5、日本共産党区議団の区長への提案・申し入れ

A 真に「地球にやさしいまち」をめざして ―足立の地球温暖化対策への提言―(1月17日)
真に「地球にやさしいまち」をめざして
―足立の地球温暖化対策への提言―

足立区長 近藤やよい様
2008年1月17日
日本共産党足立区議団

はじめに
 地球温暖化対策は待ったなしで、区、区民、事業者が一丸となって取り組む課題です。今回、区が示した第二次足立区環境基本計画(地球温暖化防止地域推進計画)素案では、日本共産党区議団が一貫して求めてきた「行政区としての削減目標を持つ」「地球温暖化対策地域協議会の設置」「CO2を排出しない新エネルギーや廃油等を活用したエネルギーの活用」などが盛り込まれるとともに、前向きな施策展開の方向も示されていますが、より補強や改善が求められる点もあります。
 本提案は、配布された第二次足立区環境基本計画(地球温暖化防止地域推進計画)素案―第4稿―に基づいて、必要最小限の意見と具体的な提案を区議団として行うものです。
 ぜひ区の計画に盛り込んで頂くよう要望します。

1、 計画策定の基本的視点について
 地球温暖化の進行とその防止に向けた対策について、1997年に定められた京都議定書の枠組みは「世界的な気候問題への対応と確立」(IPCC=気候変動に関する政府間パネル=報告)といわれる意義をもつ画期的なもので、今年2008年から2012年までを「第1約束期間」とし、温室効果ガスを先進国全体で、1990年比で5%以上削減する約束を実行することになっています。
 京都議定書の大きな意味は、先進国が全体としてどれだけ削減するかという数値目標を決めて、総量できちんと規制することと、各国別にもきちんと目標を決める点にあります。
 日本は6%削減が義務付けられていますが、現実には6・4%(2006年推定値)も増やしています。何よりもまずこの削減目標の達成に全力をあげる必要があります。
 そして昨年バリ島で開かれた国際会議では2013以降の枠組みをどうするか、いわゆる「バリ・ロードマップ」が採択され、IPCC報告に応えて大幅な削減が必要だと確認されました。発展途上国や、京都議定書から離脱していたアメリカを含めて世界のほとんどの国が、温暖化を防ぐために力を合わせる必要があると合意したことは大変意義深いものがあります。
 しかし、日本はこうした世界的行動と計画づくりの中で消極的姿勢を示し、ブレーキをかける役割さえ見せています。
 本計画素案は、国が策定を推奨する地球温暖化対策地域推進計画であると位置づけられていますが、日本はアメリカと並んで、2013年以降の枠組みに数値目標を盛り込むことに反対し、「2020年までに25―40%削減する」という目標が削除されました。バリ会議では各国のNGO(非政府組織)の人々がその日どこの国の態度が一番悪いかという「化石賞」の投票をして日本は10回ぐらい受賞し、地元の新聞で日本の福田首相が温暖化対策に不熱心だとアメリカ、カナダと並んで名指しで批判されるほどでした。
 実際、欧州諸国はイギリスは京都議定書の目標値8%減に対して14・8%減、ドイツは目標値8%減に対して18・4%減をすでに達成するなど、軒並み目標を達成しさらに大幅削減に踏み出そうとしており、発展途上国も中国を含め行動を開始する方向へ舵を切っているが、日本は必ずしもそういう方向性が見えず、当面の削減目標の達成も危うい状況があります。
ヨーロッパの場合、経済界の「自主的な取り組み」に任せないで政治がきちんとした仕組みをつくり、産業界と政府が削減の協定を結ぶのが基本であるのに対して、日本の場合は日本経団連がつくる「自主行動計画」任せで、破ったからといって責任が問われるわけでもないし、総量を規制するという考えでもないので実効性が乏しいという側面があります。
 こうした状況の中で足立区は、日本が国際的にも遅れた位置にいることを正確に認識し、これを補い変えていく位の積極的な取り組みを率先して行う姿勢を示すような計画案にしていくべきです。
 そのために計画の冒頭部分に上記のような国際的な到達や各国の努力、日本の置かれている状況などをリアルに記述して、区民が認識を共有できるようにするとともに、足立区が果たすべき役割と決意を明らかにしていくべきです。そうしてこそ初めて「日本でいちばん地球にやさしいまち」のスローガンをかかげることができるのではないでしょうか。

