国歌法の制度の趣旨であり、学習指導要領の国旗国歌条項の理念と考えられる。これら国旗国歌法の制度趣旨等に照らすと、本件通達及びこれに基づく各校長の原告ら教員に対する職務命令は違法である」ということですね。 ですから、要するに、これは歌ってはいけないとか、そういう判決ではないです。しかも罰則をもって強制することが憲法に、また教育基本法に反するというのがこの判決なのですが、それでもいまの教育現場の実態を全く無視した信じられない判決とおっしゃるのでしょうか。 ○教育長 学習指導要領に、申し上げましたように、国歌斉唱について指導するとございます。これは、都教委が地方教育行政の法に基づいた学校管理権というものを持ってございます。ですから、当然教育指導要領の内容に反するような行為があれば、都教委は具体的に指示命令を出すことができるわけでございまして、当然それは都教委の判断によって法で授権された学校管理権に基づいて職務命令を出したということでございますので、何の問題もないと思っております。 ○さとう委員 それについても、確かに指導要領には指導をするということだけ書かれているのですね。それで、このことについては、実は都議会でも大変な話題になりまして、相手が石原都知事ですから、それで答弁がしどろもどろになっているという実態があるのです。 これが議会の議事録なのですけれども、結局、学習指導要領にそのように指導するとは書かれていますが、罰則を設けろとか、そんなことは一切書いておりませんので、石原都知事は答弁できなかったそうです。教育長も、最後には何と通達を唯一の根拠にして、「学習指導要領の社会の解説中に、日章旗が国旗であり、君が代が国歌であるという記述がある」と答弁をしたんですね。ですから、指導要領でも何でもなく、解説書の中をもって答弁をしたということです。 それで、この判決には学習指導要領の国旗国歌の条項というところにもきちんと規定して、そこも書いてありますので、ぜひ後でお読みになっていただけたらと思います。 それと、いま教育長が言った東京都教育委員会の答弁の中に、懲戒処分は校長の権限に基づく職務命令に反する行為があったため、地方公務員法により行ったといっています。私がここでお聞きをしたいのは、教育長はもちろんでしょうけれども、現行の憲法、教育基本法を守るという立場で教育長になったはずなのですね。一つの法律、地方公務員法を上において、校長の、要するに指示に従わないことは、判決の中にそれが入っていないからおかしいというのはどういうことなのかなと思うのですね。それで、私は答弁を求めてませんが、要するにこの東京地裁の判決というのは、最高裁の判決も踏まえたものなのですね。それと憲法や国旗国歌法の解説解釈の基準となるものなのですね。教育長はそれさえも認めないことになりかねないような答弁をなさることは、ちょっと問題かなということを指摘して、次の質問に移ります。あとでよく判決文を読んでいただければと思います。 日本共産党は財源示して教育充実を提案 次に、私は2006年度の第1回定例会の一般質問で、教育問題を取り上げました。その中で一斉学力テストについての質問もしたのですけれども、一斉学力テストというのが、区の矢継ぎ早な教育改革の柱に据えられているのではないかと思うのです。基本構想の中にも、それから、足立区の教育基本計画の中にも、やっぱり学力テストの結果などが学力向上の指標にしていることを指摘してまいりました。 今回は決算ですので、区独自の学力テストに対して、今決算に入っていますが、教育産業のベネッセに5,000万円でテストを委託するということをやりましたね。 私たち日本共産党は、この17年度の予算組み替え案の教育分野で組み替え案を示したのですけれども、そこには、まず教育予算の中で必要がないというのは、一つは学力テストの5,000万円、それから文化芸術劇場の管理運営費、これが5億5,000万円計上されていましたが、そのうちの1億1,000万円は削ることができるという提案をいたしました。全体の予算とも絡みますが、そういうことを予算を削ってどういうことが教育の中でできるのかという提案をしました。その一つが、学校運営費予算を減らさないことです。これは、実は頑張る学校推進制度とかといって、頑張る学校には予算をたくさんあげるなどということをやっていましたけれども、一般の学校運営費予算が減らされ続けていました。ですから、これを減らさないようにということの予算の組み替えを提案いたしました。 それから、次に子ども学校の安全対策として、(仮称)安全・安心推進員を全小学校に配置するという提案もしました。皆さんご存じのように、いま学校にカメラをつけなければならないとか、フェンスを高くしなければならないとか、さまざまなことを言っていますが、私たちは一貫して人の配置が必要だと言い続けてまいりました。ですから、17年度の予算にもお金の使い方を変えて、(仮称)安全・安心推進員を全学校に配置してほしいという提案をいたしました。 それから、次に少人数学級をどう実現するかという提案もいたしました。いま皆さんご存じのように、少人数学級というのは二十数人というのが世界の趨勢、それで私も何度も言っていますが、在日米軍基地の中の学校は18人学級ですよ。そのお金を日本の国民の皆さんの税金を出してあげているわけですよ。基地の外はどうですかということです。40人学級です。私は何度も何度もこのことについて議会でも質問をいたしましたが、繰り返し、繰り返しの答弁で、40人学級に固執した答弁しかいただけませんでしたけれども、今年度の予算には少人数学級ができるよという提案もいたしました。 