3、議案などに対する討論

@足立区特別区税条例の一部を改正する条例への反対討論
 大島芳江議員

 私は、日本共産党足立区議団を代表し、ただいま議題となりました第65号議案「足立区特別区税条例の一部を改正する条例」に反対の立場から討論を行います。
 この条例改正は、今年4月30日に国会で成立した「地方税法改正」に伴うものですが、当時国会では、道路特定財源の暫定税率の延長などをめぐって与野党の攻防の中、関連するこの地方税法改正案は、参議院総務委員会で審議途中にもかかわらず、「みなし否決」とされ、衆議院での「再議決」という異例な形で成立したものです。
 今回提案された特別区税条例改正の主なものは、個人住民税における寄付金税制の見直しや、金融・証券税制の見直し、そして2009年度分の住民税から年金天引きをするという特別徴収制度の導入等が上げられます。
 寄付金控除については、これまで国税でのみ対象となっていた寄付金についても区の条例で指定すれば控除の対象とできるなど対象範囲を広げたことや、控除方式を所得控除から税額控除に改め、控除の上限額を引き上げるとともに、適用下限額もこれまでの10万円から5000円に引き下げられ、大幅に拡充されたことは賛成できるものです。
 しかし、金融・証券税制の見直しでは、大株主に多大な恩恵を与え、「金持ち優遇」と批判されてきた上場株式等の配当・譲渡所得にかかる軽減税率は今年廃止されるのに、特例措置として2009年1月1日から2010年12月31日までの2年間に限って、500万円以下の譲渡所得、100万円以下の配当所得については、10%の軽減税率を継続します。さらに、2009年1月1日から上場株式の配当所得について、総合課税か分離課税かをどちらか有利な方を選択できるようにしたり、個人投資家の株式投資リスクを軽減するため、株式での損失を配当所得から控除できるようにする損益通算の仕組みまで創設しました。まさに多額の金融資産をもつ富裕層に対しての優遇策をいっそう広げる内容となっています。
 区は、「金持ち優遇というが株などへの投資は、ごく普通の庶民がやっている時代」だと答弁し、このような優遇策も当然という認識を示しました。しかし、格差と貧困が広がるなかで、日銀調べでも貯蓄残高ゼロ世帯が、4世帯に1世帯と増加し、なんらかのアクシデントがあるとたちまち家庭が崩壊する余裕のない世帯が増えています。株取引などに投資できるのは、お金に余裕のある人といわざるを得ません。このような「金持ち優遇策」を拡充すべきではありません。
 また、今回の条例改正では、65歳以上の公的年金受給者から個人住民税の均等割額と所得割額を2009年10月支給分の年金から天引きを始めるという内容が含まれています。足立区では、年金受給者のおよそ3割程度4万人が対象となるといわれていますが、年金からはすでに、所得税、介護保険料に加えて、今年から、国民健康保険料と後期高齢者医療保険料が天引きされ、「本人に断りもなく年金から天引きするなんて許せない」、「少ない年金から次々と引かれ、手元に残る金額ではとても生活していけない」と怒りと不安の声があがっています。区は、「年金天引きと生活できないという貧困対策とは別の問題」「納税者は天引きになれば、面倒くさくなくて良い」などと答弁しました。確かに年金や医療、介護など社会保障の充実や貧困対策がいまほど求められている時はないでしょう。しかし、やりくりも限界という区民生活の現状から目をそむけ、有無を言わさず年金から天引きすることは血も涙もないやり方といわざるを得ません。
 公明党の委員は、「年金天引きで事務処理が簡潔になる」「処理経費が安くなる」なるなど年金天引きのメリットをもっとPRするよう区に要望しました。
 しかし、地方自治体の事務の効率化にメリットがあるとしても、天引きするためのシステムは整備しなければならず、区の答弁でも電子媒体につなぐための開発経費として100万から300万円、その後の運用資金として年900万から1100万円はかかると言っています。税の基本は自分で申告し、自分で納めることです。取りやすい所から取れば良いとばかりに、本人の意向を踏まえないで年金から住民税を天引きするやり方は、到底認められないことを申し上げ反対討論を終わります。