2、 温室効果ガス削減目標について
 計画素案では「差し迫った危機」「取り返しのつかないことになる前に」と地球温暖化の重大性をとらえた記述になってはいるが、それにふさわしい温室効果ガス削減目標になっていません。
 素案では削減目標を10%とし、「京都議定書のマイナス6%を上回るもの」という話も聞いていますが、足立区はすでに1990年比で5・9%の削減がすすんで京都議定書の目標はほぼ達成されています。工場や事務所が移転などで減ったことが大きな要因で削減努力の結果というわけではありません。23区全体では同じ期間で10・7%増であり、スタートラインが違います。京都議定書のマイナス6%を上回るという見地であれば、すでに削減された5・9%+これから削減する6%=11・9%が最小限の数値になるのではないでしょうか。
また、計画素案は「日本で一番地球にやさしいまちになります」を基本方針にしており、これはぜひ掲げつづけ達成を目指すべきと考えますが、足立区の削減目標が10%だということは、10−5・9=4・1%が実質的な削減目標となり、全国的目標や他の自治体よりも低いものになってしまうのではないでしょうか。この点でも5・9+6=11・9%が最小限の数値目標になると考えます。
なお、足立区の10%という削減目標は東京都や千代田区が掲げる25%と比べても低いものです。千代田区の場合、達成年度が2020年ですが、排出量が19%すでに増えているので25%+19%=44%削減しないと1990年比で25%削減は達成できません。1年当たり3・38%、5年間で16・9%が実質的な削減目標となります(これを条例で規定している)。
 単に「数=目標を大きくすればいい」のではないけれど、ふさわしい目標にしなければふさわしい行動やふさわしい結果は出ないと思います。
 目標数値の見直し=上方修正も検討していくという文言を入れるという話も聞いていますが、見直しを検討するにしても、計画スタート時の目標を、大きく引き上げることを求めます。

3、 廃プラスチックのリサイクルを行うとともに、分別・資源回収のいっそうの促進へ
 3Rは、リデュース、リュース、リサイクルですが、国民の中にリサイクルに対する意識は育ってきていますが、特にリデユースごみをうまないこと、いわゆる大量生産、大量消費をなくすことが大切で地球温暖化防止につながります。