その内容は、少人数学級を当面小学校2年生まで、それから、中学校は3年生まで35人学級、とりあえず実施するためにどうすればできるか提案いたしました。 それから、次に学校の図書館に司書の配置ができるということです。これは、17年度予算では巡回型のということでちょっと遠慮した提案をいたしましたが、私は、前回、要するに今年度予算については5,000万円あれば220万円で非常勤の司書が雇えて、やろうと思えば5,000万円の予算があれば四十二、三校に司書の配置ができる。それも毎日ですよ。毎日5日間、6時間勤務の司書の配置ができるということも提案いたしましたが、17年度予算についても司書の配置、これができるという提案をいたしました。 それから、青少年の居場所づくり、これも大変な問題です。どこにいたらいいのか、コンビニの前で座っていればパトカーが来ちゃったりすると、そういう状態の中で居場所づくりもできますという提案をいたしました。 それから、青少年の文化活動支援事業、これも教育の問題として入れました。 このように、お金の使い方を変えれば十分に子どもたちの支援、教育の支援をできるという提案をしてまいりましたが、残念ながら自民党、公明党、民主党の反対によってできませんでしたし、区長もお認めいただけませんでしたが、このように、お金の使い方を変えればできるということを申し上げて、質問に入りたいと思います。 学力向上は子どもも保護者・教師もすべての願い 学力向上というのは、本当に子どもたちもみんな勉強できるようになりたいなと思っているでしょうし、保護者の皆さん、教育関係者、足立区の教育委員会もそうだと思いますが、私たちも本当に同じ思いです。じゃあどうやって学力を向上させるのかというところで、先ほども申し上げましたように、足立区は学力テストを指標として学力向上になるというとらえ方をしているのではないかという心配があります。 それで、6月30日付の読売新聞なのですけれども、ここに都道府県の学力テスト、小中で対策加熱、授業中に模試予想問題ということで、大変な声がいっぱい載っています。ある小学校では1カ月前から連日テストの準備が行われた。教師が過去の出題から正解率が低かった箇所を取り出して、問題集を参考にして対策問題をつくった。テスト対策で授業に支障が出るのは本末転倒だと教師自身も思っているんだけれども、校長や親が点数を気にするし、自分の評価に響くからといった不安もある。でも一生懸命頑張っている子どもたちを見ると、これでよいのだろうかと……。あと、競争に拍車をかけるのが区市町村の教育委員会の姿勢だと書かれています。 これは岩手県の例ですけれども、調査の200校中、約4割の学校で事前指導の要求があった。ちゃんとやりなさいと教育委員会から来たそうです。あと、点数を上げるようにと教育委員会から求められたそうです。東京でもテストが近づくと、授業で毎回小テストを実施するようにという指導書を教育委員会が出したという市区町村も少なくないと書かれています。 結局、このテストの診断が授業力の評価、いわゆる先生の評価にもつながり、このテストが二つの表裏一体となっている、診断と授業力の評価、この評価への不安が加熱を招いているようだと、このように書かれています。 それで質問に入りますけれども、足立区の学力テストについて、学校現場の声もこれと同じなのですね。過去問、昨年のテストの問題などを宿題としてやったと。それから、試験問題は昨年とほぼ同じ、特に国語は全く同じと言ってもいいとあります。これは足立区独自のベネッセにお願いしたテストですね。 授業時間を使ってテスト対策がやられている。問題ではないか それで伺いますが、前年とほとんど同じ試験内容、あと過去問を繰り返しやれば、テストの点数が上がると思うがどうかということですね。 それから、同じ問題のテストだと、委託しているベネッセをもうけさせるだけじゃないのという意見もあるのですけれども、いかがでしょうか。 ○学力向上推進室長 ベネッセさんに16年はプレテストということでございますので、17、18に全校で実施をしているものでございますけれども、基本的には経年変化をつかむということで類似の問題ということで、問題用紙の作成をしているところでございます。 また、今回、いままでやっていました意識調査につきまして、保護者、教員、このようなノウハウを持つのがいろいろな大手の業者さんいらっしゃいますけれども、ベネッセさんしか、いま日本でそこまでのノウハウを持っているところはないということで、ベネッセさんに調査の依頼をしているところでございます。 また、繰り返し学習をすればということでございますが、繰り返し学習することで基礎基本の反復学習という効果もございますので、その点についても、必ずやれば上がるということではなくて、やった中で子どもたちの学力が定着してくればいいのではないかと考えているところでございます。 ○さとう委員 3年間、16、17、18年と同じような問題でとなると、何のための学力テストかなと思ったのですね。個々の子どもがどれだけ学力をついたのかをテストするんだとすれば、いま聞いていると、ベネッセのデータづくりのために、子どもたちがどんな経過をたどるのか、ことしの子はどうか、来年の子はどうか、再来年の子はどうかという比較をするために、同じような問題を出しているとすれば、それは何のための調査でしょうか。データづくりに活用されていると言っても過言ではないかと感じてしまいました。 それと、同じ問題が出されるということで、学校の先生たちみんなが知っていたらどうします。