3、区長提案の議案などに対する討論

足立区における区民施設の廃止、統合及び売却に関する住民投票条例の可決を求める討論   ぬかが和子議員

 ただいま議題となりました議員提出第14号議案 足立区における区民施設の廃止、統合及び売却に関する住民投票条例について、日本共産党足立区議団を代表し、総務委員会での否決に反対し、原案の可決を求めて討論を行います。
 本条例案は、学校、地域学習センター、住区センター、区民保養所などの区民施設の廃止、統合及び売却に関して、自治基本条例11条の住民投票の規定にある「区政の重要事項について区民の意思を直接確認する必要がある場合に住民投票を実施することができる」という項目を具体化し、提案したものでした。
 区民の施設は区民の貴重な財産であり、その廃止や売却・統合は区民にとって重大な問題です。まさに区民の意見を聞いてきめるべき事項ですが、それにもかかわらず、区民の意見を聞き反映する仕組みがありません。
 この間、学校の統廃合では、多くの区民の疑問や反対の声があったにもかかわらず、「統合先にありき」で「もう決まっているから」と結論を押し付けるだけの説明会を行い、区は「説明責任をはたした」と強行してきました。伊豆高原の区民保養所、塩原林間学園、上総湊健康学園など、多くの区民施設が、区民の意向も聞かずに廃止や売却をされてきました。那須区民保養所に至っては、区民環境委員会の質疑で、「区民から『廃止をしてほしい』との意見は全くない」と区も認めながら、「政策判断」だとして廃止を強行したのが実態です。
 付託された総務委員会では、「間接民主主義が崩れていると判断しているから直接民主主義を発揚するというのか」等の質疑があり、「学校・地域学習センター・住区センターについて、住民投票はなじまない。議会が判断すればいい」などの理由で否決されました。しかし、区民は施設を廃止することまで全てを議会に委ねたものでも、託したものでもありません。間接民主主義は、その代表者が真に主権者の声を代弁し続けているという主権者の信頼があって成り立っていく制度です。主権者と代表者の意思に乖離が生じたと感じたときに、直接民主主義を発揚することは重要であり、それがより間接民主主義を生かすことにもつながります。この間の施設の改廃は、まさに区民の意思と、区の政策判断が乖離していることを、区自らが語っているではありませんか。
 また、総務委員会では「区民意見を聞くことには、パブリックコメントもあるから改めて住民投票条例はつくる必要はない」との意見もありました。しかし足立区のパブリックコメントは施設の廃止や存続の是非を聞き反映するシステムにはなっていません。実施要項によると「意見を十分に考慮する」との記述にとどまり、制定当時の部長が「マーケティング調査のようなもので意思決定の場面に区民が参加できる制度ではない」と明言しています。実際に、意見を出した区民の92%が「計画をつくる必要はない」と意見を寄せたパブリックコメントも、その声が無視されました。直接民主主義の発揚の場である住民投票とパブリックコメントではそれぞれのもつ役割が違うことは、明白ではありませんか。
 さらに総務委員会では「再配置審議会で充分時間をかけてやっている。審議会の答申を受け止める必要があるから住民投票をする必要はない」との議論もありました。審議会の答申を尊重することは重要ですが、その結論の上にたって、多くの区民の意向を聞くことはなんら矛盾する問題ではなく、「審議会」と「住民投票」を対立させて考える必要は全くありません。
 今のままでは、区長の「政策判断」がすべてに優先し、施設の改廃・売却という重要な問題について、区政の主人公である区民の意見を聞き反映することはできません。だからこそ我党は、区民の代弁者としての議会が、必要なときに区民の意見を反映するしくみづくりを積極的に提起すべきと考え、本条例を提案しています。日ごろ地方自治を重視される議員各位におかれましては、必ずやご賛同いただけることを願い、討論を終わります。