(1) マスコミによれば、東京23区が今年4月から、廃プラスチックを焼却処理に転換するにあたって、環境への配慮から「立ち遅れているプラスチックのリサイクルを前提にすべきだ」との声があり、中野区などはリサイクル実施を主張したが、足立区などが「金がかかる。燃やして発電すれば十分」と抵抗。足並みがそろわず、各区の判断に委ねたと報道されました(朝日新聞2007.12.8夕刊)。これでは、足立区は地球温暖化防止への姿勢が低いと同時に、他区を廃プラスチックの焼却に引き込むんだ責任は大きいと言わざるを得ません。
 また、プラスチックのごみは、焼却するのではなく、徹底した資源化こそ必要です。横浜市では、「混ぜればごみ、分ければ資源」の精神で、15種類に分別して資源化する努力をしました。その結果、横浜市はごみを減量し7つあった焼却所を2か所減らすことがきました。足立区はプラスチックを焼却して出る熱を売電する「サーマルリサイクル」に取り組み資源を活用すると言いますが、売電には一定の発熱能力を確保する必要があり、それは燃やすごみを増やすことであり、地球温暖化防止と相反することになります。
 足立区は廃プラスチックの分別には「費用が13億円かかるから燃やす」ということですが、人口53万人の杉並区では、サーマルを契機に「燃やさない」決断をして資源回収を行い、現在実施地域は3分の1で収集運搬経費は約1億8千万円、中間処理経費9,700万円で、全地域に展開しても約6億円です。足立区の人口に換算しても7億2千万円であり、区が言うほど膨大な費用はかかっていないのです。先に焼却ありきでは「足立区は日本で一番地球にやさしいまちになりましょう」と言う言葉と逆行するのではありませんか。
 白色トレーについては、区はスーパー等で回収をしていると言いますが、やっていない地域もあります。また拠点回収することによりいっそう回収増、ゴミの減量につながります。ペットボトルの回収は、2002年度は店頭回収で542トンでしたが、2006年度拠点回収となり1615トンと一挙に増えたことをみても明らかであり、大事な資源として拠点回収すべきです。
(2) 区は、「中間処理施設が遠いので、運搬の経費や負荷がかかる、だから焼却する」とも言いますが、中間処理業者も清掃関連用地や工場も多く存在する足立区は、23区で中間処理経費を最も軽減できる可能性のある自治体です。他の区と比較しても条件は整っており、区の言い分は、やる気のなさの現れです。「運搬費の軽減」というなら、例えば、「ペットボトル等の圧縮・梱包施設」と計画されている江北作業所跡地を、ペットボトルだけでなく、廃プラスチックの処理もできるようにすべきです。
(3) 廃プラスチックは汚れているので回収しても半分は燃やさなくてはならないといいますが、港区では住民説明会を開き、プラスチックごみについて「汚れをとって出すことをお願いしている」といいます。
 また、杉並区や松本市など多くの自治体で回収するのは、「軽く洗って汚れが落ちるもの」としているように、汚れていないものを回収することは可能で、足立区民にも、説明し十分にわかってもらえるはずです。区民は十数年来ごみの分別を行い真面目にやってきました。この習慣が身についているからこそ「ペットボトルは洗って、つぶして出す」こともある程度定着しています。さらに回収された廃プラは、マテリアルリサイクルで90%以上、残りはコークスにして使えるので、100%近く活用されるとも言われます。
 4月から実施しようとするプラスチックを可燃ごみとして回収することは、まさにこれまで培ってきたごみの分別精神をないがしろにし、区民にとまどいをまねき、児童の環境教育に逆行するもので廃プラスチックの焼却はやめるべきです。

4、 新エネルギーおよび枯渇性エネルギーを使わないエネルギーの導入促進のために
 地球温暖化対策として二酸化炭素(CO2)の排出を少なくするためには、先進自治体などから学び枯渇性エネルギーを活用しない新エネルギーを積極的具体的に導入する方向性を持つことが必要です。
 日本のCO2直接排出量の3割は、発電などエネルギー転換部門が占めています。CO2を排出しない循環型エネルギーは、その仕組みさえつくれば、産み出すこともその活用も身近で気軽にできます。区の計画でも、「1−4新エネルギーの導入を検討」を明記していますが、これらの導入の位置づけを抜本的に高めることを求めます。
 具体的には、東京(足立)の特性(世帯数が多い、平坦、日照時間も比較的多い)から、以下3点を重視することを提案します。
 
(1) 廃油のディーゼル化
 使用済み天ぷら油を適切に処理をすれば枯渇性エネルギーを使わないクリーンなバイオディーゼル燃料(BDF)に生まれ変わり活用できます。廃油を精製しバイオ軽油を活用する松本市、大町市などの自治体が増えています。知的障害者授産施設に委託して再生し、軽油(BDF)として資源化を進め、ごみ収集車の燃料としてすでに使用しています。
 天ぷら油の廃棄量の減少となり、枯渇性エネルギーの使用抑制で環境汚染の軽減と地球温暖化防止をすすめ、障害者の働く機会を確保するなど一石三鳥にもなる効果を上げています。しかも走行性能は軽油と変わらず経費節減にもなるものです。区としても廃天ぷら油を拠点回収し、バイオ軽油へのリサイクルを行い率先して廃油ディーゼルを活用し広報車などへの普及を計画すべきと考えます。実効性のある計画とするために、具体的な目標数値も明記すべきです。

(2) 太陽光発電の普及・促進へ
 東京都の太陽光発電利用拡大検討会中間のまとめ(2007.10.19)にもあるように、太陽光発電の普及を阻害する要因は、設置コストの高さです。現在区でも補助制度がありますが、それを活用しても、自己負担は大きく、設置コストの元が取れる(投資回収できる)時期には、老朽化して更新が必要にもなってしまいます。そのため、助成事業を拡充し、設置者が売電できる仕組みを普及するべきと考えます。