さっきも言ったように、昨年と同じ問題を徹底的にやって、この間、私、文教委員会でも言ったのですけれども、6回プレテストをやって、それでもできない子は残して、そして勉強させたと。そしたら、その学校は名前を言ってしまうとすぐわかってしまうけれども、ものすごい勢いで上がりました。それがよかったと言うかどうかは問題ですけれども、それが本当の学力かどうかという問題なのです。 次に、こういう声があるのですね。さっきも紹介しましたけれども、通常の授業時間を使ってテスト対策をしているという問題です。これは足立区でも現にあるようで、テストのための準備に時間を使い、その分だけ授業がつぶれた。これは足立区の声です。それから、テストが終わるまでは新学期の内容をやらないでテスト対策をとったというところがあるそうです。テストは似た問題を、それこそ繰り返しやれば、その問題については理解できても、これを学力とは言えないと思うのです。本来の時間をつぶしてまでテスト対策をやることが、私は学力のマイナスにもつながるのではないかと思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。 ○教育政策課長 先ほどからのご指摘でございますが、足立区といたしまして、同じ傾向の問題を実施している、これは子どもにあらかじめ問題を教えるために問題の傾向をしているわけではなくて、その単元単元で必要な部分の学習をどの程度できているかというところで、確認するために必要な事項の問題でございます。したがいまして、毎年同じことをやって、次の、翌年度の同じ5年生にいい点をとりなさいという意図ではございません。 それから、最後にご指摘いただきました本来の授業時間ということでございますが、先ほど申し上げましたように、試験の点数を上げるために何度も何度も同じことをするという意図ではございませんし、先ほど委員がご指摘いたしました学校、反対に教えていただきたいと、そういう指導はやめていただきたいというところを、私ども言いたいところでございまして、やはり先ほど申し上げましたように、その学年において必要な学力をどう子どもに定着させるか、そして子どもたちがどこに一番つまずくところがあるのか、そういうものを把握しながら、また個人個人のつまずきを把握しながら次の指導に生かしていくという学力テストでございますので、趣旨の方をご理解いただきたいと思います。 ○さとう委員 本当にそういう思いだと思うのですけれども、実は教育長がかつて、教育の評価はすべて数字であらわすことができるかの答弁をしたことがあったと思いますが、この学力テストの結果の数字で学力を評価するというお考えなのでしょうか。 ○教育長 誤解のないように申し上げておきますけれども、私は、教育が数字を追うようになったら終わりだと思っています。これは当然です。ただ、経営者である校長は、当然数値目標を持って、自分の学校の実態をしっかり分析して、学校経営論に基づいて、数値目標は教員、地域の人々と一緒につくって、そしてこの数値目標に向かって総力戦で戦っていくと、そういうふうにしていくのが、私は学校経営の基本的な線だと思っております。 もう一つ、さっきの学校の名誉のためにも申し上げますけれども、決してそういうようにやって学力を向上させたわけではありません。あそこの学校に私すぐに電話をしましたけれども、校長から出てきた最初の言葉は、「苦しかった」この言葉一言でした。「頑張ったね」と言ったら、「いや私は苦しかった」と、私は学校現場で子どもたちを本当に基礎基本を定着させていくのには、相当校長先生がリーダーシップを発揮して苦しい戦いをやらない限りは、そう簡単に上がるものではないと思っておりますので、そういう校長をしっかりと支援をしていきたいと思っております。 ○さとう委員 ちょっと安心しました。数字のとらえ方が、私のとらえ方が違っていたのかなと、本当に一人一人の子どもたちには見える学力、テストの点数を取ったりや何かで見える学力もありますけれども、本当に見えない学力っていっぱいあるのですね。その辺が数字、数字、数字でかなり行き過ぎているのかなと思います。 また、各学校で先ほどの読売新聞にもありましたけれども、結局、診断と授業力の評価にテストがつながるものですから、この二つが表裏一体となって評価への不安が加熱すると。ですから、決して数字で、学力テストで数値をつけるということ本当にやめていただきたい。本来、テストというのは子どものつまずきをどう発見して指導するか、ここが一番のかなめだと思うのですよ。学力向上のためにやるのがテストなのです。データをつくったり、それでもって評価して順番をつけたりするものではないということを申し上げておきたいと思います。 最後になりますけれども、一つだけ競争教育がいま本当に格差を生んで、教育を通して格差が拡大していくという状態にあると、私は思っているのです。それを再生していく、いま必要なことは、どうやって教育の分野でもって格差を縮めることかがそこにあると考えるのですけれども、そのお答えをいただきたいと思います。 ○教育委員会事務局次長 適切な競争は必要だと考えております。 それから、格差ということでございますが、何回かの調査の結果、結局正解率の問題であれば、既に学校には格差があると、これをどうやって是正していくかという対策のために、私どもが手立てを打っていると考えております。 |
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