2、区長提案の議案などに対する討論 「足立区学力向上に関する総合調査(一斉学力テスト)の中止を求める陳情」の採択を求める討論 12月19日 針谷 みきお議員 |
ただいま、議題となりました足立区学力向上に関する総合調査(一斉学力テスト)の中止を求める陳情について、日本共産党足立区議団を代表し、文教委員会での否決に反対し、本陳情に賛成の立場から討論を行います。 区教委が第二次教育改革の名で推進してきた学力総合調査(いっせい学力テスト)で学校長らによる誤答指差し事件や区教委自身による試験問題の事前配布が次々に発覚し、子どもたちの心を傷つけるとともに、教育行政をゆがめ、区民の区政に対する不信を大きく広げてしまいました。 本陳情はこうした「学力テスト」中心の学力向上策は子どもや区民から信頼を失っているとともに、子どもたちの学力を真に向上させるためには、問題があきらかになった「一斉学力テスト」を中止し、改めて子ども、父母・区民、教職員、教育行政が知恵を出し合うことを求めています。 はじめに学力テストありき 今日の学力テストの不正や教育のゆがみの原因は、全国に先駆けて実施された都教委の学力調査の結果、23区中、23位となった足立区が各学校の平均点を公表し、学校間の競争を進めたことにあったことは区教委自身も認めているところです。 本来なら、区教委として区民からパブリックコメントを取るなど区民意見の集約をすべきだったのです。 ところが、区教委は問題が発覚した直後から「学力調査委員会」を設置し、区教委が進めてきた学力調査を含む「教育改革」の成果なるものを発表、「教育改革」は間違っていなかったという認識を示し、はじめから「一斉学力テスト」の実施と公表を前提として、どのように公表するか、また、どのように実施するかの検討をはじめてしまいました。 陳情の審議で区教委が「全教育長の改革がなければ、今回のような改善もなかったなど」と発言をしたことは、身内をかばい、自分たちの進めてきたことに間違いはないという本音を覗かせたものと指摘せざるを得ません。 このような経過を見る限り、陳情のいう子ども、父母・区民、教職員に聞くことなく、区教委がはじめから「学力テスト」先にありきというやり方を強引にすすめたことは明らかです。もともと、わが党はテストそのものを否定するものではありません。学習指導要領に示された学習内容を把握し、授業改善を行うため、学校では日常的にテストを実施しています。たとえば、中学校では学期の中では中間、期末テストが実施されていますし、小学校でも同様のテストは実施されているのです。 今回の陳情の審議で問われているのは、テストをするかしないかの是非がとわれているのではなく、区教委が進めてきた、学校選択の自由化とリンクさせ、学校選びの参考とさせるような、これまでの競争教育の流れを残しているいっせい学力テストの是非が問われているのであります。 区教委は「学力調査委員会」からの報告をうけ、基本方針を決定しましたが、学力テストの公表については各校の平均到達度(正答率)や伸び率を成績順に公表することは改める。学校配布予算についても学力調査の伸び率を予算査定の基準から除外するなどを決定し、改善の方向を示しました。 「学力テストの結果を学校選びの参考に」の区教委の姿勢変わらず しかし、区教委の基本方針は「学校選択の自由化による学校選びの参考とするため、『公表についても8月以降が望ましい』としているように、学校選択の自由化と学力テストの結果がリンクし、学校の序列化を進めていこうとする姿勢は明らかです。さらに「意欲ある学校に予算で答える姿勢は堅持する」というテスト結果で予算に格差という基本的な考え方は残しました。困難な学校にこそ、予算を重点配分することこそ、義務教育がとるべき態度ではないでしょうか。 区教委はいっせい学力テストを引き続き実施するとした根拠として、「多くの学校から実施をすべきとの意見がある」とのべましたが、文教委員会の質疑で、「多くの学校から実施すべき」であるという客観的なデータはないことが明らかになりました。 それどころが、実際はどうでしょうか。学力調査委員会の議事録をよむと、現場の校長らからは「3年間調査を実施して、子ども達の課題は把握できている。」「都調査結果を積み上げているので、学習指導に対応できていると考える」「区調査は行わないパターンもある」など学力調査の実施を疑問視する意見もあったにもかかわらず、委員長が冒頭から「学力調査は引き続き実施する」とまとめてしまっているのであります。 区長が校長会役員と懇談したときにも校長会と区教委は基本認識が違いますからと指摘されたとホームぺージで紹介していますが、こうした態度に現場の校長から「区教委は現場を信用していない」などときびしい批判がされているのであります。いまこそ現場の声に耳を傾ける姿勢が求められているのではないでしょうか。 審議の中で不採択の態度を示した自民党、民主党委員から「学力調査は子どもたちの学力向上にとって有効」「デメリットはあまりない」という発言がありましたが、この発言はテスト一般論であって、足立区が実施しようとする学力テストは小学校1年生を除く児童・生徒全員を対象とするいっせい学力テストであり、本陳情が指摘している問題とは別の問題であります。そもそも、学力とはテストではかれる部分は少なく、頭と心と体がバランスよく成長させることであり、教育基本法でいう人格の完成をめざすことが必要であると校長会からも指摘されており、いっせい学力テスト中心の学力向上策を推進することは見直すべきとの意見なのです。 3つの学力テストもやる必要なし―校長会役員も指摘 また、いっせい学力テストについてはやり方を改善したから問題ないという主張ですが、現場の校長会の役員会との懇談でも、「国、都、区の3回の調査は学校にとって負担である。」3日間授業がつぶれることを考えればどれかひとつに絞るべきと意見があがっているのです。また、足立区の学校教育を考えるネートワークの母親からは「高校の進路を見る場合、学校では業者テストを参考にして受験校を選んでいる。区の学力テストを実施する意義は感じられません」と区教委に話しているのです。 区教委が子どもたちの学習状況の経年変化を把握するのであるならば、神戸市が実施しているような抽出調査を行えばいいのです。神戸市では予算わずか300万円で市教委自身が数百人の抽出調査を実施していますが、これで充分、学習状況の把握はできるといっています。費用対効果からいっても、3000万円もかけて教育産業に委託して実施するいっせい学力テストは必要ないのではありませんか。 公明党委員については、不採択の態度をとりましたが、決算特別委員会や文教委員会では「犬山市は学力テストを実施しない方針をとっている」「北欧のある国でもいっせいテストはやっていない、テスト重視や能力をのばすことより、学習の遅れている子どもへのフォローを徹底する必要がある。」と発言をしているではありませんか。 いまこそ、区議会がチェック機能を発揮し、子どもたちを真ん中においた本当の教育改革を推進するため、30人学級や学校図書室に司書職員を配置しようと変わりつつある区教委の姿勢を、ただすためにも、本陳情を採択するよう求めて討論を終わります。 |
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