(3) 太陽熱利用(給湯など)の促進のために
 太陽熱を活用した給湯施設は、設置コストも比較的安く、耐久性もありすぐれています。しかし、東京都の太陽熱利用拡大検討会中間のまとめ(2007.10.11)にもあるように、太陽熱の利用によるCO2削減効果や環境的価値も、設置経費についても充分にPRがされてこず、ほとんど普及していません。この普及のために、太陽熱利用にも補助制度の導入と、PRを強め、理解促進をはかること、税優遇制度の導入等を求めます。

(4) 太陽熱・太陽光利用の目標値、及び普及啓発と省エネ住宅建設へ
 東京都は100万kwの太陽エネルギーの導入を目指した「利用拡大スキーム」を示しています。足立区の計画でも、明確な目標値をもつべきと考えます。
 また、ホームビルダー(建設関係者)にたいしてセミナーを開催するなどして、理解の促進をはかり、住宅の建設、改築等の受注時に、再生可能なエネルギーの導入オプションの提示を行えるようにするなどし、普及・啓発の促進を求めます。建設関係者との連携により、住宅の低エネルギー化、省エネルギー化を進め、ヨーロッパなどで実施している住宅用に断熱材など利用した場合も助成の対象としてすすめるべきと考えます。

5、 公の施設を文字通り「標準以上の環境対策を行なうことによって、区民の環境意識を高める効果をはかる」ようにするために。
 計画素案では、公共施設の環境対策について、「標準以上の環境対策を行うことによって、区民の環境意識を高める効果を図る」と理念を打ち出していることは重要です。区の計画では、公共施設の太陽エネルギー利用機器の率先的な導入を図るとしており、区が率先して太陽エネルギー利用をすすめ、民間施設の手本となるような環境対策は区民の環境意識も高まると考えます。松本市では、計画的に公共施設にソーラーシステムを設置し、現在では小中学校と市民劇場館など39ヵ所にソーラーシステムがあります。太陽熱利用もすすみ、保育所の太陽熱を活用した給湯器は費用対効果も高く、耐久性があると好評です。
 現状では、公共施設についての太陽熱利用はほとんど進んでいません。だからこそ、区内の学校や公共施設の更新にあわせて太陽光発電や太陽熱利用を積極的にすすめるべきです。しかし、「計画」素案には、公共施設の太陽光・太陽熱利用の数値目標がありません。これでは「理念」が単なる謳い文句になりかねません。公共施設については、学校や公共施設の更新計画にあわせて、明確な目標数値をもって取り組むべきです。また、太陽光活用とともに、グリーンカーテン、緑化を進める区の計画を示し、明確に数値目標を立て予算の裏づけも持たせて促進をはかることで初めて「標準以上の環境対策を行うことによって、区民の環境意識を高める効果を図る」といえるのではないでしょうか。

6、 低エネルギー交通の推進(自動車を使わない取り組みを絵に描いたもちにしない)ために―公共交通・自転車等の利用促進のための環境を整備する―

 計画案で記述している、低エネルギー交通の推進(自動車を使わない取り組み)は、CO2削減のために重要なことでありますが、これを絵に描いたもちにしないためには、「公共交通・自転車等の利用促進のための環境を整備する」ことを具体的に目標化する必要があります。

(1) 平地の多い足立の特性を生かした対策として、自転車の利用向上のために―計画では「自転車の利用促進」とある。これを言葉だけで終わらせないように、以下の具体的な対策を求めます。
a、 自転車専用レーンを計画的に導入する。
 私たちが日常使っている道路は、車両である自転車が「歩道」を走るという世界でも異常な状態になっています。排気ガスも出さず、健康にも貢献し、地球温暖化対策にもっとも貢献する移動手段である自転車は、車道を走ればクルマに脅かされ、歩道を走れば迷惑がられる悲しい存在になっています。しかも、車道の一部では歩道側が駐車するクルマに 占領され「駐車場化」される状況もあります。道路予算は、安全な道路を造るためにシフトするべきと考えます。
  そこで、「人も自転車もクルマも安全に安心して通行できる 道に変えていく」ことを計画的にすすめること、これを明記することを提案します。
@ 歩道側の車道に物理的に区切った自転車専用の道を造る。自転車が都市の交通 機関として市民権を得ている欧米では、大都市によくみられます。区施行の都市計画道路や区画街路など、新規の道路整備に合わせて計画的にすすめる。
A 既存の歩道の広い道路についても、計画的に歩行レーンと自転車通行レーンとに分離する。
足立区唯一の分離レーンのある西新井駅前道路については、色分けと看板で表示してあるだけであり、実質的には自転車と歩行者が分離されていない。これをきちんと分離させていく。
他にも竹ノ塚駅前通りはじめ、広い歩車道がある道路も、順次「自転車専用レーン」を整備していく
B 河川敷・舎人公園などへのサイクリングロードの整備・充実を図るとともに、ローラーブレードも通れる道としてのモデル事業を行なう。
C その上で安心して自転車で走行できる「自転車グリーンマップ」を作成する

【参考1】板橋区・豊島区のとりくみ
ガードレール等を仮設して設置した自転車レーンの様子。
自転車レーンを利用する様子。
バス停での乗降の様子。
バス停部分には路面表示により注意を喚起。
交差点では右折車両による
自動車だまりが発生する場面もあり。

【参考2】世田谷区の取り組み
自転車専用レーン/青い道路は自転車専用、東京・世田谷でレーン実験(読売新聞)
9日からの実験のために、青色に塗られた自転車走行レーン=東京・世田谷区で?

 激増する自転車と歩行者の衝突事故を防ごうと、東京・世田谷区は9日から、車道両端を青色に塗装した「自転車走行レーン」の社会実験を始める。自転車と歩行者の通行場所を区別した上で、レーンでの自転車の進行方向も指定する。国土交通省によると、車道を塗装した自転車一方通行レーンが設けられるのは珍しいという。
 実験区間は、東急田園都市線・三軒茶屋駅に近い明薬通りの約600メートル。片側1車線の車道の両端に青色レーン(幅45センチ)を設け、自転車の進行方向を自動車と同じ方向に限定する。車道に隣接する歩道にも、白い点線で区切った自転車走行レーンを設置し、車道を走る自転車とは逆方向の一方通行を促す。
[読売新聞社:2007年12月09日 03時16分]
b、 「都市型レンタサイクル」の導入
 荒川区などで導入しているように放置自転車を活用した「都市型レンタサイクル」、松本市など観光地で導入されている「公共施設間で無料で利用できるレンタサイクル」の導入を参考にし、足立区らしい「レンタサイクルシステム」を放置自転車を有効活用して行なう

【参考】
自転車で街中ス〜イスイ――環境・手軽さカギに復権(首都圏リポート)2003/10/25, 日本経済新聞 地方経済面 (東京), 15ページより
 荒川区は今月十二日から、回収した放置自転車を再利用して、区内なら誰でも自由に乗れる共用自転車を二百台用意し、無料で貸し出す事業を始めた。開始時にJR南千住駅前に二百台を置いたが、利用者が広がり、駅前にとまっているのは常時数台。「近くの都立航空工専の生徒の通学や高齢者の買い物など、さまざまな目的で使われている」(区管理計画課)
 武蔵野市も九月から、国際基督教大学(ICU)と提携し、JR武蔵境駅を利用する通勤・通学者向けの共用自転車を導入した。朝方は通勤者が自宅から駅まで乗ってきた自転車をICUに通う学生が駅から大学まで乗っていく。夕方はその逆になる。通勤・通学の時差を生かした。
フリー自転車、“試走”は順調 荒川区、台数増へ /東京2003/12/01, 朝日新聞 朝刊, 37ページ
 自転車200台を「放し飼い」にして、区内に限ってだれでも自由に乗り降りできる荒川区のフリーサイクル制度が好評だ。スタートから1カ月半、問い合わせも相次ぎ、使い終えて駅前に置いた自転車は即、次の利用客が現れるといった盛況ぶり。乱暴に扱われ、修理を要する自転車も多い。区は「実験はひとまず成功」と判断し、台数を増やして制度を定着させたい考えだ。
 フリーサイクル制度は放置自転車対策の一つとして、10月12日から始まった。区が中古自転車200台を修理して駅前などに配備した。区内であれば、だれでも好きなところまで乗っていける。
 区管理計画課によるとこれまで、200台のうち、区外に乗っていかれた自転車が25台あり、職員が回収に出かけた。区内の各駅周辺を調べたところ、南千住を筆頭に日暮里、町屋駅などに自転車が止められていた。その自転車もすぐ通勤客らが利用していくという。
 区役所には「自転車を使いたい。どこに行けばあるのか」といった問い合わせが数十件寄せられた。担当者は「区民には好意的に受けとめられている」とみる。
 ただし、問題も一つ浮かび上がってきた。利用者のマナーの悪さだ。前かごに付けた「荒川フリーサイクル」のパネルが外されたり、2人乗りをして後輪が大きくゆがんだり……。サドルが取られたものなど、区はこれまで、60台余りを回収して、修理に回した。
 区は今後、自転車の台数を増やすことも計画中だ。担当者は「修理に回す分がなくなれば、利用できる台数は増える。壊れた自転車の回収は、息子がけがをして帰ってくるようなもの。大切に乗ってほしい」と話している。
(2) 環境負荷ゼロの新しい移動手段の導入めざして
輪タク(ベロタクシー等)の導入、普及をめざし働きかけることを要請します。
現在銀座などで広がっている自転車によるタクシー(通称ベロタクシー)は、環境負荷がなく、料金も安く、短い区間の移動には有効です。西新井駅(尾竹橋通りや西新井大師参道へ)、北千住駅(東京芸術センターや各施設へ)、西新井大師西駅(西新井大師へ)など、移動距離は短いが有効と思われる場所への導入・普及を目指し働きかける。

【参考】
自転車で街中ス〜イスイ――環境・手軽さカギに復権(首都圏リポート)2003/10/25, 日本経済新聞 地方経済面 (東京), 15ページ
輪タク人気 共用も
 首都圏で都市交通として自転車を見直す動きが出てきた。繁華街では環境への優しさを売り物にする自転車タクシーが人気を集め、住宅地でも自治体や非営利組織(NPO)が地域住民で共用できる自転車の導入を進めている。財政難や環境志向の高まりで大規模な交通インフラ整備が難しくなる中、手軽な自転車を再評価する機運が高まっている。
観光に便利な足
 多くの来街者でにぎわう六本木ヒルズ(東京・港)。ブティックなどが並ぶ瀟洒(しょうしゃ)な通りを黄色やグリーンの自転車が走り過ぎる。京都市に本拠を置く特定非営利活動法人(NPO法人)の環境共生都市推進協会が運営する「ベロタクシー」だ。フランス語で自転車を意味するVELOとタクシーを合わせた言葉で、ドイツなど欧州が先進地だ。
 六本木ヒルズを中心に青山、原宿などを二十台が運行。初乗り料金は五百メートルまで三百円、百メートルごとに五十円が加算される。平均時速は十一キロと人間の小走り程度だが、千葉県から来た女性(47)は「六本木ヒルズは広すぎるので、道案内もかねていろんな場所をじっくり見て回れる」と自転車タクシーが気に入った様子だ。
 物珍しさもあって昨年十月以来、延べ六万人以上が利用した。企業の関心も高く、アイワや森ビル、松下電器産業などから車体広告を出したいという申し込みが相次ぐ。事務局長の細尾友子さんは「環境対策をPRする格好の媒体と映っているようだ」と見る。
 十月に入って、同NPO法人は一カ月限定で豊島区の池袋駅とサンシャイン60ビルの間を運行。お台場(東京・港)でも今年三月からレンタル自転車店「シーサイドサイクル レント」が自転車タクシーを始めるなど、ショッピングや観光に便利な足として浸透している。
(3) 公共交通網の整備
公共交通を整備し、脱車社会化することは、低エネルギー交通の推進にとっても重要であるとともに、未だ交通不便地域のある足立区にとって、不可欠の課題です。計画では「高齢者や障害者等移動制約者のモビリティを考慮したバス路線やコミュニティバスの検討をすすめる」とあります。交通不便地域の解消とともに公共交通利用による環境対策をすすめるために、再度、バス路線やコミュニティバスの整備について以下提案し、実現を強く要望します。
コミュニティバス路線の新設
都営桑袋団地〜花畑団地経由で区民事務所や病院、竹ノ塚駅行きの路線。
足立区役所〜六町駅〜花畑第3都住(南花畑4丁目)〜保木間第5都住(南花畑5丁目)〜竹ノ塚駅行きの路線。
西保木間と花畑などから竹ノ塚駅、花畑区民事務所、各住区センターを経由する路線。
辰沼・神明南1〜2丁目、六町駅の東西を結ぶ路線。
八潮駅〜六木2丁目〜佐野1丁目〜郷土博物館〜大谷田2・1丁目(すずらん通り商店街経由中川5・3丁目〜亀有駅経由綾瀬駅行きの路線。(コニュニティバス)
新田や江北地域から西部福祉事務所に行く路線。
千住常東地域(北千住西口・日ノ出町・柳原1−2丁目・千住曙町・千住関屋町・河原町など)の通称疎開道路、旧牛田堀りの通り、荒川土手下、千住関屋のマンション通りを循環する路線。
区役所〜環七〜本木新道〜西新井駅西口〜梅田〜区役所の循環バス路線。
既存バス路線の増発
亀有駅―足立区役所、王子駅―足立区役所、加賀団地―王子路線、王子―千住車庫路線(以上都バス)
竹14西新井東口〜桑袋線、100号線のバス路線(北千住駅―西新井大師駅)、八潮駅〜亀有・綾瀬駅行き(以上東武バス)
都市農業公園―足立区役所、西新井駅―(七曲り経由)―舎人団地(以上 はるかぜ)
既存バス路線の始発バスの繰上げや深夜バスの運行
西新井駅西口―池袋駅西口、王子―新田(以上都バス)
八潮駅〜亀有・綾瀬駅行き、西新井―都市農業公園(以上東武バス)
西新井―赤羽路線(国際興業バス)

7、 環境に配慮したまちづくりをすすめるために
(1) 地域緑化の推進へ
緑化をすすめ、緑被率を高めることは、CO2削減効果はもとより、ヒートアイランド対策にも有効であり、また、数値以上に、「より良い環境」を実感できます。
a、 計画にある「日本一地球にやさしいひとのまち」をめざすという高い理念を実施するために、まちづくり全体に「緑の保存」「緑化」の意識を貫くようにする。
 武蔵野地域では、樹木を安易に伐採せず、樹木を生かしたまちづくりで、武蔵野の緑の保全を行ってきました。例えば同じ公団(現UR)住宅の建て替えでも、武蔵野地域(日野市多摩平団地等)では、建て替え前の樹木の大半を残し、生かしているため、建て替え後の住宅も、高い緑被率です。足立区の公団建て替えでは、大半の樹木は伐採しました。確かに樹木を生かすことは、経済性から言うと困難な部分もありますが、意識の啓発もはかりながら、街づくり全体に「緑の保存」「緑化」の意識を貫く必要があります。
b、 緑には手間もお金もかけて
 「剪定」や「樹を生かす」ためには、「樹木医」「造園職」などの専門家の力が必要です。本気で緑の保全と緑被率を向上させるためには、専門家を育成、配置するなど、行政が率先して取り組んで啓発をはかる必要があります。緑の保全にはお金(予算措置)も人手も必要です。緑には手間隙をかける、その決意を明記すべきです。
c、 学校の緑被率について
 現在の学校の緑被率は、10.62%(小学校11.54%、中学校9.19%)です。第3稿では、「緑被率30%をめざす」と、高い目標設定が明記されていましたが、第4稿では、数値目標そのものが消えてしまいました。この背景には、現業職員の不補充により学校に正規職員がいなくなったこともあります。だから、「ただでさえ教育の課題が多い中、樹木の剪定や落ち葉の掃除、緑の管理などを行える人もいないのに、緑どころではない。その予算があるなら他に」といったことになり、緑被率向上の目標が立てられなかったのではないでしょうか。学校分野での緑化の推進には様々な困難があることも承知の上ですが、「待ったなし」の課題の推進のために、明確な目標を定めて緑化を推進すべきです。そのためにも公園等他の公共施設の管理同様に、樹木の剪定や落ち葉の掃除、壁面緑化の維持管理など、人も予算もつけて対応すべきです。
 また、ビオトープの目標も消えてしまいました。他にも目標数値が消えているものがあります。目標数値すらもたないのでは、計画の推進は、自然まかせ・なりゆきまかせになってしまいます。目標数値を明記し、それにむけてとりくむべきです。
(2) 大気汚染対策と緑化について
東京大気汚染公害裁判の和解成立(2007.8.8)により、国や東京都は新たな公害対策(大気汚染対策)を約束しました。その主な内容は以下のとおりです。
a、 新たな環境基準の設定を検討
 現在、日本には微小粒子状物質(PM2.5)を規制する基準がないが、米国では10年前に環境基準が設定され、規制が始まり、EUでも環境基準を設定しようとしている。国も今年度中に専門家のとりまとめ結果をふまえて、環境基準の設定を検討することを約束した
b、 大型貨物車の走行規制や幹線道路の沿道対策、交通総量の抑制策を約束
● 大型貨物車の都心部乗り入れ規制の拡大を検討(警視庁)
● 地下高速道路(中央環状品川線)に脱硝装置の設置検討(首都高)
● 道路緑化(国・首都高)
● 激甚交差点対策(東京都・国)
● 車線削減、緑地と自転車専用道路(国)
● 高架高速道路対策
● 大気観測局の増設、拡充(国・東京都・首都高)
 この立場に立って、大気汚染の一掃をめざし、足立区内の以下の対策を求めます。区の権限の及ばないものについても、実現めざし、強く働きかけて下さい(別紙参照)
a、環七の3車線部分(西新井―鹿浜)の車線減少・緑化、バス自転車専用道路の設置
b、首都高高速川口線及び三郷線のシェルター化と大気浄化システム設置
c、国道4号線梅島以北の歩道緑化
d、激甚交差点(環七梅島陸橋)対策―交差点のドーム化と大気汚染浄化システム
e、鹿浜・東和・宮城など廃止した大気汚染測定所を復活するとともに、国道4号線、環七(加平インター付近)など主要幹線道路に自動車排気ガス測定局を増設すること。
(3) 「地域の個性を生かしたまちづくり」に関して
 「地域の個性を生かしたまちづくり」の項では、「市街地再開発事業の推進」「住宅市街地整備総合支援事業の推進」「法定地区計画の推進」「区画整理事業の推進」等、現在の都市整備部の開発・まちづくり事業内容・都市計画手法が羅列されているだけで、目標数値も第3稿では、「住宅の戸数を2000戸に増やす」などが目標数値とされています。このどこが温暖化対策なのか、記述自体に矛盾があります。
 しかも、この項の「環境」の概念は、地球温暖化対策ではなく、「住環境(住戸面積〇平方メートル以上など)整備」にすりかわっているのです。すべての開発をすれば、地球温暖化対策がすすむとでも考えているのでしょうか。人や車が集中し、対策に逆行することもあり得ます。
 この項では、各開発・まちづくり事業において、いかに地球温暖化対策を進めるか、指導を強めるか、そのために要綱も見直すなどの角度で、記述しなおすべきです。

8、 「総合的施策」「推進体制」に関して
 個別の施策を推進する総合的施策と推進体制という考え方は重要です。素案ではそのひとつとして協働を掲げていますが、そこでの区の位置づけや、果たす役割が見えません。区の役割、姿勢をもっと強く、はっきりさせる必要があります。その裏づけとなる財源の確保、財政の支出についてももっと書き込むべきです。5−2−5でふれている協働の困難な実態はそのとおりですが、これを打開するものとしてあげられている事例はこれまでの延長上のものであり、不十分です。内容を補強するか、記述の角度を変える必要があります。
 第2に、環境教育については、それに逆行する廃プラの焼却を中止し、分別・リサイクルを徹底してこそ説得力のある計画になると考えます。
 第3に、経済的な仕組みについては大いに取り入れて計画にも反映するべきです。排出量取引については効果あることなので、制度の説明にとどまらず、一定量以上のCO2を排出する事業所についてはこの取引を認める方向で書き込むべきと考えます。
 第4に、推進体制として「足立区地球温暖化対策区民会議」など「対策」となっているが、温暖化防止の決意をはっきりさせるため「防止」としたほうが良いと考えます。

以上